52話 旅行も最後の夜となりました。
カップ麺と
出来合いの食事を取りながら、
智彦は、出張以外で、
こんなに長く会社を空けたのは
初めてだと言いました。
麗奈は、
智彦が仕事中毒だという噂は
本当だったと話しました。
智彦は、
そんな風に言われていることに驚き、
自分についての他の噂を尋ねました。
麗奈は、
自分勝手で、
後継者の座を辞退した変り者、
男好き、と答えました。
智彦は、
それは自分も聞いたことがあると
笑いながら言いました。
そして、智彦は麗奈に
治療を受けてみる気はないかと
尋ねました。
彼女は、テーブルの上に
箸をバンと置くと、
何の治療かと尋ねました。
智彦は返事に詰まりましたが
心の中では、
麗奈は海まで来ながら、
コンビニの食べ物しか
食べられないからと
考えていました。
麗奈は、
自分が努力していないように
見えるのかと尋ねました。
智彦は、
無理にとは言わない。
ただ、麗奈が可愛そうに見えると
告げた後に、
余計なことを言ったと謝りました。
麗奈自身も、
治療を受けるべきだということは
分かっていました。
けれども、今まで
どんな治療を受けても、
治りませんでした。
けれども、先日、
智彦が作ってくれたリゾットは
大丈夫でした。
麗奈は、
今回は良くなるかもしれないと
期待を抱きました。
彼女は、治療を受けるので
医師を紹介してと頼みました。
智彦は、
麗奈が治療を決断したことを喜び
自分も治療を受けていることを
打ち明けました。
麗奈は、
不眠症の治療かと尋ねました。
智彦は、彼女が知っていたことに
驚きましたが、麗奈は、
彼が前に話してくれたし、
時々、顔色も良くないと言いました。
智彦は、結婚式の時に会った里菜に
話しておくと言いました。
麗奈は、治療を受けて治ったら
友達を招待して、
誕生パーティを開きたい。
一度もやったことがないから、
可愛く飾って、
ケーキと美味しい料理を
たくさん用意して、
友達と一緒に食べたいと
言いました。
智彦は、
自分が料理を作ると言いました。
麗奈は、
パーティを台無しにするつもりかと
文句を言いましたが、
彼女は、自分の料理の実力を
知っているはず。
自分に任せてくれれば
素敵な料理を作ると言いました。
麗奈は、
確かに智彦の料理は素敵だけれど
それは重要ではなく、
温かくて心のこもった料理がいいと
話しました。
智彦は、必ずそうすると
約束しました。
智彦は話題を変えて、
自分としたいことはないかと
尋ねました。
麗奈は、考えたこともないと
答えました。
智彦は、
自分は麗奈の夫なのに寂しいと
言いました。
確かにそうだと思った麗奈は
外でピクニックをしたいと
言いました。
けれども、智彦は
わざと聞こえないふりをしたので、
麗奈は、聞こえなかったら
もういいと言いました。
しかし、智彦は、
麗奈がデートしてくれることを
光栄だと言いました。
デートではないと反論する麗奈。
会議ではないからデートだと
笑いながら主張する智彦。
麗奈が、いくら違うと言っても
智彦は聞く耳を持たないので
怒った麗奈は、
続けざまに酒を3杯飲んで、
違うと訴えました。
智彦は、分かったと言うと、
麗奈が
酒を飲み過ぎたのではないかと
心配しました。
彼女は、
その日のコンディションによって
酒を飲む量が違う。
今日は絶好調だと言いました。
そうは言っても不安な智彦。
大丈夫だと主張する麗奈。
そして、彼女は
いきなり、シャワーを浴びて来る。
酔っていないから心配しないでと
言いました。
麗奈がスタスタと
シャワールームへ向かうので、
智彦は安心しましたが、
突然、彼女がよろけたので、
彼は麗奈の元へ駆け寄り、
彼女を抱き留めました。
麗奈を心配する智彦。
麗奈はドキドキしながら、
大丈夫だと返事をしましたが
智彦は、少しも大丈夫ではないと
言いました。
53話 麗奈は大丈夫だと言って、智彦から離れ、シャワーを浴びに行きました。
2人は自宅へ戻りましたが、
智彦は、部屋で休むので、
麗奈にも休むように言いました。
智彦は、
飛行機に乗った時から、
顔色が悪かったので、
麗奈は心配しました。
彼女は、智彦のために
温かい飲み物を
用意することにしました。
麗奈が
智彦の部屋の扉をノックしても
返事がなかったので、
彼は寝ているのかもしれないと思い
麗奈は中へ入りました。
そして、飲み物だけ置いて
出て行こうとすると、
智彦は、
「助けてくれ、兄さん。」と
喘ぎながら、
うわごとを言っていました。
麗奈は、しっかりしてと
声をかけながら、
彼は、悪い夢でも見ているのかと
思いました。
そして、
智彦は「やめろ!」と叫んだ後、
目を覚ましました。
彼は、息を切らしながら、
里菜を呼んで欲しいと頼みました。
里菜は、智彦に点滴をしながら、
いつから、この状態だったかと
尋ねました。
麗奈は、よく分からない。
飛行機に乗っている時から
顔色が良くなかったと答えました。
里菜は、どこへ行っていたのかと
尋ねました。
麗奈は✕✕島と答えると、
智彦は、
何も言っていなかったのかと
聞きました。
麗奈は、
一緒に旅行へ行ったわけではなく
智彦が、自分の後を
追って来たと答えました。
里菜は、今後は海を避けるようにと
助言しました。
麗奈は、何か特別な理由があるのかと
尋ねました。
里菜は答えようとしましたが、
智彦が彼女を呼んだので、
話が途切れました。
智彦は、
麗奈を部屋の外に出すように、
里菜に目で合図しました。
麗奈は、それに従いましたが、
自分が知ってはいけない秘密でも
あるのかと不安になりました。
里菜が智彦の部屋から出て来ると、
麗奈は彼の容態を聞きました。
里菜は、
ひと眠りすればよくなるはずだと
答えました。
里菜が帰った後も、
麗奈は、一体なぜ
自分には教えてくれないのかと
思いましたが、
ネガティブに考えるのは止めて
お腹が空いている智彦のために
お粥を作ることにしました。
お粥が出来上がると、
智彦が起きて来て、
何をしているのかと尋ねました。
そして、自分のために
麗奈がお粥を作ってくれたことに
感動しました。
麗奈は、ドキドキしながら
智彦が食べるのを見守りました。
塩加減が丁度いいと感動し、
不思議だと言う智彦。
怒る麗奈。
智彦は、麗奈の作ったお粥を食べて
生き返ったと言いました。
麗奈は、本当に大丈夫なのかと
尋ねると、彼は、
麗奈に心配させたことを
謝りました。
智彦は、だいぶ良くなったと
思ったけれど、
まだだったみたいだと言いました。
それは、どういう意味かと
麗奈が尋ねると、
智彦は、海が怖いと答えました。
誰かが、誕生日を
御祝いしてくれるということは、
その人が生まれてきたことを
喜んでもらえるということ。
おそらく、麗奈は、
誕生日を祝ってもらったことが
あまりなかったのだと思います。
けれども、次の誕生日は、
確実に智彦にお祝いしてもらえるし
もしかしたら、彼の家族にも
祝ってもらえるかも。
最初は璃香に復讐するために
智彦に近づきましたが、
彼と知り合ったことで、
麗奈の交流の輪がどんどん広がり
食事も普通にできるようになり、
誕生パーティを開く夢も
実現すると思います。