368話 アニャは、カルレインが頑張って生きていると思いましたが・・・
◇困惑◇
アニャはとても困惑していました。
彼女は雑誌をくるくる巻いて、
訳もなく、それで肩を叩きました。
連絡が途絶えた昔の友達が
思いもよらなかった道に
入ったのを見た時、
こんな感じがするのではないかと
思いました。
かつては、ドミスさえ
見下していたカルレインが
誰かの愛らしい狼に
なっているなんて、
想像もしていませんでした。
とにかく、これで、
カルレインが側室になったのは
確実なので、
夜になるのを待って
ハーレムへ行けば、
カルレインに会うことができると
思いました。
アニャは、
ドミスを連れて来なくて良かった。
彼女が、この雑誌を見たら
目がひっくり返ると思い
ニヤリと笑いました。
◇信じないカルレイン◇
その夜、
アニャは暗闇に乗じて
宮殿の中に潜入しました。
宮殿はとても広かったものの、
ハーレムは一番奥にあるので、
位置を見つけるのは
それほど難しくはありませんでした。
ところが、意外にも、
十数人の聖騎士たちが
ハーレムの周りに陣取り、
徹底的に四方を見回していたので、
アニャは、岩の後ろに
身を隠さなければなりませんでした。
なぜ、聖騎士が
ハーレムを守っているのか。
アニャは不思議に思いました。
隠れて歩くのが大変そうなので
アニャは下女のふりをして
入ろうとしましたが、
ハーレムの中を歩き回っているのは
すべて男たちだと分かると、
この方法も諦めました。
おまけに、
なぜか、タリウムのハーレムは
真夜中なのに、
照明が点けっ放しになっているので、
アニャは、
気が狂っていると思いました。
それでもアニャは
うずくまったまま
2、3時間チャンス窺っていると
誰かが自分を見下ろす視線を感じ、
驚いて顔を上げました。
テラスの上の方に、
とても清いけれど、
忌まわしいオーラを放つ、
美しくて筋肉の多い男性が
彼女を見下ろしていました。
彼は目が合うと、
どこか痛いのか。
自分に手伝えることはないかと
優しく尋ねました。
彼の声は心地よかったけれど、
アニャは彼から、
かなりストレスがかかる光を感じ、
急いで走り去りました。
彼が、本当に輝いているわけでは
ないけれど、彼から
とても明るくて眩しい雰囲気を
感じました。
対抗者の軍隊の方が頭数は多いのに
変だと思いました。
それに、ここの雰囲気は派手なので、
なぜ、カルレインは
こんな所にいるのかと戸惑いました。
それでも夜明け頃、
アニャは勇気を出して
再びハーレムに侵入しました。
ドミスは、
まともに動くこともできずに
カルレインを待っているので、
手ぶらで帰ることは
できませんでした。
500年間封印されたことで
ドミスの性格は
とても変わりましたが、
彼女の犠牲が原因なので
彼女を責めることはできませんでした。
そして、ついにアニャは
聖騎士たちと、
過度な光の塊の男を避けて
ハーレムの中に入ることに
成功しました。
居住地域に入ったアニャは
一番近い部屋から確認してみました。
その部屋に付いている庭園のベンチに
傲慢な表情をしていながらも、
人をときめかせるほど
ずば抜けて美しく、
黒い髪を垂らした男が
座っていました。
アニャは驚きましたが、
彼は目標物ではないので、
別の部屋を探しました。
そこには、先程の
過度な光の塊のような男がいました。
そして次の部屋を確認しようとした
その瞬間、アニャは後ろから
声をかけられました。
彼女は振り向くと、思いがけず廊下に
グリフィンが立っていました。
驚いたアニャは、
なぜ、グリフィンがここにいるのかと
尋ねると、
鳥は羽をばたつかせながら
アンヤの周りを一周し、
嬉しい気持ちを抑えながら、
自分は世界のどこにも
行けない所がないと言いました。
グリフィンの戯言とほら吹きは
有名だったので、
アニャは笑いながら頷くと、
先を進みました。
そして次に到着した部屋の前で、
アニャは、カルレインの部下の
デーモンを見つけたので、
嬉しそうな顔をしました。
アニャが彼を呼ぶと、
デーモンも驚き、
