自分時間を楽しく過ごす 再婚承認を要求しますの先読みネタバレ付き

子供の頃からマンガが大好き。マンガを読むことで自分時間を楽しく過ごしています。再婚承認を要求します、ハーレムの男たちを初めとして、マンガのネタバレを書いています。

問題な王子様 141話 ネタバレ 原作 あらすじ 吹雪の夜

 

141話 ビョルンはシュベリンへ帰るのでしょうか?

 

シュベリンに帰るのかと

エルナは衝動的に質問しました。

後になって、

気にしないことにしたという決意を

思い出しましたが、

すでに口から出した言葉は

取り戻せませんでした。

 

ビョルンはエルナの前に近づき

穏やかで、涼しげな目で

彼女を見下ろししました。

 

ビョルンは首を傾げながら

「なぜ?ときめいたの?」と

尋ねると、

唇に笑みを浮かべました。

そして、ビョルンは

帰るのではなく、数日働きに行く。

恋愛のために、

妃が愛しているクッキー缶を

疎かにすることはできないからと

説明すると、エルナは、

自分は王子様と恋愛したことがないと

言い返しました。

 

それならば、片思いに訂正すると

告げるビョルンの瞳に

やさしい光が宿りました。

 

行って来ると挨拶をするビョルンに

エルナは、

帰って来ないでと返事をしました。

しかし、ビョルンは、昨日のことを

すっかり忘れてしまったかのように

何か欲しいものはあるかと、

極めて彼らしい質問をしました。

「離婚届は除いて」と

憎たらしく

付け足したところを見ても

間違いなく、その傲慢な王子でした。

 

大きくため息をついたエルナは、

踵を返すことで、

答えの代わりをしました。

 

土曜日までに戻ると言う

彼の笑い混じりの声が

バフォードの朝に響き渡りました。

 

振り返ったエルナは

「待っていません!」と

怒りながら叫びました。

 

その言葉の意味を

全く理解できない人のように

平然と挨拶したビョルンは、

すぐに侍従と一緒に

馬車に乗り込みました。

 

遠ざかっていく馬車を見ながら、

どうか、あの男が

帰って来ないようにと、

エルナは切に祈りました。

ダイヤモンドダストが風に舞う

快晴の火曜日の朝でした。

長距離を移動して

シュベリンに到着した直後、

ビョルンは銀行に移動して

重役会議を主宰。その翌日は

財務省の昼食会に出席するため、

早い時間に、

首都ベルネ行きの列車に

乗り込みました。

 

移動中も報告事項を聞き、判断し、

適切な指示を出し続けました。

一日中、

体を酷使していると見られても

無理はありませんでした。

 

馬車で眠っている王子を

眺めていた侍従は

到着したことを静かに告げました。

いつもと違って、ビョルンは

微動だにしませんでした。

 

手に握った時計と眠っている王子を

交互に見つめる侍従の目に

焦りの色が浮かびました。

今日の最後の日程である

中央銀行頭取との夕食時間が

目前に迫っていました。

 

揺すり起こすという無礼を

働かなければという決意を固めた瞬間

幸い王子が目を覚ましました。

すでに3日間、

無理をしている彼の顔には

疲労感が色濃く滲んでいました。

 

侍従は何度も躊躇いながら

バフォードに戻る日程を

調整したらどうかと

用心深く提案しました。

 

王子は翌日の早朝に出発する

列車に乗って、

バフォードに戻る予定でした。

しかし、この種の晩餐は、

普通、午前0時になって

ようやく終わるものなので、

事実上、まともに

休息を取ることもできないまま、

再び、長距離旅行を

するという意味でした。

 

侍従は、

出発を日曜日に変更したらどうかと

慎重に提案しましたが、

ビョルンは軽く笑いながら、

予定通り準備するようにと

告げました。

そして、

水を使わないで顔を綺麗にし、

眠気を覚ましたビョルンは、

目配せして、

もう出発するという意思を

伝えました。

急いで馬車から降りた侍従は、

片腕にコートを抱えたまま

王子を待ちました。

 

蝶ネクタイとイブニングジャケットの

着こなしを整えたビョルンは、

しばらくして馬車から降りました。

王子の身振りは、

激務に苦しんでいる人らしくなく、

軽くて優雅でした。

 

やがて彼が登場すると、

大公の馬車を囲んでいた

見物人たちが熱烈に歓呼し、

繁華街を揺るがし始めました。

 

侍従がビョルンの肩の上に

コートを羽織らせている間、

ビョルンは群衆のために

微笑みと挨拶を投げかけました。

長年繰り返しているうちに、

特に意識しなくても自然に出て来る

習慣でした。

彼が当然支払うべき

大公としての代償でもありました。

 

しかし、エルナはそうではなかった。

ふと思い浮かんだ妻の記憶が

混雑した人波の中を進んでいた

ビョルンの足を止めました。

 

ビョルンは、

人前に出ると気後れして、

どうしていいか分からない女性が

よく理解できませんでした。

他人の言葉と視線一つ一つに

敏感に反応する点も同様でした。

 

