◇離婚法廷に臨むナビエ◇
ソビエシュが
ラスタを連れてきてから
ナビエとソビエシュは
よそよそしくなったものの
それまでは、
喧嘩をしたこともない2人が
離婚法廷に臨むシーンから
お話は始まります。
ナビエが、
離婚を受け入れると言った時に
薄ら笑いを浮かべたラスタに対して、
安堵と心苦しさが混ざった顔の
ソビエシュ。
大神官は離婚に反対し、
裁判を望んでいました。
皇帝との裁判で
勝つ見込みは0だけれど、
裁判が行われる数年間
人々がソビエシュとラスタを
非難することを
大神官とナビエの家族、
友人たちは望んでいました。
けれども、そうすることで
ソビエシュの名声と
自分の名にも傷が残ると
考えたナビエは、
自分に道徳的問題はないけれど
自分の望むものを手に入れるために、
離婚を受け入れることにしました。
そして、ナビエは
「離婚を受け入れる」の言葉に続き
「再婚承認を要求します。」
と言うと、離婚法廷の場に
静寂が訪れました。
そして、再婚相手は誰なのかと
大神官が戸惑いながら尋ねると
西王国のハインリ王が登場し、
ナビエは自分の再婚相手だと
紹介しました。
◇譲位◇
ナビエの生家のトロビー家は
何人もの皇后を輩出した家門。
結婚は政略的にするもの。
恋愛は側室とするというのが
一般的。
先帝のオシス三世は
早くから、ナビエの家門から
皇太子の政略結婚の相手を探し、
ナビエが選ばれた後、
彼女は幼い頃から、
皇后教育を受けました。
ソビエシュとナビエは
とても仲が良く、
成人すると、
ソビエシュの父親は
皇帝の座を譲位しましたが、
戴冠式が終わった後も、
2人の仲が良い状態は
3年間続きました。
◇ラスタがやって来た時◇
ナビエは新年祭の準備で
忙しくしていた時、
侍女たちから、
狩りから戻って来たソビエシュが
汚らわしい女を
連れて来たという話を聞きました。
入浴をする時は人の手を借り、
ナビエの入浴を手伝う時だけ、
自分の手を濡らす
高位貴族であるナビエの侍女たちは
ソビエシュに、
その女の入浴を手伝わされて
気分を害していました。
そして、侍女たちから、
彼女は囚人なのか奴隷なのか
分からないけれど、
罠にかかって倒れているところを
ソビエシュが助けた。
そして、貴婦人の中で
最も美しいと言われている
トゥアニア公爵夫人(40歳)の
次くらいにきれいであること。
入浴後に、
その女性を見たソビエシュが
感嘆し、
彼女のことを、
とても心配したと聞きました。
それくらい普通なのではと
話したナビエに、
ナビエは成人になったばかりだし
恋愛をしたことがないので
ソビエシュの様子が
いつもと違うことが
わからないかもしれないけれど
あの雰囲気は、
絶対に何かあると
侍女たちに言われました。
ローラは礼儀の勉強を兼ねて
侍女をしているので
ナビエと同じ年頃ですが、
他の侍女たちはナビエより年上。
皇帝が拾ってきた美しい獲物に
興味を持ったとしても
自分はどうしていいかわからないと
困っていたナビエに
イライザ伯爵夫人が
ケガをした女性を拾ったという話を
聞いたと、ソビエシュに話せばいいと
アドバイスをしました。
◇皇帝と皇后の住まい◇
皇帝と皇后の寝室は
東の端と西の端に分かれているので
皇帝と皇后が
互いに干渉し合うことなく
愛人を連れ込むのに、
ちょうどよい構造になっていました。
ソビエシュとナビエは、
大抵の場合、食事も寝るのも
別々でしたが、
一週間に2度だけ
夕食を一緒に取っていました。
翌日がその日になっていたので
ナビエは、その時に
その女性のことを
聞くことにしました。
なぜなら、ナビエは母親から
皇帝が側室を置いても、
むやみに干渉しないこと。
その時は、ナビエ自身も
ソビエシュより若くてハンサムで
健康な愛人を連れて来るように
言われていたからでした。
だから、ナビエは
すぐに、ソビエシュに
そのことを
聞かないことにしました。
ナビエは、ソビエシュが
その獲物を側室にすると言っても
知らないふりをする
つもりでいましたが、
彼を愛しているわけではないのに
ソビエシュが
他の女性を側室にするかもと
思った瞬間、
心臓に穴が開くような感じがしました。
翌日になると、
その女の噂は急速に広まり、
狩場はロテシュ子爵の領地と
つながっていたので
そこから来た
逃亡奴隷なのではないかと
人々は噂していました。
逃亡奴隷であれば
返すべきだと言われたのに
ソビエシュは可哀そうだと言って
その女性の世話をする
下女までつけるつもりだと
侍女から聞きました。
夕食の時間になると、
侍女たちは、
ソビエシュの目を
覚まさせるためにと言って、
いつも以上に身支度に
気を遣ってくれましたが
ナビエは、着飾ったくらいでは
どうにもならないと思いました。
そして、夕食時、
