780話の要約 ラティルはクラインに犯人は誰だったのかと尋ねました。
クラインはラティルに、
フローラにぬいぐるみを渡した犯人は
自分だとゲスターが主張していることを
話しました。
ラティルは驚いて、
本当なのかと尋ねました。
クラインは肯定し、
拳を握りしめました。
彼は激怒していました。
ラティルは自分の額に手を触れ
首を振り、
ゲスターがやったのか、
ランスター伯爵がやったのか
考えました。
クラインはラティルを強く抱きしめ、
なぜ、もっと
早く言ってくれなかったのかと
問い詰めました。
ラティルは、
ゲスターの犯行だと聞いていなければ
クラインと仲直りできたことを喜び、
彼を強く抱きしめていただろうと
思いました。
彼女はクラインの背中を叩き、
後で話をすると言いました。
そして、執務室で数分仕事をした後、
ラティルは、
ゲスターを呼ぶよう指示しました。
彼が執務室に入って来た時、
ラティルは、
いくつかの報告書を見ていましたが
顔を上げないまま、
フローラに人形を渡したのは、
本当にゲスターなのかと尋ねました。
ゲスターは目を見開いて
それを肯定しました。
ラティルはペンを脇に置いて
頭を上げると、ゲスターは
首筋まで赤くなっていました。
ラティルは、
なぜそんなことをしたのか、
ランスターの仕業なのかと尋ねると、
ゲスターはわからない、
自信がないと答えました。
ラティルは、
自分でやっておきながら、
理由がわからないのかと尋ねると
ゲスターは、ひたすら謝り、
頭がどんどん下がって行き
泣きそうな顔になっていました。
あまりの可哀そうな姿に、
ラティルは、
これ以上怒れないと思いましたが、
彼を慰めたくはなかったので、
扉を指差して、
出て行くよう指示しました。
ゲスターはラティルに
怒っているのかと尋ねましたが
彼女は、ゲスターに
帰るよう指示しました。
ラティルとレアンとの会談は、
穏やかな雰囲気で行われたので
皇帝支持派とレアン支持派は
皇帝が不機嫌になっているのを見て
警戒しました。
皇帝がイライラしている理由は、
レアンの婚約が失敗したことだと
思っていましたが、
休憩の後、大臣たちは、
ラティルが怒っている理由は
ゲスターであることを聞きました。
クラインがラティルに託した
大切なぬいぐるみを、
ゲスターから渡された皇女が
壊してしまったという噂が、
1時間半も経たないうちに
あちこちに広まっていました。
ラティルが一息入れた時、
ゲスターが泣きながら
宮殿からハーレムに逃げ込んだという
話を聞きました。
その噂はあっという間に広まりました。
サーナット卿は、
何か怪しいと思い顔をしかめました。
誰かがこの情報をつかんで
ラティルに話したのなら
間違いないけれど、
クラインに事情を告白したのは
ゲスター本人でした。
彼は何を企んでいるのだろうかと
訝しみました。
ラティルは、
冬の冷たい風で凍りついた地面を
足の指で叩きました。
雪が降り始めました。
大人たちは、
子供のように初雪を楽しみ、
宮殿の使用人たちは
ラティルを覆うために、
傘を持って走って来て、
会議に出席していた大臣たちは
初雪を眺めながら
廊下を歩いていました。
ラティルは脇の扉から出て、
自分の部屋へ戻り、
着替えをしました。
寒くはなかったけれど、
妊娠中なので、
健康には十分気をつけなければ
なりませんでした。
その時、乳母が
ラティルに声をかけてきました。
ラティルは彼女が
恥ずかしそうにしているのに気づき、
どうしたのかと尋ねると、
乳母は、ぬいぐるみとゲスターの噂を
聞いたと言いました。
ラティルは心配しないように、
もう終わったことだと言い、
廊下を歩き始めましたが、
乳母は、
ラティルの腕を取りながら
再び声をかけ、
実はフローラにぬいぐるみを渡したのは
自分だと告げました。
ラティルが驚くと、乳母は
ぬいぐるみが、そんなに貴重だとは
思わなかったこと、
ラティルが姫と
あまり一緒にいなかったことと、
そのぬいぐるみは、
「陛下2」という名前で、
ラティルに似ていて、
彼女のような匂いがしたので、
姫のために良いだろうと思い
ベビーベッドに置いたことを
告げました。
ラティルはさらに驚きました。
乳母は、悪気があって
やったのではないとわかったので、
ラティルは、なぜゲスターが、
自分のせいだと言ったことだけ
聞きました。
乳母は、分からない、
噂を聞くまで、
そのことは忘れていたと答えました。
ラティルはサーナット卿を見ました。
視線が合うと、
すぐに何をすればいいのか理解し、
彼はゲスターを捜しに行くと、
ラティルの所に連れて来ました。
まだ、ゲスターの目や鼻は
赤く腫れていました。
ラティルはゲスターに謝ると、
彼の元に駆け寄り、
強く抱きしめました。
ラティルは、
怒ったことを謝ると、
ゲスターは泣きじゃくるばかりで、
何も答えませんでした。
ラティルはゲスターを
強く抱きしめました。
ゲスターの心臓の鼓動が速すぎて
破裂するかと思ったほどでした。
ゲスターは、
とても驚いているようでした。
しばらくして、
ラティルが顔を上げると、
ゲスターは、再び泣いていました。
ラティルはゲスターに謝り、
