262話 マスタスはコシャールの元へ行くことになりました。
◇マスタスの旅立ち◇
マスタ少しは出発前に
ナビエに別れの挨拶をし
侍女たちと話をしました。
ローラとローズは泣いていました。
そして時間が来ると
彼女は白い馬にまたがり
出発しました。
ナビエは
騎士の姿で白馬にまたがる
マスタスを始めたみましたが
今まで見た中で
一番リラックスしているように
見えました。
そして、コシャールと
2人で帰ってくる時は
余計な心の重荷を
下ろしてきて欲しいと願いました。
◇アンとラスタ◇
部下を率いて戦場に向かった
マスタスを
ルベティはすごいと思いました。
そして、マスタスも含め
ナビエ、アルティナ卿、
ジュベール伯爵夫人、ローラは
自分の道を進んでいるのに
自分は何をやっているのだろう、
自分だけ立ち止まっているように
ルベティは感じました。
短い期間、ルベティは
良い領主となるために
トロビー公爵から色々学んでいましたが
エルギ公爵が敵と分かってからは
復讐も勉強も進んでいませんでした。
ルベティはアンの部屋に入ると
子供は笑いながら
彼女の所へ走って来ましたが
近づくと
アンは何も言わずに
嬉しがっていいのか
わからない様子で
ただ、ルベティに抱かれるだけでした。
最近、ルベティは
何の心配もなく
明るく育つカイとラリを見て
アンを憎んでいたことを
時々、後悔していました。
そして、アンも天使のようなのに
なぜ、生まれた時からラリとカイは
高貴な皇族で、アンは奴隷なのか、
ラスタの顔さえ知らないのに
彼女の罪を
背負わなくてはいけないのかと
思いました。
ルベティは、ラスタが
両親のせいで奴隷になったと
言っていたのを思い出しました。
子供の頃、おやつを食べながら
ナビエの肖像画を拭いていた時に
ルベティを見ていた
ラスタの目を思い出しました。
あの時は、ラスタが
礼儀に欠けていると思いましたが
あの時の彼女の視線と
アンの怯えた目が重なりました。
ルベティは、ラスタは
礼儀に欠けていたのではなく
ただ、お腹が
空いていただけなのではないかと
思いました。
ルベティは成長したと思います。
その時、ルベティに荷物が届きました。
箱を開けると
中には、エルギ公爵を
押そうとした時に
脱いだ靴が入っていました。
◇別れ◇
ルベティが予定よりも早く
東大帝国へ帰るというので
ナビエとローラは驚きました。
ルベティは、
エルギ公爵が自分の仇であることを
知った。
彼に復讐したいけれど
復讐のために自分をダメにしたくない。
だから、良い領主になって
幸せになった時に
まだ復讐する力が残っていたら
復讐する。
西大帝国にいると、
ハインリはエルギ公爵の友達だから
憎しみから解放されるのが大変だ
と帰る理由を述べました。
兄、マスタス、ルベティが
去ってしまい
ナビエは寂しさを感じていました。
そして、ゆりかごの中の
赤ちゃんたちの頬を撫でながら
ラリ、カイ、
大切な私の赤ちゃんたち。
あなたたちも、いつかは
私の元を去ってしまうのね。
と子供たちに話しかけました。
すぐにどこかへ行ってしまう息子と
早くから宮殿に行ってしまった娘を
抱えながらも、
少しも寂しいそぶりを見せなかった
両親をナビエはすごいと思いました。
その時、窓の外からクイーンの声が
聞こえてきました。
クイーンは部屋の中に入ると
人間の姿に戻り
ナビエを後ろから抱きしめました。
ハインリは、
寂しがらないで。
子供たちが大きくなって
離れていっても
私は永遠にクイーンのそばにいるから。
と言いました。
ハインリに
独り言を聞かれてしまったナビエは
彼を睨みましたが
ハインリは、笑いながら
ナビエの額と瞼にキスをしました。
ナビエは、
ハインリの唇の感触を味わいながら
目を閉じました。
◇幸せ◇
ナビエは疲れて、力なく倒れていると
ハインリはナビエの髪に
触りながら、突然
子供の頃、兄がもどかしかった。
と話し始めました。
ナビエは、ハインリの膝枕の上で
目を閉じて
彼の話を聞きました。
剣術や魔法など
自分には簡単なのに
それができない兄がもどかしかった。
と語るハインリに
ナビエは、自慢を
しているのかと言うと
ハインリは低い声で笑いながら
でも兄が好きだった。
だから、兄を助ける決心をした。
けれども、失敗して
兄は魔力の大部分を失ってしまった。
最初に魔力消失したのが兄だった。
と語りました。
そして
両親も兄も
そのことで自分を
責めなかったので
それが苦痛だった。
そのことは内密に葬られたけれど
罪悪感に苛まれて
あちこち出かけるようになり
そこでエルギと出会った。
あの時、自分みたいなのが
1人ではないことがわかった。
と語りました。
そして、ハインリは
ナビエを懐に抱いて
あなたのおかげで幸せになった。
全身に満ち溢れる幸せが分かった。
あなたを見つけたのが私で
あなたが歩いていく道を
一緒に歩けて幸せです。
と言いました。
彼の瞳から涙が一滴流れたので
ナビエは心が痛み
キスをしようとすると
小鳥たちの鳴く声に邪魔されました。
急いで服を着て寝室から出ると
ラリとカイが巣の中で
喧嘩をしていたので
ハインリがラリを
ナビエがカイを抱きしめました。
そして、2人を夫婦の寝室へ連れて行き
それぞれの膝の上に座らせると
2人は寝てしまいました。
ハインリがまだ
泣いているのではないかと思い
ナビエは彼の顔を見ると
子守歌を歌っていた彼は
ナビエの視線を感じ
彼女に微笑みかけました。
ハインリが先ほど言ったように
ナビエ自身も
ハインリがいるから
全身いっぱいの幸せを
感じていることを
いつ彼は認めてくれるのかなと
ナビエは思いました。
兄のためを思ってやったこととはいえ
兄の魔力を奪ってしまったことに
ハインリは
ずっと苦しんできたのですね。
それ以来、
ハインリは幸せを感じられずに
過ごしてきたのでしょうけれど
ナビエと出会い
2人で楽しいことや苦しいことを
色々経験する中で
2人の愛が育っていき
ハインリがナビエに自分の過ちを
話しても大丈夫と思えるくらい、
2人の絆が強く結ばれたことに
感動しました。
最後にナビエは、
自分もハインリといるから
全身に満ち溢れる幸せを
感じていることを
彼がいつ認めてくれるのかと
言っていますが
ハインリはわかっているのではないかと
思います。
だからこそ、
その幸せを失いたくなくて
嫉妬の怪物になってしまうのではと
思います。
ソビエシュとラスタに
苦しめられたナビエが
ハインリのおかげで
新しい人生を歩むことができ
彼の愛のおかげで
皇后ではなく
1人の可愛い女性として
ハインリと
向き合えるようになり
彼を愛するようになったことにも
感動しました。
今回で、
再婚承認を要求しますの本編は
終わりですが
まだ外伝がありますので
そちらも続けて
紹介させていただきますね。