764話の要約 レアンがラティルに近づいて来ました。
上品かつ誠意のある態度で
ラティルに近づいたレアンは、
久しぶりに、
彼女の平和な姿を見ることができて
よかったと話しました。
ラティルは、
彼女のストレスの半分は
彼のせいだと思いつつも、
無理に笑顔を作りました。
それまで側室たちを見ていた
貴族たちは皆、
レアンとラティルに目を向けました。
自分たちは
和解したことになっているので、
自分が気分を害してるとは
思われていないだろうと、
ラティルは考えました。
ラティルはレアンに、
彼はいつも黙っているので、
今回は違うことを望んでいると
言いました。
以前のレアンの側近が
投獄されたせいか、ラティルは
新しい側近がいることに気づきました。
レアンは、なぜラティルが
側室たちと踊らないのかと
尋ねました。
彼女は、他の人が踊るのを
見る方が楽しいからだと答え、
それから窓に視線を向けました。
いつ、レアンは、
自分のそばから離れてくれるのか。
もし鐘が鳴ったら、
とても困ると思いました。
レアンは、
来てくれた人たちは、
ラティルが側室たちと
交流しているところを
見たがっていると言いましたが、
ラティルは、
構わない。自分は、
他の人のダンスを見る方がいいと
返事をした後、レアンも、
そろそろ結婚相手を探すべきなので、
自分の代わりに踊りに行くよう
勧めました。
レアンは頷いて
踊りに行こうとしたので、
ラティルは、ほっとしましたが、
彼はラティルを振り返り、
ふと、思いついたように、
今日は姪を連れてこなかったのかと
尋ねました。
ラティルは、
娘は身体が弱いと答えると、
レアンは、
それなら医者を呼べばいいと
言いました。
ラティルは、
その必要はないと返事をし、
レアンは、踊りに行く気はなさそうだと
思いました。
ラティルは、
姫を連れ出したレアンと
ラナムンが出くわしたことを
思い出しました。
それ以来、レアンは
何も言って来なかったので、
大したことではなかったと
思っていましたが、
そうではなかったのか、
なぜ、レアンは
姫のことを話しているのかと
訝しみました。
レアンは、
なぜ、姫を連れてこないのか。
このような時に、姫が
貴族たちと交流しておけば、
彼らは彼女の顔に
見慣れることができて
良いのではないかと言いました。
ラティルは、
姫が大きくなれば顔も変わるので
その時に、見慣れればいいと
答えました。
すると、レアンは、それで赤ん坊を
部屋に閉じ込めているのかと
言いました。
レアンは、自分が姫を
ないがしろにしているとでも
言いたいのだろうかと、
ラティルは眉をひそめながら
考えました。
ラティルは、
自分の娘は自分が面倒を見ると
返事をしましたが、レアンは、
皇帝の一人娘は、
ラティルだけの娘ではなく
国宝のようなものなので、
自分が気にかけない訳にはいかないと
主張しました。
ラティルは、
それに反論しようとしましたが、
その瞬間、
皇帝が娘を嫌っているという噂は
本当なのか。
姫に何か問題があるのかと
その場にいる貴族たちの心の声が
聞こえて来ました。
ラティルとレアンの目が合うと、
彼は微笑みました。
ラティルは瞬きもせずに
彼を見つめ、サーナット卿に
ラナムンのもとへ行き、
しばらく姫を連れて来るように
伝えろと命じました。
前髪を上げて、
美しい顔を露わにしたラナムンが、
自分そっくりの赤ん坊を抱いて
階段を下りて来ました。
姫と彼女の噂に興味津々の人々は、
その姿を見るなり
なんて可愛いんだ!
ラナムンに似ている!
なんて美人なんだ!
と興奮しました。
次から次へと人に囲まれたため、
ラナムンの表情は険しくなりました。
ラティルはレアンを見ていましたが、
彼は近づいてくることもなく、
ただ飲み物を飲み続けていました。
ラティルは、
フローラに注目が集まっている今なら、
鐘が鳴っても、
誰にも気づかれずに
外へ出られると思いました。
そして、ラティルが扉まで来た時に
鐘が鳴りました。
何人かの貴族は驚きましたが、
いつもと違う
ややゆっくりした鐘の音だったので
祭りの演出だと思われました。
ラティルはそれを聞いて、
興奮しました。
アイニが来た。
彼女を追いかければ、
ようやくロードと対抗者の問題を
解決できる。
アリタルの作った運命を
変えられるかもしれない!
