20話 ラスタには関わらないと決めたナビエでしたが・・・
◇ソビエシュの呼び出し◇
西宮へ戻り、
温かいお風呂に入って
1日の疲れを
癒すつもりだったナビエを、
ソビエシュは、騎士団長を通して
彼女を迎えに来させました。
彼の困惑した顔を見て
ナビエは良いことではないという
予感がしました。
この1か月、ソビエシュが、
いきなりナビエを呼び出した時は
いつもラスタに関連したことでした。
長い廊下を歩く間
ナビエは気が重かったものの
何とか表情管理をしました。
◇理不尽な主張◇
ナビエはソビエシュの寝室に入ると
ラスタが彼のベッドに
横になっていました。
ナビエは、
自分を呼んだ理由について
ソビエシュに尋ねました。
表情管理をしていたナビエは
瞬きもせず、
口にうっすらと
笑みを浮かべていたので
ソビエシュは気分を害して、
ラスタが逃亡奴隷だと
ばれたことが
そんなに嬉しいのかと
皮肉を言いました。
ナビエは、
自分に八つ当たりをしたら
怒りが収まるのか。
ソビエシュは機嫌を
損ねたかもしれないけれど
自分に八つ当たりを
することではないと抗議しました。
ソビエシュは
八つ当たりをするために
ナビエを呼んだのではなく、
彼女は、
ラスタが逃亡奴隷であることを
証明したかったのかと
尋ねました。
ナビエは、またその話かと
言いました。
ソビエシュは、
ナビエは生まれながらにして、
全てを持っていて、
皇后の座に上りつめたけれど
ラスタは、親のせいで奴隷になり
何も持っていなくて、
賢さと美貌を
発揮する機会すらなかった。
けれども、自分と出会ったことで
少しずつ、
良いものを手に入れようとしていると
言いました。
ナビエは、プライドが傷つくので
自分の夫を奪ったとは
言えませんでした。
ソビエシュは、ナビエが
ラスタに同情することを
望んでいるのかと
尋ねようとしましたが
できませんでした。
ナビエは何も言わずに
彼を見つめました。
なぜソビエシュが
これほどまでに
必至に話しているのか
理解できませんでした。
ソビエシュは、
ナビエがラスタを理解することまでは
望んでいないけれど、
彼女が、孤児院や老人ホーム
病院、神殿などに示している
同情心を
ラスタには示せないのかと
爆発するように叫びました。
ナビエは、
ラスタは陛下の側室なので
ソビエシュが世話をする必要がある。
彼女は私の管轄ではないので
世話をしないだけだと答えました。
すると、ソビエシュは
ラスタを気遣う必要はないけれど
放っておけと言いました。
ナビエは、
自分が彼女に関わったことが
あるかと反論ました。
ソビエシュは、
前日、ナビエはハインリ王子の前で
わざとラスタを侮辱した。
誰の言葉が真実なのか
わからないのであれば
赤の他人ではなく
皇后の国民であるラスタの肩を
持つべきだと言いました。
ナビエは真実を知っているから
ハインリの肩を持ったと
主張しました。
するとソビエシュは
ラスタを嘘つき呼ばわりするのかと
反論したのでナビエは、
ラスタが潔白だと
信じるのはソビエシュであって
自分ではないと答えました。
すると、ソビエシュは
それ以上、
前日の話をするのを止めて
ナビエが、ロテシュ子爵を
パーティに招待したことを
非難しました。
ソビエシュの皮肉を聞いて
ナビエは頭がひび割れるのではと
思いました。
ナビエはソビエシュを睨みつけて、
どういうことかと尋ねました。
ソビエシュは
ラスタが逃亡奴隷であることを
ナビエが証明するために、
ロテシュ子爵を呼んだと責めました。
ナビエは、ソビエシュの
戯言に呆れてしまいました。
続いてソビエシュは
ラスタが逃亡奴隷でないと
自分が言うから
彼女は本当に逃亡奴隷だと
知らせたかったのか。
人々が
ラスタを愛するようになるのが、
そんなに気に障ったのかと言いました。
ナビエは、
無理に穏やかな声を出して
彼が変なことを言うと
言いましたが、
声には怒りがにじみ出ていました。
ソビエシュの目は
いつにも増して猛烈な怒りで
ギラギラしていました。
ソビエシュは
新年祭の招待状を送るのは
皇后の仕事なので
わざとロテシュ子爵を呼んだと
ナビエを責めました。
ナビエは、
新年祭の招待状を送ったのは
ラスタが来る数週間前だったと
主張しました。
するとソビエシュは
ロテシュ子爵は
重要な貴賓ではないので
皇后に考えがあれば
彼が新年祭に来ないように
することもできたと
言いました。
それに対してナビエは
自分はラスタについて
一つ一つ気にかけるほど
彼女に関心がない。
それにソビエシュは
絶対にラスタが逃亡奴隷ではないと
しきりに否定していた。
このような状況でも、念のために、
ロテシュ子爵に
皇宮に来ないように
手紙を書かなくては
いけなかったのかと尋ねました。
ナビエは、ラスタが
ロテシュ子爵の奴隷だったことを
知りませんでした。
彼女が罠にかかった狩場が
ロテシュ子爵の領地の
近くであったと
侍女たちが話していたのを
聞いただけでした。
その後は
ロテシュという姓についても
耳にすることはありませんでした。
仮にナビエが
ロテシュの名前を憶えていたとしても
ラスタが平民なら
ロテシュ子爵が来ても
何の関係ありませんでした。
ソビエシュから聞いたのではなく
たった一度耳にした
不確かな情報から
あれこれ可能性を
考えろと言っているのかと思うと
ナビエは呆れました。
ナビエは
