690話 ラティルとタッシールが、良い雰囲気になっています。
ラティルは、
タッシールのボタンを
一つずつ外しながら、
「何かを聞きに来たのに。」
と思いましたが、
彼女は手を止めませんでした。
タッシールは、
ラティルの背中を掴み、
引き寄せながら、
30分前にお風呂に入ったので、
チェリーの香りがすると、
ラティルの耳を噛みながら、
囁きました。
彼の身体を抱きしめている
ラティルは、
タッシールの服の裾を掴み、
彼の肌に鼻をこすりつけましたが
何の匂いもしないと
ため息をつきました。
タッシールが、背中の方で、
何かに触れているのを感じ、
空気が肌に届き、
少し肌寒くなりましたが、
タッシールが大きな手で
彼女の背中を覆ったので
寒くありませんでした。
ラティルはタッシールの体を
歯で噛み、
「痛かったら言ってね」と
囁きました。
タッシールは、笑いの混じった声で
「手荒になった。」と呟くと、
ラティルは抗議し、
再びタッシールに噛みつきました。
彼は、微笑みながら
身体を捻りました。
ラティルは、
こんなことをするために
来たのではないと呟くと、
タッシールは一瞬で
彼女をひっくり返しました。
ラティルは天井を見ながら
横たわりましたが、
目の前にいるのは彼なので
天井を見ることはできませんでした。
そんな彼女の目に
タッシールの目が飛び込んできました。
彼はラティルの真似をするように
歯で彼女を噛んでいました。
ラティルは、
タッシールの頬を両腕で包み込み、
彼女は、「すごい」と呟きながら
首を傾げました。
タッシールは、
自分すごいのか、それとも
ラティルのご機嫌がすごくいいのかと
からかうように尋ねました。
ラティルは答える代わりに、
タッシールを引き寄せました。
彼は片腕をラティルの方へ伸ばすと、
彼女はタッシールの腕を取り、
顎を高く上げました。
彼女が足を揃えると、
彼の逞しい腕が彼女の膝の間に
挟まれました。
長い間、頑張ってきたけれど、
彼と一体になるのは
簡単なことではありませんでした。
彼はタフな男でした。
ラティルは、
タッシールを強く抱き寄せ、
精一杯、抱きしめました。
残照の中、
タッシールは後ろから
ラティルの心臓を包み込み、
彼女を自分の方へ引き寄せました。
ソファーは
十分な広さがありましたが、
二人が並んで
ゆったりと横になれるほどの
広さではありませんでした。
ラティルは
ソファーから落ちないように
さらに、自分の方へ
タッシールの背中を押しましたが
しかし、少し動いた途端、
彼女はただならぬ気配を感じました。
彼女は一瞬、呼吸を止め、
興奮しないでと言いました。
タッシールは、
ラティルが、
必ず自分の腕の中に入って来ると言って
ラティルの肩と耳を交互に噛み、
自分たちは、夫婦になるために
生まれてきたのだと思うと言いました。
ラティルは、
体に力が入らないものの、
何とか頭を上げて、
タッシールの顎にキスをしました。
そして、
クッキーを食べている時に
なぜ、こんなことになったのか
わからないとぼやくと、
タッシールは、
ラティルが自分の唇を噛んだと言って
嬉しそうに微笑みました。
ラティルは目を細め、
タッシールがお風呂に入った理由を
尋ねました。
彼は、
ラティルは知っているはずだと答え
微笑みました。
ラティルは頭をもたげ、
彼の顎を見ると、
しぶしぶ起き上がりました。
タッシールと
一緒にいるのはいいけれど、
やらなければならないことが
たくさんありました。
タッシールは横になったまま、
もう少し居てくれないのかと尋ね、
手を伸ばしました。
ラティルは両手を握りしめて
立ちすくんでいましたが、
手を緩めると、タッシールに
仕事があると告げました。
タッシールは、
昔、自分が働きすぎると
叔父に口うるさく言われた。
もし自分が結婚して、
妻から一緒にいてほしいと言われても
仕事を続けるかと
聞かれたことがあると話しました。
ラティルは、
ソファーの端に掛けてある
シャツに腕を通し、
ボタンをかけました。
タッシールは微妙な笑みを浮かべ、