ナビエは、ソビエシュが先に
奴隷の女のことを話してくれると
思っていましたが、
いつも通り平然としているので
ナビエの方から、
狩場で奴隷を拾ったという話は
本当なのかと尋ねました。
しかし、ソビエシュは
不快感を示し、冷たい声で、
その話はするなと警告しました。
人は誰かに好感をもったり、
この人と知り合いになりたいと
思う時、互いに
何らかの共通点を
持っているのだそうです。
幼い頃から、
婚約者同士たった
ソビエシュとナビエ様は、
育った環境も似ているし、
将来、国を背負うために
一緒に帝王教育を受けて来た。
後に、ソビエシュとナビエ様が
一緒に馬に乗ったという
話が出て来るので、
2人は共通の趣味も持っていたと
思います。
そのように似ている2人の間には
激しい恋愛感情はなかったものの、
穏やかで静かな愛が
育まれていたのではないかと
思います。
けれども、
人は時に冒険したくなるもの。
ソビエシュはナビエ様との
長く続いている、
穏やかで安定感のある関係に
心のどこかで
退屈していたのかもしれません。
そんな時、彼は
ラスタと出会ってしまいました。
恋愛が始まる時は、
一瞬、脳が
混乱状態に陥っているのだそうです。
ラスタが罠にかかっているのを
見つけたソビエシュは、
まさに、
この状態だったのではないかと
思います。
ナビエ様の侍女たちが
汚らわしいと言っていることから、
ラスタは、かなり身なりが
汚かったのだと思いますが、
その彼女が、ソビエシュの仕掛けた
狩猟用の罠にかかって泣いていた。
彼にとっては、
青天の霹靂だったと思います。
自分のせいで、ラスタに
ケガをさせてしまったことへの
罪悪感。
ラスタに対する申し訳ない気持ち。
今まで見たことのない
哀れな様子のラスタ。
人目もはばからず、
子供の用にエンエンと泣く姿。
しかも、汚い恰好をしていても
美しい顔をしているラスタ。
自分の知っている女性たちとは
全く違うラスタを見て、
彼女への同情と哀れみと
彼女を助けたいという騎士の精神。
そして、初めて自分が捕まえた
美しい獲物。
ソビエシュの脳内は
混乱に満ちた結果、
ナビエ様との穏やかな愛を
忘れてしまうほど、
一瞬で、ラスタに
恋してしまったのだと思います。
けれども、それは
人間として愛するというよりも
美しい獲物に惚れ込んだという
感じではないかと思います。
ラスタが逃亡奴隷だと分かっても
領主の元へ戻さず、
ラスタが奴隷から解放されるように
何かしら手立てを講じなかったのは、
ラスタは彼の獲物だから、
手放せなかったのだと思います。
心のどこかで、皇帝である自分が
奴隷を連れてきてしまったことに
後ろめたさを感じていても、
初めて手に入れた
美しい人間の獲物を前にして、
ソビエシュの理性は、
吹っ飛んでしまったのだと
思います、
でも、ナビエ様に
ラスタのことを聞くなと言ったので、
ナビエ様に対して、
後ろめたさはあったようです。
それを、ごまかすために、
ラスタの話をするなと
ナビエ様を一喝するソビエシュ。
今まで
激しい恋をしたことのなかった男が
恋に狂うと、
ろくでもないことになると思いました。
ナビエ様の年齢ですが
最初にマンガを読んだ時は、
30歳くらいかと思いましたが、
皇后になって約3年。
成人したばかりと書かれています。
ソビエシュの父親は、
成人したから譲位したと
書かれていますが、
ソビエシュが成人したとは
書かれていないのと
ナビエ様が以前のことを
回想しながら
その話をしているので
成人したのはナビエ様ではないかと
思います。
すると彼女は23歳くらいなのかなと
思いました。
206-207話でソビエシュの年齢は
25歳と推測され
外伝の中に
ソビエシュと一緒にいた女の子が
彼よりも少し小さいという
記述があります。
23歳を成人したばかりと言うには
変な気がしますが
新年祭の後に、
ナビエ様の誕生日が来て
ソビエシュが別宮へ
誘うシーンがあります。
誕生日が来て
ナビエ様が23歳になるとすると
22歳のナビエ様なら
成人したばかりと言われても
おかしくない気がします。
ソビエシュはナビエ様が不妊だと
言っていましたが
寝室が東と西に分かれていて
一緒に寝ることもなく
食事も週に2回共にするだけの2人に
子供ができる可能性は
少ないのでは?と思います。
ソビエシュが、
嘘をついたり、ごまかしたり、
例外を作ったりせず、
初めから公正な態度を取っていれば
ナビエ様を失うこともなかったし、
その後の彼に降りかかる悲劇を
防げたかもしれません。
自分で蒔いたものは
自分で刈り取ることになります。
ソビエシュは、
一生に一度、ほんのわずかな間、
美しい獲物に溺れてしまったことで、
その後の人生を
台無しにしてしまいました。