230話 ナビエにしか聞こえない小さな声で、聖者が言ったこととは?
◇聖者の言葉◇
子供が2人以上できたら
仲の良い兄弟姉妹にしなさい。
という聖者の言葉にナビエは、
社交辞令で言っただけ、
子供が大勢いる家なら
当たり前に考えることなので
大したことがないと
思いながらも
他の誰にも聞こえないような声で
ナビエに囁いたことが
気になっていました。
それなので、
ナビエが聖者に会いに行ったことを
知っている侍女たちに
ナビエは何を言われたか
尋ねられても
彼女は、ただ笑うだけでした。
その代わり、ランドレ子爵が
ハインリがナビエと出会ったことに
西大帝国の人々は感謝すべきだと
聖者が話していたと伝えました。
聖者がランドレ子爵について
残した言葉を伝えないまま
ナビエは、ランドレ子爵に
感謝の言葉を述べました。
◇進まない魔石の回収◇
2日後、ハインリが帰ってくると
ナビエは、聖者の言葉を
すべて話しました。
ハインリは
マッケナが舌打ちされたことには
クスクス笑い
ランドレ子爵については
真剣に話を聞き
子供同士仲良くしろという話は
少しおかしいと思ったようでした。
ハインリは、
魔石を回収しに行ったところで
再び第4騎士団に会ったこと、
そして、
今回は、彼らと戦うことなく
他の事件を起こして
彼らの目を逸らし
魔石を回収したけれども
同じ手は、ずっと使えないと
ナビエに話しました。
ナビエは、第4騎士団の目を避けて
魔石を回収する方法はないかと
考えていました。
幻想魔法を使えるカトロン公爵に
助けてもらうのはどうかと
考えましたが
彼は、ハインリが
魔力減少現象を起こしたことを
知らないし
こちら側に付いたとはいっても
ハインリは、彼に対して
まだ警戒を
緩めてはいませんでした。
◇青い鳥の行方◇
ナビエは悩んでいると
ドルシーとカフメン大公が
やって来ました。
ドルシーは、ナビエに
周りの人を遠ざけるように
目で指示しました。
彼女は、侍女たちとランドレ子爵に
少し離れるように頼みました。
周りに誰もいなくなると
ドルシーは、
自分が見た青い鳥は
ここで飼っているのか、
青い鳥を追いかけていったのに
急にいなくなった。
宮殿で青い鳥を飼っているのかと
尋ねました。
今度はナビエが、
鳥は飼っているけれど
どうして?と尋ねました。
するとドルシーは可愛かったからと
答えました。
ナビエは、薬が効いていたから
可愛いと思ったのではないか、
薬が切れたら
鳥を探さなくても良いのではと
尋ねました。
しかしドルシーは、
良い感じだったので
1羽飼ってみても良いと思うと
答えました。
そこへマッケナがやって来て
ドルシーを見つけると
固まりました。
けれども、薬効の切れたドルシーは
マッケナに見向きもしませんでした。
ナビエは宮殿で飼っている青い鳥を
1羽プレゼントすると言うと
ドルシーは期待していると言って
帰りました。
カフメン大公とドルシーが遠ざかると
マッケナは肩の力が
抜けたようでした。
ふとナビエは、
青い鳥になったマッケナが
ドルシーに
魔石の回収をお願いするのは
どうだろうかと考えました。
すると
ナビエが自分を
計算高い目で見ていると
マッケナに指摘されたので
彼女は、その考えを
否定しました。
◇父親の怒り◇
母親が眠るまで
5時間ほど語り続けたエルギ公爵は
別館を離れ、
本館に戻ってきました。
彼は自分の部屋へ行き
扉を開くと
父親がそこに立っていました。
父親は、エルギ公爵に
何をしでかしたのか。
エルギの話を聞く度に自分が
恥ずかしい思いをしていることが
わからないのかと非難しました。
エルギ公爵はわかっていると答えたので
父親は憤慨しました。
そして、
エルギ公爵がブルーボヘアンの
王に呼ばれていること
東大帝国が使節を寄こしたことで
王がひどく怒っていること、
東大帝国の皇室は
エルギ公爵がふざけ半分で
騒がせた所とは次元が違うことを
伝えました。
エルギ公爵は、答えず
部屋を出ていこうとしました。
ドアが閉まる直前、父親は
いつまでアレイシアを許さないのか。
エルギを助けようとして
命をかけた人だ。
他の人はともかく、エルギは、
そんなことをしてはいけないと
責めましたが、
エルギ公爵は、返事をしませんでした。
◇ラブレター◇
執務室で、マッケナは
魂の抜けた様子で
自分はもう少し美しくない方が
良かったのだろうかと
考えていました。
そして、自分の羽の色が
少しだけ薄い色の方が
良かったのかと呟くのを
聞いたハインリは、
マッケナの頭が
おかしくなったのかと
思いました。
一方、ハインリは、
魔石を回収するために
しばらく留守をするので
ナビエにラブレターを書いて
彼女をびっくりさせようと
思いました。
ハインリは手紙をポケットに入れて
ナビエを訪ね、
彼女を抱きしめながら
彼女のマントのポケットに
手紙を入れました。
突然ハインリに抱きしめられたので
ナビエはその理由を尋ねましたが
彼は、ナビエに
会いたかっただけと言って
何度もナビエの頬にキスをして
部屋を出て行きました。
ナビエは、お腹の赤ちゃんに
父上と母上がキスをする時は
目をつぶってねと話しかけました。
◇もう一通の手紙◇
翌日、ナビエの父親が
東大帝国へ帰る予定だったので
その日は、家族で夕食を
取ることになっていました。
ナビエは、着替えるために
一度脱いだマントを
再び羽織ると
マスタスが真っ赤な顔をして
ナビエに近づき
コシャールに手紙を渡して欲しいと
頼みました。
ナビエはポケットに
その手紙を入れましたが
内容が気になって
仕方ありませんでした。
マスタスは
コシャールのことが
好きなのだろうか。
シャーレット姫は
公式にコシャールに
プロポーズをしたし
彼も、シャーレット姫との結婚を
真剣に考えているけれど
マスタスが
コシャールを好きになったら
3人のうち誰かが
傷つくのではないだろうか。
そんなことを考えながら
歩いているうちに
食堂に着きました。
その前に、コシャールが立っていて
ナビエに腕を差し出しました。
その腕をつかもうとしたナビエは
先にマスタスからの
手紙を渡した方が良いと思い
兄に手紙を渡しました。
コシャールは
先に手紙を読みたがったので
ナビエは一人で食堂に入りました。
コシャールは
いったい手紙に
何が書いてあるのか
牛乳に蜂蜜を入れる
レシピではないよねと
考えながら、手紙を開くと
覚えていますか?
あなたが私のお尻を
パンパン叩いた時、
私はあなたに
夢中になりました。
と書かれていました。
コシャールはびっくりして
手紙を落としました。
ドルシーは、ナビエ様が
宝石のダムを
造ろうとしていたことを
見抜いたので
カフメン大公のように
人の心が読めたり
人の本当の姿が
見えたりするのかと
思いましたが
恋の妙薬の効き目が切れたら
マッケナが青い鳥だと
わからなかったので
人の本当の姿が見えるという
わけではなさそうです。
不思議な存在のドルシーです。