38話 美紗が部屋の中に入ると、百合子が倒れていました。
百合子は病院へ運ばれましたが
軽い脳震盪で済みました。
美紗は、百合子に
樹は逮捕されることになると思う。
代わりに弁護士が
警察に行ったと伝えました。
続いて、
回診にやって来た医師から
百合子への追加検査の結果、
胃からガン細胞が見つかったと言われ
百合子はガタガタ震えましたが
初期のガンなので、
内視鏡で切除できるほど小さい。
すぐに手術の日程を決めようと
言われました。
百合子は、本当に大丈夫なのかと
心配しましたが、
医師から、ほぼ完治できる。
検査して良かったと言われました。
百合子は、
美紗から何度も検査するように
言われたおかげだと感謝しました。
美紗は、百合子の手を握り、
これからは、
莉子ちゃんと
元気で幸せに暮らすためにも
もっと健康に
気をつけなければいけないと
言いました。
しかし、百合子の病室を出た後、
う美紗は困惑しました。
もしも、自分が
ドレッサーを壊していなかったら
百合子は本当に死んでいた。
自分の運命は
麗奈が辿るはずだったのに、
百合子の人生に関わったせいで
自分の人生が百合子のものに
なってしまったのかと
不安になりました。
美紗は、
自分が責任を取らなければいけない。
百合子が浮気相手の前で
夫から殺される状況を避けるために
自分が友也の浮気相手になり
この運命を
麗奈に押し付けるしかないと
思いました。
美紗は、頼み事があると言って
誰かに電話をしました。
友也は退職金まで注ぎ込んだのに
株の値が下がりっぱなしなので
腹を立てていました。
そして、麗奈から
夕飯のおかずが
豆腐ハンバーグだと聞くと、
また、豆腐でかさまししたことに
ふざけるなと言って怒りました。
麗奈は生活費が足りないから
仕方がないと言い訳をしましたが、
友也は、麗奈のことを
稼ぎもしない、ごくつぶしだと
罵倒し、
自分は食べないので
デリバリーでも頼めと命じました。
会社をクビになったくせに
偉そうにしている。
勝手に頼めばと
麗奈は言い返しました。
友也は、麗奈のことを
うるさいと思っていると、
見知らぬ番号から、
「久しぶりね、元気？」と
ショートメールが送られてきました。
女性のようなので、
友也は、暇潰しに、
その番号に電話をかけてみました。
そして、電話に出た相手に
自分の知らない番号から
メールが来たけれども、
誰なのかと尋ねました。
相手は、
友和ではないのかと
聞き返しましたが、
友也は、ずっと自分がこの番号を
使っているので、
入力ミスではないかと答えました。
相手はおかしいと言いながらも
友也が
間違いを指摘してくれたことに
感謝しました。
友也は、このくらいのことは
気にしないでと言った後、
２人の会話は終わりました。
友也は、久しぶりに
新しい女性の声を聞いたことで、
嬉しくなりました。
女は知り合った時が
最高だと思った彼は、
せっかくの幸運を、
このまま終わらせたくないと思い、
良ければ事情を話してくれないかと
メールを送りました。
相手は、
話は長くなるけれど、
聞いてもらえるかと
返事を寄こしました。
麗奈が洗濯物を干していると、
まだ11時だというのに、
夕食のスープを作りに来いとか
妊娠はまだなのかとか、
身体に問題でもあるのではないかと
義母から、
催促の電話がかかってきました。
麗奈は、
妊娠しないのは自分のせいなのかと
反論すると、
友也のせいだと言われた義母は
激怒して、
ひどい言葉を吐きました。
麗奈は、それは言いすぎだと
言い返しました。
すると義母は、
子供が産めないならすぐに離婚しろ。
あんな騒ぎを起こして、
仮名に傷をつけたくせに
口答えとはもってのほか。
とんでもない女に
友也を利用された。
まだ、美紗の方が
生意気でも、稼いでくるだけ
マシだったと暴言を吐きました。
麗奈は、
自分のどこが
美紗より劣っているというのか。
彼女と比べられたことに
腹を立てました。
そして友也の様子から、
彼は美紗に未練があるようだと
思った麗奈は、
2人が、また連絡を
取り合っているのではないかと
疑いました。
もしそうだとしたら、許さない。
自分は
やられているばかりではないと
思いました。
友也は友人と
飲み屋で酒を飲みながら、
会社をクビになり、
株では損をしているし、
結婚にも失敗した自分は
可哀相だと、
愚痴をこぼしていました。
友人は、笑いながら、
確かに可哀そうだと言いながら
そんな状況の友也に
連絡を取り合っている
女性がいることについて
尋ねました。
友也は、
連絡をしているだけで
顔も見ていないし、
忙しくて、
電話する時間もなさそうなので
自分が我慢していると答えました。
そこへ、麗奈から、
何時ごろ帰って来るのかという
メールが送られてきました。
そして、訳あり女性からは、
今日みたいな日はビールが最高。
友達と一緒なのかと尋ねるメールが。
友也は、友人に
その女性を呼んでみるかと言って
彼女にメールを送りましたが
また今度ねと、
あっさり断られました。
友也から送られて来た、
分かった。
約束を守れというメールを
読んだ美紗は、
彼の腐った性格は変わらないと
思いました。
せっかく義母が
離婚をするチャンスをくれたのに
なぜ、友也にしがみついているのか。
本当に彼のことが好きで、
離れたくないのか。
美紗から奪って手に入れた友也を
手放したら、
自分の負けになると思い、
意地を張っているのか
分かりませんが、
美紗への憎しみや妬みにより
湧き上がるエネルギーと、
自分を守るためなら、
いくらでも嘘をつくことができる
その賢さを
自分の人生をよりよくするために
使ったら、
彼女の人生は変わるのにと思います。
