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54話 ビョルンのレッスンが始まります。
エルナは、お風呂から上がると
パジャマを急いで着て
化粧台の前に座りました。
メイドたちは
呼ばないことにしました。
フィツ夫人の教えに反することでしたが
ここはシュべリン宮ではないので
大丈夫そうでした。
エルナは気を取り直して
寝る準備をしました。
化粧水とクリームを慎重に塗り
念入りにブラッシングしました。
きれいに編む自信のない髪は
背中の後ろに長く垂らしました。
最後に、
一番好きな室内履きを履いたエルナは
ベッドの端に座って、
震える両手を取り合いました。
余計なことをしてしまったと、
不安になった瞬間、
ビョルンは、ノックをせずに
寝室のドアを開きました。
エルナは目を丸くして彼を見ました。
どうすればいいのか分からず、
そのまま固まっている間に、
ビョルンが目の前まで迫って来ました。
恥ずかしくなったエルナが
頭を下げると、大きな手が
エルナの顎を掴みました。
その手に導かれた彼女の目は
すぐに再び、
ビョルンで満たされました。
ビョルンは、
口元に穏やかな笑みを浮かべながら
どこまで習ったのかと尋ねました。
激しく悩んだエルナは、
よく分からないと嘘をつきました。
体調が適切でない時に、
夫を満足させる方法のようなものを
学んでいて、
部屋を飛び出したと言うくらいなら、
むしろ舌を噛む方がマシだと
思ったからでした。
わけもなくドキッとしたエルナは
覚えていないという言い訳を
付け加えました。
ビョルンはクスクス笑いながら
エルナの隣に座り、
「そう?」と聞き返しました。
そして、彼女の頬にキスをすると、
それでは最初から始めなければと
低い声で囁きました。
その言葉の意味を理解した時、
エルナは、すでにベッドに
横たわっていました。
ビョルンは、当然の手順のように
エルナの上に乗りました。
その威圧的な体が想起させた
初夜の記憶がエルナを圧倒しました。
ペッグ夫人が持って来た冊子で見た
とんでもない絵まで加わると、
目の前が遠くなりました。
ギュッと閉じているエルナの唇を
撫でていたビョルンは、
指先に力を入れながら、
キスをするには口を開けなければと
怯えているエルナの目に向き合っても
躊躇うことなく要求しました。
優しい口調で「さあ」と促しましたが
落ち着いた眼差しには
温もりがありませんでした。
エルナは躊躇っていましたが
結局、要求通りに唇を開きました。
ビョルンは、開いた唇から
一気に舌を押し込みました。
エルナは
反射的に身をすくめるだけで、
彼を押し退けることは
できませんでした。
ペッグ夫人の授業は、
すぐに幕を下ろしましたが、
それでも、
寝室のマナーについて学ぶには
十分な時間がありました。
寝室で妻は、夫に楽しみを
与えなければならない義務があり、
それは結婚生活を円満にする
非常に重要なことだと
ペッグ夫人に教わりました。
どうして、そんなことが楽しいのか、
エルナは、
よく理解できませんでしたが、
一つは、はっきりと
分かるような気がしました。
ビョルンは寝室のマナーを
とても重視する夫であり、
自分は、そんな夫を
失望させた妻だと言うことを。
再び訪ねて来るのが嫌になるほど
不満だったのかもしれないと思うと
目の前が真っ暗になりました。
いわば、この結婚は、最初から
うまくいっていないという
ことでした。
二度と、そんな過ちを
犯すわけにはいかない。
再び覚悟を決めたエルナは、
細かく震える両腕で、
ビョルンの首を抱き締めました。
しばらく止まっていたビョルンは
さらに猛烈な勢いで絡めて来ました。
エルナは、
全力で彼にしがみつくことで
自分の熱意を証明しました。
ますます激しくなった口づけは、
エルナの意識が遠のいた頃に
ようやく終わりました。
二人は熱い息を吐きながら、
お互いを見つめました。
びしょびしょに濡れた唇が
赤く光っていました。
ビョルンはニッコリ笑うと、
上半身を起こしました。
エルナのパジャマを取り除く手つきが
普段とは違って、せっかちでした。
しかし、彼の妻は、今日も
時代遅れのパジャマを着ていました。
