自分時間を楽しく過ごす 再婚承認を要求しますの先読みネタバレ付き

子供の頃からマンガが大好き。マンガを読むことで自分時間を楽しく過ごしています。再婚承認を要求します、ハーレムの男たちを初めとして、マンガのネタバレを書いています。

問題な王子様 49話 ネタバレ 原作 あらすじ マンガ 37話 結婚した理由

 

49話 エルナはシーツを抱えて浴室に逃げ出しました。

 

ごっこでもしているような状況に

戸惑ったフィツ夫人は、

すぐに平静を取り戻しました。

滅茶苦茶になったベッドと

床に転がっているパジャマ。

サイドテーブルに置かれたグラス。

たちまち消えた大公妃。

そして浴室のドアの隙間に挟まれた

シーツ。

そのすべてを総合すると、

大まかな状況が描かれました。

 

フィツ夫人は振り返ると、

他のメイドたちに退くよう

厳重に命令しました。

好奇心に満ちた目で

寝室をのぞき込んでいたメイドたちは

ギョッとしながら頭を下げました。

そして、フィツ夫人が

「早く」と力を込めて付け加えると、

メイドたちは、

おそるおそる寝室を出ました。

最後まで未練を捨てられなかった

リサも、結局は、

出て行かなけれはなりませんでした。

 

万が一に備えて、寝室のドアに

しっかりと鍵をかけたフィツ夫人は、

大公妃が隠れている

浴室の前に静かに近づきました。

そして、エルナに、

他のメイドたちは全員

出て行ったと告げました。

「すみません、フィツ夫人」と

エルナの微かに震える声が、

ドアの隙間から流れ出ました。

 

フィツ夫人は

体調は大丈夫かと尋ねました。

エルナは

大丈夫だと答えましたが、その後、

気軽に言葉を続けることが

できませんでした。

フィツ夫人は辛抱強く待ちながら、

もう一度じっくり

大公妃の寝室を見回しました。

 

今朝、ビョルンは

自分の寝室で目を覚まし

一日を始めました。

いつもと少しも変わらない

様子でした。

 

体を洗って食事をして

溜まった業務を処理するために

外出するその瞬間まで、

ビョルンは、一度も妻について

言及しませんでした。

昨日、結婚式を挙げた妻の存在は、

すっかり忘れてしまったような

態度でした。

 

フィツ夫人は、

何だか不吉な予感がしたので、

失礼を承知で中へ入ると

やはりそうでした。

 

フィツ夫人は、

静かなため息をつきながら、

シワの寄った額を撫でました。

夫婦間のことを、彼女が

むやみに推測することは

できないけれど、

これは、決して、正常な新婦の

朝の風景ではないことくらいは

十分に分かるようでした。

 

フィツ夫人は、

風呂の世話をしてもらうのが

気に障るようだったら、

今日はメイドは入れないと、

エルナが、

どうしても言い出せずにいた言葉を

代わりに伝えました。

そして、

寝室だけ片付けた後、

引き下がることにする。

準備ができたら

呼び鈴を鳴らして欲しいと言いました。

 

エルナがお礼を言うと、

フィツ夫人は、

当然、自分がすべきことを

するだけだと返事をしました。

そして、声を整えて、

そのシーツを返してもらえないかと

頼みました。

エルナが、なぜそれを

必死に隠すのか

見当がつかないわけでは

ありませんでしたが、

だからといって、

このまま放置しておくことも

できませんでした。

 

気軽に返事ができなかったエルナは

しばらく経ってから、

静かにドアを開けました。

フィツ夫人は一歩後ろに下がって

エルナを待ちました。

 

開いたドアから姿を現した

エルナは、胸に抱いていたシーツを

差し出しました。

その姿を見たフィツ夫人は、

思わずビクッとして、

乾いた唾を飲み込みました。

大きなバスタオルで

体を覆っている大公妃は、

花嫁らしくない、

やつれた姿をしていました。

腫れぼったい目と乱れた髪を

素早く見たフィツ夫人の視線が

赤い跡で覆われた首筋に向かいました。

タオルの間から見える胸の状態も

それほど変わりませんでした。

 

急いで顔を整えたフィツ夫人は、

何事もなかったかのように落ち着いて

エルナにお礼を言いました。

ようやく安堵した幼い大公妃が

気の毒でした。

 