ラティルの背中をくすぐり、
奥さんになる人は、
自分が忙しいことを
わかってくれると答えたと
話しました。
ラティルは
タッシールの方を向き、
彼の足首を叩きました。
彼は、自分よりも
ラティルの方が忙しいことに
腹が立つと言いました。
そして、
ラティルの肩を揉みながら
少し横にならないかと、
諭すように言いました。
しかし、ラティルは、
横になったら寝てしまいそうだと
首を横に振りました。
彼女の体はとても重く、
深呼吸をしたくなるような状態でした。
しかし、1時間後、
会議があるので、
ラティルは急いで部屋に戻り、
服を着替える必要がありました。
帰る前にラティルはタッシールに
手紙をどうするか、
ミロの宮廷に持って行くかどうかを
尋ねましたが、
彼は、ミロの王たちと、
彼らが何に関与していたかの情報を
調べていた黒魔術師が、
カリセンという力のある国に
情報を持っていけるので、
それを待つのがいいと答えました。
ラティルは、それに同意し、
タッシールは、何が起きているか
教えてくれと頼みました。
ラティルが晴れやかな顔で
部屋を出て行った後、
ヘイレンは、タッシールに
彼女に言わなければならないことを
話したかどうか尋ねました。
ラティルは、
タッシールと話し合ったことの
可能性について考えました。
アイニの関与により、
ミロが、カリセンに申し立てをするには
持っている手紙で十分だけれど、
ミロは非常に小さな国なので、
王たちがザリポルシ姫やアイニと
関わっているという証拠があれば、
ミロより先に、
カリセンが申し立てをする方が
より意義深いものになります。
数日後、
王家が関与している証拠を
探していた黒魔術師が
手紙を持ってやってきて、
ラティルに見せました。
これらの手紙は、
カリセンで彼の使命を果たすのに
十分なものでしたが、受取人が
「陛下」となっている手紙があり、
魔術師もラティルも、
それが誰を指しているのか
分かりませんでした。
そこで、ラティルは、
手紙をカリセンに送るよう
黒魔術師に指示し、
その疑わしい手紙は
保管することにしました。
この後、
侍従長が執務室に入ってきて
ラティルに、今日が、
メラディムの誕生日であることを
思い出させました。
彼女は驚き、血人魚とはいえ、
側室である彼を忘れていたことに
気まずさを感じました。
彼女はすぐに
ハーレムのメラディムの所へ行き、
誕生日プレゼントに何が欲しいか
尋ねました。
メラディムは、
ギルゴールの死体が欲しいと言いますが
ラティルは、
それは無理だと返事をしました。
次にメラディムは、
ギルゴールの腕が欲しいと言いますが
ラティルは、それも叶えられないと
返事をしました。
メラディムは、
今度は書記長になりたいと頼みましたが
ラティルは、
そのような贈り物はできないと
返事をしました。
最後に、メラディムは
人魚との戦いに同行してほしいと
ラティルに頼みました。
メラディムは、
人魚の王から受け取った手紙で
気分を悪くしたからでした。
ラティルは同意すると、
メラディムは
宮殿を出ることになるけれど、
その場所はとても美しいし、
ラティルは
側室を連れて行くことができると
言いました。
補足:メラディムが不機嫌な理由
ラティルの側室について
書かれているタリウムの雑誌の中で
メラディムは「人魚の王」として
紹介されているけれど、
彼は血人魚の王なので、
人魚の王は、
自分のアイデンティティを
横取りされたと思い、
気分を害しています。
一方、メラディムは、
人魚の王が、自分の身分を
簒奪すると考えていることを知り、
気分を害し、
人魚と戦うことになりました。
アイニと、
ミロの王たち、ザリポルシ姫の間に
何があったのか分からないので
モヤモヤしています。
タッシールと、
とても良い雰囲気になったのに
最後まで行かなかったのでしょうか。
こちらもよく分からなくて、
少しモヤモヤしていますが、
この作者様が、愛のシーンを
露骨に描写されないのが
私は好きなので、
想像にお任せということに
しておきます。