自分時間を楽しく過ごす 再婚承認を要求しますの先読みネタバレ付き

子供の頃からマンガが大好き。マンガを読むことで自分時間を楽しく過ごしています。再婚承認を要求します、ハーレムの男たちを初めとして、マンガのネタバレを書いています。

問題な王子様 42話 ネタバレ 原作 あらすじ マンガ 30、31話 二番目の妻に望むこと

 

42話 ビョルンはエルナのいる病院に向かっています。

 

王子の女というレッテルは、

まるで影のように、

エルナに付いて回りました。

どこへ行っても、

そのスキャンダルから

逃れられませんでした。

上流社会の外でも、同様でした。

 

あの娘が、あの毒キノコ王子を

たぶらかした女だと、

誰かの口から始まった

その言葉が病院全体に広まるのに、

それほど、

長い時間は、かかりませんでした。

丸一日が過ぎると、

バーデン男爵夫人の病室の前をうろつく

見物人まで続出しました。

 

グレディス王女に勝って、

あの放蕩息子を誘惑するのに

成功したという希代の妖婦を

見物しに来た彼らは、

王子は、目まで

どうかなってしまったのではないかと

一様に失望を隠しませんでした。

確かに、

やや美しい顔ではあるけれど、

グレディス姫の

好敵手になるとは思えない

みすぼらしいお嬢さんでした。

 

貴族の家の令嬢と聞いていたけれど

古い木綿のドレスと、

目が落ち窪んで生気のない顔に、

派手な化粧。

あちこちで騒がれている噂の中の

その妖婦とは、

あまりにも違う姿でした。

 

本当にあの娘が

エルナ・ハルディなのか。

そんな疑惑が出て来るのも

無理はありませんでした。

 

そうだ。いや違う。

本当にそうならば、

なぜ、あんな格好でここにいるのか。

 

ワイワイ騒ぎ立てられている

棘のある言葉は、とうとう

バーデン男爵夫人のいる病室まで

流れて来ました。

 

震える指先を見下ろしていた

バーデン男爵夫人は、

全て自分のせいだ。あの時、

エルナを送るべきではなかった。

あの家を守ろうとしたために

たった一人の孫娘を

台無しにしてしまったと

重い口を開きました。

 

自責の念に震えるバーデン男爵夫人は

目にいっぱい涙を浮かべていました。

エルナは、首を横に振ると

祖母の涙を拭きました。

そして、

そんなことを言わないで欲しい。

王子様と自分は、

何の関係もないと言いました。

 

すでに堕落した淑女というレッテルを

貼られてしまったものの、

その点だけは明確にしました。

祖母を一番苦しめているのは、

よりによって孫娘が

ビョルン王子の恋人になって、

世話を受けたという

噂だったからでした。

 

バーデン男爵夫人は

何の関係もないのに、国中に

騒がしい噂が広まるのかと

反論しましたが、エルナは、

世の中には、

他人の言葉を捏造して騒ぐ

悪い人が多いということを

よく知っているではないかと

言い返しました。

 

バーデン男爵夫人は、

それが、すべてデマだとしても、

よりによって、あの王子と絡んで

これだけ評判を落としたのに

どうやって、嫁に行けるのかと

嘆きました。

エルナは、

結婚なんてしなければいいと

何でもないように答えて

明るく笑いました。

そして、

少しだけ我慢して欲しい。

明日には退院できるので、

一緒にバフォードに戻って

以前のように・・・

自分たちだけで幸せに暮らそう。

そうすれば、ここで起こったことは

何でもなかったことになると

言いました。

 

しかし、エルナの笑顔が

明るくなればなるほど、

バーデン男爵夫人の目は、

深く沈んで行きました。

 

バーデン男爵夫人は、

自分たちが永遠に、

エルナのそばにいられないことを

おじい様を送り出した時に

学んだではないかと言いました。

 