久しぶりに友達に会えて、
とても嬉しそうでした。
デーモンは、
なぜアニャがここにいるのか
尋ねました。
彼女は、
カルレインに会いに来たと答えました。
なぜ、団長がここにいるのを
知っているのかと尋ねると、
アニャは、雑誌を見たと答えました。
デーモンはくすくす笑いながら
扉を開き、 カルレインを呼びました。
アニャは、そっと中に入りました。
カルレインは、
扉のすぐ後ろに立っていました。
彼が、あまりにも扉の近くに
立っていたので、
アニャが入ることができないでいると
カルレインは、
ようやく数歩後退しました。
数日前に彼に会った時は、
彼に短刀を投げて威嚇し、
戦ったので、
アニャは気まずさを感じ、
ぎこちなく手を上げて
挨拶をしました。
カルレインは、
そんなアニャをじっと見つめ、
彼女が大変な思いをしていることを
聞いたと話しました。
アニャは、
そんなに大変ではないと
返事をしましたが、カルレインは
アニャが食べ物を買うお金がなくて
盗んで食べていたという
報告を思い出し、
引き出しを開けて、
お金になりそうな宝石を探しました。
ラティルが
プレゼントしてくれたものは
渡せないけれど、
数百年も最高の傭兵団を
運営してきたので、それ以外にも
色々とお金になる物を
たくさん持っていました。
アニャはカルレインが、
宝石とお金を
一つ一つ手にしているのを見て
慌てて彼を呼びました。
カルレインが手を止めて
彼女の方を振り向くと、 アニャは
お金のために来たのではなく、
少し面倒を見て欲しいと頼みました。
カルレインは、
仕事でも家でも何でも言って欲しいと
告げると、アニャは、
ドミスが目を覚ましたと話しました。
昔の友人を、
それなりに嬉しそうに
迎えてくれたカルレインの表情が
あっという間に固まりました。
その表情は、
ひどく不機嫌そうに見えました。
アニャは彼を見つめながら、
ドミスがカルレインに
会いたがっていると告げました。
アニャは、
こんな風に話してもいいのかと思い
困っていました。
カルレインは、今まで
ドミスが死んだと思っているはずだし
彼女の記憶を持つ義妹のアニャの
転生と出会い、
愛し合って過ごしたはずでした。
カルレインを側室にした皇帝も
義妹のアニャの転生なのか、
それとも全然違う人なのかは
分からないけれど、
とにかく、彼が一人で過ごしてきた
500年の歳月の一部は
義妹のアニャと過ごしたはずなので
そのカルレインに
ドミスの話をしたら、
彼が信じてくれるかどうかは
分かりませんでした。
予想通り、カルレインは真顔で、
それはどういう意味なのか。
ドミスは死んだはずだと
言いました。
アニャは辛そうな声で、
カルレインに隠していることがあると
告げました。
しかし、カルレインは
アニャに少しも隙を与えず、
ドミスは確かに死んだと言いました。
しかし、アニャは
死んでいないと言い張りました。
しかし、カルレインはもう一度
ドミスは死んだと告げました。
彼女が死んだからこそ
ラティルが存在しているので、
それを知っているカルレインは、
アニャが今何を言っているのか
分からず、戸惑いました。
ドミスは
カルレインを愛していましたが、
アニャを信頼していました。
二人の友情は、
カルレインが時々嫉妬するほど
強いものでした。
そのアニャが、
死んだドミスの名前を
いい加減に口にすることに、
カルレインは、少し腹立たしさを
感じました。
カルレインが、びくともしないので
焦ったアニャは、
信じられないかもしれないけれど
本当にドミスは生きている。
今、とても苦しんでいて、
カルレインを必要としている。
彼はドミスに
会わなければならないと
説得しました。
カルレインはその話を聞いて
驚くどころか、ドミスは死んだと、
彼がアニャを
落ち着かせようとしました。
ドミスは彼を生かすために死んだのに
彼はドミスが生きているという話さえ
否定しているので、
アニャの目頭が熱くなりました。
彼女は、カルレインに
一度でいいから、
顔を見せて欲しい。
たとえ別れたとしても、
