バスティアン
188話 フラフラしていたオデットが座り込んだところへ、マクシミンがやって来ました。 暑い天気のせいだと思う。 少し休めば良くなるので 心配しないでと言うと、 意識を取り戻したオデットが 顔を上げました。 まだ顔色は青白かったものの、 幸いにも 危機…
187話 ベルクとロビタとの間に戦争が勃発しました。 「総員、戦闘配置!」 艦長が下した戦闘配置命令は 瞬く間に戦艦全体へと 行き渡りました。 待機していたレイバエル号の 乗組員たちは、一糸乱れぬ動きで 戦闘位置へと移動しました。 艦橋の甲板に出たバ…
186話 バスティアンは指揮官として、トロサ諸島に出航しました。 トロサ諸島には、 すでに戦雲が立ち込めていました。 本島にある北海艦隊の官舎には 民間人への退避命令が下されました。 将校の家族は全員、本土行きの輸送船に 乗らなければなりませんでし…
185話 バスティアンはオデットの家を去りました。 二人は一緒に川沿いを歩きました。 トランクを持ったバスティアンが 先頭に立ち、 オデットはその後に続きました。 たかだか一歩の隔たり。 その気になれば、 いくらでも縮めることができましたが オデット…
184話 とうとう水曜日になりました。 オデットは、 白い光の中で目を覚ましました。 まぶしい夏の朝の日差しが 空っぽの隣の席を満たしていました。 慌てて体を起こしたオデットは、 まず最初に置時計を確認しました。 まだ6時。 いくら何でも、 もう出発し…
183話 オデットとバスティアンは最後の夕食を取っています。 最後の晩餐は、 真夜中が近づいた頃に 幕を閉じました。 散々な料理ばかりでしたが、 バスティアンはいつも通り きれいに皿を空にしました。 オデットも、 黙々と食事を続けました。 空腹のおかげ…
182話 オデットとバスティアンは体を重ね続けています。 バスティアンの瞳の中で日が沈み 月が昇りました。 オデットは、 何度も閉じそうになる目を開けて、 青い夜が染み込んだ その瞳を見つめました。 バスティアンは、 彼女と目を合わせながら 腰を動かし…
181話 バスティアンはオデットを寝室へ連れて行きました。 勢いよく閉まったドアが 反動に耐え切れず、 再び開きました。 慌てて手を伸ばしましたが、 オデットは 目的を果たせませんでした。 すたすたと寝室を横切った バスティアンは、あっという間に ベッ…
180話 オデットは教師の妻に頼まれて子供を預かることになりました。 3人の子どもが現れると、家の中は たちまち騒がしくなりました。 バスティアンは戸惑いを含んだ目で 戦場に匹敵するほどの大混乱を 見守っていました。 年子の2人の兄弟は 子馬のように飛…
179話 オデットはバスティアンにキスをしました。 そっと唇を重ねて、ため息をつき、 再びそっと唇を合わせて来る。 オデットのキスは、 穏やかな水の流れのように続きました。 バスティアンはそっと目を閉じて オデットの肩を掴みました。 研ぎ澄まされた神…
178話 バスティアンと過ごす残りの時間は2日間となりました。 オデットは、 ジェンダス伯爵が理解してくれたことに 感謝の言葉を述べ、 それでは水曜日にと伝えた後、 通話を終えました。 これで、今日の午後と 明日のレッスンのスケジュールは すべて変更さ…
177話 バスティアンの部屋から大きな物音がしたので、オデットは駆けつけました。 オデットのノックは、 すでに数分間続いていました。 バスティアンは、 体温で熱くなったドアノブを 力いっぱい握りしめたまま 目を閉じました。 頑固で愚かな女は、体が壊れ…
176話 オデットと一緒に過ごす日の終わりが刻一刻と近づいています。 雨は、一時的に止んだり 再び降ったりを繰り返しながら、 一晩中続きました。 バスティアンは裏庭のポーチに出ると タバコを咥えて火を点けました。 霧雨が降る田舎の朝の風景は 静かで平…
175話 ピクニックへ行って雨に降られたバスティアンとオデットは水車小屋に避難しました。 バスティアンは、 水車小屋の隅に積まれている 干し草の上に オデットを下ろしました。 びしょ濡れの毛布を剥がし、 靴を脱がせました。 魂が抜けたように 呆然とし…
174話 バスティアンはピクニックに行こうと言いましたが・・・ 目的地に近づくにつれて、 雲はだんだん濃くなって行きました。 オデットは心配そうな目で 曇った空を見つめました。 バスティアンに押し切られて 出かけて来ましたが、 どう見ても、ピクニック…
