外伝29話 エンジェルと同じ提案をするといったナビエでしたが・・・
◇ナビエの頼み◇
エベリーは、
ソビエシュの所へ行き
休暇明けにもかかわらず
もう一度、
西大帝国へ行く許可を
求めに行ったところ
彼女が何も言わないのに
ソビエシュは
いってらっしゃい。
と言いました。
彼は、
ナビエからの手紙を
エベリーに見せました。
エベリーが受け取った
ナビエからの手紙には
彼女の癒しの力が
必要だと書かれていました。
大変なことだから
嫌だったら助けてくれなくても
大丈夫とありましたが
東大帝国と西大帝国が
手を結んだ以上
西大帝国の秘密が流出するのは
良くないことだと
エベリーは思いました。
ソビエシュは
階段の近くに
行かないようにすると
言いました。
エベリーは、
ソビエシュが
階段や手すりのそばに行ったら
手をつなぐようにと
カルル侯爵に頼みました。
◇諦めたくない◇
ナビエは
階段の手すりにつかまりながら
ぼんやりと階段を下りていると
後ろから
私と手をつなぐのが嫌ですか?
と、ハインリの不満そうな声が
聞こえてきました。
彼は手を空に浮かしたまま
不機嫌そうに立っていました。
その横で、エルギ公爵が
楽しそうに笑いながら
嫌なんだよ。
顔色をうかがいながら
聞いてみないと。
とハインリをからかって
1人で階段を下りて行きました。
ハインリはナビエに
本当に手をつなぐのが嫌なのか
確認すると
考え事をしていて
聞いていなかったと
答えました。
おそらく東大帝国でも
ハインリが握っている
人為的な魔法使いに関する秘密を
エンジェルが暴くのを
嫌がるだろうから
ソビエシュは
エベリーを寄こしてくれると
ナビエは思いました。
そして、ナビエは
常時泉へ送った使節についても
考えていました。
ナビエはダルタを
諦めたくないと思いました。
ダルタは常時泉に友好的でした。
ダルタが
エンジェルの所へ行ったとしても
彼が常時泉を丸ごと手中に
収めているのでなければ
状況は変わるだろうと
ナビエは思いました。
◇ナビエからの使者◇
常時泉の首長ケルドレックは
墓の前で、ぼんやりと
パイプをくわえていました。
部下が増える度に
誰かの墓を作る回数も増えましたが
何度やっても慣れませんでした。
埋葬した人が
長い間、行動を共にした人なら
猶更でした。
そこへ、富川主が
ナビエから手紙が来たことを
伝えに来ました。
ケルドレックは
ナビエからの使者が待っている
テントの中に入りました。
連合側の騎士ではないようで
彼には馴染みのない顔でした。
けれどもケルドレックは
怒りを露わにし
すぐに帰れと言いました。
しかし、ナビエの使者は
平然と彼女からの手紙を
富川主に渡し
彼は、それをケルドレックに
渡したものの
彼は、すぐにそれを
横に投げ捨てました。
床に小石が落ちたような
パラパラとした音がしました。
中身は何か知らないと
ナビエの使者は言ったので
ケルドレックは部下に
封筒を拾わせました。
封筒を開けると
紋様の入った小さな指輪が
ぽろぽろと落ちました。
そして、その間に
紙が1枚挟まれていました。
ケルドリックは
それを読んだ後
呆れて噴き出しました。
そっちの部下が
俺の部下を殺したばかりなのに
俺に誰の下に入ろって?
ふざけるな!