それくらいで浴室のドアを閉めた

フィツ夫人は、

深くため息をついて背を向けました。

どうして、

こんなに無情なことができるのか

とてもビョルンが

理解できませんでした。

今からでも、

妻の元へ戻ってくればいいのに。

その可能性が著しく低いという

事実が、フィツ夫人の心配を

さらに深めました。

 

きちんとたたんだシーツを

胸に抱いたフィツ夫人は、

重い足取りで、

大公妃の寝室を出ました。

廊下に集まっていたメイドたちは

気絶しそうなくらい驚いて

逃げ去りました。

どうしても順調ではなさそうな

大公妃の将来が心配される

結婚初日の朝でした。

エルナは、

もう何度目か分からないくらい

お礼の言葉を繰り返しました。

その度に、フィツ夫人は

「どういたしまして」と、

同じ返事をしました。

一見、硬苦しそうな態度でしたが

表情と目つきは

一層、優しくなっていました。

 

フィツ夫人はエルナに、

神経を安定させる薬を渡すと、

飲んで、ゆっくり休むようにと

言いました。

しかし、エルナは、

今日フィツ夫人に、この大公邸を

案内してもらうことになっていたと

言いました。

フィツ夫人は、

一日ぐらい延期しても大丈夫。

妃殿下の健康に気を配ることが

優先だからと、

微かな笑みを浮かべた顔で

緊張している大公妃を宥めました。

 

フィツ夫人は悩んだ末、

王子からも、

そのようにお願いされたと

善意の嘘も付け加えました。

その時になって、ようやくエルナは

安心して薬瓶を受け取りました。

 

素直に薬を飲んだエルナは、

ようやく、

フィツ夫人に聞きたいことがあると

告げました。

フィツ夫人が「はい、どうぞ」と

返事をすると、

「それが・・・」と呟いた

エルナの顔が、

ますます赤く染まりました。

 

ビョルンの嘘は、

夜明け近くになって

ようやく終わりました。

ついにエルナを手放した彼は

何事もなかったかのように

立ち上がると、

体を拭いてガウンを羽織りました。

変な気分になりましたが、

エルナは、ただ

ビョルンを見守るだけでした。

是非を、到底

判断できなくなったためでした。

 

夫婦が聖なる合一を成す美しい瞬間。

それが、エルナの知っていた

初夜の全てでした。

しかし、現実となった初夜は

全く神聖でも

美しくもありませんでした。

何よりも驚くべきことは、

ただ一つになることで

終わるのではなかったことでした。

 

自分の考えが

間違っているということは、

度重なる行為を通じて

大まかに悟りましたが、

だからといって、衝撃が

消えるわけではありませんでした。

 

口では言い難い苦痛を与えた

男だけれど、それでも

ビョルンと一緒にいたいと思いました。

しかし、それを望んでもいいのか

確信が持てませんでした。

 

その間に、

ガウンの紐を結んだビョルンが

エルナの寝室を離れて行きました。

遠ざかっていく夫の背中を

ぼんやりと眺めていたエルナは、

夫婦の寝室をつなぐ通路のドアが

閉まる音を聞きながら、

すっと目を閉じました。

滅茶苦茶になったベッドと体を

収拾しなければならないという

気がしましたが、指先一つ

動かすことができませんでした。

初夜の最後の記憶でした。

 

エルナは、

聞きたいことが多かったけれど、

ついに何も言い出せませんでした。

返事を聞くためには、

フィツ夫人に昨夜のことを

説明しなければならないのに、

とても、

その自信がありませんでした。

 

エルナは、

思い出したら、また聞くと告げると

不機嫌そうな笑みを浮かべながら

空の薬瓶を下ろしました。

幸い、フィツ夫人は、

それ以上、問い詰めることなく

退きました。

 

ベッドに横になったエルナは、

暖炉の明かりを、じっと見つめながら

布団の襟をつかみました、

まだ真昼間でしたが、カーテンを

しっかり閉めておいたおかげで

部屋の雰囲気は穏やかでした。

 

再び一人になると安心しながらも

一方では

寂しい気持ちになりました。

結婚初日を、

こんな風に過ごすなんて。

バーデン家の名誉を

守ることができなかったという

自責の念が、エルナの心を

さらに重くしました。

 

「おばあ様」

懐かしい名前を囁くと、

目頭が熱くなりました。

 

