2025-06-01から1ヶ月間の記事一覧
104話 マティアスがレイラに見せたかったのはカナリアでした。 レイラとカナリアは、 長い間、互いに見つめ合いました。 首を傾げるレイラを真似るように、 鳥も頭を横に振って歌いました。 気分がいいのか、鳥の歌は いつもより、ずっと澄んでいて きれいで…
25話 イザベル皇女がバスティアンのタウンハウスに押しかけて来ました。 バスティアンはクスッと笑いました。 じっとイザベルを見つめる瞳は 深い水のように静かでしたが 口の端が斜めに傾いていました。 あまり好意的な反応のように 見えませんでした。 気…
24話 結局、オデットはバスティアンに服を買ってもらうことになりました。 ドレスと帽子。靴。 手袋や日傘などの小物まで。 日が暮れる頃には、 かなりの量の注文リストが 完成しました。 何から何まで全て バスティアン・クラウヴィッツの 選択でした。 オ…
23話 バスティアンはオデットをサビネ洋品店に連れて来ました。 満面の笑みを浮かべたサビネ夫人は 直接彼らを出迎え、 バスティアンに久しぶりだと 挨拶をすると、彼は、 気兼ねなく彼女を抱きしめました。 サビネ夫人は、 バスティアンの叔母から連絡をも…
103話 クロディーヌはパーティーに出席しています。 チラチラと、しきりに横目で 機会を窺っていた若い女性たちが 足早に近づいて来て クロディーヌを取り囲むと、 久しぶりだと挨拶しました。 以前、ヘルハルト家で開かれた パーティーで会ったことがあるけ…
102話 早朝から使用人たちは、慌ただしく二人の奥様の荷物を運んでいます。 毎年、 皇后の誕生パーティーが開催される 春先になると、 帝国の名望高い貴婦人たちは 首都に集まりました。 その年の、 本格的な社交シーズンの幕開けを 告げるような行事である…
101話 いつもはぐっすり眠っているビルおじさんでしたが・・・ 枕に頭さえ触れれば眠りにつき、 朝まで目覚めることのない ビル・レマーが、夜明け前に ぱっと目を覚ましたのは レイラを失うという あまりにも恐ろしくて 思い出したくもない 悪夢のせいでし…
100話 学校の休みが終わりました。 再び会った子供たちは ぐんと成長していました。 その分、問題も大きくなり、 レイラは慌ただしい一日を 過ごさなければなりませんでした。 窓の外を見ながら考え込んでいた レイラは、 石板を持ち上げながら、 問題が解け…
22話 バスティアンは医師の診察を受けています。 クラーモ博士は、 やはり若いということがいいと 言うと、満足そうな笑みを浮かべて カルテを伏せました。 異常所見なし。 今月の検診記録も、 先月と大きく変わりませんでした。 砲弾の破片を除去する手術を…
21話 バスティアンはディセン公爵をクソ野郎と呼びました。 すでに一度、自分に 娘を売った人らしくない言葉だ。 会っていない間に、 急激な心境の変化でも あったのだろうかと言うと、 バスティアンは、 真剣に疑問を感じているように 頭を傾げました。 デ…
20話 舞踏会で騒ぎを起こしたイザベル皇女は夏の宮殿に閉じ込められていますが・・・ まるで獣が鳴いているような声を 栄えある帝国の皇女が出しているなんて 誰も思わないはずでした。 乳母は、新しいハンカチで 滅茶苦茶な皇女の顔を 拭いてやりました。 …
99話 レイラはマティアスの気に入るような姿で、彼の元へ行きました。 見慣れないレイラが、 彼の所へやって来ました。 ノックの音で ドアを開けたマティアスは、 少し当惑しながら レイラを見ました。 彼女は彼があげたものを着て 慎ましやかに立っていまし…
98話 マティアスは帰って来たビルおじさんを呼び出しました。 固まっているビルに、 マティアスが先にお茶を勧めました。 ビルは、相変らず 訳が分からない顔をしていましたが カップをわしづかみにすることで 命令に従いました。 マティアスは、 長い間、お…
97話 クロディーヌはレイラに話をするのを止めません。 あなたの人生を台無しにした男。 何も聞こえていないような ぼんやりとした意識の中でも、 その言葉は、針の先のように痛く 入り込みました。 レイラの目が揺れるのを見た クロディーヌは、 驚くべきこ…
96話 レイラはクロディーヌに呼び出されました。 クロディーヌは、 バラ園のパーゴラの下で 立ち止まりました。 そして、微笑みながら、 本当に天気がいい。 もうすぐ春が来そうではないかと 尋ねると、 数歩離れた所に立っている レイラの方を振り向きまし…