ラスタをとても大事にしている
ソビエシュができなかったことを
ロテシュ子爵の奴隷であったことを
知らなかった自分にやるべきだったと
期待しないようにと言いました。
ソビエシュは
ナビエのことを全く薄情だ。
ずっと不憫に暮らしてきた女性が
少し楽に
生きられるようになったのを
見るのが
そんなに嫌だったのか。
自分の手は汚したくないから
人の手を借りるのか。
皇后は本当に怖い女だと罵りました。
◇野心◇
何の開発もされていない
田舎の領地の領主である
ロテシュ子爵は、
今まで皇帝と2人だけで話すことも
遠くから皇帝を眺めることも
ありませんでした。
その皇帝から
厳しい視線を浴びせられた
ロテシュ子爵は目を伏せました。
息が詰まりそうでした。
彼の領地は、
皇帝から干渉されていなかったので
そこで、ロテシュ子爵は
王の役割を果たしていました。
誰かの前に、
ひれ伏したことのない彼は、
息子と同じような年齢の皇帝の前に
ひれ伏していることに、
プライドが傷つきました。
ソビエシュは、ロテシュ子爵に
今日のことを説明しろと
命令されました。
彼は、最初、皇帝の言葉の意味が
分かりませんでしたが、
ロテシュ子爵は頭を働かせて
皇帝が全てをなかったことにしろと
提案していることに気がつきました。
彼は、
ラスタが自分の所の奴隷だと
勘違いをしたと
ソビエシュに謝りましたが、
彼の目は
興味本位で輝いていました。
皇帝は
ラスタを逃亡奴隷だと知りながら
彼女を
守ろうとしていることについて
ロテシュ子爵は心から
ラスタをすごいと思いました。
単純に身分を洗浄して
貴族の妾にでも
なったのかと思っていましたが
これほどまでに、
皇帝の寵愛を受けているのかと
思いました。
ラスタは
ロテシュ子爵の領地にいる時も
あらゆる男たちを牛耳って
遊んでいた奴隷だったことは
知っていましたが
思っていたより
すごい才能があると思いました。
ソビエシュから、
今後は口を慎むようにと言われた
ロテシュ子爵は
小さな田舎の領主から
高い地位を占めることが
できるかもしれないと
思いました。
◇クイーンを抱き締めたい◇
後に付いてきた近衛兵たちを帰して
ナビエは一人で
長い廊下を歩いていました。
頭が痛くて
心臓が重く感じました。
足が重く、ドレスさえも窮屈で
一歩一歩歩くごとに
肋骨のあたりが
チクチク痛みました。
西宮へ入ってすぐに
ナビエは柱に手をつきました。
吐き気がしてきました。
ひどくプライドが傷つけられました。
他のことについては
欠点のないソビエシュが
なぜ、ラスタのことになると
あれだけ向こう見ずに
なるのだろうか。
歴代皇帝たちの治世を
記録した本を読みながら
目を輝かせていたソビエシュは
消えてしまったのかと
思いました。
その時、ハインリ王子が
「クイーン」と彼女を呼びました。
ナビエは、
みっともない姿を見せてしまったと
言いました。
それでも、
涙を流していなかったので
幸いだと思いました。
ハインリ王子はナビエの顔を
しつこい程、眺めていました。
そして、
自分は友人が心を痛めている時
顔を撫でたり
抱きしめたりすることができる。
クイーンは自分の友人なので
そうしてもいいかと尋ねました。
ナビエは首を振りました。
ハインリ王子は泣きそうな顔を
していました。
彼の耳まで真っ赤でした。
そして、また皇帝に
侮辱されたのかと尋ねました。
ナビエは、私的なことなので
答えらづらいと言うと、
ハインリ王子は、
自分が先に
クイーンに出会うべきだった。
あと5年早く生まれていればと
悔しがりました。
ナビエは何があったか
話してもいないのに、
ハインリ王子は、
ひどく心を痛めているようでした。
彼は躊躇いながら、
自分がダメなら
クイーンを送ると言ったので、
ナビエはすぐに頷きました。
ハインリ王子に
抱き着くことはできないけれど、
クイーンなら大丈夫でした。
鳥の温もりが恋しくなったナビエは
自分がクイーンに会いに行くと
言いました。
ソビエシュは
ナビエ様が考えているように
初めて見た可哀そうな女性に
保護本能を刺激されて
彼女を連れて来てしまいました。
けれども、
彼女は逃亡奴隷で
脱獄犯も同罪なので
本当はロテシュ子爵に
ラスタを
帰さなければいけないことは
わかっていたと思います。
けれども、
彼女に恋してしまったし
今さら
彼女を帰す訳にはいけない。
そして
可愛そうな女性を助けた自分を
否定したくない。
けれども、自分は
法を犯している。
けれども、彼は皇帝なので
過ちを犯したことを
認めたくないし
ラスタに同情したことを
悪いことだと思いたくありません。
しかし
罪悪感は消えない。
ソビエシュは
自分の罪悪感を隠すため、
ナビエ様は可哀そうな人に
同情もできない怖い女だと
ナビエ様を悪者にすることで
自分を正当化しているのだと
思います。
そんなソビエシュの犠牲になっている
ナビエ様が可哀そうです。
マンガではカットされていましたが
ラスタが奴隷時代から
あらゆる男性を牛耳っていた
とんでもない女だということが
明らかになりました。
しかし、ソビエシュは
ラスタが、その賢さと美貌を
発揮することもなかったと
勘違いをしているのは皮肉です。
男性をたぶらかすのに
長けている女性が、
無防備なおぼっちゃまを
篭絡するのは簡単だったのでしょうね。
その幸せは、
長くは続きませんが・・・