自分時間を楽しく過ごす 再婚承認を要求しますの先読みネタバレ付き

子供の頃からマンガが大好き。マンガを読むことで自分時間を楽しく過ごしています。再婚承認を要求します、ハーレムの男たちを初めとして、マンガのネタバレを書いています。

問題な王子様 119話 ネタバレ 原作 あらすじ 枯れてしまった花

 

119話 エルナは自分の寝室に戻りました。

浴槽から立ち上る

甘い香油の匂いが広がり、

メイドたちが誰も口を利かない

静かな浴室に

おとなしく座っていたエルナは、

水面を漂う花びらを

じっと見下ろしながら、

この時間が終わるのを待ちました。

 

数日間、眠れないほど

戦々恐々としていましたが、

いざこの部屋に戻ると

心が驚くほど静かになりました。

ただ元の位置に

戻っただけなので、

大騒ぎをするのは、

おかしいと思いました。

 

心配そうな目をしていたリサは

気が向かないなら、

フィツ夫人へと・・・

と、慎重に口を開きましたが

エルナは、大丈夫。

そうする必要はないと

答えました。

諦めの色が浮かんだ顔を

じっと見つめていたリサは、

これ以上、何も言えず

頭を下げました。

 

入浴を終えた大公妃は、

シースルーのパジャマの上に

ガウンを着せられて、

体を隠しました。

念入りにブラッシングした髪は

リボンで緩く結ばれました。

 

安らかな夜を過ごしてくださいと

いつもの挨拶をした

メイドたちが退くと、

エルナは寝室の真ん中に

一人残されました。

 

暖炉の薪が燃える音に

耳を傾けながら立っていた

エルナは、軽い足取りで

ベッドに近づきました。

新しく飾ったせいか、

1年も使った部屋なのに、

とても見慣れない感じがしました。

 

エルナは、ふと「1年」と

囁きながら

新しいベッドの端に腰かけました。

そういえば、

昨年のこの季節頃に

結婚式を行った。

結婚1周年まで残った日を

数えようと努力していたエルナは、

すぐに熱意を失い、

ため息をつきました。

家の中にだけ閉じこもっていて

日付感覚を失ったせいか、

今日が何日なのかも

よく思い出せませんでした。

 

結婚記念日は、毎日のように

待っていた日で、

その特別な一日を夢見て

数多くの計画を立てました。

その日は、目覚めた朝から

再び眠りにつく夜まで、

全ての瞬間を一緒に過ごせるように

ビョルンが忙しくないことを

切に祈っていました。

 

本当に子供のような気がして、

エルナは少し笑いました。

彼女は冷たい手を揉みながら、

フィツ夫人に正確な日にちを

聞いてみることにしました。

ビョルンがその日を

あまり意味深く考えてくれるとは

思えないけれど、

家の記念日を祝うのは

女主人の義務だと思いました。

 

ビョルンという名を

続けて思い浮かべたエルナは

無意識に息を殺しました。

見慣れない寝室を見回しているうちに

エルナは、

テーブルの上に並んで置かれた

2つのクリスタルグラスに

目を留めました。

 

燭台の明かりの下で

煌めくグラスの上に

浮かび上がった初夜の記憶は、

すぐに意識の深いところに

沈み込みました。

 

寝室では、妻は夫に

楽しさを与える義務がある。

いつまでビョルンを

楽しませられるか、

よく分からないけれど、

自分の最も重要な用途は

そこにあるかもしれない

エルナは淡々と頷きました。

 

エルナは眠そうな目で

時計を確認しました。

もうすぐ夫が

帰ってくる時間でした。

悩んだ末、アレクサンダーの

命を奪おうかと言ったのは、

ビョルンの本心でした。

アレクサンダーの首を打って、

ラルスに送りかえしながら

宣戦布告をする。

その後のことは、

父親とレオニードがやる。

 

