335話 ダガ公爵はタンベクに、アイニが対抗者でないかもしれないと言いました。
◇仲の悪い2人◇
アイニ皇后が
対抗者でないかもしれないと
彼女の父親が言ったので
タンベクは戸惑いました。
彼女は、
それはどういうことなのかと
尋ねました。
ダガ公爵は、
娘が奇妙な黒魔術師と
接触しているのを見たことがある。
近づかないほうがいいと
思ったけれど、
彼女は言うことを聞かなかった。
それ以来、娘は
自分に近づかなくなったと
言いました。
タンベクは、
もう少し詳しく教えて欲しいと
頼みました。
ダガ公爵は、
元々アイニは、とても優しい子だった。
もちろん今も優しいけれど、
少しずつ変わってきたと言って
ため息をつきました。
そして、元恋人だったヘウン皇子と別れ
その政敵と結婚したせいか
あちこち歩き回っているうちに
次に見つけたのは
ラトラシル皇帝の側室だったと
言いました。
それは、どういう関係なのかと
タンベクは驚き、
目を大きく見開きました。
続けて、ダガ公爵は、
アイニは、
その側室に拒絶されて以来、
かなり傷ついたようだと言うと、
タンベクは、
ゴシップ誌に載りそうな内容だと
思いました。
タンベクは、
しどろもどろになりながら
複雑な関係だと呟きました。
アイニ皇后が、
ラトラシル皇帝本人もしくは
その側近がロードだと
主張したことを思い出し、
頭が混乱しました。
ラトラシル皇帝は、
アイニ皇后がヘウン皇子の件で
自分を恨んでいると言い、
アイニ皇后の父は、
娘がラトラシル皇帝の側室に恋して
追いかけ回して振られたから
ラトラシル皇帝に恨みがあると言う。
世俗から離れて生き、
正しい意味と正義を
追い求めることを誓い、
怪物を狩り続けてきた彼女は、
このようなことには
慣れていないので憤慨しました。
2人とも対抗者なのに、
互いに相手が嫌いなのかと
思いました。
◇昔のロードは?◇
ゲスターの前で
必ず言うべき言葉を
自ら書いて教えていたラティルが、
我慢できずにお腹を抱えて
爆笑しました。
その様子を見ていたサーナット卿は
昔のロードもこうだったのかと
小声で尋ねました。
カルレインは視線を逸らしました。
ダガ公爵が、
ゲスターに操られて、
そのような話をしたことを
知らないタンベクは、
ひどくソワソワしながら
公爵家を出ました。
タンベクに同行した聖騎士のミルギも
今回はかなり驚いた様子でした。
ミルギは宮殿の近くに来ると、
ダガ公爵の言葉が本当なら、
アイニ皇后は、
ラトラシル皇帝に限り
公正ではないのではないか。
アイニ皇后のそばで、
彼女を手伝ってもいいのかと尋ねると
タンベクは、
分からないと答えました。
とりあえず、アイニに
報告をしなければならないので、
二人は宮殿の中に入り、
アイニに会いました。
彼女は会議中であったにもかかわらず
タンベクに会うために
すぐに出てきてくれたので、
彼女はさらに気分が悪くなりました。
アイニは期待に満ちた目で、
羅針盤に対するラティルの反応について
尋ねました。
しかし、タンベクが、
特に反応しなかったと答えると、
アイニは、
そんなはずはないだろうという表情で
眉をひそめました。
タンベクは、
ラトラシル皇帝は、
あまり興味がなさそうだったと
正直に報告しました。
アイニは、それを疑問に思いましたが
そんなものがあれば、
対抗者の剣を持っている
アイニ皇后が持っていた方がいいという
ラティルの言葉を伝えました。
アイニは眉をひそめ、
ラトラシル皇帝は
ロードである可能性が最も高いし、
そうでなくても、
そばにロードがいるに違いないのに
なぜなのかと呟き、
ラトラシル皇帝が
ロードであることを突き止める
具体的な方法はないのかと
尋ねました。
タンベクは、
今のところないと答えました。
アイニはラティルがロードだと
確信しているのではなく、
ロードであることを
望んでいるように見えたので、
タンベクは不愉快になりましたが、
公平性を失わないために、
