752話の要約 ラティルの目の前からゲスター(ランスター伯爵)は消えてしまいました。
ラティルは目の前の空席を見つめ、
ゲスターの残した
カプチーノを飲みながら、
気持ちを落ち着かせようとしました。
しかし、ラティルは、
平穏でいられるわけが
ありませんでした。
家族とは対立しているし、
クラインは彼女を騙し、
ランスター伯爵は
協力する気がないなど、
今の彼女の「怒り」は
側室たちが原因でした。
自分は仕事で頭がいっぱいだったし
友達は・・・と
考え込んだ後、
ラティルは目を大きく見開き、
自分には友達がいないことに
気づきました。
アクシアンは、
最初、ほとんど動きませんでした。
自分は地下にいるのだろうか。
長い時間、落ちていたので、
その可能性は高いと思いました。
もし地下にいるのなら、
細心の注意を払わなければならない。
この町は、何百年も
見捨てられていたので、
もし一つでも間違えれば、
屋根が落ちてくるかもしれないと
考えました。
アクシアンは、
しばらく立ち止まってから、
シャツのボタンをちぎって投げると、
数メートル先に落ちました。
アクシアンはそれを見て、
少しここにいても大丈夫なのかと
思ったその瞬間、
ボタンは、まるで沼のように
地面に吸い込まれました。
アクシアンは一歩踏み出し、
バランスを取り戻すまで
立ち止まりました。
彼は、一瞬、息を止め
唾を飲み込みました。
自分は、
どうすべきなのか。
一生ここにいるわけにはいかないと
思いました。
レアンはごく自然に
フローラの部屋まで
歩いて行きました。
部屋の前にいた護衛は
彼の邪魔をしませんでした。
レアンは皇帝の兄であり、
喧嘩はしたけれど、
結局、彼女は彼を許し、
フローラの部屋への入室を
禁じる指示も出していませんでした。
レアンは、
フローラはとても
魅力的な女の子だと言い、
彼の側近も、それを認めました。
レアンは、
ベビーベッドの手すりに近づき、
フローラに挨拶すると、
彼女は微笑んで、手を差し出しました。
レアンは彼女に話しかけ、
腕に抱くと、
フローラは彼の肩にもたれ、
あくびをしました。
レアンは、
姫と一緒に廊下に出ました。
レアンに注意する者もいましたが、
彼は、
10分ほど姫と散歩して来る。
窓から姫を見守ることができるので
必要なら呼べばいいと答えました。
ところが、
レアンが階段を降りている途中で、
階段を上がって来た
ラナムンに出会いました。
ラナムンは眉間にしわを寄せ、
素早くレアンに近づくと、
姫とどこに行くのかと尋ねました。
レアンは、
散歩に行く。近くにいるし、
護衛にも事前に伝えてあると
丁寧に答えましたが、
ラナムンは「散歩」という言葉に
表情を硬くし、
姫を返すよう促し、
彼が散歩に行くとしても、
姫は自分が連れて行くと、
冷たく言い放ちました。
レアンは、
散歩に行くのに良い時間なので、
外の空気を吸ったらいいと思うと
言いました。
しかし、ラナムンは、
晴れた日に、
姫を散歩に連れて行くと言いました。
それに対してレアンは、
姫と散歩に行くなら問題ないけれど
姫は、先月一度しか
散歩に行かなかったと聞いていると
ラナムンを非難しました。
散歩の回数を細かく記録して、
それを人前で話すレアン。
その時、ラナムンは、
レアンが「姪と遊ぶ」ためだけに
彼女を連れ出しているのでは
ないことに気づきました。
他の人たちの前で、
ラナムンの姫の世話する方法を
批判するためでした。
2人の様子を見ていた廷臣たちは、
散歩が月に一度だなんて、
幽閉されているのではないかと
呟きました。
確かに、普段から姫を
連れ出すことはありませんでしたが
それは、どのタイミングで
フローラがナイフを出現させるか
わからないからで、ラナムンは、
慎重に対処していました。
レアンは、
その状況を利用しました。
ラナムンは、
姫の体調が良くないと言いました。
レアンは、
姫が元気であることは知っていても
ナイフを出すことまでは、
知らないだろうと感じました。
ラナムンはフローラに、
自分のところにおいでと言うと、
レアンの腕の中にいたフローラは
ラナムンを見て腕を伸ばしましたが
レアンは、彼女を渡す代わりに、
数歩下がって彼女を抱きしめました。
ラナムンは、自分の娘を
返して欲しいと訴えました。
レアンは、
もちろん、ラナムンは
姪の実の父親だけれど、
自分が散歩に連れて行かなくても、
誰かに散歩に連れて行かせるよう
指示しました。
ラナムンは、
