749話の要約 大神官のことは愛せないと思うラティルでしたが・・・
ラティルはとても恥ずかしくて、
もう一度洗面所に駆け込み、
両手で顔を覆い、
無言で叫びました。
ラティルはザイシンが好きでした。
彼は星のように輝く男で、
正しい心を持ち、美しく、
純粋で神聖な人でした。
ザイシンは外から扉を叩き、
ラティルに大丈夫かと尋ねました。
しばらくすると、
ラティルは洗面所から出て、
ザイシンの顔に両手を当てて
自分を見えないようにしてから、
「好きだ」と告げました。
ラティルはザイシンの顔が
明るくなるのがわかりましたが、
しかし、ラティルが、
「キスしか、したくない」と
言うのを聞くと、
彼の顔が石のように硬くなりました。
ザイシンは、
自分はとてもハンサムだと思うのに、
何が問題なのかと尋ねました。
ラティルは、容姿の問題ではなく、
彼は美しいけれど、
大神官だからと答えました。
ザイシンは、
だからといって不可能ではないと
言いましたが、
ラティルは顔を赤らめながら、
ザイシンの身体の問題ではなく、
自分の心の問題だ。
ザイシンはとても優秀で、
とても神聖な人だから、
自分は、ザイシンの身体を
受け入れるべきではないと思うと
言いました。
ザイシンは、
そんなことができるのかと
尋ねました。
ラティルは、
そうでなければならないと
答えましたが、
ザイシンには、
何の慰めにもなりませんでした。
クーベルはザイシンに、
彼が側室になったとはいえ、
偉大な大神官であり、
これまで大神官は、
誰一人として結婚しなかったので、
ラティルの言う通りだと思うと
言いました、
ザイシンは、
不思議だ。多くの人が
自分に言い寄って来るのに、
なぜラティルは自分に
触れようとしないのだろうか。
彼女がロードであると
知っているからだろうかと
考えました。
クーベルはザイシンに
何冊かの祈祷書を渡しました。
ザイシンは本にかぶりつき、
運動をして、
心を落ちかせようとしましたが
効果はありませんでした。
ザイシンは、
神と運動は両立できるのに、
なぜ愛と神は両立できないのかと
クーベルに尋ねました。
翌日、ザイシンは、
朝早く起きて運動した後、
警察署に行きました。
そこでは、誰もが彼の姿を見て驚き、
彼を投獄したことに
罪悪感を覚えました。
やはり、彼は偉大な大神官でした。
ザイシンは、
ぬいぐるみについて尋ねると、
警官の一人が
ゴミ箱に捨てたと告げました。
すると、
大神官が慌てた顔をしたので、
警官たちは、
あのぬいぐるみは、
呪われた物だったのだと思いました。
ザイシンが、
焼却炉やゴミ置き場の周りを
心配そうに歩いているのを見た
秘書の一人が、
ラティルに報告しました。
ラティルはその話を聞きながら、
ザイシンが、
そのようにしているのは、
前夜の会話のせいではないかと
心配になり、
妙な罪悪感を覚えました。
ラティルは大神官を
連れて来るよう頼みました。
ザイシンが目の前に現れた途端、
ラティルはとても恥ずかしくなり
しばらく声が出せませんでした。
前日の出来事のせいで、
こんな風になったのかと聞くのも
恥ずかしいと思いました。
しかし、ザイシンは、
クラインの人形を失くしたと
先に話を始めました。
ラティルは、
クラインの人形のことを忘れていたので
最初、何のことか分かりませんでした。
ザイシンに言われて、思い出すと、
警察署で見つからなかったのかと
尋ねました。
ザイシンは捨てられてしまったと
答えました。
ラティルは、ほっとして彼に近づき、
彼の肩を叩きました。
自分がザイシンと
一緒に寝なかったことで、
悲しんでいるのでなければ、
できる限り慰めてあげようと
思いました。
そして、ザイシンには、
大丈夫。
クラインはきっと騒ぐだろうけど、
ザイシンのせいではないし、
もう、どうしようもないと言いました。
しかし、ザイシンは
すっきりしませんでした。
ラティルは、
ぬいぐるみを壊したのは、
未知の犯罪者だと思っているけれど
壊したのは姫でした。
自分が投獄されたのは
レアンのせいであり、
ぬいぐるみを捨てたのは
捜査官のせいでした。
しかし、ぬいぐるみの件で
皇帝を失望させたのは
彼自身でした。
ザイシンは、
そう考えているうちに、
妙な不公平感が湧いて来ました。
ラティルは、ザイシンの
