バスティアン-ネタバレ ノベル 61話~70話
70話 オデットとバスティアンはカルスバルに滞在中です。 「行ってみようか?」 川の風に似た声が耳元をかすめました。 オデットはビクッとして 振り返りました。 何の気配もなく近づいて来た バスティアンが、 川辺の風景が見える窓の前に 並んで立っていま…
69話 オデットとバスティアンは、ヘルハルト家の昼食会に招待されました。 角を曲がったヘルハルト家の馬車が、 邸宅に続く進入路に 差し掛かりました。 両側に並ぶ背の高いプラタナスが 印象的な道でした。 オデットは緊張感と好奇心が 入り混じった目で、 …
68話 オデットはカルスバルにやって来ました。 首都を出発した列車が カルスバル駅のプラットホームに 入りました。 ティラは、ゴムボールのように ベンチから立ち上がりました。 制服のスカートのしわと ブラウスの襟の形を整えている間に、 停車した列車の…
67話 ピアノを弾いていたオデットのもとへ、バスティアンがやって来ました。 本当に変な男。 いくら考えても、 オデットが下すことができる結論は それだけでした。 ピアノの前に近づいたバスティアンは しばらく黙って 楽譜を見つめているだけでした。 もし…
66話 オデットはサビネ洋品店にいます。 驚いて顔を上げたマリア・クロスは 犬を飼っているのかと尋ねました。 危うく落としそうになった 生地のサンプルを握り直した 手の甲の上の関節が 浮き出ていました。 オデットは、 一口飲んだ茶碗を下ろすと、 「は…
65話 ところで病院に閉じ込められているディセン公爵は・・・ このまま一人で死んだりしない。 ディセン公爵は、 しばらく揺れていた心を引き締めると 長い手紙に終止符を打ちました。 いつにも増して冷徹な理性で書いた 最後通牒でした。 蓋を閉めたペンを…
64話 バスティアンはピアノがあるサンルームに向かいました。 最後の音の残響の中で 拍手が沸き起こりました。 オデットはビクッとして、 その音が聞こえて来た方に 顔を向けました。 戸口に寄りかかったバスティアンが 手を叩いていました。 「バスティアン…
63話 オデットは野良犬にマルグレーテと名付けました。 マルグレーテは、 オデットの影のようでした。 ただオデットだけを見つめて、 オデットの後だけに付いて行きました。 オデットが他のことに 夢中になっていた時もそうでした。 ふと視線が感じられて、…
62話 ベロップの外交使節団がベルクに来ています。 ベロップの外交使節団は 奇襲的に海軍省を訪問しました。 本来、国会で特別演説を行った後、 居住地の別宮に移動する予定でしたが 皇太子が、 近くにある海軍省に大きな関心を示し 移動経路が急に変更され…
61話 オデットは雨の中で、何をしているのでしょうか? 必死で穴を掘ったオデットの両手は 濡れた土で覆われ、 滅茶苦茶になっていました。 服と靴の状態も同じでした。 無駄だと分かりながらも、 オデットは落ち着いて 土を払い落としました。 立ち上がって…