751話の要約 アイニがいるのを見て、クラインたちは岩陰に隠れましたが・・・
バニルは、
なぜ自分たちが隠れているのか
理解できませんでした。
クラインは、わずかに顔を出して
アイニがいる方を見ましたが、
彼女はすでにいませんでした。
3人は岩陰から出ると、
バニルはクラインに、
なぜ隠れていたのかと尋ねると、
クラインは、
驚いたからだと答えました。
バニルは、
クラインやアクシアンの方が
アイニより強いと言いましたが、
アクシアンは、
強さの問題ではない、
アイニ元皇后が、
黒魔術と結びついているという
奇妙な噂がたくさんあると
ほのめかしました。
その話題を避けたかったクラインは
彼女も財宝目当てだろうから、
彼女より先に、
目的地に辿り着かなければならないと
言いました。
3人は、アイニとは反対方向に
歩き始めましたが、
クラインが砂に足を踏み入れた途端
彼を引き寄せるかのように、
砂が下がり始め、
足元に穴ができたので、
クラインは走り出しました。
アクシアンは、
穴の一つに落ちそうになった
バニルを押しました。
彼らが足を置くたびに地面が崩れ始め
彼らは重なるように
走るしかありませんでした。
しばらく走った後で、
クラインは立ち止まると、
足元に固い地面を感じました。
地面はもはや砂ではなく、
固い石でした。
そして、クラインが後ろを振り向くと
崩れて落ちていた地面が、
また元に戻っていました。
そして、クラインは、
バニルとアクシアンが、
自分の横にいないことに
気づきました。
椅子に座って、
物思いに耽っているラティルに
ゲスターは、
大丈夫かと尋ねました。
彼は着心地の良い服を着ていて、
優しい眼差しで、
ラティルを見つめていました。
彼女は、大丈夫だと答えましたが、
実際は、そうではなく、
クラインは、
一体どこに行ってしまったのか。
自分の意志で
出て行ったのかもしれないし、
そうではないかもしれない。
もしかしたら、
怪我をしたのかもしれないと、
とても心配していました。
ラティルは、
クラインは大丈夫だろうかと
尋ねると、ゲスターは、
強いアクシアンと賢いバニルが
一緒にいるので大丈夫だと
返事をしました。
アクシアンとバニルとはぐれてしまい、
クラインは悪態をつきました。
彼は、振り返って、
あちこちを探しましたが、
アクシアンとバニルの姿は
どこにも見えませんでした。
クラインは、
アクシアンは強いから
何とか生き延びられると思いましたが
バニルは弱い男でした。
クラインは怖くなり、
髪の毛をかきむしりました。
一方、バニルは、
クラインをかなり心配していました。
彼は荷物を持っていなかったし
武器も持っていないに
違いありませんでした。
しかし、バニルは、
すべての物資、水、食料、
そして地図を持っていました。
バニルは地図を広げました。
アドマルについては、
詳しく描かれていませんでしたが、
それでも、これさえあれば
脱出することは可能だと思いました。
バニルは、
アクシアンは考えるのが得意なので
問題なく脱出できると思いましたが、
クライン皇子はどうだろうかと
心配しました。
しかし、
バニルは知らなかったことでしたが
クラインは、
何度も地図を見ているうちに、
近隣の地図を、
すべて記憶していました。
クラインは、
地図を持っていなくても、
自分たちが、どこから来たか、
だいたい分かっていました。
彼は、忘れないように
石の床に印を付け、
自分とバニルとアクシアンが
最初に別れた方向を思い出し、
少し考えてから、
バニルがいそうな方向に移動しました。
バニルもクラインも
アクシアンのことは
心配していませんでした。
彼はどこにいても、
生き延びることが、
できそうだからでした。
しかし、哀れなアクシアンは
最も複雑な状況に置かれていました。
アクシアンは、
自分のいる場所が分からず、
周囲を見渡しました。
バニルを押した後、
2、3歩、歩いたところで、
誤って穴に落ちてしまいました。
彼は、どうすることもできず、
滑り台を、転げ落ちているような
感じでした。
そのまま、しばらく、
坂道を転げ落ちていたアクシアンは
死ぬかと思いました。
なんとか止まると、
すぐに向きを変えて、
這うように歩きましたが、
虫の大群が現われたので、
彼は逃げました。