エルナは眉を顰めながら、

どうして、そんなことを言うのかと

抗議すると、力いっぱい、

祖母の痩せた手を握りました。

浮き上がった血管と、

深いしわの感触が鮮明に伝わると

心臓の鼓動が、

次第に速くなり始めました。

 

バーデン男爵夫人は、

それが現実なので、

エルナも結婚して、

自分たちがいなくなっても、

エルナを守ってくれるような

自分の家族を作らなければならない。

それなのに、このようなことになって

まともな結婚への道が

台無しになってしまった。

これから、一体どうすればいいのかと

嘆くと、シワの寄った目元が

再び赤くなりました。

 

バーデン男爵夫人は、

できることなら、

エルナを堕落させた悪者を

地獄の火の中に投げ入れたい気持ちだと

言いました。

 

しかし、

ウォルター・ハルディとか

あのダメな王子とか、

あの悪口を言っている者まで

全員という、

とても孫娘の前では言えない言葉を

飲み込みました。

そして、

再び騒々しく集まって来た

見物人たちのいる廊下へ

首を回しました。

 

本当に都会は、

なんて浅はかで非情な所なんだと

バーデン男爵夫人は深いため息をつき

身震いしました。

その理由に気づいたエルナが

急いで立ち上がるのと同時に、

力強いノックの音が響き渡りました。

王子が、

バーデン男爵夫人の病室のドアを

ノックした瞬間、

病院長は全てを諦めました。

すでに矢は放たれ、

賽は投げられました。

彼にできることは、

最後まで惨劇を防ぐために

最善を尽くした自分の忠誠心を

どうか、国王が

分かってくれるようにと

祈ることでした。

 

朝一番、約束もなしに訪ねて来て、

病院長室のドアを開ける

無礼な者がいるという事実が

与えた驚きは、彼の顔を見た瞬間、

きれいに消えました。

ビョルン王子。

見ても信じられない、

その問題の人物が、彼に向かって

ニッコリと微笑んでいました。

もしかすると、

王太子殿下ではないかという

考えはありませんでした。

彼は絶対に、

こんなことをする人では

ありませんでした。

 

いきなり攻め込んで来た

招かれざる客らしくなく、

ビョルン王子は、

バーデン男爵夫人の病室の場所を

落ち着いて尋ねました。

 

バーデン男爵夫人。

彼が突然投げかけた名前を

思い出した病院長は、

乾いた唾を飲み込みました。

一体、なぜこの王子が、

エルナ・ハルディの祖母を

訪ねて来たのか。

全く理解できない状況でした。

 

そうすべきなのかどうか分からず

慌てている間に、王子は

机の端に置かれている花瓶の前に

近づきました。

「ああ、これを少し借ります」と

言って、一本のバラを抜き取る動作が

とても優雅でした。

そして、バラを持った王子は

「もう行きましょう」と

笑って命じました。

よりによって赤。 不吉な前触れでした。

 

王子は酔っているのだろうかと

病院長は、しばらく真剣に

考えたりもしました。

王子の普段の行いを考えると、

一理ある仮定でした。

しかし、

たとえ酔っぱらいの狼藉だとしても

彼はシュベリン大公で、

一時、王太子だった国王の長男でした。

 

逃げる方法を

見つけられなかった病院長は、

結局、招かれざる客の命令を

聞かざるを得ませんでした。

 

病院長は、

人の目が多い所なので、

また、別の悪意ある噂が

立つかもしれない。

お見舞いをしなければならないのなら

いっそのこと病院長室に

男爵夫人を呼んでみてはどうかと

慎重に申し出ましたが、

全て無視されました。

結局、これが現実でした。

 

王子の登場に熱狂して、

廊下を埋め尽くしている

見物人たちを見回した病院長は、

自暴自棄の心境になり、

長いため息をつきました。

 

その時、ドアが開き、

青白い顔の女性が姿を現しました。

王子は黙礼することで

病院長が退場する時であることを

知らせました。

安堵した病院長は、急いで

人波の中に紛れて消えました。

 