雨に濡れた子犬のような顔を見て、
心が重くなりました。
ザイシンは、
落ち込んでハーレムに戻りました。
前日はラティルに拒絶され、
今日はぬいぐるみが見つからず、
彼は嫌な気分になりました。
湖を眺めようと腰を下ろしたその時、
隣に誰かが座りました。
そちらの方を振り向くと、
ザイシンは驚きながら、
タッシールの名前を叫びました。
普段、ザイシンは、
タッシールに対して、
そのような反応をしないけれど、
前日、2人とも、
同じ女性を愛していると言ったせいか
今は、タッシールの笑顔を見るのが
辛いと思いました。
タッシールはザイシンに、
クラインのぬいぐるみのことを
聞いたと話し、
協力を申し出ました。
ザイシンは、
なくなったぬいぐるみを
見つけることができるのかと
尋ねました。
タッシールは、
笑顔でザイシンを見つめ、
見つけることはできないけれど、
別の人形を作ることはできると
言いました。
そんなことができるのかと、
ザイシンが尋ねると、
タッシールは、
ぬいぐるみを作った人を
探せばいいと答えました。
クラインは皇子なので、
彼が持つぬいぐるみに、
どのような素材を
使ってもいいわけがなく、
良質の素材を使っているはず。
高品質のぬいぐるみを作る店は
見つけやすいので、
作ってもらうのは簡単だと
言いました。
そして、ザイシンが
こんなに悲しんでいるのを見ると
胸が痛むので、彼のために、
ぬいぐるみを用意すると
告げました。
ザイシンは感動して、
目を震わせながらお礼を言うと、
タッシールは侍従と一緒に
立ち去りました。
ザイシンは、
とても慰められましたが、
なぜ、タッシールが、
自分を助けてくれたのだろうかと
ふと違和感を覚えました。
大神官から遠く離れると、
ヘイレンは、
なぜ、タッシールが
必死に大神官を助けようとしたのか。
大神官はいい人だけれど、
これは生死にかかわる問題ではない。
彼を見捨てても、
大神官と皇帝との関係が悪化するか、
クラインとの関係が悪化するかの
どちらかだ。
からかった後、
知らないふりをすれば
良かったのではないかと尋ねました。
ヘイレンは不審に思っていました。
なぜなら、タッシールは、
必要な時に
側室同士の言い争いを助長し、
その後、見て見ぬふりをした
過去があるからでした。
ところが、タッシールは
眉を顰めながら、
大神官は善人だからと答えたので、
ヘイレンは、
それが理解できませんでした。
ヘイレンは、
大神官のことが好きだから、
危険を冒してでも助けたのかと尋ねると
タッシールは、
大神官は優しいし、正義感もある。
彼のような人が、
陛下への想いに気づいたからだと
答えました。
それに対して、ヘイレンは、
そのような人なら、
本当に誠意をもって陛下に近づくと
言いました。
すると、タッシールの唇の端が、
片方だけ持ち上がり、
嫌だな、それはひどいなと
タッシールは認めたものの、
彼は、これから大神官が
陛下に近づこうとする度に、
自分も陛下を愛していることを
思い出すだろうと、
いたずらっぽく笑いました。
そして、自分が助ける前ほど、
大神官は積極的に、
彼女に近づくことができなくなると
付け足しました。
タッシールは素晴らしい、
よくやったと、
ヘイレンは歓喜の声を上げましたが、
数日前の不安が蘇り、
口を閉ざしました。
ヘイレンは、タッシールが
陛下を愛していないと、
言っていなかったかと尋ねました。
例えば、自分が困っている時に、
ある人が助けてくれた。
すると、別の日に、
今度は、その人が困っていたので、
この間、自分が助けてもらったからと
今度は、その人を助けてあげる。
人から良くしてもらったら、
こちらも同じように
お返しをしなくてはと思うことを
返報性の原理と言います。
商人のタッシールは、
仕事をする上で、
この法則を巧みに使い、
自分に有利な取り引きを
して来たのだと思います。
タッシールの言う通り、
大神官がラティルに迫ろうとしても
自分を助けてくれたタッシールも
ラティルのことが好きだと
言っていたことを思い出せば、
優しい大神官のことなので、
ラティルに迫るのを躊躇するかも
しれません。
ただ、タッシールは、
返報性の原理を利用しただけでなく
がっかりしている大神官が
本当に可哀想だと思い、
親切心から助けたようにも思います。