220話 果たして、ハインリの相談事とは?
◇魔石の回収◇
ハインリの相談事は
魔力減少現象についてでした。
ハインリが魔力減少現象を
主導していたことを認めた後も
彼は、この問題について
言及しなかったので
ナビエは緊張しました。
ハインリは
魔力減少現象は
自分が作ったわけではない。
自分は、その速度を高めただけ。
魔力減少現象を起こすには
魔石が必要。
それなので、戦争を諦めた時に
鳥一族と地下騎士団に
助けてもらい
回収しやすい所にあった魔石は
すべて回収した。
けれども、数年かけて
隠しておいた魔石を
数日で回収はできない。
魔石のネックレス事件が
起こった後
ソビエシュは、魔石が
魔力減少現象に関連があると推測し
自国と魔法学園の魔法使いに
魔石の使用を一時禁止させた。
一度疑えば、ソビエシュも
アカデミーの学者たちも
魔石を調べ続ける。
だから、バレる前に
回収できていない魔石を
回収しようと思う。
それなので、数日間は
留守にするかもしれないと
言いました。
ハインリは
ナビエのそばにいられないことを
謝りました。
ハインリは自分のために
戦争を諦めなければ
魔石を
回収しなくて済んだと思うと
むしろナビエが
申し訳ない気持ちになりました。
ハインリは、
あまり不安がらないように
ソビエシュがいる間は
留守をしないと
ナビエに話しました。
◇ナビエの怒り◇
ナビエは執務室へ戻ると
ハインリが留守の時は
彼の業務を自分と宰相とで
分けて処理することを
思い出しました。
ナビエは、
皇帝の業務をやったことがないので
どのように処理をするか
検討がつきませんでした。
ハインリの業務を
引き受けることになったら
どうしようと悩んでいると
副官がやって来て
ソビエシュからの贈り物と言って
金色のきれいな箱を手渡しました。
ナビエは包装紙を破ると
茶色の木箱が現れ
その中には、大きな桃が3個
入っていました。
そして、添えられた手紙には
ナビエを思い出して買ったと
書かれていました。
ナビエは、開いた口が
塞がりませんでした。
ナビエは、
夜中にソビエシュに
きついことを
言ってしまったことを
気にしていましたし
ソビエシュも
後悔していたようでした。
それなのに
桃を送ってくるなんて
ふざけていると思いました。
ナビエは、怒って
身近にある紙を破いて
殴り書きをしました。
ソビエシュの所へ
副官が桃の入った箱を
返しに来ました。
ソビエシュは、子供の頃から
ナビエと口論してきましたが
それが大喧嘩に発展したことは
一度もありませんでした。
それなので、ナビエに
ひどく憎まれるようになった
ソビエシュは
謝罪の仕方がわかりませんでした。
ソビエシュは
手を付けていない桃の横に
しわくちゃの紙を見つけました。
そこには、
よくわかると言っておきながら
何時間か経てば
もう、こんなことをするのですか?
少しでも、申し訳ないと思うなら
帰ってください。
本当に厚かましいと
書かれていました。
19歳のソビエシュは
夜中にもう一人のソビエシュが
ナビエと会っていたことを
知りませんでした。
ソビエシュは、目覚めた時に
もう一人の自分が
メッセージを残していることに
気付きましたが
彼はそのメッセージを
もう一度読んだ後、
クシャクシャにしました。
何をどうしたら、
ナビエがこんなに冷たくなるのか、
そもそも、勝手に
ナビエと離婚したのは誰なのか。
ソビエシュは、もう一人の自分を
気に入らないと思いました。
◇エルギ公爵◇
エルギ公爵は1人で甲板に
座っていると
オウムが鳴きながらやって来て
エルギ公爵の足元に止まり
直接、足で握ってきた手紙を
エルギ公爵に差し出しました。
手紙には、ハインリの筆跡で
ブルーボヘアンで
魔石の回収は可能かと
書かれていました。
ブルーボヘアンへ行けば
東大帝国での出来事を聞いた人々が
小言を言ったり、忠告したりする。
その中には、彼女もいる。
いつものように静かな声で
人を傷つけてはいけないと言う。
父親は隣で
コーヒーを飲んでいるが
耐えきれずに出て行ってしまう。
そしてその後は・・・
◇ドルシーの絵◇
ソビエシュが桃を贈ってきたことに
ナビエは腹を立てていました。
彼は、記憶を失った時に
プライドまで失ったのかと
思いました。
ナビエは、ソビエシュへの怒りと
ハインリへの罪悪感
彼が不在の時の業務と
魔力減少の原因が
バレる可能性を考えて
頭が混乱していました。
それに加えて、魔法の訓練も
進んでいませんでした。
その時、カフメン大公が
訪ねてきました。
カフメン大公に会ったのは
カフェでドルシーを
紹介してもらって以来なので
まず、ナビエは、
カフメン大公をカフェに
置き去りにしたことを謝りました。
カフメン大公は
自分がいない時に
ドルシーと何の話をしたか
ナビエに尋ねました。
カフメン大公は、
人の心が読めるので
ナビエが話さなくても
わかるのではないかと
尋ねましたが、彼は、
ドルシーの心の中は読めない
理由はわからないと
答えた後で
1枚の紙をナビエに差し出しました。
その紙には、3歳の子が
スケッチブックに描くような
下手な絵が描かれていました。
ドルシーが描いた絵でした。
彼は、変な名前の女性に
この絵を渡して欲しいと
言ったとのことでした。
なぜ、ドルシーがこの絵を
ナビエに渡したのか
カフメン大公に尋ねると
彼は
理由はわからないけれども
この通りにやってくれれば
助けてやると
ドルシーが言っていたと答えました。
この通りにしたら
魔法を覚えるのを
手伝ってくれる意味かと
ナビエが尋ねると
カフメン大公は
そうだと思うと答えました。
とはいうものの
線がずらっと上下に引かれていて
その間の空間は広くなっている。
途中、過度にキラキラ輝く効果が
入っている絵。
ナビエは
ドルシーの絵が何を意味しているのか
全然わかりませんでした。
ナビエはカフメン大公と
別れた後
侍女たちにも意見を求めました。
しかし、彼女たちも
絵の持つ意味がわかりませんでした。
自分は、
こんなに絵が下手ではないけれども
絵を通して、ハインリに
自分の気持ちを伝えようとしと時に
彼も
途方に暮れたかもしれないと思うと
ナビエはハインリに
すまない気持ちになりました。
ふとナビエは、
自分が絵を描いた理由を
思い出しました。
彼女は普段とは違う癒しを
ハインリに与えたくて
絵を描きました。
絵が下手なのに
あえてドルシーが絵を送ってきたのは
絵を描くことに
意味があったのではないかと
思いました。
そこへランドレ子爵が
やって来ました。
侍女たちは、彼にも
絵のことを尋ねると
彼は、絵を見つめた後で
壁ではないかと言いました。
侍女たちも、それに同意して
絵について話をしていると
ランドレ子爵は
ルベティが見つかったことを
ナビエに報告しました。
昼のソビエシュも
夜のソビエシュも
同じ人物なのに
互いに、相手のやっていることが
気に入らなくて
疎ましく思っている。
傍から見れば
喜劇のようでもありますが
当の本人たちにとっては悲劇です。
けれども
19歳と本来のソビエシュが
どんなに頑張っても
ナビエ様の心は戻らないことを
気付いて欲しいと思います。