バーデン男爵夫人が

バフォードに戻ったという事実を

知ったのは、

披露宴が始まる頃でした。

まともに、別れの挨拶も交わさずに

帰ってしまった祖母を恨みつつ、

恨むことはできませんでした。

 

シュベリンに移って来て

暮らすのはどうかと誘う度に、

バーデン男爵夫人は、人には

それぞれの居場所があるものだと

同じ返事をしました。

万が一、孫娘に、

迷惑をかけるのではないかと

気をつかう祖母の気持ちが分かるようで

エルナは、これ以上、

駄々をこねることができませんでした。

 

眠れなくて

寝返りを打っていたエルナは、

物思いに耽った顔で

天井に向き合いました。

 

デナイスタという名前も、

この豪華な寝室も、

まったく自分のもののようには

感じられませんでした。

何よりも自分の夫である

ビョルンがそうでした。

 

昨夜の記憶が蘇ると、

薬が効いてだるくなった体が

再び硬くなりました。

自分に、そのようなことが

起こったという事実が

まだ、あまり

信じられませんでした。

 

濡れた目を擦って噴いたエルナは

布団を顔まで引っ張り上げました。

あちこちに残った痛みが

取り返しのつかない現実を

自覚させました。

 

結婚とは、互いに頼り合って

茨の道を歩いていくことだという

大司教の言葉は

やはり正しいようでした。

 

彼は、いつ頃、

帰って来るのだろうか。

早く帰ってきて欲しいけれど、

いざ帰って来たビョルンに

向き合うことになる瞬間が恐ろしく、

途方に暮れそうな気がしました。

 

何とも言えない奇妙な気分に

襲われたエルナは、

枕の山に顔を埋めました。

 

ビョルンは優しいけれど無情。

温かいけれど冷酷。

あれほど異質な面が、

一人の中に共存するのは

不思議なことでしたが、

どちらが一方が偽りであるとも

思えませんでした。

 

激しく悩んだ末、エルナは、

見れば見るほど、

彼のことがよくわからないという

虚しい結論を下すと、

すやすやと眠りにつきました。

心が落ち着かないせいか

大きな白いオオカミに

生きたまま食べられる悪夢を見ました。

西の空が赤く染まり始める頃、

ようやく大公の馬車は、

シュべリン宮殿に戻りました。

 

出迎えた使用人たちと、

短く目で挨拶を交わしたビョルンは

大股で玄関ホールを横切りました。

フィツ夫人は、

今日は特に断固とした足取りで

彼の後ろを付いて行きました。

不満があるという意味でした。

 

ビョルンは、

後ろへ顔を向けて乳母を見ると

「どうぞ、フィツ夫人」と

声をかけました。

フィツ夫人は、

ようやく彼のそばにやって来ると、

妃殿下は寝室で眠っている。

体の具合が良くなさそうなので、

ゆっくり休めるようにしたと

ビョルンに報告しました。

やはり、エルナ。

予想と変わらない話題でした。

 

彼は、「あ、はい」と

上の空で答えて頷きました。

しかし、フィツ夫人は、

素直に退きませんでした。

 

フィツ夫人は、

結婚という大事を成し遂げたのだから

ほんの数日でも、

ゆっくり休んだらどうかと

提案しました。

しかし、ビョルンは、

新婚旅行の時にゆっくり休むと

答えました。

 

フィツ夫人は眉間にしわを寄せながら

その新婚旅行まで、まだ半月もある。

まさか、その間、大公妃を

一人で放っておくつもりなのかと

尋ねました。

 

乳母の顔色を窺ったビョルンは

口元に軽く笑みを浮かべながら 、

もう大公妃の味方に

なることにしたのかと尋ねました。

 

フィツ夫人は、

それはどういう意味かと聞き返すと

ビョルンは、新婚旅行が、

ただの新婚旅行ではないということを

フィツ夫人が知らないはずがないと

言いました。

そして、踊り場で

しばらく立ち止まっていたビョルンは

フィツ夫人の方へ体を向けました。 

笑顔はそのままでしたが

笑っている顔が冷ややかで

沈んだ眼差しを、

一層、際立たせていました。

 

新婚旅行という形を

取っているけれど、

実質は、外交使節団を率いる

海外歴訪に近いものでした。

ビョルンが同盟国を視察し、

各国の情勢を探る

重責を担うことになったのは

滑稽にも、

王冠を下ろしたおかげでした。

 

