142話 ラスタの元へ使いを送ったリバティ公爵、ナビエが心配です。
◇酔っ払いハインリ◇
クイーンの身体は
だらんとしていて
嘴は少し開いたままで
頭は垂れ下がっていました。
慌てたナビエは、
宮医を呼ぶか
動物の専門医を呼ぶか悩んだ末
同じ鳥一族のマッケナを
呼びました。
マッケナはクイーンを
一目見るなり
酔っ払い殿下
と言いました。
ハインリは酔っぱらうと
鳥の姿に変わる。
放って置けば
勝手に起き上がる。
と言って、
ナビエを安心させました。
ということは、ハインリは、人前では、あまりお酒を飲まないのでしょうか。
ナビエは、ハインリを
共用寝室へ連れて行って
ベッドに寝かせ
クイーンの身体を
軽くなでました。
お酒に酔って寝ている
クイーンの姿を見て
ナビエは、笑いだしました。
大変だ。
ハインリに
はまってしまっている。
よく見れば
酔っぱらっているのが
わかるはずなのに
マッケナまで呼んでしまった。
どうしよう、ハインリ
あなたは隠すことが多い。
あなたを愛すれば
手に負えないのは確かだけれど。
これは、すべて
あなたが意地悪したせいよ
ハインリ。
と言って、
クイーンが深く眠っているのを
確認してから
お尻を一発叩き
その後、額にキスをしました。
◇ハインリにはまりたくない
マッケナの言う通り
ハインリは、
3時間後に目を覚ましました。
自分が何かミスをしたのか
と言っていた姿は
可愛くて愛おしかったのですが
その日を境に
ナビエは仕事に没頭しました。
これ以上、
ハインリにはまらないように
彼を好きになっても
愛さないように
彼を愛しても
痛くならない程度に
このラインを保ちたいと思いました。
幸い、ルイフトとの交易の話が
進んでいたので
ナビエは忙しく
数日間3時間しか
寝られないほどでした。
ナビエは執務室で居眠りをして
目が覚めると
ハインリの肩の上に頭を
もたせかけていました。
ハインリは
ひどい。
私の酔っぱらった姿が
そんなに醜かったのか。
あの日以来
クイーンは自分を避けている。
会うのは夜だけ。
昼に尋ねても忙しいと言う。
私が酔っ払って
鳥になった姿が嫌だったのか。
と訴えました。
ナビエは
自分を追い詰めたかっただけで
ハインリを傷つけるつもりは
ありませんでした。
けれども、
ふくれっ面をしているハインリを
見ていると
自分が間違っているような
気がしました。
しかし、ハインリのことを
愛しているようだけれど
適当に愛したいとは
言えませんでした。
ナビエは衝動にかられて
ハインリの下唇にキスをし
彼の柔らかい金髪を撫でて
彼の額に自分の額を当てて
あなたは本当に美しい
ハインリ
と囁きながら
彼の耳元と目尻に
軽くキスをしました。
ハインリのシャツの中に手を入れて
彼の耳たぶを噛むと
ハインリはうめき声を上げました。
その声を聞き
ナビエの感情が爆発しました。
ハインリのことが愛おしくて
たまらなくなりました。
ハインリのズボンに
手を下ろしました。
ハインリ、足を広げて
とナビエは言いましたが
ハインリは途中で
やめてしまいました。
恨みがましい目で
ナビエを見つめていた
ハインリは葛藤した様子で
クイーン、あなたは
私の身体にしか
関心がありませんか?
と尋ねました。
◇邪魔者は始末する◇
数時間後のティーパーティを控え
ラスタは、前髪で傷跡を隠し
お腹に負担のかからないドレスを
着ました。
最近になって、身体が重くなり
頻繁にお腹が張るようになったので
身体がつらくなりました。
そろそろ、生まれるかな?