「・・・王子様?」

目の前に広がる光景を見たエルナは

ギョッとして後ずさりしました。

幻を見たのではないかと思い、

何度も瞬きしてみましたが、

変わることはありませんでした。

 

待っても来なかった彼が、

来るはずのない場所に現れた。

エルナが、信じられないその事実を

思い起こしている間に、

ビョルンは病室の敷居を跨ぎました。

ベッドのヘッドボードに

もたれて座っていた

バーデン男爵夫人と、

そのそばにいたグレベ夫人の視線が

一斉に彼に注がれました。

彼女たちの反応も、

エルナと同じでした。

三人は息を殺したまま、

ビョルンを注視しました。

疑問と混乱を湛えた目つきでした。

 

しかし、ビョルンは気にせず、

ゆっくりと足を踏み入れました。

その規則的な足音が、

静かな病室の中に響き渡りました。

 

「まさか・・・」

近くに来た彼の顔を

慎重に観察していた

バーデン男爵夫人の目が、

飛び出そうになるくらい

大きくなりました。

 

驚いて起き上がろうとした

バーデン男爵夫人を制止した

ビョルンは、

格式高い挨拶をしました。

無駄がなく優雅で

余裕のある身振りでした。

 

ビョルンは、

挨拶が遅くなったことを

バーデン男爵夫人に謝罪しました。

柔らかい声音が、

静かに病室に染み込みました。

 

エルナはよろめきながら

ビョルンのそばに近づきました。

一体何が起こっているのか

分からないけれど、

これが夢ではないことだけは

確かなようでした。

 

まさか、

可哀想な女性に同情するために

あの日、渡せなかったお金でも

与えに来たのだろうか。

そこまで考えが及ぶと、

エルナの胸の深い所から、

熱い塊のような何かが噴き出して来て

泣けて来ました。

ここまでやって来て、

自分に同情する王子が嫌でした。

このような姿で、

彼と向き合うしかない自分の境遇も、

エルナは嫌でした。

 

どうして祖母がいる所まで来て、

心を踏みにじることができるのか。

エルナは涙を浮かべながら、

薄情な王子を睨みつけました。

いくら彼に感謝することが多くても、

このような行動までは

許せませんでした。

 

永遠に来て欲しくなかった。

そうすれば、恩人として、

良い思い出だけを大切にして

去ることができたはずなのに。

なぜ、こうまでして・・・と

心の中で嘆きました。

 

エルナが、

これ以上、我慢しないという

決意を固めたその時、王子は、

全て、自分の至らなさのせいだと

男爵夫人に謝罪し、

ハルディさんにもお詫びすると

意外な言葉を切り出しました。

 

エルナは、

何を言おうとしたのか忘れて

ぼんやりと彼を見ました。

エルナの方へ体を回したビョルンは

「ごめんなさい」と、

再び謝罪の言葉を口にしました。

 

かなり遅くなった。

待たせて申し訳ないと、

静かに囁いたビョルンは、

口元をそっと上げて笑いました。

一見思慮深く見える眼差しとは

全く違う、若干の茶目っ気を

含んでいる魅惑的な微笑みでした。

エルナは嫌な予感に襲われ

警戒して後ずさりしました。

その時、王子が握っている

赤い色の瑞々しいバラが

目に入りました。

 

疑問を呈するかのように

首を傾げると、

ビョルンの口元に浮かんでいる

笑顔が濃くなりました。

 

「エルナ・ハルディさん」

エルナが広げた距離を、

再び縮めたビョルンは、

片膝をつきました。

表なら結婚。

裏なら賭け金を渡して送り出す。

 

ビョルンは表と裏を決めた後、

チップを投げました。

どんな結果が出ても

従うことを決意し、そして今、

そうしようとしていました。

 

利益を得られない女だということ。

そして、

面倒な家系と複雑な家庭史。

そこに用意されている悩みの種まで。

 

エルナは決して、王室と社交界で、

歓迎されないだろう。

まともに、

大公妃の役割を果たすことが

難しいという意味でした。

しかし、

ビョルンが二番目の妻に望むのは、

莫大な国益や名誉ではないので

それ程、

大きな問題ではありませんでした。

 