少しでいいから顔を見せて欲しい。
今、ドミスはは
まともに動くことができないと
言いました。
それでもカルレインは
動じる気配はありませんでした。
アニャは彼に
盟約の話を持ち出すべきかどうか
悩みました。
500年前、ドミスが封印される前に
この話はするなと、
ドミスに頼まれていたので、
アニャは、
この話をしないつもりでした。
ところが、ドミスは
目が覚めるや否や
カルレインを探したので
アニャは慌てたのでした。
しかし、カルレインは
盟約のことを聞かなければ、
絶対にドミスが目覚めたことを
信じないようでした。
アニャは、
なぜドミスが生きているのか
説明すると告げました。
◇好奇心◇
ラティルが寝ていると、
「ロードはいますか?」と
隣で誰かが髪の毛を引っ張るので、
彼女は、イライラして
目を覚ましました。
犯人はグリフィンでした。
ラティルはグリフィンに
今、何をしているのかと尋ねると、
グリフィンはラティルの髪に
頭をこすりつけながら
今、誰が来ているのか
気にならないのかと尋ねました。
ラティルは、
グリフィンが来た理由が
気になると、鳥は、
ロードは自分のことが
そんなに好きなのかと尋ねた後、
ロードと時々に一緒にいた
吸血鬼がいる。
ロードは、自分ほど
可愛がっていたわけではないけれど
少し可愛がっていた吸血鬼が
カルレインの所へ来ていると
話しました。
ラティルは眉を顰めました。
カルレインの周りは
いつも吸血鬼たちでいっぱいなのに
なぜグリフィンは、
自分を起こしたのかと思いました。
ラティルがあまり反応しないので、
グリフィンは翼を羽ばたかせながら
アニャが来ていると叫びました。
ラティルの頭の中に
義妹のアニャと捜査官のアニャの顔が
思い浮かびました。
ドミスと一緒にいた吸血鬼なら
捜査官のアニャだと思いましたが
ラティルは、
さらに眉をひそめました。
彼女が突然現れたことに
驚いたからではなく、数日前、
百花が教えてくれた洞窟に
アニャがいたと、カルレインが
話してくれたからでした。
ラティルは好奇心が高まり、
眠けが冷めました。
ラティルは起き上がり、
髪を束ねて上着を羽織りました。
百花は洞窟にロードがいると
ザリポルシ姫に話し、
彼女はそこに行って、
行方不明になりました。
もしかしたら、アニャが姫の失踪に
関わっているかもしれないと
ラティルは考えました。
ラティルは、
大丈夫だからと言って
護衛たちに手を振り、
1人でハーレムの中に入りました。
それでも、
四方に警備兵がいるので、
ラティルが通り過ぎると、
警備兵たちは挨拶をしました。
ラティルがグリフィンに
アニャはカルレインの部屋にいるのかと
尋ねました。
グリフインは、
入るのを見ていないけれど、
そうだろうと答えました。
ラティルが
カルレインの部屋の前に行くと、
デーモンは笑いながら
彼女に話しかけようとしましたが、
ラティルは一足先に
静かにするようにという
合図を送りました。
デーモンは怪しみましたが、
命令に従いました。
ラティルがデーモンを黙らせたのは
中間の部屋で待っていて、
後でアニャに会った方がいいのか、
すぐに中に入った方がいいのか
決めかねていたからでした。
そんな中、ラティルは、
この話を聞いたら、
一度だけでもいいので、
ドミスに会うと約束して欲しいと
話す声を聞きました。
カルレインとアニャの押し問答。
どちらも自分が正しいと
信じているし、
何とかして相手を納得させたいと
思っても、
どちらかが徹底的な証拠を
見せない限り、話は平行線のまま。
それで、アニャは奥の手を
出すことにしたのでしょうけれど
果たして、それは
カルレインを
納得させられるものなのか。
カルレインの知らない事実が
明らかにされても、
カルレインは、
ラティルがドミスの転生であることを
知っているので、
アニャの言うドミスが
本物でないことが分かると思います。
ところでアニャは、
ヒュアツィンテを
ハンサムだと思ったり、
ラナムンにも魅了されたので
案外、
イケメン好きなのかもしれません。