55話 アンのことを話に来たというアレンでしたが・・・
◇逆転した立場◇
エルギ公爵から聞いていた
ラスタの子供の名前を
アレンが口にすると
彼女は真っ青になり
慌てて彼の口を塞ぎました。
ラスタは、
アレンが自分を脅迫しているのかと
尋ねました。
彼は、
ラスタがアンのために
邸宅を用意してくれたと
父親から聞いたこと、
そして、アンはラスタに似て
とてもきれいだと
伝えました。
そして、アレンは
アンが死んだと思って
ラスタが
とても苦しんでいたことを
口にすると、ラスタは、
その自分を見ながら
無視していたアレンが
言うことではないと非難しました。
アレンは失うものが多すぎて
全てを捨ててまで
ラスタを選ぶことができなかったと
言い訳をし、謝ると
ラスタは、
今の自分も失う物が多いので
自分を知っているふりを
しないように。
アレンの失礼な妹にも、
そう言うようにと言いました。
rラスタは、今のアレンには、
憎しみしか感じませんでした。
アレンが去った後で、ラスタは
恋人だったけれど
主人の坊ちゃんだったアレンに
思い切り言いたいことが言えて
ドキドキしていました。
逆転した立場に爽快さを覚えました。
けれども、ラスタは
アンに会いたくないと言ったことが
気になりました。
ラスタは、エルギ公爵に
相談に行きました。
◇皇后になれ◇
ラスタは、
勝手にエルギ公爵の部屋へ入ることを
許されていたので、
エルギ公爵への信頼が
より大きくなっていました。
部屋に入るや否や
ひどい奴だと
エルギ公爵が呟いているのが
聞こえました。
彼は手紙を読んでいて
窓辺には青い鳥が
止まっていました。
ラスタがエルギ公爵を呼ぶと
青い鳥は、
驚いたように飛んで行きました。
ラスタは、
先ほどのエルギ公爵の言葉について
言及すると、彼は、
友達がおかしくなりそうだ。
このことは
知らないふりをしてくれと
頼みました。
ラスタは、頭のおかしい
エルギ公爵の友達が
誰だか知りたかったものの
それ以上、聞きませんでした。
彼女は、
アレンとルベティに会ったことと
2人は、ラスタに子供がいることを
知っているので
彼らがどう出るか心配だ、
そして、自分が
中絶薬を飲まされたことも話し
今後も
同じことが起こるかと思うと怖い、
何か防ぐ方法はないかと
エルギ公爵に相談しました。
彼は、
アレンとルベティのことは
ロテシュ子爵に任せておけば良い、
そして、
後者については2つ方法がある。
1つ目は皇帝陛下に助けを求め、
ひたすら怖いと言い続ければ
何でもしてくれると、
エルギ公爵が言うと
これは、あまりにも受動的だし
すでにやっていることだと思い
ラスタは首を振りました。
ラスタは2つ目を尋ねました。
彼は、
攻撃される前に
ラスタを攻撃しそうな人を
消し去るように言いました。
ラスタは、
自分より身分が高くて、
権力もあり財産もある人に、
それが可能なのかと
ラスタは尋ねました。
それはナビエのことを
言っているのかと
エルギ公爵が確認すると
ラスタはもじもじしながら
頷きました。
ラスタは
初めは姉妹のように
皇后と仲良くなりたかった。
皆、口を揃えて
皇后を称えているので
彼女の愛と思いやりが
自分の所へも届くと信じていた。
けれども、
ハインリ王子の前で
自分を嘘つき呼ばわりし
自分が誤解したことを
みんなの前で言って笑いものにし
ドレスが似ているというだけで
自分が真似をしたと侮辱し
皇后のお兄さんが自分を殴る時も
じっと見ていた。
しかも皇后が不妊だから
自分の赤ちゃんを攻撃する。
今は皇后が嫌いで怖いと話し、
皇后の攻撃を防ぐ方法はあるかと
尋ねました。
相槌を打ちながら
ラスタの話を聞いていたエルギ公爵は
しばらく楽しそうに
ラスタを注意深く見つめた後
優しく笑いながら
皇后の攻撃を防ぐ方法には、
ラスタが皇后になればいいと
答えました。
予想外の返事に
ラスタは驚きました。
彼女の最大限の幸せは
皇帝の愛と皇后の友情を受け
自分の子供たちが
皇子と皇女になることでした。
奴隷出身の自分が
皇后になれるわけがないと思い
ラスタは恐ろしそうに
手を振りましたが、
エルギ公爵は
身分なんて変えればいいと言って
ラスタは、ある事件により、
行方不明になった
どこかの貴族の令嬢ということにし
彼女を探し回っていた両親が
東大帝国の美しい側室の噂を聞き、
