98話 智彦は麗奈に手を出したら同じ目に遭わすと、雅紀に警告しました。
雅紀は、
智彦に何ができるか
楽しみだと言いました。
智彦は、それが何であっても
雅紀にできることは自分もできると
言いました。
雅紀は舌打ちをし、
立ち去る智彦の後ろ姿を
睨みつけました。
智彦は、
過去では愚かにも退いたけれど
今回は絶対に退かないと
決意しました。
駐車場に車があるのを確認したので、
ここにいれば雅紀に会えると思い
璃香はエレベーターの前で
雅紀を待ち伏せしていました。
やがて、エレベーターの扉が開き
雅紀が現われると、璃香は、
彼が帰るのが遅くなくて良かった。
自分一人の身体ではないので
長くは待てないと笑顔で言いました。
雅紀は機嫌が悪そうに、
何の用なのか、
連絡をしてくれれば良かったのにと
言うと、璃香は、
雅紀から連絡が来ないので、
仕方なく、ここで待っていたと
返事をしました。
そこへ他の社員たちが
ゾロゾロとエレベーターから
降りて来たので、
雅紀は、璃香を睨みながら
ここで話さないで
他の場所へ移ろうと提案しました。
雅紀は不機嫌そうな顔で璃香に、
早く用件を言え。
会社までやって来て、
何が言いたいのかと迫りました。
璃香は、
雅紀が両親に話してくれたのかと
尋ねました。
雅紀は、話していないと答えると
璃香は、彼らに
記事で知らせたくなければ、
早く話すようにと迫りました。
雅紀は、璃香を睨みながら
今、自分を脅迫しているのかと
尋ねました。
璃香は、
そのように聞こえたら申し訳ない。
先ほども話したけれど、
自分は長くは待てないと
笑顔で答えました。
雅紀は怖い顔で、
本当に自分と結婚するつもりなのかと
尋ねました。
璃香は、
もちろん、そのつもりだ。
子供を１人で産んで
育てろと言うのか。
自分は必ずこの子を産むと
笑顔で話しました。
雅紀は、眉を顰め、
産むにしても合意が必要だ。
絶対に産むと言うのは
少し違うのではないか。
自分を愛してもいないのに
と言って、
璃香を睨みつけました。
そして、何が欲しいのか。
お金が必要なら、その金額を言え。
その何倍も払うと言いました。
璃香は不気味な笑みを浮かべながら
お金は要らない。
雅紀の妻になりたいと
言いましたが、心の中では、
雅紀ではなく、彼の肩書き、
西江の社長夫人の座だけを
自分は望んでいると考えていました。
しかし、雅紀は
璃香は頭がおかしくなったのかと
大笑いしました。
けれども、璃香は、
何と言われても構わない。
自分は結婚する。
お腹が大きくなる前に
ウエディングドレスを着たいので
春に結婚式を挙げると、
お腹を触りながら笑顔で
言いました。
麗奈は鏡を見ながら
ため息をつきました。
そこへ智彦がやって来て、
準備はできたかと尋ね、
今日は株主総会が
あるのではないかと確認し、
緊張しているかと尋ねました。
麗奈は、
少し緊張していると答えました。
智彦は麗奈の肩に手を置き、
緊張することはない。
絶対にうまく行くと思うと
励ましました。
麗奈はお礼を言った後、
自分が良く見えるかと
尋ねました。
すると、智彦は麗奈の唇に
自分の唇を合わせ、
自分が送って行くと、
笑顔で告げました。
いよいよ、今日だと
麗奈は意気込み、
株主総会の会場に入りました。
ジェイミーも来ていたので、
互いに顔を見合わせ
頷き合いました。
そこへ仁志と恵美も入って来ました。
麗奈を睨みつけた恵美は、
今日は、
麗奈の思い通りにはさせないと
思いました。
麗奈は、恵美の表情が
どのように変わるか楽しみだと
ニヤリと笑いました。
そしてWJリテールの
臨時株主総会が始まりました。
仁志は壇上に立ち、
株主たちに挨拶をしました。
スマホを手にした麗奈は、
タイミングが完璧。
さすが優里だと思い
ニヤリと笑いました。
そして仁志が
緊急株主総会に出席している
株主たちに謝辞を述べている時、
慌ててやって来た女性が
仁志に何かを話しました。
麗奈は、思ったより演技が上手だと
思い、ニヤリと笑いました。
会場からも、
スマホを手にした人たちから、
脱税って何？
これは本当なのか。
どおりで不審な点があると思ったと
声が上がり始めました。
周囲の声を不思議に思った恵美は
スマホを見ると、
「ラオン美術館の堤恵美館長、
脱税と収賄の疑惑」
という文字が目に入って来ました。
これは一体何なのか、
恵美は身体を震わせながら
立ち上がりました。
麗奈は、恵美にとって
想定外だったようだと思いました。
彼女は慌てて会場を出ると
エレベーターに向かい、
ボタンを押しましたが、
警官たちに囲まれました。
麗奈は恵美に、
これから、警察の取り調べと
税務調査まで受けるので
忙しくなりそうだと
皮肉を言いました。
恵美は、
麗奈も無事でいられると思うのか。
彼女の絵がどこで
使われたと思うのかと尋ねました。
麗奈は、
自分には分からない。
恵美に言われるまま
絵を描いただけだからと答えました。
恵美は、
無名の新人である麗奈のために
個展まで開いた理由を
知っているのかと尋ねました。
麗奈は、わざと自分の価値を上げて
その絵を脱税や賄賂に
利用したということかと
答えました。
恵美は、麗奈の実力で
絵が売れるわけがないと
バカにしました。
それに対して麗奈は、
自分の絵を売ったお金を
一円ももらったことがないと
反論しました。
警官は、
恵美を連行すると告げました。
恵美は、
これで終わりだと思うなと
麗奈を脅しました。
今までの会話を
録音していた麗奈は、
自分もこれで終わりだとは
思わない。
これは始まりに過ぎないと
呟きました。
いきなり絵の話が出て来た時は
？？？でしたが、
たまたま他の人よりも
絵が上手だった麗奈に
恵美は絵を描かせ、
それに価値があると見せかけるために
個展を開き、
本当は、そこまで価値がないのに
麗奈の絵の値段を不当に吊り上げた。
それに、麗奈の絵は
タダで手に入るので、
賄賂に使っても、恵美の懐は
痛むことがなかったという
ことなのでしょう。
璃香は雅紀に対して
子供を武器にして、
かなり強気に出ていますが、
璃香が碧人を、恵美が仁志を
手玉に取ったように、
雅紀に対しても、
同じことができるとは思えません。
今後、母娘共に、
凋落の一途を辿っていくのではないかと
思います。