と思いながら、ラスタは
赤ちゃんの性別のことが
気になりました。
前は、女の子が生まれても
次が男のであれば良いと
思っていましたが
ソビエシュとの仲が
うまくいかなくなった今
生まれる赤ちゃんは、無条件で
男の子である必要がありました。
その時、下女が
紳士から頼まれたと言って
ラスタに手紙を渡しました。
手紙を読み終えると、
ラスタの口元に笑みが浮かびました。
ラスタは、ペンを取り
返事を書きました。
ナビエ様が不妊かどうかは
私もはっきりわかりません。
ただし、長い間
ソビエシュ陛下との間に
赤ちゃんができなかったのですから、
不妊だと推測されます。
皇帝陛下がナビエ様と離婚した理由が
不妊問題であることは
間違いありません。
しかし不妊かもと言う
不確実な推測だけで
ナビエ様を切り捨てるのは
可哀想です。
ナビエ様は良い皇后ですので
窮地に追い込まないで欲しいです。
ラスタは下女に返事を渡すと
鼻歌を歌うほど
気分が良くなっていましたが
ティーパーティーで
貴族に
生まれた赤ちゃんが
健康で育ってくれれば
良いのですが・・・
残念そうに言われて、
気分が悪くなりました。
なぜ、そのような言い方をするのか
ラスタは不思議に思っていると
他の貴族が
トロビー家は代々皇室の
忠実な家臣だったけれども
次の皇帝では
忠誠心を欠くかもしれない。
と言いました。
ラスタはその通りだと思いました。
赤ちゃんが成長して皇太子になり
皇帝になった時
トロビー家は不満を言って
邪魔をするかもしれない、
また、コシャールの友人の
パルアン侯爵も、
友人が追い出されたことで
自分を恨んでいるから
赤ちゃんにとって、
役に立たない人間だと思いました。
赤ちゃんの邪魔をする者は
始末しなければ。
ラスタは宮殿で生き残るために
いくつかの悪事を働きましたが
それが1つ、2つ増えても
どうってことないと思いました。
悪いことをすることに罪悪感を覚えなくなってしまったようですね。
◇暗殺計画◇
ラスタは、
ティーパーティーが終わると
ロテシュ子爵の雇った傭兵を
呼び出しました。
ラスタは傭兵の前に
大きな宝石のネックレスを投げ出し
トロビー公爵夫妻を殺すように
命じました。
傭兵は、トロビー公爵夫妻を殺すには
2人を取り囲んでいる護衛を
すり抜けなければならない。
とても危険なので
基本費用だけで1万クラン必要だと
言いました。
ラスタは高すぎると思いました。
しかし、傭兵は
トロビー公爵夫妻を殺した後に
その場を抜け出すのも大変。
その上、トロビー公爵家と
西大帝国のトロビー公爵夫妻の娘も
自分を殺そうと、人を送ってくる。
そのような危険なことをするのに
1万クランでも少ない。
と言いました。
傭兵を追い出した後
ラスタは悩みました。
必要なお金はラント男爵に言えば
もらえるけれど
1万クランともなると
用途を聞かれるかもしれない。
ラント男爵に聞かれなくても
ソビエシュが聞いてくるかもしれない。
結局、ラスタはエルギ公爵に
お金を借りることにしました。
エルギ公爵は
きっと返してくれますよね?
と言いながら、
ラスタに借用書を渡しました。
書類にサインをしながら
ラスタは、エルギ公爵の
顔色をうかがいました。
不思議がるエルギ公爵に
ラスタは
エルギ公爵は本当に美しい。
もしも、悪魔がいるなら、
悪魔は、人々を魅了するために
とても美しいと聞いたことがある
と言いました。
エルギ公爵は
人間の皮を被った
悪魔だと思います。
いつ、悪魔の本性を現すのか
楽しみです。
ナビエはソビエシュのことで
傷ついているので
ハインリにはまることを
恐れていますが
その心を、ハインリが
癒してくれるといいなと
思います。
お金の単位と金額は
合っているかわかりませんので
マンガが公開されたら
修正しますね。