と、ケルドレックは
ナビエの使者に向かって
怒りを露わにしました。
すると使者は
その指輪は
常時泉のせいで亡くなったり
大けがをした人たちが
属する家門の
指輪だと言いました。
常時泉のことを
好ましく思って
この提案をしているのではない。
前後の利益を見て
よく考えてから
答えを出すように。
と使者はナビエの言葉を
伝えました。
◇新たなエンジェルの計画
エルギ公爵から
受け取った手紙には、
彼が、エンジェルからの提案を
すべて断ると書かれていました。
エルギ公爵の行跡と
ナビエとエベリーの関連性から
エンジェルはナビエが
この件に関わっていることが
すぐに分かりました。
こんな風に私を追い込むなんて
最高です。興奮します。
とエンジェルは言いました。
近くで礼法の勉強をしていた
ダルタは
ぶつぶつ独り言を言っている
エンジェルのことを
変態だ。
どうしてあんな風に言うの。
と思っていました。
エンジェルは
エルギ公爵からの手紙を
くしゃくしゃにして
びりびりに破くと
笑いながらダルタに近寄りました。
そして、
同じ宝石は2つもいりません
偽の宝石は割らないと。
あなたの仇を打つときが
やって来ました。
と言いました。
◇財産管理人に会う◇
ダルタは東大帝国の首都へ
やって来ました。
エルギ公爵からの
手紙を読んだエンジェルは
何か話してくれましたが
前後の説明がなかったので
彼の言葉が理解できず
ダルタは何をやればよいのか
わかりませんでした。
分かったのは
エンジェルはエルギ公爵から
情報を得ようとしていたけれども
その計画を変えたこと。
新たな計画は
エルギ公爵を
知らず知らずのうちに利用して
エベリーに危害を加えるようなこと。
罠を仕掛けると言ったが
それについては
何も話してくれませんでした。
エンジェルは自信満々でした。
エンジェルがエベリーに
危害を加え
その背後に月大陸連合が
いることが分かれば
大変なことになると
ダルタは思いました。
明日には、
ここを離れないといけない。
二度と東大帝国へは
来られないかも。
そうなったら
ブルーボヘアンへ行って
さらに
イスクア子爵夫妻のことを
調べないといけない。
妹を探すことが
できるだろうか。
とダルタは考えましたが
とりあえず
イスクア子爵夫妻の
財産管理人を訪ねました。
ダルタは、
イスクア子爵夫妻のことで
約束していたと告げると
財産管理人は
イスクア子爵家は
一度没落したけれど
その後、
東大帝国へ定着し、再興した。
その時に自分は雇われた。
と説明しました。
ダルタは、
イスクア子爵夫妻が
残したものなど
少しでもいいので
情報が欲しいと話すと
彼女は、
残っている財産はないと
きっぱり言いました。
いきなり遺産目当てと思われ
気分を害したダルタは
帰ることにしました。
ダルタはドアを開き
外へ出て数歩歩いたところで
財産管理人に
イスクアさん?
と呼ばれたので
思わず立ちすくんでしまいました。
どうして自分をイスクアさんと
呼んだのかわかりませんでしたが
彼女に戻るように言われたので
ダルタは躊躇いながらも
引き返しました。
ダルタの
ブレスレットの紋様を見た
財産管理人は
ダルタが
イスクア子爵夫妻の娘なのかと
尋ねました。
ダルタはすぐに
返事をしませんでしたが
イスクア子爵夫妻が
行方不明の娘を
探し続けたことは有名だと話すと
ダルタは、認めました。
財産管理人は
イスクア子爵夫妻が残した
財産があったけれど
他の人が受け取ったと
話しました。
ダルタは、誰が受け取ったのか
親戚かと尋ねました。
財産管理人は
眉をひそめるだけでした。
ダルタは
財産が欲しいのではない。
妹を探しているだけ。
つい最近、自分が
イスクア子爵夫妻の上の娘だと知った。
自分は成長したけれど
妹が成長しているか
気になっているので
話して欲しい。
遺産を貰いに行って
喧嘩したりしない。
絶対にあなたを困らせない。
と訴えました。
財産管理人は自分の立場ではなく
遺言のために話せないと
ダルタに告げました。
財産管理人は
イスクア子爵夫妻は
亡くなる前に
下の娘に会った。
彼女は、イスクア子爵夫妻が
実の両親だと知らなかった。
彼らは良くないことに
巻き込まれて亡くなったので
彼らは自分たちが
実の両親であることを
彼女が
知らないままでいることを願った。
けれども、ダルタが妹を探せば
結局、遺言を守れないことになる。
と説明しました。
自分は妹を探してはいけないのかと
ダルタが尋ねると
財産管理人は
イスクア子爵夫妻は
ダルタの存在を知らなった。
知っていたら
状況が変わっている可能性があると
言いました。
まさか、ここで妹の話が出ると
思わなかったダルタは
混乱した気持ちを抑え込みながら
妹について色々尋ねました。
財産管理人は
妹は元気なので安心してよいと
前置きをして
悲しい微笑みを口元に浮かべながら
ダルタの妹はエベリーだと
伝えました。
ダルタは持っていたバッグを
落としました。
エルギ公爵が
イスクア子爵夫妻を
ラスタの偽親にするために
連れてこなければ
彼らはラスタのせいで
処刑されることは
ありませんでした。
けれども、
娘たちを探すために
財産を使い果たした
イスクア子爵夫妻は
お金のために
ラスタの偽親になることを
引き受けたのだと思います。
東大帝国へ来て
ラスタに関わったことで
結果的にエベリーが
彼らの娘だとわかりました。
イスクア子爵夫妻が
娘を失ったのは
常時泉に襲われたから。
でも、ダルタは
常時泉に育てられました。
エルギ公爵が
イスクア子爵夫妻を
東大帝国へ連れてきたから
エベリーと彼らの間に
確執がありました。
そして
エベリーはダルタの養母の仇。
状況が複雑に絡んでいます。
運命に翻弄された
エベリーとダルタが
可哀そうです。