740話の要約 ラティルは先皇帝に、秘密の部下について尋ねましたが・・・
父の霊が
ため息をつくのを見たラティルは
幽霊も、
ため息をつくことができるのだと
思いました。
幽霊のため息は、
寒い日の白い息のようでした。
ラティルは、
話したくないのかと尋ねました。
彼女は
弱々しい様子を見せたくなかったけれど
その声は、自分で聞いても
元気のない声でした。
先皇帝は、
ラティルに会えて嬉しいけれど、
彼女が自分と話せるのは
黒魔術師が側にいるからか、
彼女自身が黒魔術師だからだと
指摘しました。
ラティルは、
自分が聞きたいのは、
そんなことではないと言いました。
すると、幽霊は、
ラティルに近づきました。
吸血鬼のそばにいる時とは違う冷たさが
伝わって来ました。
先皇帝は、
魂を見ているからこそ、
より明確に分かる。
ラティルは、
本当に素晴らしい魂を持っていると
告げました。
ラティルは、
それなのに、秘密の部下について
話してくれないのかと尋ねました。
先皇帝は、後ろに下がると、
ラティルが正しい皇帝であることを
証明すれば、皆落ち着くと言いました。
ラティルは、
自分は良い皇帝として振る舞ってきた。
国民のために戦ってきたし、
何度も国民や他国の民を救ってきた。
父親は知らなくても、
秘密の部下たちは全て見ていた。
それなのに、
自分のことを認めないと訴えました。
ラティルは視線をそらし、
泣かないよう、
自分を落ち着かせるために、
墓の中を歩き始めました。
父の亡霊は彼女を見て、
もし、自分が、
秘密の部下たちの正体を教えたら、
彼らを亡き者にしないかと尋ねました。
ラティルは歩くのを止め、
そんなことはしないと、
微笑みながら父親を見つめました。
しかし、
先皇帝もカルレインもゲスターも
ラティルがその表情をする時は、
彼女が嘘をついていることを
知っていました。
ラティルも父親の反応を見て、
彼が自分を信じていないことが分かり
微笑みながら、顔をしかめました。
もちろん亡き者にすることは
考えていましたが、
すぐに実行せず、
少なくとも機会を与えるつもりでした。
若い頃のラティルは、
もっと優しかったと、
先皇帝の笑うような言葉に、
ラティルは口を閉じました。
ゲスターが、
時計をちらっと見ました。
先皇帝はラティルに、
彼が知っている情報を教えると
告げました。
それは、ラティルが
ロードであろうという情報と
傭兵王が吸血鬼と推定されるという
情報でした。
先皇帝が、
自分の情報を知っていたと分かり、
カルレインの瞳が
一瞬にして揺れましたが、
先皇帝はラティルを見ていたため、
彼に気づきませんでした。
さらに、サーナット卿も、
何か関係しているという
情報もありました。
まさか父親が
カルレインとサーナット卿の情報を
知っているとは思わなかったので、
ラティルも驚きました。
先皇帝は、ラティルに
サーナット卿が、
本当に関係があるのか
聞きませんでした。
それだけで十分だと言わんばかりに、
ただラティルを見ていました。
ラティルは再び、
秘密の部下が誰であるかを
教えるように、
すぐに命を奪ったりしないと約束すると
主張しましたが、
皇帝はそれでも拒否しました。
ラティルは、
皇帝の腕を取ろうとしましたが、
亡霊であるため、
それもままなりませんでした。
カルレインは、
先皇帝が、自分が誰であるかを
認識しているのかどうか
首を傾げましたが、
先皇帝は彼の顔を知らないようで、
ラティル以外の者に、
注意を払いませんでした。
ラティルは、
父親の部下たちが、
父親が自ら命を絶ったことを
自分のせいにしている。
父親の部下たちは自分を襲うだろう。
父親は、それを望んでいるのかと
尋ねました。
すると、先皇帝は、
星は雲の下から見るからぼやける。
と意味不明の言葉を口にしました。
言葉の意味が分からないラティルは、
父親の表情を見ましたが、
煙のような体では、
よく分かりませんでした。
続けて父親は、
雲の上に行けば、
星ははっきりと見える。
自分は星をはっきり見た。
と言いました。
ラティルは、
自分が幽霊になったら
星が見えるようになるのかと
尋ねましたが、
先皇帝は大笑いし、
ラティルを慈しむかのように
彼女に手を近づけましたが、
触れることはできませんでした。
先皇帝はラティルに、
夢の中で、自分がこの言葉を
彼女に言ったと
皆に伝えるように話しました。
ラティルは、
どういうことかと尋ねましたが、
先皇帝は、
自分は間違っていても、
ラティルが正しいなら嬉しい。
自分はいつもラティルのことを
考えている。
もし、自分が皇帝でなかったら、
国よりもラティルを選んでいたと
告げました。
レアンの指示を受けた警備兵は
潜入の機会をうかがっていましたが、
警備兵全員が、
人垣のようなものを作っており、
気づかれずに、中に入ることは
不可能でした。
