63話 次は未来の番です。
会社の食堂で、
野菜の上に肉を乗せて、
肉の上に薬味を乗せてと
鼻歌を歌っている未来に、百合子は
今日のランチメニューは
未来の大好物だと言いました。
未来は、なぜ、
こんなに来るのが遅かったのか。
美味しいランチが
売り切れたらどうするのかと尋ね、
なぜ、百合子の口紅が
取れているのかと指摘しました。
百合子は、
歯を磨いてきたからだと
返事をしましたが、
未来は、食事をする前に
歯を磨くのかと指摘すると、
百合子は、しらばっくれ、
未来の向う脛を蹴りました。
未来は、
社内恋愛でお腹がいっぱい。
いつでも顔を見られて、
ご飯も一緒に食べられると言うと
百合子は、真っ赤になり、
お代わりはいらないかと、
自分の肉を
未来にあげようとしました。
美紗も、未来が出張に行ったら
食べられなくなるから、
たくさん食べておくようにと
勧めました。
未来は
短くて1年、長くて3年、
インドネシアに行くことになると
嘆きました。
美紗は、未来が、
まだ田辺と結婚していないし、
すこし不安ではないかと言いました。
未来は自分の頭を叩き、泣きながら
自分の物だからと言って、
額に判子を押すこともできないと
嘆きましたが、
最初から、法的に
判子を押せばいいことに気づきました。
数日後、田辺のカフェで、未来は、
天国でも、
先を争って食べたがると言って、
美味しそうに
クレームブリュレを食べました。
田辺は、
新メニューにしようと思ったけれど
未来を見たら、
できなくなったと言いました。
未来は、その理由を尋ねると
田辺は、
未来にだけ作ってあげたいから。
言ってくれればいつでも作ると、
答えました。
しかし、未来は、
自分がインドネシアに行ったら、
田辺が作ってくれても
食べられないと言いました。
田辺は、未来が外国に行ったら
自分にとても会いたくなると思うかと
尋ねました。
未来は、
もちろんそうだ。
田辺が目の前にいても、
いつも会いたいと思っていると
答えました。
田辺は、
その言葉が聞きたかった。
自分も、こうやって会っていても
未来に会いたいと言いました。
すると、未来は、なぜ、自分に
結婚しようと言わないのかと
尋ねました。
結婚と聞いて、田辺が驚いたので、
未来は、なぜ驚くのか。
まさか、自分と
全く結婚する気がなかったのか。
遠く離れても大丈夫なのかと
問い詰めました。
そして、
田辺の前に指輪を突き出すと、
自分は彼を置いて
遠く離れたくない。
これは、自分たちの初めての
ペアリングで
プロポーズリングだと言って
田辺に結婚を申し込みました。
彼は、未来が本気で
プロポーズしてくれたことに
お礼を言いましたが、
返事に詰まっていると、
未来は、
プロポーズをキャンセルする。
どうせ、返事をくれなかったから
この話は
聞かなかったことにしてと言って
席を立ちました。
田辺は、少し待ってと言いましたが
未来は、
絶対に追いかけて来ないで、
電話もかけて来ないで。
追いかけてきたら、
このまま終わりにする。
また明日会おうと言って
帰ってしまいました。
未来は歩きながら、
田辺は明らかに慌てた様子だった。
もしかして、
自分と結婚したくないのかと
思いました。
バッグから、
指輪を取り出して
渡したのか。
もしも、亘が、
そんな風にプロポーズしたら
どうするのかと尋ねる美紗に、
未来は怒りながら、
「この野郎、真昼のカフェで
指輪を一つ渡して
プロポーズするのか?」と
言うだろうと答えた後
涙を浮かべながら、
何が問題だったのか、
今、分かったと言いました。
美紗は、
カフェで急にプロポーズされたら
田辺も慌てたと思う。
もう一度、計画すれば大丈夫だと
未来を慰めました。
百合子も、
これからは、田辺も
心の準備をしてくるだろうと
言いました。
未来は、
自分はあまりにも無神経だった。
それでは、高級レストランを
一日借りたらどうかと
尋ねました。
美紗は、ホテルの方が
プライベートを保てて
いいのではないかと提案しました。
百合子も、
2人だけの時間を楽しく過ごしてと