アクシアンは、
髪に付いた虫を取り除くと、
不思議で不気味な文字でいっぱいの
巨大な柱があることに気がつきました。
これが、クラインの探していた
宝物なのだろうか。
一体、これは何なのかと、
アクシアンは、
その場にいないクラインに尋ねました。
30分程、ゲスターは、
ラティルの頭が、
どんどんテーブルに近づいて行くのを
眺めていました。
そして、ついに彼女の顎が
テーブルに付くと、
ゲスターはラティルを
デートに誘いました。
ラティルは、
そんな気分ではないと、
言いかけましたが、
今まで守れなかった約束を思い出し
承諾しました。
少し気を紛らわせれば、
心配もなくなるだろうし、
宮殿を出て間もないので、
レアンは、
何かをすることができない。
それに、彼にもっと時間を
与える必要があると思いました。
ゲスターは着替えに行き、
幸せそうな顔で戻って来ました。
二人は、外に出て馬車に乗り、
どうしようかと話していると、
御者が、恋するカップルが
よく行く場所について
教えてくれました。
ゲスターはラティルの手を取り、
ワクワクした様子で、
そこへ行こうと誘いました。
御者の言葉通り、その場所は、
景色を楽しんだり、
木の葉で遊んでいる
カップルや友人たちがいました。
遊歩道に入ると、
ゲスターは何枚かの落ち葉を拾って
ラティルの腕に乗せました。
葉が落ちると、
ゲスタは笑いました。
その場にいる女性たちは、
笑っているハンサムな男に
目をやり始め、
その隣にいる女性は、
前世で国を救ったのだろうと
思いました。
しかし、ラティルは、
ゲスターの可愛い冗談と
ハンサムな外観に、
違和感を覚えました。
ゲスターはラティルに、
大丈夫かと尋ねると、彼女は、
大丈夫ではない。
クラインのことが心配だと
答えました。
ゲスターは、
宮殿に戻った方がいいと
提案しましたが、
ラティルは、
がっかりしているゲスターを見て、
それを断り、無理やり笑って、
遊歩道を歩き続けました。
しばらくして、
二人ともお腹が空いたので、
とりあえずレストランに入り、
それぞれに、
カプチーノと栗のケーキを
出してもらいました。
ゲスターは、たまには一緒に、
食事に行くのもいいと、
照れながら言うと、
ラティルは「そうですね」と
返事をし、強引に笑いながら
ケーキを食べました。
そして、ゲスターに、
なぜ、クラインは、
逃げたと思うのかと尋ねました。
カップを手に取ったゲスターは、
再び、それを置くと、
クラインは、
カリセンとラティルの間に
挟まれていたと答えました。
ラティルは、
それは分かるけれど、
クラインは、
急に逃げたりするタイプでは
ないのではないかと指摘し、
続けて、何か言おうとしましたが、
ゲスターはため息をつき、
傷ついた目で彼女を見ると、
3人でデートをしているみたいだと
呟きました。
ラティルは、自分の行動が
ゲスターのためにならないことに
気がつきました。
ゲスターは、
クラインは、
陛下人形でさえ置いて行ったので、
逃げ出したようには思えない。
クラインはいつも急ぐ人であって、
逃げる人ではない。
逆にいつも逃げているのは
ギルゴールとシピサだと思いました。
ラティルは立ち上がると、
ゲスターに、
ディジェットへ行けば、
彼の行き先が分かるかもしれないと
言いました。
しかめっ面で、
ラティルを見ていたゲスターは、
コーヒーを一口飲むと、
にこやかに笑いながら、
「ダメだ」と言いました。
そして、その言葉を言い終わるや否や
ランスター伯爵の姿が
視界から消えました。
ラティルは驚いて、
口をポカンと開けました。
あそこにいたハンサムな男が
突然いなくなったと、
ゲスターを見ていた何人かが
ヒソヒソと話し始めました。
ラティルは片手でマントを持ち、
もう片方の手で額を押さえました。
いくらラティルが
クラインのことが心配でも、
ゲスターとデートをしている時に
クラインの話をすれば、
ゲスターでなくても怒るはず。
彼のことを聞いたのは
失言だったと思います。
おそらく、ラティルは、
自分1人で心配を抱えきれなくて
つい、一緒に来たゲスターに
相談してしまったのでしょうけれど
彼の中に、
ランスター伯爵がいることを
忘れていたのかも。
ラティルは、
もう少しゲスターに対して、
気を遣うべきだったと思います。