ラティルが何をしているのか、
他の警備兵に聞くと、
魔術師が爆破装置を解除した後、
問題がないことを
確認していると説明を受けました。
レアンの指示を受けた警備兵は、
なぜゲスターとカルレインを
連れて行ったのかと尋ねると、
別の警備兵は、
一人で墓に入るのが怖かったのだろうと
答えました。
その時、墓から出てきたラティルが
潜入しようとした警備兵を
じっと見つめると、
彼は緊張して、
すぐに目をそらしましたが、
自分の気のせいだと思い、
もう一度ラティルを見ると、
彼女は、まだ自分を見ていたので、
恐怖で気絶しそうになりました。
レアンは5杯目のコーヒーを
飲んでいた時、誰かが扉を叩き、
レアンの別の側近が入ってきて、
彼の前にひざまずくと、
ラティルが無表情で墓から出てきたので
一見すると先帝の亡霊と
話したのかどうか分からないと
報告しました。
レアンは、しばらく考えた後、
ラティルに付き添っていた側室は
誰かと尋ねました。
側近は、
カルレインとゲスターだと告げました。
レアンは、
カルレインが吸血鬼ではないかと
疑っていましたが、
ラティルは、なぜゲスターを
連れて行ったのだろうかと
疑問に思いました。
翌日、ラティルは大臣たちに会い、
ライオンの宮殿から爆破魔法は
取り除かれたかと聞かれました。
ラティルは頷いて、
もう安全だと答えましたが、
とても心配そうな顔をしていたので
シャレー侯爵は
どうしたのかと尋ねました。
ラティルは、墓の中にいたせいか、
夜中に父親の夢を見たと告げました。
それを聞いた大臣たちの中には
震え上がる者もいました。
彼らは、ラティルが
黒魔術師を手に入れていることを
知っているので、
彼女が夢について、
詳しく語った内容から、
それはおそらく、
先皇帝の亡霊であろうと考えました。
ラティルは、
父が自分に言った言葉を告げました。
そして、
父が最後に言った言葉を思い出すと、
彼女の目から涙が溢れたので、
シャレー侯爵は、
彼女にハンカチを手渡しました。
ラティルは、
父の言葉の意味が
分からなかったけれど、
自分がきちんと役目を果たしていると
言いたかったのだろうと話しました。
その瞬間、
ラナムンの父とゲスターの父は
彼女を褒め称えました。
先皇帝の部下たちは、
危険を回避するため、
互いに会わないようにしていましたが
この状況下では、
そういうわけにもいかず、
久しぶりに一同会しました。
部下の一人は、
ラトラシル皇帝の夢の中で
先皇帝が言ったことの一部は、
彼女について調査した際に、
先皇帝が、
よく言っていたことだけれど、
今回は、
さらに言葉が付け加えられていると
指摘しました。
部下の1人は、
ただの夢ではないのかと言いましたが、
別の者は、
先皇帝が夢の中で、
皇帝に話をしたなんてありえない。
皇帝が先皇帝本人から
話を聞いたに違いないと言いました。
部下たちが言い争う中、
ずっと黙っていた一人が、
先皇帝の霊を呼んだのは
ラトラシル皇帝だが、
その話をしたのは先皇帝の霊に
間違いないだろう。
もしかしたら先皇帝は、
亡くなった後、
ラトラシル皇帝に対する
自分の考えが間違っていたことに気づき
そのために、
あんなことを言ったのかもしれないと
意見を述べました。
その後も、
先皇帝は、ラトラシル皇帝に脅されて
あんなことを言ったのかもしれない。
亡くなった皇帝を、何で脅すのか?
レアンを皇子を、国から追い出すと
脅したのかもしれない。
それなら先皇帝は、
他の暗号を使って、
自分たちにわかるように話したはずだ。
ラトラシル皇帝については、
自分たちにわかるように話してくれた。
亡くなった父親の魂を呼び出すなんて
彼女は不道徳だ。
彼女は、何を守っているのか。
先皇帝の意思が最優先だ。
と、様々な意見が出されました。
先皇帝の死後、
これほど部下たちの間で
意見が分かれることは初めてでした。
その中の一人が舌打ちをし、
先皇帝の意思がどうであれ、
何とか彼らの意見をまとめたいと
考えていました。
星と雲の話の意味について、
明らかにされていませんが、
星は、おそらく
ラティルのことではないかと
思いました。
それでは、
雲が一体、何を意味するのか。
先皇帝が、
最初の部分をよく話していたと
部下たちが言っていたので、
雲はレアンのことなのではないかと
思いました。
部下たちにとって、
レアンは大きな存在で、
彼がいるせいで、
ラティルの本当の姿が
よく見えていないという
意味ではないかと思いました。
けれども、国民のためを思い、
ラティルを亡き者する方を
選ぶしかなかった。
けれども、彼が皇帝でなければ
国よりもラティルを
選んでいたという言葉から、
先皇帝は、
ラティルを愛していたのは
間違いないと思います。
けれども、ラティルからしてみれば
父親は、自分よりも国を選んだので、
父親に裏切られたという気持ちは
消えないように思います。