レチェンの王子、

ビョルン・デナイスタの人生は、

豪華なオペラの舞台に立つ

俳優のそれと

大差ありませんでした。

 

王室の一員として、

生まれながらに享受する饗応の

代価だからと、

割り切って来たような気がしました。

それなりの代価を払ったのだから

当然、それにふさわしい職務を

遂行しなければなりませんでした。

そのように

明確な線引きがあったからこそ

ビョルンは、

チケット代を支払った観客が

自分の人生に時間や労力をかけても

無関心でした。

何をどう騒ぎ立てても、

どうせそれは、

舞台に上がった配役に対する評価に

過ぎないからでした。

そして、彼が生まれ育ち、

最後の息を吐く瞬間まで

生きていく世界は

そんなところでした。

 

だから、その世界の一員になった

エルナも、やはり

当然そうしなければならないと

考えて来ました。

それが、その女性に与えられた

配役だからでした。

 

困惑した侍従の

ビョルンを呼ぶ声に、

考えに耽っていた彼は

我に返りました。

 

ビョルンは

ゆっくり目を開けると、

目の前に広がる世界に

向き合いました。

護衛たちの努力のおかげで、

無秩序に絡み合った人波の間に

彼の進む道が用意されていました。

それでも、身動きできずに

立ち止まっている王子を

見つめる瞳が輝いていました。

 

ビョルンは、

エルナが生まれ育ち、

彼女にとって、世界の全てだった

バフォードのことを

思い浮かべました。

 

今日も彼女は、

乳飲み子の子牛の世話をし、

せっせと造花を作っただろう。

退屈したら、古びた書斎で見つけた

昔の本を読んだり、

荒涼とした冬の野原や森を

散歩しているだろう。

 

そして、今頃は

早めの夕食を済ませた後、

暖炉の前に座って、

祖母の話し相手になっているだろう。

陸の孤島同然の

田舎の家の静かな日々。

それが、まさにエルナの人生だった。

そんな田舎娘が一夜にして

問題な王子の妻となり、

見知らぬ世界に投げ込まれた。

はたして、その女性の目に、

この世界は、

どう映ったのだろうか。

 

ふとそれが気になった瞬間、

ビョルンは、いくら頑張っても、

自分は決してエルナの目で

世界を眺めることが

できないということに気づきました。

エルナも、

やはりそうだったのだろうと

思いました。

 

その事実を受け入れて初めて、

「だからあなたも耐えて」と

一方的に強要したことが、

妻にとって、

どれほどの暴力だったのか。

それでも、最善を尽くして

耐えに、耐えようと努力した

エルナが、

自分をどれほど愛していたのかも

分かる気がしました。

 

近づいて来た侍従が、

「大丈夫ですか?」と

心配そうに尋ねました。

ビョルンは頷くと、

再び、大股で歩き始めました。

 

自分たちは、

あまりにも異なる世界で

生きて来たので、決してお互いを

完全に理解することはできない。

その事実を受け入れると、

むしろ頭の中が、もっと澄んで

落ち着いてきました。

 

ビョルンは、

通りを埋め尽くした

人混みの中を通り抜け、

豪華なホテルのロビーに入りました。

ロビーを彩る華やかな光に向き合うと

ふと、エルナの今日が

気になりました。

 

あの子牛の名前は

決まったのだろうか。

今日はどんな花を

何本作ったのだろうか。

ほんの少しの間でも

自分のことを考えてくれただろうか。

たとえそうだったとしても、

あまり良い考えでは

ないだろうけれど。

 

息を整えたビョルンは、

中央銀行頭取一行が待っている

ホテルの2階へ向かいました。

もうこの晩餐会さえ終われば土曜日。

エルナに帰ると告げたその日でした。

本当にひどい天気だと言って

バーデン男爵夫人は

首を横に振りました。

夕方頃から始まった吹雪は、

時間が経つにつれて

ますます激しくなっていき、

一寸先も

見分けがつかないほどでした。

 

エルナは、

窓とカーテンをしっかり閉めた後

バーデン男爵夫人のそばに

戻りました。

 

縫い物を下ろした彼女は、

エルナの助けを借りて

寝床に入りました。

エルナが入れておいた湯たんぽで

温められたベッドは、居心地が良く

雪が吹き荒れる外の世界を

忘れさせるほどでした。

 

バーデン男爵夫人は、

こんな天気の日に、

大公が帰ってくるはずがないことを

よく分かっていながらも、

つい、気になってしまい、

万が一に備えて、客用寝室の暖炉を

焚いておいた方がいいのではないかと

言うと、老婆心に満ちた目で

エルナを見つめました。

 

しかし、彼女は、

あの人は来ないと言うと、

布団の襟を引き上げ、

静かな笑みを浮かべながら

首を横に振りました。

世界中を揺るがすような強風の音が

エルナの言葉に信憑性を与えました。

 

エルナは、

心配しないで、

ゆっくり休んでと告げると、

しわの寄った祖母の頬にキスをし、

その部屋を出ました。

 