空いているアレクサンダーの席を

注意深く観察するビョルンの目が

徐々に細くなっていきました。

 

レオニードは気乗りのしない顔で

グラスを置きました。

しつこく、縋りついて来る

アレクサンダーのせいで、

両国の王子たちが会する飲み会は

予定より、

ずっと長くなっていました。

 

グレディスが、

どれほど大変な時間を

過ごしているのか。

どこが傷ついているのか。

このような評判が立ち、

グレディスは、残りの人生を、

どのように生きていけばいいのかと

何度も何度も繰り返し言っていた

アレクサンダーは、

結局、泣き出しました。

ビョルンの人情に

訴えてみたかったようでしたが、

そもそも、人情のない相手に

無駄な努力をしているという点が

とても残念でした。

 

時間を確認した

ビョルンの口元に浮かんだ

ひねくれた笑いが、

さらに鮮明になりました。

戦争費用は補填すると、

ニコニコしながら、

くだらないことを

言っているのを見ると、

ひどく腹を立てているに

違いないのが見て取れました。

 

国際条約違反、外交的孤立、

戦争賠償金の負担まで

大公が耐えられるなら

考慮してみると、

真剣な口調で投げた

レオニードの冗談に、

ビョルンは空気が漏れたように

笑いました。

 

レオニードは、

もう随分酔っ払ったから

諦めるだろうと言うと、

淡々とした目で

空の酒瓶をのぞき込みました。

 

ビョルンはもう少し飲みましたが

アレクサンダーも

負けていませんでした。

殿下は、まだハードフォートを

よく知らないと嘆くと、ビョルンは

新しい葉巻に火をつけました。

 

レチェンは

密約を破ったわけではないけれど

その本はここで出版された。

レチェンは、それを防ぐことができず

ラルスは莫大な被害を受けた。

だからレチェンにも

半分、責任があるので弁償しろ。

アレクサンダー王子が率いてきた

ラルスの使節団の主張は

大体そのようなもので、

その件の当事者である

ビョルンを説得してみることが

最も効率的な戦略だと

判断したようでした。

もしかしたら、ビョルンが、

再び王太子の座に戻ると

思っているかもしれませんでした。

多くの人が

そのような考えをしているので、

間違った予測だとは

言えませんでした。

 

深く考え込んでいたレオニードは、

それでも、ラルスが最小限の体面を

保てるような絵は

描かなければならないのかと

尋ねました。

ビョルンは、

なぜ、それを自分に聞くのかと

冷たく言い返すと、

王太子の任務は

王太子が遂行するものだ。

自分は、

他人の仕事を代わりにするほど

暇ではない。

大公として、この程度なら、

喜んでやるけれどと、

ブランデーが半分残った

グラスを振りながら笑いました。

 

レオニードは、長い間、

言うのを躊躇って来た言葉を

口に出そうとした瞬間、

侍従に助けられながら

トイレに行った

アレクサンダー王子が

帰って来ました。

ビョルンが予想した通り、

まだ諦める気がなさそうな姿でした。

自分の大公としての仕事は

あのバカの酔っぱらいの相手を

するところまでだと、

すすり泣きながら近づいてくる

アレクサンダーをちらりと見た

ビョルンは低く囁きました。

 

「あとは殿下のご意向で」と言って

ビョルンが目配せをすると、

遠くに立って待機していた

侍従が近づいて来ました。

先ほどまで飲んでいた

ブランデーが片付けられた場所には

新しい酒瓶が置かれました。

 

レオニードが望む絵を

描くようにと言って

再び時計を確認したビョルンは

アルコールの強い酒の瓶を

開けました。

その間に席に座った

アレクサンダーは、

再びグレディスの話を

語り始めました。

酒に酔って半狂乱状態でも

冷めない妹への愛が、

改めて涙ぐましいほどでした。

 

