84話 再婚は認められましたが、ソビエシュは・・・
◇ソビエシュの怒り◇
ソビエシュは
何を言おうとしているのか?
怒るのか?別れの言葉か?
再婚してくれて気が楽になった
とは言わないだろう。
怖い目を見れば
何か悪いことを
言おうとしているのだろうと
ナビエは思いました。
ソビエシュはナビエに
このおかしなことは
いったい何なのか?
プロポーズという返事は
聞きたくないとナビエに言いました。
おそらくソビエシュは、
離婚して、すぐに再婚し
しかも、その相手が
ハインリである理由を
聞きたいのだろうと
ナビエは思いました。
けれども、ナビエは
元夫の出る幕ではないので
分かっているけれども答えないと
淡々と返事をしました。
ソビエシュの額には
血管が浮き上がり
ナビエを見下ろして大笑いしながら
元妻の再婚を許可しないと言いました。
ナビエは、予想通りの展開に
離婚と同時に、
再婚請求をしておいて
よかったと思いました。
すると、それを聞いていた
大神官が、それは私の権限だと
言ったので、
誰かが近くで大笑いしました。
ソビエシュの顔は
いっそうこわばり
耳元まで赤くなり、
外へ出ていきました。
◇悲しみ<嬉しさ◇
大神官と皇帝がいなくなると
周囲が騒がしくなり、
それと共に
侍女たち、パルアン侯爵、
ナビエの両親が
詳しい事情を聴こうと
2人の周りに集まってきました。
ナビエが黙っていたことを謝ると
侍女たちは、
ナビエを責めることなく
うまくいって
よかったと言いました。
そして、
ローラとジュベール伯爵夫人が
ナビエに
ついていくと言いました。
ナビエの両親は、
まだ、この状況を受け入れ難い様子で
ハインリが2人を
お義父さん、お義母さんと呼ぶと
彼らは、もっと当惑して、
互いに顔を見合わせていましたが
コシャールが西王国にいることを、
小声で伝えると
父親は涙を流し、母親は安堵しました。
ナビエは、寂しい気持ちや
喪失感や憤りが
ないわけではないけれども
周りの人たちが
喜んでくれているので
悲しみよりも
嬉しさの方が大きくなりました。
そして、自分を救ってくれた
ハインリに感謝しました。
ナビエは、彼がいなかったら
離婚の通告を受けた後
侍女たちに慰められ
両親は自分を皇太子妃にしたことに
責任を感じ
人々に同情されたと思いました。
喜びの涙であっても
人前で泣きなくないナビエは
ゆっくりと深呼吸をした後
ハインリを見ながら
にっこり笑いました。
◇ラスタの告白◇
ラスタは、離婚をするや否や、
ナビエのことを残酷だ、
一時期、夫だった人が
どれだけ滑稽に見えるか
考えもしないと思い
俗物的だ
権力欲の化身だ、きつい人だと
ぶつぶつ言い、舌打ちしながら
ソビエシュの後を追っていきました。
ためらいながらも、
ラスタが彼の寝室に入ると、
ソビエシュは、一人にしてほしいと
ラスタに告げました。
するとラスタはすすり泣きながら
ハインリの文通相手は、
自分ではなく廃妃だったと
話しました。
ソビエシュは、
自分自身で手紙を読んでいるし
ラスタが嘘をついていたことも
知っていたので
突然、彼女が、
その話をしたことが不思議でした。
ラスタは悲しそうな天使のように
廃妃は昔から
ハインリ王子と浮気していた。
廃妃を守りたくて
ハインリ王子の文通相手の
ふりをしたけれども
こんなことになるなら、
陛下に前もって
話しておけばよかった
判断を間違えたと涙を流しながら
本当に悲しんでいるようなラスタを見て
ソビエシュは妙な顔をしました。
◇正門の前に・・・◇
ナビエはトロビー公爵家にいます。
巷では、皇后が離婚した後
すぐに再婚したというニュースで
もちきりでした。
再婚に賛成するものがいたり、
反対するものがいたり
気持ち的には再婚に共感しながらも
皇后がいなくなると
国が困るという人がいたりと
様々でした。
その話をパルアン侯爵から
聞かされたナビエは
苦笑いしました。
そのような話が出てくることを
ナビエは覚悟していました。
国民にとってナビエは皇后であり
国の一部なので
それが強制的に切り離され
他国へ行ってしまうのは
気に入らないだろうし
戸惑いもあるだろうと
ナビエは思いました。
パルアン侯爵は
自分がナビエの再婚に
多大に貢献したことを
忘れないで欲しいと言いました。
ナビエは、
トロビー家の財産管理人を呼んで
ナビエの資産目録を
まとめてもらいました。
ナビエは、
自分のものが捨てられるのは嫌だし
ラスタに使われるものも
嫌だったので
皇后宮で使っていたものは、
すべて西王国へ
持っていくつもりでいました。
一方、ハインリはナビエの両親が
西王国へ移住することを
提案しましたが
彼らは断りました。
ナビエの両親が、
いつまで東大帝国に
いるのか尋ねたので、
ナビエは、すぐにでも
西王国へ出発できると答えましたが
ハインリは、
半月くらい滞在するつもりだと
言いました。
そんな中、
パルアン侯爵が帰ろうとして
外へ出ようとすると
近衛兵が正門の前を
壁のように
取り囲んでいるのが見えました。
ナビエの離婚を我が事のように
悲しみ
彼女の再婚がわかると
手放しで喜び
彼女に付いていくという侍女たち。
ナビエが侍女たちに恵まれているのは
ひとえにナビエの人柄に
よるものだと思います。
一方のラスタは
ナビエを貶め
自分をよく見せようとして
平気で嘘をつく。
そろそろ、ソビエシュも
ラスタの本性が
わかりかけてきたのではと
思います。