泣いてみろ、乞うてもいい-ネタバレ ノベル 101話~110話
110話 学校からの帰り道、レイラはマティアスの車に出くわしました。 しばらく止まれという 指示を受けた運転手は、 プラタナスの道端に車を止めました。 かなり濃い緑色に染まって来た木の葉が 夕方の風に揺れていました。 マティアスは、その影がちらつく…
109話 離れから戻って来たレイラをビルおじさんが待っていました。 夜が明けても、 小屋は静まりかえっていました。 レイラは、 もう涙も乾ききった顔で 日が差している古い食卓を 見下ろしました。 焦点が定まらない目を ゆっくり閉じて開く度に、 昨夜の記…
108話 ビルおじさんは、レイラが小屋を抜け出して森へ向かうのを見ました。 約束の時間が来る前に到着した離れは 静かな暗闇に包まれていました。 レイラは、 カーディガンのポケットの中に 入れておいた鍵を取り出して、 ドアを開けました。 いつものように…
107話 クロディーヌからの手紙をビルおじさんは受け取りました。 ビル・レマー宛に届いた手紙には、 差出人の名前が 書かれていませんでした。 気が乗らなさそうな表情で 手に持った手紙を 見下ろしていたビルは、 ポーチに置かれた椅子に座って 封筒を開け…
106話 レイラは邸宅でマティアスと一緒に過ごしています。 レイラが涙で潤んだ目を 辛うじて開ける度に、そこには 彼女を見下ろしている 青い瞳がありました。 彼は両目いっぱいにレイラを映したまま 腰を動かしていました。 乱暴に深く入り込む動作とは違い…
105話 レイラはマティアスに、自分の好きなようにさせてと言いました。 諦めたように その事実を受け入れた マティアスの唇から、新たに 熱くて乾いた笑いが漏れました。 その間、気を揉むように じっとマティアスを見下ろしていた レイラは、慎重に身を屈め…
104話 マティアスがレイラに見せたかったのはカナリアでした。 レイラとカナリアは、 長い間、互いに見つめ合いました。 首を傾げるレイラを真似るように、 鳥も頭を横に振って歌いました。 気分がいいのか、鳥の歌は いつもより、ずっと澄んでいて きれいで…
103話 クロディーヌはパーティーに出席しています。 チラチラと、しきりに横目で 機会を窺っていた若い女性たちが 足早に近づいて来て クロディーヌを取り囲むと、 久しぶりだと挨拶しました。 以前、ヘルハルト家で開かれた パーティーで会ったことがあるけ…
102話 早朝から使用人たちは、慌ただしく二人の奥様の荷物を運んでいます。 毎年、 皇后の誕生パーティーが開催される 春先になると、 帝国の名望高い貴婦人たちは 首都に集まりました。 その年の、 本格的な社交シーズンの幕開けを 告げるような行事である…
101話 いつもはぐっすり眠っているビルおじさんでしたが・・・ 枕に頭さえ触れれば眠りにつき、 朝まで目覚めることのない ビル・レマーが、夜明け前に ぱっと目を覚ましたのは レイラを失うという あまりにも恐ろしくて 思い出したくもない 悪夢のせいでし…