73話 麗奈は智彦を愛していることに気づきました。
麗奈は優里の家に泊りながら、
混乱している心を
整理するよう努めました。
言っても信じてもらえないので
優里にさえ、
智彦が自分を死なせたことと
未来から戻って来たことは
言えませんでした。
会社に行っても、
最大限、仕事にだけ集中し、
できるだけ智彦に
会わないようにしました。
そのせいか、智彦は
出張を口実にして、
会社に現れませんでした。
春香に、
何の出張かと聞かれても、
答えられませんでした。
数日後、
会社主催の飲み会に
智彦が遅れてやって来ました。
特別に麗奈の隣の席を
空けておいたと幹事に言われ、
智彦は躊躇いながらも、
お礼を言って、
麗奈の隣に座りました。
気まずい思いの麗奈と智彦。
一方、隣同士に座る2人を見て、
麗奈の隣に座っていた樹奈は、
嫉妬し、
頭がクラクラする、
もう酔ったかもしれないと言って
麗奈の方へ身体を傾け、
わざと、グラスに入った酒を
麗奈にかけました。
うっかりこぼしてしまったと
意地の悪い顔で謝る樹奈。
顔や髪から酒を滴らせながら
樹奈を睨む麗奈。
染みてしまったけれど
どうしようと、
白々しく言う樹奈。
智彦は樹奈に、
もう酔ってしまったのかと
強い口調で尋ねました。
樹奈はニコニコしながら、
智彦に謝ると、
自分が麗奈を拭くと言いました。
智彦は、断りましたが、
樹奈は、申し訳ないので
自分がやると言いながら、
ハンカチを持っている
智彦の手を握りました。
しかし、麗奈はその手を払い退け、
トイレに行って自分で拭くので
大丈夫だと言いました。
店の外で、
樹奈は、くすくす笑いながら、
同僚たちに、
先ほどの麗奈の
怒った顔を見たか。
可笑しくて死ぬかと思った。
飲み会に来てまで、
奥さん気取りしているのが
どれだけ面白かったことか。
昔だったら、想像もできない。
厚かましいのは、
昔も今も変わっていないことを
分からせなければ。
みんなが迷惑に思っているのが
分からないのかと話していました。
しかし、その話を聞いていた麗奈が
彼女たちに近づき、
なぜ、迷惑なのか。
自分は自分の仕事をしているだけで、
社員として
飲み会に参加しただけなのに
何が問題なのかと尋ねました。
焦る樹奈。
麗奈が堂々していることに
戸惑いながら、
樹奈は、麗奈が出席すること自体が
迷惑だということが
分からないのかと尋ねました。
麗奈は、もしかして、
自分がいると迷惑なのは、
樹奈が自分の夫を
好きだからなのかと尋ねました。
それを聞いた樹奈は、
カッとなり、
人を何だと思っているのかと
叫びました。
しかし、麗奈は
先ほど、見たところ、
樹奈は意図的に夫の手首を握り
手の甲に触れたけれど、
違うのかと尋ねました。
樹奈は、
笑わせるな。話にならないと
反撃しましたが、
麗奈は意地悪く笑いながら、
そういうのは、
セクハラではないかと尋ねました。
樹奈は、
何を言っているのか。
証拠はあるのかと息巻きました。
すると、智彦がやって来て、
自分が証拠ではないかと
言いました。
うろたえる樹奈に麗奈は、
これからは気をつけるように。
また同じことがあれば、
自分は何をするか分からないと
警告しました。
悔しがり、涙を浮かべながら
逃げる樹奈。
その後を、慌てて同僚達も
追いかけました。
これでいいのかと、
尋ねる智彦に麗奈は
話があると言いました。
2人は、
公園のベンチに座りました。
麗奈は、智彦と離れている間、
どうすればいいか考えてみた。
智彦は、
最初から全てのことを知っていながら
自分を騙した。
自分はどうしたらいいと思うかと
尋ねました。
そして、
いくら考えないようにしても
会社でも家でも、
智彦と一緒に過ごした時間や
智彦の言葉が思い浮かんできて、
とても辛かった。
自分を騙した智彦が
憎くて恨めしいけれど、
それでも自分は智彦を愛している。
そのことが、
自分をもっと苦しめていると
涙を流しながら打ち明けました。
智彦は、麗奈を抱き締めながら
謝りました。
麗奈は、智彦に
愛していると告げました。
2人は見つめ合い、キスをしました。
一度、樹奈は
同僚たちの前で、
麗奈と優里に正体をばらされて、
恥をかいたのに、
性懲りもなく、
再び、麗奈の悪口を言うなんて、
全く、反省していないようです。
樹奈が麗奈をいじめたり、
悪口を言うのは、
自分より綺麗でお金持ちの麗奈を
貶めたいからだと思います。
けれども、樹奈は
チーム長をしているくらいなので
仕事は、そこそこできるはず。
自分が嫌いな女が
好きな男性と結婚したことを
いつまでも恨んだり、
麗奈を妬んでばかりいないで、
自分を磨き、智彦より、
もっといい男を捕まえて、
麗奈を見返すくらいの気概を
持てばいいのにと思います。