91話 ルーは、自分と関係のある名前は嫌がるだろうとティニャに言いましたが・・・
ティニャが黙っているので
カルロイは、
どうしたのかと尋ねると、彼女は
ルーに聞いてみて、
彼女の希望通りにすると
返事をしました。
カルロイは、
誰が訪れても快適なように
ラ・ソルティオを
整えておくよう告げました。
そして、デルアへ行って、
ベルニとの国境を
一度見ておかなければならないと
話すと、ティニャは、
アセルを連れて行くようにと勧め、
他に話はあるかと尋ねました。
カルロイはないと返事をし、
もう下がってよいと告げました。
カルロイは、この何日か、
どうやって自分がこの世から消えれば
ルーに迷惑をかけずに済むか
悩んでいました。
自ら命を絶つよりは、
失踪したように見える方がいいだろう。
ルーに自分が逃げたと
信じさせることができたら
ルーが自分を憎むだろうから。
死体さえ発見できないように
しなければならない。
あそこなら大丈夫だろうと
考えました。
ルーに会いに来たティニャに、彼女は
謝りに来たのならやめて欲しい。
被害者同士で、いつまでも
言い合いするのはうんざりだと
言いました。
ティニャは、
やめろと言うのでやめると告げました。
ルーはティニャに
立っていないで座るように言い、
皇后宮に来た理由を尋ねました。
ティニャは、
新しい姓について聞きたいことがある。
希望の姓はあるか。
あるいは、貴族の家門に
養女として入る方法もあると
尋ねました。
ルーは、
そんなものはどうでもいい
自分はここを離れたいと
答えました。
ティニャは、
ちょうどレクセム・ソルタの
ラ・ソルティオが空いているので
できるだけ早く準備をすると
告げました。
ルーは、母親の遺書に
マハにも行って、
レクセム・ソルタにも行ってみなさいと
書かれていたのを思い浮かべ、
心が痛みました。
彼女は、そこへ行く前に、
デルア領に行ってみたいと言いました。
急になぜ?と訝しむティニャに
ルーは、
自分が死ぬためだけに
そんなに遠くまで行くと思うのか。
ただ、母親と一緒にいた所に
最後に行ってみたいからだと
答えました。
ティニャは、
デルア領から
ラ・ソルティオは遠すぎる。
それに、カルロイも、
近いうちにデルア領に行くけれど、
大丈夫かと尋ねました。
ルーは、
自分がデルア領に行くことを
秘密にできるか。
できる限りひっそり行きたいと
尋ねました。
ティニャは承知し、
不便がないようにすると答えました。
ところで、ティニャは、
皇帝が死ぬ準備をしていることを
ルーに言うべきかどうか迷いました。
カルロイが
クロイセンの諸問題を解決しているのも
皇后に新しい人生を
与える準備をしているのも、そのため。
プルトゥから
抜け出そうとしているのも
自分の目を避けようとしているから。
だから、自分が止めても、
何の役にも立たないだろう。
皇后が一言、
死ぬなと言ってくれれば、
カルロイは死なないと思いました。
ティニャはルーに、
皇帝のことがとても憎いだろうから
彼が崩御すれば、
少しは気が楽になるかと尋ねました。
ルーは、
カルロイを恨むのも疲れたのにと呟くと
一体どうして、
それで自分の気分が良くなるのかと
尋ねました。
ティニャは、
「そうですね」と答えました。
3日後、
ルーはデルア領に向けて出発しました。
彼女は、
皇帝が崩御したら、
少し気が楽になるかと
ティニャに言われたことを
思い浮かべながら、
どうして、そんなことを聞いたのか。
カルロイはバカではない。
他でもなく皇帝なのに、
どうして死ぬのかと考えました。
そして、彼が謝っている姿を
思い浮かべながら、
もし彼が死んだら、
頭がおかしいと呟きました。
侍女長は、
辛かったら無理をして行く必要はないと
言いました。
ルーは大丈夫だと返事をしました。
侍女長とジェインは、
顔を見合わせました。
デルア領に到着しました。
馬車を降りたルーに侍女長は、
ルーが去ったら、
タワーは壊すことになると
告げました。
ルーはタワーの中に入り、
母親の部屋へ行って
ベッドに座りました。
広い部屋に、柔らかいベッド。
薬も絶えることがなかったので
母親がここに住んでいる時は、
自分も母親も幸せだと信じていたけれど
本当にそうだったのか、
今となっては分からないと言いました。
ルーは、
母親をこの狭い部屋に閉じ込めて
なぜ、幸せだと思ったのかと
考えました。
涙ぐむ侍女長とジェイン。
ジェインは、
終わりがそうだったからといって
全てのことが無意味だと
思わないで欲しい。
ルーが皇后になる前までは、
ドニスと多くの時間を
過ごしただろうけれど
その時も、不幸だったかと
尋ねました。
ルーは首を振りました。
ジェインは、
その時のドニスは幸せだった。
その思い出のおかげで、
ルーがいなくても
耐えられたくらい
ドニスは幸せだったと
告げました。
ルーはジェインの手の上に
自分の手を置き、
彼女が母親のそばにいてくれたことに
お礼を言いました。
ジェインは、
大したことはしていないと言いました。
ふと、ルーは
紙の束を見つけました。
そこには、
女性が一人で旅行をする小説の内容や
観光名所を紹介した文、
ソルタの料理に関する内容が
書かれていました。
ジェインは、
自分がドニスに何か読んであげると
そういうのを
ルーがやってみればいいと思い
集めていたと言いました。
ルーは、
自分1人でこんなことをしても
母親のことを思い出して
苦しいだけなのに、
こんなことできるわけがないと
思いました。
夜になり、
ルーはベッドから抜け出しました。
侍女長はベッドで、
ジェインは椅子の上で寝ていました。
ルーは窓辺に座り、
ここから母親は飛び降りたと考え、
自分がここから飛び降りたとしても
どうせ母親は分からないと思いました。
カルロイとルーの周りには
2人を心配して、
腫れ物に触るように
2人を扱っている人ばかりいますが
今、この2人に必要なのは、
彼らを心配するだけでなく
楽天的に物事を考え、
2人が嫌がっても、
とりあえず何か行動させるような
人ではないかと思います。
カルロイならアセル。
ルーならキアナ。
アセルもキアナも苦労しているので、
苦しみの種類は違っても、
2人の助けになれそうです。