このような考えをできるだけ
押さえました。
代わりに彼女はアイニに
なぜラトラシル皇帝の方に
ロードがいると確信しているのか、
前回、それを聞いていないと
言いました。
アイニは、自分に、
先代ロードの記憶の一部があることを
どう話せばいいのか分からず、
答えられませんでした。
それに、アイニ自身は
絶対にロードではないと
カルレインに拒絶された後、
自分が対抗者だと
知るようになりましたが、
他の人に、この話をすれば
怪しまれるかもしれないと
思いました。
アイニはラナムンとは違い、
正義感があり、意志も強い方だと
期待していたのに、
すぐに答えられなかったので
タンベクは失望しました。
ラティルとアイニは
本当に仲が悪くて、
攻撃し合っているだけなのかと
思いました。
そんなタンベクの表情を見て、
アイニは、ラティルが彼女に
何か言ったのだと思い、
タンベクに見えないように
拳を握りました。
タリウムへ行く前は
アイニに対する信頼に満ちていた
タンベクが、今は少し距離を置き、
言葉一つ一つに
疑惑を提起していました。
◇仲間が欲しい◇
タンベクが出て行くと、
アイニはソファーに寄りかかって
まぶたを閉じました。
ドミスとしての記憶は、
カルレインと愛し合った記憶しかなく
他の役に立つ情報は、
残っていませんでした。
タンベクは生真面目な性格なので
自分の敵にはならないだろうけれど
ラトラシルが
ロードであることを確信するまでは、
味方にもならないだろうと思いました。
アイニは、
立派な肩書を持っていても、
自分と志を同じくする人が
いないことを悟りました。
今、彼女のそばにいる人たちは
心から彼女を愛しているとはいえ、
彼女の家族なので、父親相手に
使うことができませんでした。
ダガ公爵の側近たちも同様で、
ヒュアツィンテ皇帝を相手に
戦った仲間だけれど、
父親を相手にする時は
一緒に戦えませんでした。
ヒュアツィンテの側近たちには
何と言えばいいか分からないし、
アナッチャは、
ラトラシルを憎んでいるけれど、
祖国を愛しているので、
タリウムに危害が及ぶなら、
自分を裏切ると思いました。
前の対抗者は、聖騎士たちを率いて
ロードと対立したようだけれど
今、聖騎士団の一つは
ロードの側に付き、
もう一つは態度が曖昧だと
考えていた時、アイニは、
数千年間、対抗者を助け、
対抗者を強くしてきた師匠である
ギルゴールのことを思い出しました。
彼は、ヘウンを亡き者にした
2人のうちの1人なので、
手を組むことを考えただけでも
鳥肌が立ちましたが、
彼を利用して、
すぐに捨てたとしても、
彼の力が必要だと思いました。
◇理解できない話◇
ラティルは、ソファーに座りながら
これで、対抗者の武器になる人を
1人、落とすことができたと思い、
満足そうに笑いました。
それでもラティルは
戦争に反対でした。
自分の民を、
危険にさらしたくないので、
いつどのように
問題を起こすか分からない危険要因を
すべて側室にしました。
しかし、側室になれないアイニは
コントロールできないので、
彼女が何かする度に、
武器になりそうなものを
奪うか折ることしかできませんでした。
ラティルは、
アイニが皇后のままでいてくれて
自分ではなく、彼女の国のことを
気にして欲しいと願いました。
しかし、
ラティルが世界征服に関心がなくても
ロードが転生するのと同じ500年周期で
怪物が増えるのは確実でしだ。
ドミスが覚醒する前も、
森には怪物が歩き回っていて、
彼女も攻撃されたことがありました。
時間が経てば、今度も怪物は目覚め、
ラティルは皇帝として
それらを止めなければ
なりませんでした。
血人魚のように理性がある種族なら
懐柔することもできるけれど、
ゾンビのようなものは
統制できないと思いました。
そのため、
今はアイニと戦っている場合ではなく
力を蓄えて、聖騎士たちを
増やす必要がありました。
アイニが、
自分のことをロードだと言って
何度も追い詰めなければ、
