
外伝63話 公の場でソビエシュの子を妊娠したと話したガリヌエラにナビエは・・・
◇衝撃◇
ナビエは、その瞬間
自分がどんな顔をしたのか
わかりませんでした。
目の前がクラクラして
何も考えられませんでした。
エルギ公爵と目が合った時
ナビエは正気に戻りました。
彼は目を見開いて
彼女を見ていました。
それだけでなく、
ガリヌエラがソビエシュの子を
妊娠したと聞いた人々は皆
ナビエをじっと見ていました。
ナビエは顎に力を入れて
表情管理をしました。
ガリヌエラはにっこり笑いながら
そうなったと言いました。
ナビエは何を言っていいか
わかりませんでした。

◇想定外の知らせ◇
ハインリは、急いで
エルギ公爵の所へ駆けつけると
皇后と近づくために
彼女の侍女の一人を誘惑してくれと
エルギ公爵に頼みました。
彼は、
今は、そんなことを
言っている場合ではない。
途中で会った令嬢が、
皇帝の子を妊娠したと話していたと
ハインリに伝えました。
瞬く間に ハインリの顔色が
変わりました。
エルギ公爵は
顔が真っ白になった
ナビエ皇后を思い浮かべながら
眉をしかめました。

◇小賢しい女◇
宮医が皇帝の顔色を窺いながら
手を震わせて
ガリヌエラの診察をしている間
彼女は、すでに宮殿の主のように
安楽椅子に座り
微笑を浮かべていました。
宮医は診察を終えると
間違いないく妊娠していると
告げました。
ソビエシュとガリヌエラが
2人だけになると
彼女は、
嬉しいですよねと言いました。
ソビエシュは、
何を言っているのかと尋ねました。
ソビエシュからの
冷たい視線を浴びたガリヌエラは
子供を
欲しがっていたのではないかと
からかうように尋ねました。
そして、微笑みながら、
皇族ほど、
跡継ぎを重んじる人はいないし、
結婚してもう数年になるのに
皇帝と皇后の間には
子供がいないと言いました。
彼女が利口だという噂は本当でした。

◇贈り物◇
噂はあっという間に
宮殿内に広まりました。
ラスタは拳を握りしめ
歯ぎしりしながら
あの時、退くべきではなかった。
命を奪うべきだったと
息巻きましたが、
ナビエは頭がぼーっとして
ラスタの声も聞こえませんでした。
腹が立って仕方がないと言って
庭へ出て行ったローラが
小さな箱を持って戻って来ました。
ナビエへの誕生日プレゼントでした。
中には、
小さな薬瓶が入っていて、
添えられたカードには
遅い誕生日のプレゼント。
愛の妙薬と書かれていました。
誰がこんな物を送って来たのかと
ナビエは考えました。

◇不妊はナビエ◇
2本続けて
酒瓶を空にしたソビエシュに
カルル侯爵は、
ガリヌエラの話は本当かと
心配そうに尋ねました。
ソビエシュは、
子供が生まれれば、
本当だとわかるし
北王国でかなり有名な
彼女の家柄のことを考えれば
そんな嘘はつかないだろうと
答えました。
そばにいたナビエの顔が青くなって
固まっていたのを思い出した
ソビエシュは
再をグラスに注ぎました。
ソビエシュは自分とナビエの
どちらかが不妊だと疑っていました。
しかし
ガリヌエラが一度で妊娠したので
不妊は、
ナビエに違いないと思いました。
おそらくガリヌエラが妊娠した子は
彼の最初で最後の子になると
思いました。

◇次の皇后は私◇
ナビエを探すために
東宮へ行ったラスタに、
ガリヌエラが、
あの時の下女だと声をかけました。
ラスタが顔をしかめると
ガリヌエラは
もう状況が逆転したけれど
どうするかと尋ねました。
ラスタは、
部屋を汚したお嬢さんだと
ぶっきらぼうに言ったものの
ガリヌエラは優しく微笑みながら
その言葉を聞き流しました。
ガリヌエラは
もうすぐ自分が
皇后になるはずだから
事前に平伏した方が
いいのではないか。
自分は慈愛に満ちた
皇后になるつもりだから。
以前のことは
見過ごすことができると
ラスタを挑発しました。
その言葉にラスタはかっとなり
ガリヌエラを睨みつけると
彼女のそばにいた護衛が
ラスタを押しました。
彼女はしりもちをついてしまいました。
ガリヌエラは
これから自分の身体に
手を出そうとする者は
皇族を害そうとするのと
同じであることを、
よく覚えておくようにと警告しました。

