95話 服を全て脱いだエルナは首にリボンだけを結んでビョルンの前に座りました。
ビョルンは、
急いで妻を横にしました。
空を見回していたエルナの瞳は、
再びビョルンの顔の上で止まりました。
深夜、ベッドの上でも恥ずかしくて
縮こまっている女性が、
今日は彼の視線を気にせず、
微笑んでいました。
胸の上に映る木の葉の影が、
まるで、繊細なレースのようでした。
ビョルンは、
焦らないように努めながら、
エルナと唇を重ねました。
いつもより、熱っぽく応じる
エルナの舌から感じられる
ワインの風味と、
次第に荒くなる息遣いと
彼の髪の毛をかき分けて
首筋を触る柔らかい手を
ビョルンは良いと思いました。
それから、ビョルンの唇は
首筋沿いに下がり始めました。
首に結ばれたリボンに唇が触れると、
反射的に笑いが飛び出しました。
彼が笑うと、エルナも、
無邪気に、そして不埒に笑いました。
このまま体を乗せて
狂ったように打ち込みたい衝動を
消すために、ビョルンは、何度も
深呼吸をする必要がありました。
それでも、エルナが
受け入れてくれることは
知っているけれど、なぜか、
そうしたくありませんでした。
ビョルンの唇が胸を飲み込むと、
エルナは鳴いている子猫のような
声を上げました。
エルナは、
ゆっくり数を数えていましたが、
ある瞬間からは、
それさえも忘れてしまいました。
今日に限って、
とりわけ執拗だったビョルンの唇は、
息もまともにできないような
気がする頃になって、
ようやくエルナを解放しました。
安堵したエルナは、
突然、両足が開く感じに驚いて
目を開けました。
エルナがビョルンを呼んでも
何の返事もありませんでした。
彼が見ている所に
遅ればせながら気づいたエルナは、
驚き、身を震わせながら
足を閉じようとしましたが、
エルナの足首を握っている
大きくて固い手に
抵抗できませんでした。
エルナは、
酒に酔っていても
隠せない羞恥心に襲われ、
ビョルンにやめて欲しいと頼みました。
掴まれた足首を抜こうとしましたが
ビョルンはびくともしませんでした。
エルナは朦朧とした目で
彼を見つめました。
ぱっと意識が戻ったのは、
ビョルンの口元が
そっと上がった瞬間でした。
その微笑みの意味が何かを悟った時
彼の唇は、開かれた両足の間に
触れていました。
もう寝室のことを
かなり知っていると思っていた
エルナの自負心が崩れました。
エルナは、悲鳴のような声を
上げました。
逃げようとするエルナに
ビョルンは、しっかりとしがみつき
躊躇うことなく、
好奇心に満ちた欲望を求めました。
彼にとっても不慣れなことでしたが
そんなに難しいことでは
ありませんでした。
ビョルンが頭を上げた時、
エルナは息を切らしながら
すすり泣いていました。
震える太ももに
唇を合わせたビョルンは、
ぐったりしているエルナを抱き上げて
膝の上に座らせました。
ビョルンは微笑みながら
濡れた唇を舐めると、
エルナは、
体の奥深くで花が咲き、
蝶が舞い上がるような気がしました。
それが良いと思う一方で、
途方に暮れたエルナは、
どうしていいか分からず、
衝動的にビョルンと
口を合わせました。
彼の唇に残った恥ずかしい跡を
消したいという思いから
始めたけれど、ある瞬間からは
何も考えなくなりました。
ビョルンは、
少し驚いた目で妻を見ました。
エルナは、小さくため息をつきました。
彼女は、
笑っているように見えました。
そして、「うん、分かっている」と
独り言をぶつぶつ言ったエルナは、
彼のズボンを引っ張りました。
呆れて失笑していた
ビョルンの唇から、
荒々しい息が漏れました。
エルナは、いつの間にか
彼の足の間に位置していました。
ビョルンは、
意図していなかった状況に
当惑しましたが、
エルナは彼が引き止める前に、
何でも頑張る真面目な
淑女らしい態度で、
これまで学んできたことを
照れながらも、一つ一つ着実に
実行し始めました。
すでに硬くなっていた下部に
エルナの手が触れると、
ビョルンは、
低い声で悪口を吐きながら
頭を反らしましたが、エルナは
着実に自分の仕事に没頭しました。
ビョルンは、
興奮した空笑いを浮かべながら、
柔らかい茶色の髪をつかみました。
涙ぐむ女性を宥めて、
ようやく欲望を満たした日のことを
思い出しました。
エルナは苦しんでいたけれど、
ビョルンは
あまり気にしていませんでした。
一度、軽く微笑んで、
優しい一言をかければ、
自分の思い通りになってしまう
女だということが
よく分かったからでした。
ところが、今更、
このような妙な気分になるのは、
ここがまさにエルナの故郷で
子供だったエルナが
走り回って遊んだ場所だからだと
思いました。
ふと頭を上げたエルナが
「痛いですか?」と
真剣に心配しながら尋ねました。