応援しました。
しかし、未来は、
自分も田辺も恥ずかしがり屋だから
一緒に、一度もホテルに
行ったことがないと
照れながら言いました。
美紗と百合子は、
意外と田辺は真面目だ。
正攻法ではダメだと、
未来に聞こえないように
ひそひそ相談した後、
美紗は、
今週末に雨が降るようだけれど
歴史で証明された
常套手段を利用しようと
提案しました。
未来と田辺は港にいました。
風に当たるにはぴったりだ。
すごくいい。
自分が、こういう田舎の雰囲気を
好きなことが、
どうして分かったのかと
田辺は未来に尋ねました。
彼女は、
田辺に関することなら
全て知っている。
今、船に乗って夕方の船に乗れば
夜には東京へ戻れると言いましたが
心の中では、
一匹の危険な狼になるつもりだと
考えていました。
田辺は、
未来が随分大きなカバンを
持って来たことを
不思議に思っていると
彼女は、
女性は近い所へ行く時でも
荷物が多いものだと
言い訳をしました。
船が出港しました。
目的地に到着すると、
記念写真を撮ったり、食事をして
楽しい時間を過ごす未来と田辺。
未来は美紗に、
無事に到着した。
服、洗面用具、ヘアアイロン。
指輪も持って来た。
民宿の女将には、
事前に話をしてあるけれど、
船は確実に航行しないよねと
メールで確認しました。
美紗は、
天気予報によれば、
もうすぐ雨が降ると返信し、
頑張ってと未来を応援しました。
そうしているうちに
雨が降ってきました。
田辺が傘を持っていないことを
確認すると、未来は、
夕方まで、
あそこで雨宿りをしようと言って、
民宿を指差しました。
田辺は、
予約のキャンセルが出たと
聞いたけれど、
暖房が点いたままで良かったと
言いました。
未来は、心の中で
その予約をしたのは実は自分だと
舌を出しました。
田辺は、
鼻水を垂らし、震えている未来に、
雨が止んだら起こしてあげるので
布団の中に入って、
身体を温めるよう言いました。
布団の中は暖かく、
未来は眠くなってきましたが、
眠ってはいけない、
プロポーズの準備をしなければと
考えていました。
しかし、結局、眠ってしまいました。
そして、はっと目が覚めると、
田辺は笑顔で、
よく眠れたかと尋ねました。
本当に寝てしまったことに気づき
焦った未来は、
自分はどのくらい寝ていたのかと尋ね
女将に、
出航時間を聞かなければならないと
言いました。
田辺は、
そのままでいるように。
時間になれば、
教えてくれるだろうけれど
教えてくれなくてもいいと
言いました。
すると、女将がやって来て
雨のせいで、
出航がキャンセルになった。
仕方がないので、
一泊しないといけないと告げました。
未来は、
船が出港しないのかと
驚いた振りをし、
田辺は、仕方がないので、
ここに一泊すると
女将に告げました。
彼女は了承すると、
食事を運んでくると言いました。
雨の降る中、縁側に座り、
田辺は未来の肩を抱き、
未来は田辺を抱き締めていました。
お腹がいっぱいになり、
良い雰囲気を醸し出す雨音。
未来は、
全てが完璧だと思いました。
プロポーズをするのは今だと思い、
田辺を見つめ、
話したいことがあると
言いかけましたが、
彼のキスが未来の言葉を遮りました。
10秒だけ待ってと言う田辺に
未来は、目を閉じた方がいいかと
尋ねました。
そして、田辺は
ポケットに手を入れましたが、
そこへ爆音とともに
ヘリコプターが現れ
鈴木未来は応答せよと
マイクを通して話しかけてきました。
その声は亘でした。
なぜ、ここに兄が出て来るのか
未来は分かりませんでした。
一度も田辺と
ホテルに行ったことがないという
未来に、やむを得ず、
田辺と共に一つの部屋で
過ごさなければならない状況を
作り出し、
その後、ロマンティックな雰囲気に
移行させるという作戦は、
大成功しそうだったのに、
なぜ、ここで亘が現れ来るの?
これも、美紗の作戦の一つなの?
それよりも、
悪天候で船が出港しないのに
ヘリコプターは飛ばせるのかと
突っ込みたくなりました。