ビョルンは、

大公妃の座を埋めて、自分の人生に

平穏がもたらされることを望み、

この女性は、

その役割に完璧に合う条件を

備えていました。

利益を与えられなくても、

害悪も及ぼすことはないことを

知っていました。

 

もちろん、

グレディスがそうだったように、

優しくて純真な顔の後ろに、棘を

隠しているかもしれませんでした。

そうだとしても、

この、か弱い女の棘は、決して

彼を深く刺すことができないので

それでいいと思いました。

 

ビョルンが望むのは、エルナが

自分の手で作った造花のように

静かに、美しく無害に

生きてくれることだけでした。

 

エルナ・ハルディさん、

私と結婚していただけますか?

 

もう息もまともにできないような姿で

震えているエルナに向かって

ビョルンは、

ゆっくりと花を差し出しました。

 

エルナは、現実を否定するかのように

目を見開きました。

しかし、ビョルンは依然として

彼女の目の前で、

片膝をついていました。

 

王子がプロポーズをしている。

ようやく認知したその事実が

エルナの頭の中を

さらにボーッとさせました。

目の前が、

グルグル回り始めましたが、

感激して涙ぐむ祖母の顔だけは

はっきりと見えました。

 

どうすれば、こんなことが

起り得るのか。

エルナは泣きそうな顔で

ビョルンを見つめました。

 

愛していないくせに、

何でもない女に、

一体、どうして。

 

次々と浮かぶ疑問は、

いつの間にか、恨みとなりました。

しかし、ビョルンは、

すでにエルナの答えを

全て知っているとでも言うかのように

一様に余裕のある態度で

一貫して微笑んでいました。

 

エルナは、王子が差し出したバラへ

震える手を伸ばしました。

押し返すつもりでした。

それが当然でした。これは、

話にならないことだからでした。

しかし、バラの茎に指先が触れた瞬間に

浮かんだビョルンの言葉が

エルナを躊躇させました。

「ごめんなさい」と言う

その優しい囁きが思い浮かぶと

心臓が、

一層速く鼓動し始めました。

 

少しの申し訳なさも感じられない

かましい謝罪なのに嬉しかった。

遅過ぎたけれど、

それでも忘れずに約束を守って。

彼が来てくれて嬉しかった。

そんな自分が

耐えられないほど憎くなった瞬間、

プロポーズのバラを

ギュッと握り締めたまま

エルナは気を失ってしまいました

 

ビョルンは、倒れるエルナを

反射的に抱き締めました。

医者を呼ぶバーデン男爵夫人の叫び声が

響き渡るや否や、突然ドアが開き

病院長が駆けつけて来ました。

病室での出来事に神経を尖らせている

見物人たちの視線も、

一斉に集中しました。

 

ビョルン王子が

ハルディ家の令嬢にプロポーズした。

衝撃的な噂は、王立病院の病棟から

たちまち街中に広まりました。

あまりにも嬉しくて、

エルナ・ハルディは

気絶してしまったというニュースも

一緒でした。

 

レチェンが愛した恋愛小説に

ピリオドが打たれ、

悪役が勝利しました。

多分に悲劇的な結末でした。

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シュベリンに来て以来、

エルナが窮地に陥る度に。

助けに来てくれたビョルン。

エルナは、

どうにもならない絶望的な境遇に

陥っていた今、心のどこかで

ビョルンが助けに来てくれることを

願っていたのではないかと

思いました。

 

シュベリンで再会してから

パーベルも何かと助けてくれたり

お金を貸してくれると言ってくれたり

バフォードへ

連れて行ってくれることにも

なっていたし、

きっと、バーデン男爵夫人の

お見舞いにも来てくれて、

病院代も払ってくれているのに

危機的状況にある時に

助けてくれたビョルンの方が

強かった。

エルナのために一生懸命だった

パーベルが可哀想だと思いました。

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