◇ラスタの反撃◇
ナビエがガリヌエラのことで
頭を悩ませている最中に
カフメン大公は
ルイフトとの交易相手に
ナビエを指名しました。
頭が痛くなったナビエは
外気を吸おうと思い、外へ出ると
ラスタが倒れていて、その前には
ガリヌエラが立っていました。
ガリヌエラは
ラスタがひどいことを言ったので
悪い姿を見せてしまったと
普通の貴賓のように謝罪しました。
ナビエは、
ひどいことを言ったのも
悪い姿を見せたのも
ガリヌエラのように見えると
ぶっきらぼうに話すと、
ラスタの手を取って起こしました。
そして、
ラスタを連れて行こうとすると
ガリヌエラは先程とは違う口調で
自分は音楽家として生きたかったのに
皇帝のせいで突然、
側室になってしまった。
皇后も傷ついただろうけれど、
一番傷ついたのは自分だ。
だから、自分を
「側室なんか」というように
見ないでと眉をひそめながら
話しました。
ラスタは、ガリヌエラが
そんなことを言ったのを非難し
怒鳴り散らしていましたが
彼女の言葉の
意味がわからなかったので
ガリヌエラと彼女の護衛は
ポカンと口を開けていました。
ガリヌエラは
ラスタがナビエの体面を
傷つけているので、今すぐ、
罰しなければならないと
言いました。
けれどもナビエは
ラスタのガリヌエラへの悪口を
痛快に感じていたので、
何も聞いていなかったと言って
ラスタを連れて行きました。

◇陛下に付いて行きます◇
ナビエは、自分のために
ラスタがしてくれたことは
有難いけれど
人前で、あのような言葉を
絶対に口にしてはいけないと
何度も頼みました。
けれども、ラスタは
彼らがあまりにもひどかったので
我慢できなかったと弁解しました。
ナビエは、自分も同感だけれど
ラスタが自分のために戦って
ケガをしたら辛いだけだと
話しました。
ラスタは渋々頷いた後、
急に目を潤ませながら、
自分は北王国へは行かない。
エミール伯爵は良い人だけれど
ラスタは陛下のそばに残りたいと
言いました。
ラスタが、なぜ急に
北王国へ行かない決断を下したのか
ナビエは不思議に思いました。
そして、1か月以上
返事を待っていたエミール伯爵は
非常に残念がるだろうと思いました。
けれども、なぜかラスタが
ワンワン泣いているので
とりあえずナビエは頷きました。
ラスタの言葉はそれだけで終わらず、
彼女はナビエに付いて
西王国へ行くと言いました。
なぜ、急に西王国の話が出たのか
ナビエは訳がわかりませんでした。
ナビエはラスタに聞き返すと
彼女も、
どうして西王国の話をしたのか
全くわかっていないようでした。
けれども、
すぐに頷き、力を込めて
ラスタは皇后に付いて行くと
言いました。
なぜ、西王国の話をするのか、
なぜ、こんなに悲しそうに泣くのか
ナビエは
訳がわかりませんでしたが
ラスタの表情は
いつもより真剣で慎重だったので
頷いて、ラスタの手を握りました。
ラスタはすすり泣きながら
必ず連れて行って欲しい。
自分を見捨てないですよねと
もう一度尋ねました。
ナビエは、
もちろんだ。
だから泣かないで、大丈夫だと
答えました。