19話 サンドリンは水たまりの中にオデットのリボンを捨てました。 勝利を祝うパーティーは 海軍省の宴会場で行われる予定でした。 オデットは一番最後に 観客席から立ち上がりました。 今度はバスティアンと合流し、 一緒に海軍省に移動する番でした。 一人…
18話 ポロの試合が始まりました。 バスティアンは3番、 主将の番号を付けていました。 観客席に座ったオデットは 目を細めて、彼を見ました。 名だたる名門の家の子弟たちで 構成されたチームに属している 唯一の平民が、 その栄誉を得た理由を理解するまで…
17話 サンドリンはバスティアンを呼び出しました。 オデットの予想以上に ポロクラブの構造は複雑でした。 競技場とつながる アーチ型の通路を過ぎると、 馬蹄の形をした建物で囲まれた 庭園が現れました。 出入口は、その間を結ぶ道の先に ありました。 オ…
95話 早くやってと、レイラはマティアスを急かしました。 レイラは震える手で マティアスのコートとジャケットを 脱がせました。 ネクタイを外し、 シャツのボタンを外し始めた頃、 もはやマティアスの息も 穏やかではありませんでした。 熱いため息を漏らし…
94話 レイラはカイルに、マティアスのことが好きだと言いました。 レイラは言葉を続けられずに 頭を下げました。 もう目を開けていられないほど 熱くて大粒の涙が溢れ始めました。 床に突いている カイルの手の甲の上にも、その涙が 雨水のように流れました…
93話 マティアスが小屋に押し入ろうとしています。 周囲を見回したレイラは、 「帰って、お願い」と 死人のような顔色で叫びました。 以前と同じように怯えた目と 生気のない姿は、 あの甘かった一日の記憶は あなた一人だけの妄想だと 語っているようでした…
92話 アルビスへの帰り道、レイラはカイルに会いました。 どう考えても変。 床を拭いていた手を止めたレイラは ぼんやりと空中を眺めました。 あの日、一体なぜカイルは、 そうしたのだろうか。 数日前に会ったカイルの顔が 浮かび上がると、 レイラの疑問は…
16話 オデットはポロの競技場にやって来ました。 早過ぎず遅すぎず、オデットは、 謙虚な客たちが好む 多くの人々の中に埋もれるのに 適した時に登場しました。 残念ながら、 高い人気を博しているオデットには そのような幸運は 与えられませんでしたが。 …
15話 オデットとバスティアンは美術史博物館に来ています。 彼らが現れたという知らせが 口から口へと広がり、 それを聞いた人々が集まった 美術史博物館の特別展示場は 賑わっていました。 ここで最も人気を集めている作品は、 誰が何と言おうと、 皇帝が結…
14話 オデットとバスティアンは、一緒に食事をすることになりました。 社交界の有名人がよく訪れる場所。 客の多い土曜日の昼休み。 視線が集中する位置に置かれた テーブル。 バスティアンは、 すぐに分かる見え透いた策略に 気づきましたが、快く 二人の仲…
91話 クロディーヌはレイラとマティアスの関係をカイルに話しました。 クロディーヌが去った後も、 カイルは、 しばらく、その場に留まりました。 静かに近づいて来たウェイターは、 すでに三杯目のコーヒーを置き、 手もつけていない冷めたコーヒーを 片付…
90話 レイラはマティアスに、洋装店へ連れて行かれました。 見る人を混乱させる二人の客の姿に 戸惑ったのもつかの間。 洋装店の主人は、 すぐに華やかな笑みを取り戻しました。 地位が高くて裕福そうな男は、 自分のコートに包まれた小さな女性を エスコー…
89話 マティアスの出張先で、レイラは彼と一緒に過ごしています。 あの目を初めて見た日の記憶が 今、公爵の顔の上に蘇りました。 再び不思議な気分になって 視線を避けましたが、彼は素直に レイラを離しませんでした。 大きな両手が顔を包み込むと 怯えた…
88話 レイラはマティアスとソファーの間に閉じ込められてしまいました。 なぜ、いつも 一番隠したい情けない気持ちが この男にばれてしまうのか。 レイラは泣きたい気持ちで、 逃れる術のない公爵の視線に 向き合いました。 先に話そうかと考えましたが 止め…
13話 ディセン公爵は、相変わらず賭け事に耽っています。 ぐちゃぐちゃに噛んだ煙草を 吐き出した食料品店の店主は、 とんでもないことを言ってないで お金を持って来いと叫ぶと、 販売台の前で立ち上がりました。 息を吐く度に漂ってくる口臭は 吐き気が込…