国王や王太子の訪問は、すぐに

重大な政治行為と直結するけれど

権力の座から外れている王子の行動は

それよりも重くありませんでした。

それに、新婚旅行という

もっともらしい口実まで加わったので

これ以上に手間のかからない

情勢を偵察する機会は

ありませんでした。

そこへ、

各国の金融市場を調べるという

私的な用事まで加わったので、

かなり複雑な旅程になりました。

 

なぜ結婚式を行った翌日から

議会の生気を失った老人たちに

会うのに

忙しくしていなければならないのか

フィツ夫人はよく分かっていながら

余計なことを言うなんて、

これは少し寂しくなりそうだ。

大公妃のために、

自分を裏切ろうとしないことを願うと

冗談を言う軽い態度が、

ビョルンの意図を

より明確に伝えました。

 

ここまで。

明確に線が引かれたことを

感知したフィツ夫人は

素早く一歩後退し、

出過ぎた干渉をしたことを

王子に謝罪しました。

ビョルンは、自分たちの間柄で、

そんなことを言わないでと言うと

幼い頃の少年のようにニッコリ笑い

再び歩き出して、

階段を上り始めました。

 

言おうとしていた言葉を

飲み込んだフィツ夫人は、

極めて日常的な報告をし、

彼の後を追いました。

 

「それでは失礼します」と

寝室まで王子と同行したフィツ夫人は

丁重に挨拶をしました。

ところが、背を向けようとした矢先に

「ああ、フィツ夫人」と

ビョルンの声が聞こえて来ました。

フィツ夫人は緊張した顔で

王子を見ました。

彼は、

寝室の窓際に置かれた椅子に座って

侍従が持って来た郵便物を

確認していました。

 

彼は、

フィツ夫人の言う通り、

まだ半月の時間があるので

妻を教えて欲しいと頼みました。

フィツ夫人が

「えっ?」と聞き返すと、ビョルンは

妻の実家には、

寝室でのことを教えてくれる

大人がいなかったのだから、

それを誰かが

引き受けるべきではないかと

平然として、落ち着いた声で

かましい命令をしました。

 

フィツ夫人は、

目の前が遠くなる気分でしたが

喜んで主人の意思を受け入れました。

彼女は、

王室に連絡して

適任者を呼ぶようにすると

返事をしました。

 

それからフィツ夫人は、

手紙を読んでいるビョルンを

見つめながら、失礼を承知で

大公妃を妻に選んだ理由を

尋ねました。

自分の手で育てたけれど、

どうしても、王子の気持ちが

分からなかったからでした。

もう見当もつかないので、

直接、聞くしかありませんでした。

 

ビョルンは、

読み終わった手紙を下ろすと、

次の郵便物を開きました。

緩く握ったペーパーナイフの

刃にぶつかった夕焼けの光が

細かく砕けました。

 

「まあ、美しいから」と

ビョルンは、とんでもない返事で

フィツ夫人の喉を詰まらせました。

 

「何てことでしょう、王子様」と

叱責するフィツ夫人の前でも、

ビョルンは平気で、

「そうではありませんか?」と

呑気に聞き返しました。

 

フィツ夫人は、

深いため息をつきながら、

ズキズキする頭を抱えました。

ふと神様を探したくなった秋の夕方。

日が暮れて行く空を赤く染めた

夕焼けは、空気が読めないほど

美しいものでした。

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ビョルンが寝室に来たのは

午前0時過ぎ。

秋の夜明け間際だと

大体5時くらいでしょうか。

初めてで、わけが分からないまま

しきりにビョルンに攻め立てられ

挙句の果てに、事が終われば

さっさと自分の寝室に行ってしまう。

心身共に疲弊して、

正午近くまで寝ていたのも

当然だと思います。

エルナにとっては

最悪の夜だったでしょうれども、

それを

大司祭様の話してくれた

「茨の道を歩むこと」と

ポジティブに考えられるエルナは

強い女性だと思います。

 

夫と初めての夜を過ごして

幸せいっぱいの花嫁だと思っていたのに

あまりにも酷い状態のエルナを見て

フィツ夫人は

かなり混乱したでしょうけれど、

エルナのことを考えて、

思い切ってビョルンに進言した

フィツ夫人は、バーデン男爵夫人が

信頼するに値すると思います。

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