泣かないでと言って彼の涙を拭くと、
ゲスターは、
さらに涙を流しました。
ゲスターは、
何かを話そうとしましたが、
ラティルはそれを遮り、
フローラにぬいぐるみを渡したのは
ゲスターでないことを知っていると
言いました。
ゲスターは、
どうして分かったのかと聞くと
ラティルは、
乳母が言ったことを話しました。
ラティルはゲスタの胸に額を当て、
優しく肩を叩きながら
なぜ、自分のせいだと言ったのかと
尋ねました。
ゲスターは、
ラティルがクラインのことで
悲しんでいるようだったので、
自分のせいだと言ったけれど
ラティルが怒るとは思わなかった。
たとえ、ラティルに嫌われても、
ラティルに安心してもらいたかったと
震える声で言い、
さらに泣きました。
ラティルは、
ゲスターがやってもいないことで
責任を負うのはバカだと言うと、
ゲスターはさらに泣いてしまったので
ラティルは驚いて、
再びゲスターを抱きしめ、
彼に謝り、泣かないでと頼みました。
遅く起きたクラインは
この騒ぎに気づきませんでしたが
ぬいぐるみを動かしたのが
ゲスターではなく
乳母だと知っても気分を害しました。
結局、ぬいぐるみも、中の宝石も
なくなってしまったからでした。
その時、クラインは
窓の外から「雪だ!」と叫ぶ声に驚き
すぐに服を着て
ハーレムを飛び出しました。
バニルは驚いて
どこに行くのかと尋ねると、
初雪の日は陛下の所へ行くと
答えました。
クラインは興奮して
アクシアンの横を走り抜けましたが
木の陰に入ったところで立ち止まり
口をポカンと開けました。
アクシアンは、
どうしたのかと尋ねながら、
クラインに近づき、
彼の見ている方向を見ると、
ラティルがゲスターと一緒に
雪だるまを作っていました。
アクシアンは、
戻った方がいいのではないかと
指摘しましたが、
すでに、クラインは
前に進んでいました。
ゲスターに頭をもたれたラティルは
彼の髪に降り積もった雪を見て
笑い出し、
ゲスターは顔を赤くして
袖で目を擦りました。
ラティルは、
ゲスターは、おじいちゃんになっても
魅力的だと言うと、
ゲスターは、
おじいちゃんになっても
好きでいてくれるのかと
尋ねました。
ラティルは視線を下げて
ゲスターの頬にかかる髪を
撫でました。
目が合うと、ゲスターは目を細め、
まるでキスを求めているようでした。
寒さのせいか、
いつもより赤い唇を見て、
ラティルは、
お腹がくすぐったくなりました。
彼女はゲスターの唇に、
ゆっくりと口を近づけました。
しかし、2人の唇が重なる前に、
ネズミの糞みたいな、
こんなに少ない雪で
どうやって雪だるまを作るんだと、
大きな声が、
二人の間に割って入りました。
ラティルが素早く振り向くと、
茂みの間から
クラインが近づいて来ていました。
ラティルはクラインに声をかけ、
微笑みました。
クラインは腕を下げ、
ゲスターとラティルを見つめました。
彼の顔は、ゲスターとは別の意味で
赤くなっていました。
彼は顔をしかめ、
ラティルの方を向くと、
自分の宝石は、
皇帝とその不愉快な側室たちのせいで
なくなってしまったので、
見つけて欲しいと叫びました。
部屋に戻って来たクラインが
泣きながら荷造りをしているのを見て
バニルは、
また荷造りをしているのかと
尋ねました。
アクシアンは、
カリセンに戻るのかと尋ねると
クラインは、それを否定し
ディジェットに行くと叫びました。
バニルは、ディジェットに
何か用事があるのかと尋ねると、
クラインは、
冒険者たちに命令を残して来たから
それを聞きに行くと答え、
泣きながら荷物をまとめ続けました。
バニルは、再び怪物のいる中を
旅に出るのかと思うと青ざめました。
しかし、バニルの心配とは裏腹に、
今回、彼が同行する必要は
ありませんでした。
15分後、
クラインがディジェットへ行くと聞いて
心配したラティルは、ゲスターに、
クラインを連れて、
一緒にディジェットへ
行ってくれないかと頼みました。
クラインは断ろうとしましたが、
ラティルとゲスターが
二人きりになれば、
キスをするかもしれないと考え
思い留まりました。
ゲスターは、
そうすると即答しました。
ゲスターは、クライン一人では
正しい情報を引き出せないと考え、
わざわざ手伝いに
行くことにしたのでした。
一方、二人から遠く離れた
ディジェットの市場の中で、
クラインの雇った冒険者が
「読めないけれど、
すごい情報量だと思わないか?
もっとお金を要求すれば
よかったかも。」と叫んでいました。
ラティルは、
身体に気をつけなければいけないと
思っていながら、
寒い中、外へ出て
雪だるまを作ったりして
大丈夫なのでしょうか?
ゲスターも、
ラティルの気を引くためとはいえ、
大の大人が人前で泣いたりして
恥ずかしくないのでしょうか?
ラティルの気持ちを
自分に向けるためなら、
何でもありなのでしょうか。
ゲスターが気持ち悪くて、
彼に対して腹が立って
仕方がありませんでした。
母親からもらった宝石を
なくされてしまい、
ラティルとゲスターが
仲よくしているのを見せつけられた
クラインが可哀そうすぎました。