729話 ラティルを切りつけようとした人を、ラティルは捕まえました。
ラティルは、後でゲスターを
連れて来ようと思いました。
もしかしたら、ランスター伯爵なら
何か知っているかもしれないと
考えたからでした。
ラティルは家の中を見回し、
縄を持って来ると敵を縛り上げ、
家の他の場所を確認しましたが、
誰もいなかったので、
家の外を通りかかった吸血鬼を呼び、
捕まえた人が出て行かないように
家の中を監視してほしいと頼みました。
吸血鬼は頷くと、家の扉の前に立ち、
それほど多くの怪物が
ウロウロしているわけではないし、
自分が目にした怪物は、
すでに誰かが始末していることを
ラティルに告げました。
ラティルは通りに戻ると、
本当に誰もいないことに
気づきました。
ラティルは歩きながら、
侵入してくる怪物の数が少ないのに、
あのように人を避難させたのは
非常に効率が悪かったかもしれないと
思いましたが、
怪物が強いかどうかは
戦ってみないと分からないし、
たとえ少数でも強ければ
普通の人が簡単に
立ち向かえるわけがないと思い
そのように考えたことを反省しました。
そして、最終的に、
自分たちが強いからこうなった。
敵が弱いのではなく、
自分たちが非常に強かったから、
多少の怪物が現れても、
危機ではないと思えたのだど
結論づけました。
ラティルが
考え事をしながら歩いていると
ゲスターが追いついて来ました。
ラティルは驚いて
手帳に書いておいた記号を見せて、
これは何だと思うかと尋ねました。
ゲスターは手帳を見て眉をひそめ、
不思議そうな顔で
ラティルを見ました。
彼女は、
危ないものなのかと尋ねると、
ゲスターは、
なぜその記号を描いたのかと
尋ねました。
ラティルは自分が描いたのではなく
怪物がいた家の壁で見つけて、
それを写しただけだと答えました。
ゲスターは彼女を見ると、
ドミスにその記号を教えたのは
自分だと告げました。
レオンと側近は
ライオンの宮殿(皇帝の墓)を
後にしました。
レアンが深刻そうな顔を
しているように見えたので、
側近は大丈夫かと尋ねると、
レアンは、
大丈夫だ。
期待通りだったけれと、
あまり良くなかったと答えました。
そして、2人は帰路につくと、
アライグマは彼らの後を追いました。
その後、ライオンの宮殿から
第三の男が現れ、
アライグマの座っていた場所に近づき、
地面に落ちている毛を
拾い上げました。
彼は、
そこにアライグマがいたことに
気づきました。
ラティルは、記号を見つけた場所まで
ゲスターを案内しました。
歩いている間、
ラティルは疑問でいっぱいでした。
ランスター伯爵が、
ドミスにその記号を教えたのなら、
誰がそれを使ったのだろうか?
家の外にいた吸血鬼は、
ラティルとゲスターを通すために
脇に避けました。
ゲスターが記号を見に行っている間、
ラティルは家の中を見て回りましたが、
その時、敵がいないことに気づき、
外にいる吸血鬼に、
誰か出て行ったかと尋ねましたが、
吸血鬼は「出て行っていない」と
答えました。
ラティルは、再び家の中に入り、
近くの椅子に座ると、ゲスターに
どのような意図で、
ドミスに、あの記号を教えたのかと
尋ねました。
彼は、ドミスが対抗者や
神殿の騎士たちと戦っていた時に
その記号を教えたこと、
その記号をドミスの血で描けば
彼女と同等の力か、
彼女よりも強い力を持つ人以外、
それを見た人は誰でも、
彼女の強さと同じ影響を受けると
告げました。
それは、どういう意味かと
ラティルが尋ねると、
ゲスターは、
普通、怪物は
恐怖で震えたり逃げたりするし、
人間は押し潰される感覚を覚えるけど
ドミスのように強ければ
何も起こらないと教えました。
その瞬間、ラティルは
敵が考えていたことを思い出し、
ゲスターを不安げに見つめました。
ラティルは、アニャドミスが
目覚めた可能性はないかと
尋ねましたが、ゲスターは、
アニャドミスが姫に転生した以上、
その可能性はないと指摘しました。
ラティルの不安が少し軽くなりました。
ゲスターは、
ドミスの血液が使われたことが
気になると言いました。
彼女の遺体は、
人が近づきにくい所にあるけれど、
もしかしたら、生前、彼女の血が
抜き取られていたかもしれないと
言いました。
ラティルは、
全てのことがタリウムで起こっており
ここにアイニがいないことから、
ドミスの血の問題に
レアンが関わっているのではないかと
考えましたが、後になり、
ドミスのことを知る者がいるとすれば、
ラティルよりも
ドミスの記憶持っているアイニだろうと
思いました。
宮殿に到着したラティルは
タッシールを自分の部屋に呼び、
そこで二人は何が起きたのかを話し合い
ラティルは、
自分が発見したものについて
タッシールに伝えました。
彼はラティルに、
もし、レアンとアイニが手を組んだら
アイニはロードのイメージ浄化を
阻止するだろうと指摘しました。
ラティルがロードであると、
正体を明かしたとしても、
ラティルがロードの評判を上げれば
何の効果もないからでした。
タッシールは、
ドミスの血で描いた記号について
ラティルから聞いたことで、
すべての怪物が、
宮殿の城壁に集まっていたのは、
宮殿に入ろうとしていたのではなく、
ラティルが見つけた記号を怖がり、
逃げて来たと結論付けました。
ラティルはタッシールに、
アイニがタリウムにいるかどうか
尋ねましたが、彼は、
その必要はない。
アイニのような黒魔術師が
彼女の代わりに
何人か働いているからと指摘しました。
再び鐘が鳴り響きましたが、
今度は落ち着いた様子で、
民衆に帰っても大丈夫だと
告げました。
ラティルはこめかみを押さえながら、
レアンを許したことで、
アイニが行動を開始したと
思っているかと、
タッシールに尋ねましたが、
その瞬間、
ラティルを呼びながら
乱入して来たアライグマに
言葉を遮られました。
彼女は、
素早くアライグマを抱き上げました。
怪物が来ている中、
皇帝の墓に行くということは、
ドミスの血で書いた記号のせいで
怪物が宮殿に近づくのを
知っていたのでしょうか。
そして、
レアンが皇帝の墓に行った目的は
何だったのでしょう?
彼の期待通りというのは、
ラティルが父親の墓を訪れたこと?
良くないこととは、
ラティルが父親の霊を呼び出して
彼の本音を聞き出そうとしたこと?
それとも、他に何かあるのでしょうか。
レアンの行動が怪しすぎます。