173話 水曜日までバスティアンはオデットの家に滞在することになりました。 「これは新しく入った生地で 作ったものだけれど、 どうでしょうか」と説明しながら、 店主が新しい布団を出して来ました。 狭い店は、いつの間にか 様々な色の布団で いっぱいにな…
172話 バスティアンは、オデットとジェンダス伯爵とアルマが、楽しそうに食事をしている姿を見てしまいました。 ジェンダス伯爵は、 10時を少し過ぎてから オデットの家を出ました。 眠っている娘を 後部座席に寝かせた伯爵は、 自らハンドルを握りました。 …
171話 オデットに会うためにロスバインを訪れていたバスティアンに軍事機密が届きました。 バスティアンを乗せた軍用車は すぐにロスバイン駅へ向かいました。 そこから出発した ラッツ行きの特急列車は、 夜明けが近づく頃に 目的地に到着しました。 バステ…
170話 オデットはバスティアンに夕飯をご馳走することになりました。 食卓は裏庭に用意されました。 木陰に置かれたテーブルに 新しいレースのテーブルクロスを 掛けたオデットは、 ナプキンとカトラリーを 整然と配置しました。 食卓の中央には、 花壇から…
169話 バスティアンの次の手は? 日常が揺らぎ始めた。 オデットは、 これ以上、避けられなくなった その事実を、 諦めたように受け入れました。 目の前に証拠を突きつけられると 心がさらに乱れました。 入念に準備したティータイムは オデットの計画と 大…
168話 バスティアンがオデットの前に現れました。 太陽に熱せられた広場の熱気を 運んできた風が、 静かに見つめ合う2人の間を そっと通り過ぎて行きました。 昼食時のカフェは、 満員の客で賑わっていましたが、 オデットの世界では音が消えました。 頭の中…
167話 バスティアンはオデットに会いに、ロスバインへ向かいました。 オデットは、 ロスバイン駅から、もう一度、 列車を乗り換えなければならない 場所に滞在していました。 ラッツを出発した夜行列車を 降りたバスティアンは、 始発の運行時間が来るまで …
166話 バスティアンは、過去の傷ついた自分と決別しました。 様子を窺っていたメイドは クラウヴィッツ少佐が訪ねて来たと 慎重に告げました。 トリエ伯爵夫人は、 深くため息をつくと、 鼻先にかけていた老眼鏡を外しました。 読書用のテーブルに置かれた祈…
165話 ジェフ・クラウヴィッツの世界はバラが満開の季節に崩れました。 噂を聞いた見物人たちが アルデン湾に押し寄せるという 珍しい光景が広がりましたが、 肝心のバスティアンは そこを訪れませんでした。 いつも通り海軍省に出勤して業務を行い 決まった…
164話 バスティアンは嘲笑で始まったテオドラの手紙を読み始めました。 あなたの望み通りに、 私の心は壊れた。 しかし、残念ながら、 それは、あなたとは無関係なこと。 私の心は、とっくの昔に 崩れ落ちていたから。 私は全てを捧げて ジェフ・クラウヴィ…
163話 テオドラとジェフ・クラウヴィッツは亡くなりました。 「葬儀は無事に終わった」 マリア・クロスは低くかすれた声で 会話の口火を切りました。 続いて、深いため息の音が、 ようやく破られた長い沈黙の隙間へと 消えて行きました。 バスティアンは、 …
162話 オデットはアルデンを出て行きました。 その家は、村を流れる浅い小川の 左岸に位置していました。 趣のある古びた田園風の 2階建ての石造りの家でした。 川に沿って続く道を歩いて来た オデットは、日傘をたたんで、 その家のポーチの下に入りました…
161話 バスティアンは乗りかけた車から、オデットの元へ戻って来ました。 それほど長い時間では ありませんでした。 荒々しい波のように始まった 口づけは、穏やかな水流となって 終わりました。 かろうじて意識を取り戻した オデットは、震える手を上げて、…
160話 いよいよオデットが出て行く日がやって来ました。 バスティアンは、 夜が更けるまで寝ませんでした。 今日は処理すべき業務が 多いようでした。 眠れずに寝返りを打っていた オデットは、諦めたように ベッドから降りました。 ショールを羽織っている…
159話 バスティアンはケラーへ任務の変更を伝えました。 ご主人様は、 今日も早く帰宅されるそうだ。 格調高い晩餐を準備するよう 指示があったと、 執事に会って来たメイド長が 報告しました。 頷いたオデットは、 編み物を片付けて立ち上がりました。 一日…