ビョルンは、一見、穏やかな笑みを

浮かべながら、

彼のグラスを満たしてやりました。

ハードフォートが歌う退屈な歌を、

思う存分聞いてやったので、

今は妻の元へ戻る時でした。

うっかり眠ってしまった

エルナが目を覚ました時、

時間はすでに夜の12時を

過ぎていました。

ビョルンは

帰って来ていませんでした。

 

エルナはゆっくりと体を起こして

座りました。

がっかりしたり、

残念ではありませんでした。

詳しい事情はわからないけれど、

急遽王宮に呼ばれたのを見ると

重大なことに違いないからでした。

 

それに、今夜は、

ベッドの上の義務を

果たさなくて済むかもしれないと

考えると、

安堵感を覚えたりもしました。

安らかに眠りたい衝動に

駆られましたが、

もしかしたら、夜明けに

ビョルンが戻ってくるかもしれない。

だから王子の花は

美しく咲いていなければならないと

思い、ため息をついたエルナは、

乱れた髪とリボンを整えました。

しわくちゃになった

パジャマを整えているうちに

手がお腹に触れると、

その動作がぴたりと止まりました。

 

赤ちゃんはもういない。

淡々と受け止めていた事実が、

改めて胸を引っ掻きました。

すると、

ずっとぼんやりしていた頭の中が

だんだん、すっきりし始めました。

 

薬のせいで眠っていたエルナが

目を覚ました時、

赤ちゃんの痕跡はひとつ残らず

この家の中から、

きれいに消えていました。

ビョルンの命令だったと聞きました。

「妊娠したんだって」と

無情な一言しか言わなかった男は、

まるで子供が

存在しなかったかのように、

流産した子供についても

何の言及もしませんでした。

 

それが

ビョルンのやり方だということを

知っているし、

もしかしたら、彼は、

それが子供を亡くした妻への

配慮だと判断したのかもしれない。

その日から今まで、ビョルンは

それなりの努力をして

夫の役割に忠実だった。

全部分かっている。

でも、どうして。

 

自分でも気づかないうちに

泣いていたエルナは、

自分の泣き声に驚いて

顔を上げました。

見知らぬ部屋の風景が

ぼんやりと歪んでいました。

 

分かっている。理解できるけれど

なぜ自分は大丈夫ではないのか。

エルナは、何とかして

涙を止めようと努力すればするほど、

涙は、ますます熱くなり

悲しくなって行きました。

 

ハンカチを探すために

ベッドから降りたエルナは、

数歩も歩かないまま

カーペットの上に

座り込んでしまいました。

大丈夫なふりをしていたけれど

実は大丈夫ではなかった記憶が

涙の中に浮び上がりました。

 

とても恐ろしくて痛かった初夜と

一人で目を覚ました惨めな朝。

グレディス王女の座を

奪ったという理由で、人々に

嫌われなければならなかった日々。

気にかけてくれない夫。

待ちくたびれて、期待して、

傷ついても、

再びビョルンを愛してしまった

みすぼらしい心。

そのすべてが大丈夫だったのは、

ビョルンを愛していたからでした。

 

彼を愛することは、息をするように

当たり前で簡単なことなので、

それでまた愛してみようと

努力しました。

そうできると思っていたけれど

エルナは、もう呼吸の仕方が

分かりませんでした。

 

見慣れない寝室を見回していた

エルナの目が扉の上で止まりました。

止まらない泣き声に、

喘ぎ声が混じりました。

 

「次」という言葉に

しがみついてみようと

必死になりましたが、

そうすればするほど

絶望だけが、さらに深まりました。

エルナは、

もはやビョルンを愛することはできず

自分たちの結婚には

「次」が存在しないということを

もう認めなければなりませんでした。

 

自分を良い妻と呼んで、

あの日のように挨拶する

ビョルンが来たら

自分はどうすればいいのか。

その良い妻は、

ビョルンのきれいな造花は

もう、存在しない。

 