姫が元気になったら、
自分が散歩に連れて行くと
返事をしました。
レアンは、
冬が来て寒くなれば、
姫の外出が難しくなる。
今、姫にとって、
秋を楽しむ絶好の機会ではないかと
言いました。
ラナムンは、
姫の様子を見て判断すると答えました。
ラナムンとレアンの会話が加速し、
緊迫した雰囲気が漂う中、
二人の後ろでは、
それぞれの側近たちが状況を観察し、
相手を軽蔑するような目で
見ていました。
レアンはフローラに、
「すぐに伯父様が遊びに来るよ」
と言って、
ラナムンに姫を渡しましたが、
彼はレアンの言葉を無視して
フローラを抱きしめました。
二人が去ろうとした時、
「ウッ!」という声が聞こえたので
ラナムンは振り向くと、
レアンがよろめきながら、
階段の手すりにつかまっていました。
ラナムンは、
どうしたのかと思いましたが、
レアンがわざとやっていると思い、
ラナムンは階段を登り、
廊下に出ました。
大丈夫かと、
レアンの側近が心配そうに尋ねました。
レアンは片手で手すりにつかまり、
もう片方は首の後ろを
触っていました。
彼は立ち上がり、
首の後ろから手を離し、
それを見て、
再び手を首に戻すと、
そこから何かを取って
階段を下りて行きました。
その様子を見ていた下女の一人が、
レアンのいた所に目をやると、
赤い雫が数滴落ちていたので、
彼女はそこへ行って確認すると、
それは血でした。
レアンの血だと思った下女は、
なぜ、彼が、そこで血を流したのか
疑問に思いました。
レアンは部屋に戻ると、
手を広げ、側近に
持っているものを見せました。
それはカミソリの切れ端でした。
側近は、それは何かと尋ねて
後ずさりしました。
カミソリの切れ端には
血が付いていました。
レアンはカミソリを
テーブルの上に置きました。
側近は、レアンの首に
血が付着していることに気づいたので
救急箱を取りに行き、戻って来ると
彼の傷を治療しました。
側近はレアンに、
なぜ、このようなことが起こったのか
尋ねました。
彼は、レアンとラナムンが
言い争っているのを
ずっと見ていたので、
どうやって、
レアンの首が傷ついたのか
分かりませんでした。
レアンは、
自分の姪は、
普通の赤ん坊ではないようだと
呟きました。
バニルを探していたクラインは、
顔をしかめて岩陰に隠れました。
アイニが、
黒いマントを着ている男3人と共に
怪しげな動きをしていたからでした。
なぜ、アイニがここにいるのか。
彼女も情報を探しているのかと
考えていると、
前進していたアイニが顔をしかめ、
ある場所を指差すと、
マントの男の一人が一歩踏み出し、
ある場所に、
ロープのようなものを投げました。
男がロープを引くと、
思いがけず、バニルが
縛られた状態で現れました。
彼は、黒魔術師だったのかと
クラインは考えていると、
不意を突かれたバニルは、
アイニの名を叫びましたが、
その瞬間、
男の一人が殴りかかり、
バニルは黙り込みました。
クラインは怒りを抑え、
バニルを救い出して、
その場を離れなければならないと
思いました。
自分は皇帝に嘘をつき、
この場所に来てしまった。
助けを求めても無駄だし、
事態が悪化する可能性がある。
それに、今回は、
自分が皇帝の役に立てることも
証明しなければならないと
唇を強く噛みながら、
クラインは考えました。
彼は、自分が、
カルレインやタッシールと同じように
信頼できる男であることを
証明したいと思いました。
一方、ラティルは
まだクラインのことを考えていたので
心が穏やかではないし、
ランスター伯爵を
なだめることもできませんでした。
幸いにも、フルラの宮殿に戻ると、
グリフィンが、噴水で遊んでいました。
ラティルはグリフィンのところへ行き
ディジェットへ連れて行って欲しいと
頼みました。
クラインは、猪突猛進なので、
彼に何か相談したとしても、
よく考えもせず、感情の赴くまま
行動に移してしまうと思います。
だから、ラティルはクラインに
大事なことを任せられないけれども
タッシールやカルレインとは
別の意味で、
クラインを信頼していたと思います。
だから、彼が逃げたと
ゲスターに言われて、
不安になっているのだと思います。
ラティルは、
友達がいないと言っていますが、
サーナット卿は子供の頃から
ラティルの友達だったと思いますし
側室たちも、夫兼友達のように
思います。
子供の頃から男勝りの彼女に、
女性は近寄り難かったのではないかと
思います。