84話 ルーもカルロイも、自分が悪いと自分自身を責め続けています。
侍従長の娘のジェインは、
ドニスの手紙をルーに渡し、
彼女は字を習っていた、
一日中、練習していたと
話しました。
ルーはジェインに、
どうして母親が、
本当の事を知ったのかと尋ねました。
ジェインは、涙を浮かべながら
散歩をしていた時に、
デルアと魔法師
聞いてしまったと答え、
自分が気をつけなければ
いけなかったと謝りました。
ルーは、
自分の話を聞こうともしないで、
一体、母親はなぜと
疑問に思いました。
ジェインは、
実際、ドニスは
そんなに幸せではなかった、
身体が良くなったのも
ほんの一瞬だけで、
そのような身体で耐えられたのは
ルーがいたからだ。
ルーが、彼女が生きることを
望んだから、生きていた。
彼女がルーを脅迫する
口実になったことが、
かなりの衝撃だったと思うと
話しました。
ルーは、
一体どうすべきだったのか。
一体、どうすればいいのかと
考えました。
ジェインは跪いてルーの手を取り、
泣きながら、
ルーのせいではない、
仕方のない状況だったと
言いました。
ルーは涙を拭って
手紙を読み始めました。
ルーが生まれた時、
雨が降っていた。
あの時、ルーがどれだけ、
自分を苦しめたか
知っているだろうか。
そのせいか、雨の日には
身体がさらに痛むような気がした。
ところが、ある日、
ルーを抱きながら、
じっと雨音を聞いていたら、
それが本当に良かった。
雨音が良いことと、
雨の日の風景が、
とても美しいことを、
その時、初めて知った。
それらが、子供の名前は
リリアン・ルーがいいと言った。
自分の愛であり命であるルーが
自分が雨を愛せるようにしてくれた。
その後の自分の人生を
愛せるようにしてくれた。
ルーは自分を幸せにしてくれたのに
自分はルーを幸せに
してあげられなかった。
この10年間、ルーは
どれだけ辛かっただろうか。
自分はルーに、
苦痛と不幸だけは
味わいさせたくなかった。
ルーは、自分の選択を
恨むかもしれないけれど、
しかし、自分は不思議にも
随分前からずっと、
こうしなければならなかったと
思っている。
実は、少しだけ身体が痛くて
大変でもある。
だから、自分は休もうと思う。
そして、自分は、
ルーが、この全てから抜け出し、
世の中には苦痛と不幸だけでなく
他のものも存在するということを
知って欲しい。
ルーが
自分の娘として生まれた
幸運のような偶然があったように。
だから、マハにも
レクセム・ソルタへも行って
人と出会うように。
自分の懐以外にも、
暖かい所があるだろう。
もう、ルーを縛るものは何もない。
必ず、やりたいことをしながら
生きて欲しい。
どんなに自分に会いたくても、
とても長い時間が経つまでは、
会いに来てはいけない。
自分が永遠にルーのことを
愛していることを忘れないで。
手紙を書き終えた後、
ドニスは塔から飛び降りました。
涙を流しながら
手紙を読んでいたルーは、
手紙を読み終えると、
嘘をつくな、
自分のことを愛していたら、
こんな風に死んではいけないと
叫びました。
扉の向こうで、
その声を聞いたカルロイは、
部屋の中に入りました。
とんでもないことや
あり得ないことを、
どうして、こんなに長々と
書いたのかと喚くルーを
カルロイは落ち着いてと言って
宥めました。
ルーは、
自分が何か悪い事をしたのか。
どうして、こんなことを
経験しないといけないのかと
嘆きました。
そのルーの頭を撫でながら、
カルロイは、
彼女のせいではない、
全て自分のせいだと言いました。
すると、ルーは、
その通りだ、
カルロイがどうなろうと、
気にするべきではなかったと
言いました。
カルロイは、ルーの名を呼びましたが
彼女は、
その名前で自分を呼ぶな、
今さら、そんな風に、
母親が自分を呼んでいた名前で
呼ぶなと言って、
カルロイを睨みつけました。
そして、彼に、
出て行くように、
カルロイの顔を見るのが苦痛だと
言いました。
彼は部屋を出て行きました。
カルロイは、
誰からも望まれていなかったけれど
無理矢理、生きて来た。
ルーに借りを作って生きて来て、
成し遂げることができたのが
ルーに苦痛を与えたことだと
考えました。
夜になっても、カルロイは
ルーの部屋の扉の前に
座っていました。
それを見たティニャはため息をつき、
今すぐ政務に復帰することは
望んでいないけれど、
転移治療の副作用が、
どのように現れるかも
分からないのに、
どうして薬を飲まないのかと
尋ねました。
カルロイは、
薬を飲むと眠くなる。
ルーは、
自分の身体を壊すように
苦しめながら、
2日おきに1度ずつ泣く。
自分を見たら、消えろと言うけれど
その一方で、
自分にしがみついて泣く。
恨む人が必要なのだろう。
自分のせいで、
ルーのしがみつける人が、
自分のような人間1人だけになった。
だから、寝てはいけない。
リリアンが、これ以上、
傷ついたら自分は・・・と
言いかけているところへ、
「皇后陛下」と叫ぶ声がしました。
元々、ドニスは身体が弱い人で、
ルーを産んでから、
さらに弱くなった。
それでも、ルーと一緒にいて
幸せだった。
けれども、ルーが自分のせいで
辛い目に遭っていると聞いて、
自分さえいなくなれば、
ルーは自由になれると
考えたのかもしれないと思いました。
ドニスが元気だったら、
ルーと2人で、
デルアの手の届かない所へ
逃げることもできたかもしれない。
けれども、
ルーの苦しみを知りながら
生きていることに耐えられないほど
ドニスの身体が弱ってしまったのだと
思います。
母親のために、
あらゆる苦痛に耐えて来たルーが
可哀そうです。