ラスタに会いに来るという
筋書を話しました。
そして、ブルーボヘアンの
貧乏貴族の中から
親代わりをしてくれる人を探すと
ラスタに言いました。
ラスタは自分を奴隷にした
犯罪者の親ではなく
素晴らしい親ができて、
身分を簡単に変えられるのは、
驚くべきことなのか良いことなのか、
わかりませんでした。
ソビエシュは嘘をついたついでに
最初から偽親も
作ってくれれば良かったのにと
ラスタは残念な気持ちになりました。
皇帝は自分を
皇后にするつもりはなかったのだと
ラスタは思いました。
エルギ公爵は
偽親を作ることは危険な方法なので、
誰が何と言おうと
親子検査に絶対に応じるなと
忠告しました。
そして、身分を変えた後は
ナビエと戦えて、
ナビエと同じくらい
評価を上げるために
勉強をするように指示しました。
ラスタは貴族から
無視されていると言うと
エルギ公爵は
平民の評議会議員から
ラスタが
支持されるようにすれば良いと
アドバイスしました。
その方法についてラスタが尋ねると、
エルギ公爵は、
皇后は人望は高いけれど
貴族的なイメージが強すぎる。
名門貴族の令嬢として生まれ
幼い頃に皇太子と婚約し
社交界にデビューしたと言いました。
ラスタは自分の子供の頃のことを
思い出しました。
皇后は
生まれた時から皇太子妃なのに、
自分は生まれた時から
奴隷であることを、
あまりにもひどいと思いました。
ラスタの顔が暗くなりました。
エルギ公爵は
ラスタの顔を注意深く観察し
皇后がどれだけ平民に優しくしても
彼らは壁を感じる。
ラスタは同じ平民出身だから
平民を理解し共感できるイメージを
作るようにと付け足しました。
◇線を引く◇
宮廷人たちは、
前日、
ソビエシュがラスタのために開いた
パーティについて、
ひそひそ話をしていましたが、
ナビエは、それを
不愉快に感じませんでした。
そして、できるだけ早く検討すべき
いくつかの問題をチェックした後
西宮へ戻りました。
応接室で侍女たちと一緒に
お茶を飲んでいると
前日、外出していたローラが
戻って来て、
ナビエに頼まれたように、
アリシュテ(ローラの友達)が
人前であの女に
ロテシュ子爵の娘に会わせたこと、
あの女は
表情管理をするのが遅れた、
ロテシュ子爵の娘は
表情管理すらしなかったと
報告しました。
そして、
事が面白くなりかけていた時
ロテシュ子爵の息子が
子爵の娘を連れて行ったと
付け加えました。
ナビエはローラを褒めた後
アリシュテがルベティと
仲良くなったら
自然に自分の所へ連れて来るように
アリシュテに伝えてと
ローラに頼みました。
イライザ伯爵夫人は
ナビエの心境の変化を
指摘すると、ナビエは、
知らないふりをして
過ごす時期は過ぎたと答えました。
ラスタの赤ちゃんに
中絶薬を使おうとしたのは
度が過ぎた悪い方法だけれど
その前にラスタは
ナビエのことを不妊と言ったり
コシャールが自分を押したと
嘘をついた。
そして、どうしても自分の子供を
皇族にしたいようだと
ナビエは思いました。
彼女は
適当に線を引く必要があると
言いました。
ハインリがエルギ公爵に送った
手紙の内容は
明らかになっていませんが
どうしてもナビエ様と結婚したいとか
彼女を助けて欲しいと
書かれていたのかなと思います。
ハインリとナビエ様が結婚するには
彼女が離婚するしかありません。
けれども、現時点で、それは
不可能に近いと思います。
けれども、ラスタが皇后になれば
ハインリにもチャンスが訪れます。
エルギ公爵の目的は、
東大帝国を崩壊させ、
ソビエシュに復讐すること。
ハインリの目的も、
東大帝国を崩壊させること。
エルギ公爵は
ラスタの相談に乗りつつ
密かにラスタを操り、
彼女が皇后になるよう仕向け、
自分とハインリの目的を
達成しようとしているのかなと
思いました。
ソビエシュには
コシャールが少し押したと
言っていたのに、
エルギ公爵には殴ったと言うなんて
ラスタの嘘は
どんどん、
エスカレートしていっています。
おそらく、文通相手について
ラスタが嘘をついたことを、
ハインリはエルギ公爵に
話していると思います。
エルギ公爵は、
多くの女性たちと付き合って来たし
とんでもない嘘をつき、
自分の母親を不幸にした女性が
身近にいたので、
ラスタの言葉を、
容易に信じないのではないかと
思います。