◇新しい世代へ◇
じっと目を閉じていた大神官が
ゆっくりと目を開いて
ため息をつきました。
隣で息を殺していた神官が
緊張に満ちた顔で
どうですか?と尋ねました。
神官は、
何年間も大神官の祈祷に
付き添っていましたが
いくら大神官が祈っても
無駄だったのに
今日の大神官は
いつもより早く目を開いた上に
明るい顔をしていたので
彼は、大神官の答えを
楽しみにしていました。
大神官は、
以前より随分楽になったと
答えました。
それならば、もう赤い幽霊は
現れないのかと
神官は尋ねました。
大神官は頷きながら
おそらくと答えました。
神官は、
塔に上がって来る度に
幽霊と出くわすのではないかと
思っていたので
本当に怖かったと言いました。
大神官は、
幽霊を見たことのない神官が
どうして、恐いのかと
尋ねましたが
神官は怖いものは怖いと
答えました。
神官はランタンを持って
暗い塔の階段を
恐る恐る降りて行きました。
大神官は、扉を閉める時に
床に少し残っていた
赤みがかったオーラが
消えるのを見て頷きました。
神官は、ラスタの幽霊が
何を見て、何を聞いていたのか。
何をしていたから、
落ち着くまでに何年もかかったのか。
幽霊は自分の立場で考えて
夢を見ていたのではないかと
尋ねました。
大神官は、
そうではないから時間がかかったと
答えました。
神官は、それについて
もっと詳しく知りたがりましたが
大神官は、
秘密なので、
神官が大神官になったら
自分で調べるように。
そうなることは
ないだろうけれどと答えました。
神官は悔しくて
大神官に抗議しましたが
彼は最後まで
話してくれませんでした。
階段を下りながら、神官は、
数日後のラルス皇太女の戴冠式を
見て行かないかと提案しました。
大神官は、
忙しくて仕方がないと怒鳴りました。
神官が何か言おうとすると
それより先に他の人が
それは残念だ、ひどいと言いました。
出口近くの壁に
背の高い金髪の女性が
腕を組んだまま立っていました。
ラリはニヤリと笑いながら
大神官をおじい様と呼び
本当に自分の戴冠式に
来ないのかと大神官に尋ねました。
おじい様と言われた大神官は
う~んと唸りながら
首筋を掴みました。
大神官は
先程、ラスタの幽霊の幻想を
共有していたせいか
一つ一つ節制しながら
落ち着いて行動するナビエと
同じ顔をしているラリが、
ハインリのように行動するのを
異質に感じました。
そして、大神官は
ラリのそばに立っている存在を見て
真剣に黙礼しました。
その存在の実態が
龍だということを
知っていたからでした。
しかし、修行不足の神官は
人の姿をした龍が
どれほど恐ろしくて
どれほど偉大なのか
全くわからないようで
訳もなく龍に近づきました。
大神官は、
神官を情けない奴だと思い
あの粗忽者を修行司祭に選んだ
自分を責めていると、
ラリの後ろに立つ女性騎士を見て
目を見開きました。
女性騎士の顔は
ずっと幻想の中で見ていた顔でした。
大神官はやたらと出て来た涙を
袖で拭いました。
気の利かない弟子が
大神官が泣いているとふざけたので
大神官は神官の背中を叩き
横を向きました。
そして、帰ると言う大神官に
ラリは
本当に戴冠式を
見て行かないのかと尋ねました。
忙しいと言って断る大神官に
ラリは寂しいと言いました。
すると大神官は
寂しがってもダメだ。
父親の時からそうだけれど
自分を呼ぶのは止めて欲しい。
自分が一番多く見たのは
あの顔だと言いました。
大神官が立ち去ると
ラリは訳もなく寂しくなり
ブツブツ言いました。
ラリの腰を抱き、
あの人間にそばにいて欲しいなら
連れて来ようかと提案しました。
ラリは、
移しておきたいと
言おうとしましたが
大きな咳ばらいをして
モテを見ました。
モテはきまりが悪いのか
2人を見ないようにしていました。
ラリは、
来たくなければ来なくてもいい。
今日は、母親が
祖母の特製スペシャルケーキを
作ってくれると言っていたので
行こうと言いました。
何度も言った通り、
あれはシェフが作ったと
言いました。
ラリは、
母親を信じられないのかと
尋ねました。
彼は信じているけれど
真実を究明することはできないと
答えました。
ラリは、モテにも
同じ質問をしました。
モテは、
自分も答えなくてはいけないのかと
ラリに尋ねました。
遠くで立ち止まっていた大神官は
騒がしい声が聞こえなくなるまで
その場にいました。
そして、
完全に声が聞こえなくなると
ゆっくりと歩き出しました。
新しい世代が始まろうとしていました。
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とうとう終わってしまいました。
最終回の感想は長くなりそうなので
別記事で書きたいと思います。
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