ラティルは忍び足で外へ出くと、
その瞬間、
内部で悲鳴が沸き起こりました。
一体、何が起きているのか。
鐘はまだ、急を要するように
鳴っていました。
ラティルは鐘の音がする場所と
広間の中を、
交互に視線を移していると、
「人が死にかけている!」と
叫び声が上がりました。
ザイシンは群衆を押し分けて、
負傷者の救護にあたりました。
「姫」と「ナイフ」という言葉が
交互に聞こえて来たので、ラティルは、
どうやら姫が、
不気味な能力を使ったのだと
理解しました。
ラティルは悪態をつきました。
2つの事が同時に起きてしまい
ラティルは、
どうすればいいか分かりませんでした。
アイニが逃げてしまえば、
次のチャンスがいつあるかわからないし
そうかといって、
アイニを追いかければ、
ラナムンと姫を
置き去りにすることになりました。
レアンは微笑みながら
その騒ぎを見ていました。
ラティルはそれが何なのか
理解しました。
レアンは姫のことを
何か知っているに違いないと
思いました。
サーナット卿はラティルに近づき、
鐘が鳴ったら
大事なことをしに行くと
彼女が言っていなかったかと
尋ねました。
ラティルが頷くと、
サーナット卿は、
側室たちが事態を解決してくれるから
行くようにと言いました。
ラティルは同意しかけましたが、
自分が家族に見捨てられたという
絶望感を思い出しました。
「自分は違う!」
そう思ったラティルは
ついに心を決めると、
「皆、退いて!」と叫びながら
ラナムンに駆け寄りました。
その姿をサーナット卿は
悲しそうに見つめました。
ラティルが近づくと、
人々は遠ざかったので、
状況を細かく見ることができました。
何人かの人々が、
口にカミソリをくわえて
床に倒れていて、
ザイシンは、その間を歩いて
素早く治療していました。
姫が可愛いと言って
近づいてきた人たちは、
今は怯えた様子で
輪になって後ろに立っていました。
何をどう攻撃されたのかは
分からないけれど、
姫の仕業だということは
分かっているようでした。
ラナムンはその中心で、
姫を守ろうとするように
強く抱きしめていました。
その様子を見るなり、
ラティルは
だから、出てきて欲しくなかったと
怒りの声を上げました。
驚いたラナムンを含め、
皆がラティルを見ました。
ラティルは、ラナムンと姫に
食ってかかっているようでした。
レアンは、姫は普段から
こんなことをしているのかと
尋ねました。
ラティルが、それを認めると、
ラナムンは、
穴の中に落ちたかのように
目を伏せました。
ラティルは、
自分は対抗者でありラナムンも対抗者。
そんな自分たちから生まれたのだから、
姫は普通の女の子ではないと
付け加えました。
そして、レアンを見て、
彼がしつこく姫に会わせろと
言わなければ、
こんなことにはならなかったと
レアンを非難しました。
人々の注意がレアンに移ると、
ラナムンは驚きました。
レアンは驚いたふりをして、
ラティルは、
まるで自分のせいのように
言っているけれど、
このような事故は
いつ起きてもおかしくない。
姫がそのような能力を持っていることに
鳥肌が立つ。
一体、何を考えて
このことを秘密にしていたのかと
ラティルを責めました。
彼の全ての言葉は、
まるで、ラティルが
過ちを犯したかのように
聞こえました。
ラティルは、姫が大きくなれば
力を制御できるようになる。
姫があんなに強いとは知らなかったと
はっきりと答えました。
ラナムンや貴族たちは、
ラティルがラナムンや姫に
怒っているのではなく、
レアンに怒っていることに
気がつきましたた。
レアンは、
ラティルが姫の能力について
教えてくれていれば、
しつこく姫を連れて来いとは
言わなかったと言い訳しました。
ラティルは、
話すつもりだったと言うと、
レアンは「いつ?」と尋ねました。
ラティルは、
口に出さなかったのは、
人々が怖がるのを心配したからで
人は簡単に状況を誤解するものだからと
答えました。
レアンはラティルの言葉に戸惑い、
いつ、そうなったのかと
聞こうとしましたが、
ラティルが先に、
レアンはよく知っているはずだと
言ったので、
ラティルが今言ったことは、
姫のことではなく、
彼女自身のことであることに
気づきました。
ラティルは振り返り、
姫の頬を撫でると、
恐れることはない。
姫は大きくなれば、
力を制御することができる。
彼女は他の誰よりも優しくなると
言いました。
ラティルはザイシンに
怪我人のことを尋ねると、
治療は終わったので、
皆、ケガもなく元気だと答えました。
それにしても姫の力は危険すぎる。
とりわけ、皇太女になる可能性のある
少女にとっては。
皇太女が誤って、
人をたくさん傷つけてしまったら、
誰が責任を取るのか。
常に大神官が、
彼女のそばにいるわけではないと
レアンは心配そうに
再び口を開きました。
ラティルは、レアンが
フローラを皇太女と言ったのは
間違いだと思いましたが、
彼は意図的にフローラを皇太女と呼び
彼女が危険だと言っていることに
後から気付きました。
もしラティルが、
フローラは皇太女でないと言えば
何か確執があるとか、
危険な能力があるから
後継者に指名しなかったなど、
様々な解釈が生まれ、
ラナムンやアトラクシー公爵が
非常に失望することになると
思いました。
レアンはいくつものシナリオを
描いていました。
ラティルは
このままではいけないと思い、
色々なことを考えているうちに
胃が痛くなりました。
以前、レアンをトゥーラから庇った時に
「お兄様は賢い、
トゥーラにはかなわない」
と言ったことを思い出しました。
レアンが敵になってしまった今、
そう言ったことを後悔しました。
その様子を観察していたタッシールは、
一歩前に出ようとしましたが、
お嬢さん、あのバイオリンは
何を言っているのですか?
と、ギルゴールが花を食べながら
近づいて言いました。
レアンはギルゴールの姿に
初めて青ざめました。
偽皇帝事件の時もそうですが、
レアンは妹のラティルを
子供の頃からずっと見て来ているので
彼女の言動を大方、
予測することができると思います。
タッシールも頭の良い人だけれど
レアンとの舌戦は
平行線のままのような気がします。
けれども、ギルゴールは
捉えどころがなく、
何を考えているか分からないし、
レアンの前で
暴力的な姿も見せています。
いつも自信満々の彼が
青ざめたということは、
本当に彼が怖いのだと思います。