ビョルンは首を横に振り
否定しました。
首を傾げていたエルナは、
しばらくして、
微笑を取り戻しました。
ビョルンは、
このくらいにしておけと
低い声で囁きましたが、
エルナは、
何も聞いていないかのように
再び彼を抱きました。
ビョルンは、
最高のブドウを育てたバフォードに
改めて敬意を表しました。
ここのワインは
レチェンだけでなく、
大陸最高のワインになって
当然だと思いました。
ビョルンは
エルナに止めるよう告げると
急いで彼女の髪をつかみ、
呻き声を上げました。
そして彼はエルナに
じっとしていて欲しいと頼むと、
この場にいない、
様々なムカつく顔を思い浮かべながら
かろうじて耐え抜きました。
酒の勢いがなかったら、
相当な屈辱を
甘受しなければならなかったと
思いました。
エルナは、
痛くしようとしたわけではなかったと
謝ると、ゆっくりと起き上がり、
彼と向かい合って座りました。
ようやく一息ついたビョルンと
目が合うと、エルナの表情が
さらに深刻になりました。
ビョルンは呆れて笑うと、
エルナは、
ようやく安堵のため息をつきました。
そして静かに、
いきなり口を重ねて来ました。
エルナは、
ビョルンの目を覗き込みながら、
これは、ビョルンの味だと、
下品な言葉を呟きました。
エルナは、
戸惑っているビョルンを直視し、
実はこういうのを美味しいと言うか
分からないけれど、
ビョルンだからそれでもいいと思うと
最後の一撃を加えました。
自分が猛獣を育てたんだと、
にこやかな笑顔を浮かべながら
意識朦朧としいているエルナを見て
ビョルンは改めて驚嘆しました。
大学に残って後進を育てる道を
歩みたがっていた
レオニードの気持ちが
理解できるような気がしました。
ビョルンは
太ももの上に座らせたエルナの中に
急いで潜り込みました。
苦しそうに腰を捻って
声を上げながらも、
エルナは素直に彼を受け入れました。
時間が経つにつれて
酷くなる酔いに
耐え難くなったエルナは、
半分意識を失っていました。
目の前の物、全てが
眩しくて美しいけれど、
何よりも、自分の中にいるビョルンが
美しいと思いました。
何度も崩れそうになるエルナを
地面に寝かせたビョルンは、
さらに猛烈な勢いで
追い詰め始めました。
あと少しだけと、
理由の分からない焦燥感に
襲われた彼の下で、エルナは
息が切れそうな声を上げながら
体を反らしました。
彼女の声から、
どれほど苦痛を感じているか
分かっているけれど、すでに、
ビョルンの意志で調節できる範囲を
外れた問題でした。
一体何が変わったのか。
答えを見つけることができない
その疑問が、
さらにビョルンを苛立たせ、
荒々しくさせました。
無意味な雑念を払うように、
ただビョルンは、
自分の下ですすり泣く女にだけ
没頭しました。
このような自分の姿がおかしいのに、
それが嫌ではないという
おかしな気分になりました。
ビョルンは、
泣きながら自分だけを見つめる
妻の唇に、喜んで
自分の唇を重ねました。
ビョルンが知りたいのは
狂おしいほど柔らかくて温かい
エルナだけでした。
最後の瞬間、
エルナは力いっぱい
彼を抱きしめました。
突然動きが止まった
ビョルンの背中が小さく痙攣し、
すぐにエルナの中に
温かい感覚が広がりました。
エルナは焦点の合わない目で、
木の葉を見ていました。
ビョルンの重さで
息苦しくなりましたが、
しばらくして視野が逆転し、
目の前にビョルンがいました。
それが嬉しくて笑うと、
彼も笑ってくれました。
汗だくになった体が冷えていく間、
二人はその姿のまま、
静かに過ごしました。
もしも重かったらどうしようと
エルナは心配でしたが、
少し甘えることにしました。
息苦しさが和らぐと、エルナは
ビョルンは温かくて、
とても大きくて硬いけれど、
それでも柔らかくて・・
と言ったところでビョルンは、
この酔っ払いは、いい加減にしろと
ため息をついて笑いました。
しかし、ビョルンが育てた猛獣は、
自分は淑女なので
乱暴な表現は使わないけれど、
そういう言葉を使う分だけ
楽しいのだと思って欲しいと
囁きました。
ビョルンは、
甘いため息をつきながら
エルナを抱きしめました。
満足のいくプレゼントを
もらったので、
今度は仲良くなる番でした。
彼は喜んで
その取引に応じることにしました。
酔った勢いとはいえ、
いつもと違う大胆なエルナと
自分自身の心境の変化に
戸惑うビョルン。
その二人の織り成す甘い時間に
誰かに見つかったらどうするのと
ハラハラしどうしでした。
酔いが覚めたら、
エルナは猛烈に恥ずかしがるかも
しれないけれど、
このシュベリンでの
楽しい日々の思い出が、
再び戻らなければならなくなる
辛い日々を乗り越えるための
力となって欲しいです。