風邪を引いたリサが

早くから寝床に入ったので、

バーデン家で

まだ眠っていないのは

彼女だけでした。

 

家の中の窓を

几帳面に確認したエルナは、

砂糖をたっぷり入れた

ホットミルクを持って

自分の部屋に上がりました。

何気なく眺めた

客用寝室がある廊下は真っ暗でした。

 

古い家を壊すような勢いで

吹きつける風の音が、

陰惨に感じられるのは、

おそらく2階が

暗すぎるからだろうと思いました。

 

そこから視線を移したエルナは、

急いで部屋に戻りました。

ゆっくり牛乳を飲んでいる間に、

風の音は、

さらに大きくなりました。

カップの底が見えると、

エルナは立ち上がって

服を着替えました。

 

顔を洗った後、髪を梳かして

暖炉の薪が十分あるかも

確認しました。

だから、もう寝るだけで

良かったのだけれど、

牛乳を飲んだ甲斐もなく

意識がはっきりしていました。

冴えて輝く目を瞬かせながら、

虚空を凝視していたエルナは、

諦めたかのように

ベッドから立ち上がりました。

 

10時。もう土曜日は

2時間しか残っていませんでした。

寝室をグルグル回っていたエルナは、

窓際に近づき、

カーテンと窓を開けました。

ガタガタと割れるように揺れる

窓ガラス越しに

吹雪で真っ白に染まった

夜が見えました。

気でも狂っていない限り、

こんな辺ぴな田舎の家まで

来るはずがありませんでした。

 

客用寝室の暖炉の悩みを

きれいに消すことにしたエルナは、

ランプを消して

ベッドに横になりました。

しかし、

寝ようと努力すればするほど、

雑念が膨らむだけでした。

 

寝返りを打っていたエルナは、

結局、眠れなかったので

再び起き上がりました。

明かりを灯して確認した時間は

いつの間にか

11時45分になっていて、

まもなく、12時でした。

 

ショールを掛けたエルナは、

窓の前に近づき、

カーテンと窓を開けました。

吹雪は依然として

猛威を振るっていました。

 

「あなたの知っている

あの王子もここにいない」と

囁いていたビョルンの声が、

ビュービュー吹きすさぶ

風の音の間から

聞こえてくるようでした。

 

その言葉は正しく、

エルナが愛した童話の中の王子、

その虚像は、随分前に

消えていました。

それでは、その虚像と共にした、

あれほど眩しく輝いた瞬間は

何だったのか。

その全ても、結局は

嘘だったのだろううか?

向き合いたくない疑問が

吹雪のように押し寄せて来ました。

 

それが嫌で、

つい窓を閉めようとしたエルナは

突然、変な気分に捕らわれて

眉を顰めました。

一面、真っ白な夜の風景の向こうから

人の形のようなものが

見え隠れしていました。

 

しばらくは、

幻を見ているのだと思いましたが、

その人影は着々と、

ゆっくりだけれど断固とした足取りで

バーデン家に近づいて来ていました。

 

「とんでもない。」

エルナは信じられない気持ちで

呟きました。

この深夜、

このような悪天候の中を

突き進んでくる狂った人が

この世に存在するはずが

ありませんでした。

 

しかし、しばらくして、エルナは

自分が軽率だったという事実を

認めなければなりませんでした。

この世には、

そんな狂った人が存在しました。

どうか、元夫になってほしいと

願っている彼女の夫、

ビョルン・デナイスタでした。

f:id:myuieri:20210206060839j:plain

f:id:myuieri:20210206071517p:plain

自分の住んでいた世界と

エルナの住んでいた世界が

違うことに気付き、

自分がどれだけ大変なことを

エルナに強いてきたか、

そして、それに耐えて来たのは

自分への愛があったからだと

気づいたビョルン。

今のビョルンは

彼を包んでいる殻に

どんどんヒビが入っているのと同時に

ビョルンの頭の中で

人の感情に作用する部分に、

黒い靄がかかっていたのが

少しずつ晴れて来ているような

気がします。

そして、猛吹雪の中を

バフォードへ戻ってきたのは

もう決してエルナとの約束を

破ったりしないという

決意の表れではないかと思いました。

 

ビョルンは、

以前のビョルンではなく

エルナも、それを認めているけれど

以前とは変わった彼を受け入れると

辛い思いをしながらも

変わる前のビョルンと

過ごして来た日々を

否定するような気がして、

彼を拒絶しているのではないかという

気がしました。

 

以前のビョルンと過ごした日々も

今のビョルンと過ごす日々も

本物であることに変わりなく、

人や環境や時間が変われば

人生も変わって来る。エルナが

それを認められるかどうかが

二人の復縁の鍵ではないかと

思います。

 

エルナは

ビョルンを拒絶しながらも

彼のことが気になって仕方がない。

吹雪の中を帰って来たことに

驚き、呆れ、

怒りたくなっているでしょうけれど

彼が約束を守ってくれたことに

心を動かされたと思います。

f:id:myuieri:20210206060839j:plain