神殿を支援することを提案し、
聖騎士の数を増やせるのにと
考えていると
後ろから侍従が声をかけ、
メラディムが
ラティルに会いたがっていると
告げました。
ラティルが許可すると、
しばらくして、
メラディムが中に入って来ました。
水から出て来たばかりなのか、
髪の毛が湿っていました。
ラティルはにっこり笑いながら
立ち上がり、
メラディムを歓迎しました。
彼は、ロードに付いたり、
対抗者に付いたりを繰り返す種族の
首長なので、
彼には、さらに良くしてあげる
必要がありました。
ラティルは、
「あなたに会えてとても嬉しい」という
表情を浮かべ、
彼が訪ねて来た理由を聞きましたが、
メラディムが、
とても深刻な表情をしているのを見て
戸惑いました。
ラティルは、メラディムに
どうしたのかと尋ねると、彼は
以前、話をした誓約式のことだと
言いました。
ラティルは側室の誓約式について
メラディムと話をした記憶がなく、
躊躇していると、メラディムは、
夜、照明を点け、
少ない人数だけ招待して、
温室の前で誓約式をすることにした。
指輪も交換して、
本当に美しい計画を立てたと
話を続けました、
ラティルは、
しばらくメラディムの言うことが
理解できませんでした。
彼と誓約式の話をしたかどうかは
よく覚えていないけれど、
話をしたとしても、
このように具体的には
しなかったと思いました。
メラディムは、
自分とラティルが準備した誓約式を
なぜギルゴールと先に行ったのか
分からない。
これは、どういうことなのかと
ラティルを責めました。
ラティルは、ぼんやりと彼を見つめ
「え?」と聞き返しました。
彼が冗談を言っているのかどうか
分かりませんでした。
そういえば、この誓約式の光景は、
まるでギルゴールの誓約式の光景と
同じではないかと思いました。
ラティルは猛々しい表情で
メラディムを眺めると、
彼は真剣な表情で、
ギルゴールが
自分たちの誓約式の計画を
見たに違いないと呟きました。
ラティルは、
それをどこで見たのか、
今、冗談を言ってるのかと尋ねると、
彼は、それはどういう意味かと
聞き返し、
とにかく、自分たちも
早く誓約式をしなければならない、
彼とは全く違うように
しなければならない。
すでに誓約式をした奴は、
また、しないだろうけれど、
彼は欲張りだから、分からないと
言いました。
ラティルは、
素早く頭を回転させましたが、
メラディムの言うことに
付いていくのが困難でした。
彼は、誓約式をしないつもりなのかと
尋ねました。
ラティルは、
やらなければならないけれど、
やったばかりなのに、
またやってもいいのか。
もちろん、メラディムが
側室に来るということは
全国民が知っているけれどと
答えると、メラディムは、
やるべきだ。
自分はギルゴールの奴とは違って
夜にやるつもりだ。
照明をきれいにつけて
お客さんは少しだけ招待する。
指輪も交換して、
本当にきれいだと思う。
自分たちの誓約式は
特別でなければならないと
言いました。
ラティルは口を開けて
メラディムを見ました。
彼が冗談を言っているのか、
それとも本気で言っているのか
分からないけれど、
冗談だったらいいなと思いました。
その時、ラティルの頭上で誰かが
あれはフナの頭だと、
説明してくれました。
またまた、メラディムに
笑わされました。
記憶が定着しないメラディムが
しっかり覚えているほど、
それだけ、
ギルゴールの誓約式の様子は
ロマンティックで、
美しかったのだと思います。
もしもギルゴールが、
誰も忘れることのできない誓約式を
行いたいと思っていたのなら
彼の計画は大成功だったと
思います。
アイニは、
自分と志を同じにする人が
いないと言って嘆いていますが、
彼女は皇后として慈しみ深い態度を
取っていながらも、
自分のことしか考えていないように
思います。
自分の事よりも、
人のため、国のためを思って
行動しているラティルに
仲間が多いのは当然だと思います。