涙の粒が、

カーペットを握った手の甲の上に

ポタポタと落ちてきました。

恋に咲いた花は

結局枯れてしまった。

大丈夫ではなかった。

ビョルンという男と大公妃の人生。

そのすべてが

耐えられない傷となって

エルナを崩壊させました。

 

自分はもうビョルンを愛していない。

彼のために笑ってあげられない。

自分たちの子供も、もういない。

それなのに、

何の役にも立たなくなった自分が、

なぜ、一体、何の理由で

この場を守らなければならないのか。

 

涙でびしょ濡れの顔を拭ったエルナは

よろめきながら身を起こしました。

 

ビョルンが、

どれほど愛されていた王太子だったか

知っているか。

そのグレディス王女の質問の答えを、

エルナは、

もう分かるような気がしました。

以前のように

レチェンに愛されるようになった

ビョルンは、まぶしく輝く人で

もしかしたら王冠を

取り戻すことになるかもしれない。

このように、

すべての真実が明らかになるなら、

自分と結婚しない方が

ビョルンに

とっても良いことだったはず。

 

アネットの分まで幸せになって欲しいと

心を込めて願った

祖母の声が思い浮かぶと、

涙が止まりました。

 

祖母のためにも

我慢して耐えなければならないと

思ってきたけれど、ここでは

これ以上幸せになる自信が

ありませんでした。

自分たちは、

互いの不幸でしかない。

 

その事実を淡々と受け入れたエルナは

髪をほどきました。

薄いピンク色のリボンとがガウンが

カーペットの上に落ちました。


ビョルンに負わせた大きな借金は

何も知らない

トロフィーと盾として生きてきた、

この1年間で代用できそうだし

そうでなくても、

これ以上、このように

生きることができませんでした。

 

固く閉じていた目を開けたエルナは、

体が丸見えのパジャマまで

脱ぎ捨てました。

エルナが出て行くと、

花が散った寝室は

墓のように静かでした。

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いつも、たくさんのコメントを

ありがとうございます。

 

ビョルンと結婚してからの1年間、

エルナは、絶えず、

酷い陰口や攻撃にさらされて

本当に辛かったけれど、

ビョルンのことを愛していたから

良い大公妃になろうと頑張って来た。

しかし、

自分が賭けのトロフィーだったことや

彼の盾となっていたこと自体、

意味のないことだったと知った時に

エルナは自分がやって来たことは

何だったのかと

疑問視しするようになったのだと

思います。

それでも、まだ子供がいたから

何とか頑張れた。

しかし、流産したことで

エルナは、

ビョルンの妻、大公妃としての

存在意義まで失ってしまったのだと

思います。

 

ビョルンは

エルナのことを愛しているから

少しでも早く

同じベッドで寝たいのでしょうけれど

エルナは、自分が彼にとって

お楽しみの存在としか思えない。

ビョルンは、エルナに

もう少し時間を与えるべきだったと

思います。

 

エルナの妊娠を知った時、

ビョルンは、

ウォルター・ハルディの問題を

解決するために奔走し、

くたくたになっていたので、

つい、エルナに

素っ気ないことを言ってしまった。

エルナが流産した時も、

彼女が赤ちゃんの物を見て

悲しまないようとの思いやりから

全て片付けさせてしまった。

ビョルンはエルナに

一言でも何か言ってあげていれば

ビョルンの愛がエルナに

通じたかもしれないけれど、

ビョルンは、なかなか自分の心の内を

さらけ出さない。

 

元々、エルナは

自己肯定感が低いように思いますが

様々な出来事のせいで、

さらに、それが酷くなり、

彼女が、

これからも生きていくためには

ビョルンのそばを離れるしかないと

思ったのかもしれません。

 

けれども、エルナは、

もうビョルンを愛せないと

思っている一方で、

彼が買ってくれたタイプライターや

象の置物を片付けさせなかったのは

まだ、ビョルンへの愛が

残っているからだと思います。

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