2025-10-01から1ヶ月間の記事一覧
77話 オデットは父親に会いに行くことにしました。 オデットは遊歩道ではなく 小道の方に手綱を引きました。 賢い馬は、 すぐに、その指示を理解し、 方向を変えました。 スピードを上げて走る馬の蹄の音が、 紅葉が真っ盛りの林道沿いに 響き渡りました。 …
5話 アビゲイル夫人は自分の愛を見つけなかったペンドルトン嬢のことを心配しています。 ペンドルトン嬢の瞳が揺れました。 アビゲイル夫人は、 自分がローラに与えたものには 限界があったことを知っているし ローラの両親が残した過ちが ローラを押さえつ…
4話 ペンドルトン嬢は、フェアファクス氏の頼みを引き受けました。 フェアファクス氏は、これまで以上に 嬉しそうに微笑みました。 彼はペンドルトン嬢の手を握って 力強く握手をすると、 何度もお礼を言いました。 そして、ハイド嬢に、 再び助けが必要かど…
3話 ハイド嬢はフェアファクス氏からプロポーズされることに悩んでいます。 「バカみたいでしょう?」と尋ねると ハイド嬢は悲しそうに笑いました。 ペンドルトン嬢は 首を横に振りました。 しかし、ハイド嬢は バカみたいなことだ。 今、両親が自分の考えを…
2話 披露宴会場でエリザベスとエドワードが探しているローラとは誰? エドワードは、ざっと 披露宴会場を見回しました。 多くの婦人や淑女たちの中から ペンドルトン嬢を見つけるのは 容易なことではありませんでした。 特に女性の華やかな服装に慣れていな…
76話 オデットはバスティアンに、自分に話すことはないかと尋ねました。 バスティアンを湛えた 大きな瞳が明るく輝きました。 恐怖に怯えて警戒していた時とは 明らかに変わりました。 信頼と呼んでも良い感情が 込められたような目つきでした。 バスティア…
75話 オデットはテオドラに呼び出されました。 ラナー街12番地にある楽譜店は、 今日も、がらんとしていました。 古い陳列台の後ろに座って うとうとしている主人を除けば、 客は、 うわの空で楽譜をめくっている 中年の婦人と、 息を切らしている若い淑女の…
74話 オデットとバスティアンの写真が新聞に掲載されました。 英雄と美女 クラウヴィツ大尉夫妻の写真には、 かなり恥ずかしい賛辞が 添えられていました。 テオドラは、 ひねくれた笑みを浮かべたまま、 今日の新聞を広げました。 今年の海軍祭を扱った特集…
1話 ロンドンが舞台のお話です。 その日は、 エリザベス・デイヤー嬢と エドワード・モートン氏の 結婚式の日でした。 二人の結婚は、 彼らが婚約していた時から 多くの人の関心を集めていました。 エリザベスは 議会で活躍している デイヤー子爵の一人娘で…
170話 外伝18話 最終話 新しいヘルハルトは、春と共に この世にやって来ました。 花の蕾が瑞々しく膨らんでいる 日差しが暖かい午後でした。 速くて静かな足取りで 近づいて来た侍従は、 安産だった。 すぐに会えるように準備中だと 告げました。 マティアス…
169話 外伝17話 レイラは二人目の子供を妊娠しました。 ヘルハルト公爵夫人の妊娠の知らせは すぐにカルスバルと ラッツの上流社会のあちこちに 広まりました。 若くて健康な夫婦が 二人目を授かることは、 特に驚くことではありませんでしたが 妊娠した公爵…
168話 外伝16話 レイラはフェリックスと一緒に散歩に出ました。 市街地を抜けて アルビスへ走っていく間、 公爵を乗せた車の中には 静寂が漂っていました。 無理なくスケジュールを こなしているように見えても 疲れが、かなり溜まっていたのか、 公爵はシー…
73話 オデットにテオドラからの招待状が届きました。 近いけれど遠い所から 招待状が届きました。 テオドラ・クラウヴィッツ。 オデットは、こんな風に 向き合うとは思わなかった その名前を、 しばらくじっと見つめました。 彼女は、今週中に一度 実家を訪…
72話 オデットは観覧車に乗りたがりましたが・・・ 「申し訳ございません」と謝罪した 観覧車の管理人は、 愛想よく笑いながら、 入場禁止のロープを張りました。オデットが ロープの中央に掲げられた 案内板を読んでいる間、 観覧車の最後の乗客が降りまし…
71話 オデットとバスティアンは遊園地を訪れています。 オデットは、 バスティアンと手を繋ぎながら、 ピクニックに来た子供のように 祭りの雰囲気が漂っている遊園地を 散策しました。 オデットは、夢を見ているかのように ぼんやりとした目を下ろして ティ…
167話 外伝15話 道路を挟んで、マティアスとカイルの目が合いました。 二人の男は、しばらく落ち着いて、 お互いに見つめ合いました。 あえて視線を逸らそうとせず、 特に意識することもなく、ただ、 お互いに相手を見ていた時間でした。 先に終わりを告げた…
166話 外伝14話 レイラとマティアスは甘い夜を過ごしています。 彼を思う存分利用した妻は、 彼の腕の中で眠ってしまいました。 それよりも、疲れて 意識を失ってしまったという方に 近いだろうけれど、いずれにせよ、 嬉しくないという点においては 変わり…
165話 外伝13話 レイラはマティアスに子供が欲しいと訴えました。 いつもと違い、レイラは、 少しも恥ずかしがる様子を見せない顔で マティアスの視線を受けました。 口にしている、 とんでもない話とは裏腹に、真剣で、 ある程度、学究的ともいえる表情が …
164話 レイラは二人の奥様に呼ばれました。 ヘルハルト家の三人の公爵夫人が 共にするティータイムは、 適度に平穏で気まずい雰囲気の中で 続きました。 時折、会話が途切れる時に訪れる 静寂の中に、噴水の水が流れる音と 鳥たちの歌声が流れ込みました。 …
70話 オデットとバスティアンはカルスバルに滞在中です。 「行ってみようか?」 川の風に似た声が耳元をかすめました。 オデットはビクッとして 振り返りました。 何の気配もなく近づいて来た バスティアンが、 川辺の風景が見える窓の前に 並んで立っていま…
69話 オデットとバスティアンは、ヘルハルト家の昼食会に招待されました。 角を曲がったヘルハルト家の馬車が、 邸宅に続く進入路に 差し掛かりました。 両側に並ぶ背の高いプラタナスが 印象的な道でした。 オデットは緊張感と好奇心が 入り混じった目で、 …
68話 オデットはカルスバルにやって来ました。 首都を出発した列車が カルスバル駅のプラットホームに 入りました。 ティラは、ゴムボールのように ベンチから立ち上がりました。 制服のスカートのしわと ブラウスの襟の形を整えている間に、 停車した列車の…
163話 外伝11話 マティアスと出くわしたレイラは恐怖で固まってしまいました。 子供は彼を見て逃げ出しました。 マティアスは、 逃げるその子を発見すると、 躊躇うことなく追いかけました。 あまりにも、ありきたりで 退屈な出し物でしたが、 そのありきた…
162話 マティアスとクロディーヌがレイラに近づいています。 マティアスは、 その子を見つけました。 というよりは、その子の服、 あるいは髪の毛と言った方が 正確でしょうけれど。 庭師が育てている孤児は、 彼らを発見すると、 慌てて壁の陰に身を隠しま…
161話 外伝9話 クロディーヌの所から帰る途中、レイラはマティアスに出くわしました。 凍りついたまま道の上に立っている レイラを見つけた公爵は、 いくらか離れた場所で馬を止めました。 幸いなことに、あの恐ろしい猟銃は 見当たりませんでした。 その後…
160話 マティアスはバラをどうするのでしょうか? まさか。慎ましやかな期待感に 胸がドキドキしましたが、 一方では信じられませんでした。 まさか、この男、 マティアス・フォン・ヘルハルトが。 考えれば考えるほど 速くなる心臓の鼓動が 耳元に響き渡り…
67話 ピアノを弾いていたオデットのもとへ、バスティアンがやって来ました。 本当に変な男。 いくら考えても、 オデットが下すことができる結論は それだけでした。 ピアノの前に近づいたバスティアンは しばらく黙って 楽譜を見つめているだけでした。 もし…
66話 オデットはサビネ洋品店にいます。 驚いて顔を上げたマリア・クロスは 犬を飼っているのかと尋ねました。 危うく落としそうになった 生地のサンプルを握り直した 手の甲の上の関節が 浮き出ていました。 オデットは、 一口飲んだ茶碗を下ろすと、 「は…
65話 ところで病院に閉じ込められているディセン公爵は・・・ このまま一人で死んだりしない。 ディセン公爵は、 しばらく揺れていた心を引き締めると 長い手紙に終止符を打ちました。 いつにも増して冷徹な理性で書いた 最後通牒でした。 蓋を閉めたペンを…
159話 レイラはマティアスの好きなようにしてと言いました。 舞い上がるように浮かんだ体が ふかふかした何かに触れる感じに、 レイラは力を込めて 閉じていた目を開けました。 一番最初に視界に入って来たのは 星明かりが 白くぼんやりと広がる夜空でした。…