きちんと結んだリボンを解くと、
首の先まで、しっかり留まっている
ボタンが現れました。
ビョルンは最初のボタンを外した時
自分は、こういうのが嫌いだと
低い声で囁きました。
朦朧とした目で彼を見ていたエルナは
ビクッとして、体を震わせました。
ビョルンはボタンを外しながら
面倒くさいのは好きではないと
話を続けました。
徐々に現れるエルナの肌は、
彼が覚えていたより、
遥かに白くて柔らかでした。
エルナは、
これからは違うパジャマを着ると
言いましたが、ビョルンは、
何も着るなと命令しました。
そして、
辛抱強く最後のボタンまで外し、
面倒なレースの山を
妻の体から取り除くと、
どうせ脱ぐのだからと
付け加えました。
ビョルンは、
自分の手のひらより小さい下着を
一気に引きずり下ろしました。
そこにも、リボンとレースが
可愛らしく飾られていました。
この女の一貫した好みに、
呆れながらも可愛いと思いました。
ぼーっとしている妻の頬に
短く口を合わせたビョルンは
エルナを抱き上げて、
自分の太ももの上に座らせました。
一瞬にして変わった姿勢に
驚いたエルナは悲鳴を上げました。
しかし、ビョルンは
何の動揺もない目で、
妻の状態を調べました。
真っ赤に染まった顔と違って
両足の間は、
まだ満足に濡れていませんでした。
眉間にしわを寄せたビョルンは、
しばらくして
虚しい笑みを浮かべました。
かなり手際が悪くて煩わしい女なのに
それが、あまり
嫌ではありませんでした。
確かに、こんな体を嫌がる男が
いるはずがないと思いました。
陶磁器で作ったように
滑らかに見えるけれど
実際の肌触りは、
限りなく柔らかくて温かでした。
ビョルンは、そのギャップが
気に入っていました。
どうすればいいのか分からず
おたおたしていたエルナは、
それが何かも知らないくせに
何とかしてくれと言わんばかりに
哀願するように彼を見つめました。
こんなにも不埒で哀れだなんて。
熱を帯びた笑いを漏らしたビョルンは
躊躇なく、自分の前で揺れる胸に
顔を埋めました。
洗い立ての女からは、
甘くて柔らかい体の匂いがし、
噛んで吸い込むほど濃くなる
その匂いと、泣くようなうめき声が
彼をますます執拗にしました。
すでに肩の下まで落ちていた
自分のガウンも
脱いでしまったビョルンは、
ゆらゆら揺れるエルナの足の間に
手を下ろしました。
無理なく彼を含んだ女の内部は、
柔らかく湿っていました。
しかし、このように濡れていたのに
痛がって泣いた夜のことを思うと
簡単に確信が持てませんでした。
もう少し待つことにしたビョルンは
再びエルナの口を飲み込みました。
濡れた手で、
逃げようとするエルナの背中を
しっかりとつかみ、
深い口を合わせました。
しかし、エルナは
何の反応も示しませんでした。
再び初夜のように
じっとしている姿が気になりました。
しばらく唇を離したビョルンは
死体のようにしていないで動けと
冷ややかに沈んだ声で
命令しました。
エルナは混乱した目で彼を見ながら
「何を?」と聞き返しました。
ビョルンは、
まずは舌からと答えると、
エルナの唇を飲み込みました。
貪るように激しく口を合わせ続ける
彼に倣って、エルナも中途半端に
自分の舌を動かしましたが、
その下手な刺激だけでも
熱感が急激に高まりました。
細い腰を伝って下りて来た
ビョルンの手が、
エルナの両足の間に届きました。
さらに熱くなった内側は、
一層、滑らかに彼を包み込みました。
それくらいで口を合わせるのを
止めたビョルンは
さらに執拗に刺激しながら
彼女の体を開きました。
息を切らしていたエルナの唇の間から
泣き声のような声が漏れ始めました。
ビョルンは、
エルナの意識が朦朧とした後、
足の間に留まっていた手を
握りました。
体を支えにくくなったエルナは
両腕で
ビョルンの首を抱き締めました。
背中に沿って手を下ろすと、
硬い骨格と滑らかな筋肉に
触れました。
ビョルンの肌も汗で濡れていました。
その事実に安堵した瞬間、エルナは、
馴染みのない異物感を感じ、
思わず視線を落としました。
エルナの眼差しが揺れました。
この男が
自分の中に入って来た瞬間の記憶が
急襲して来ました。
むしろ、何も知らなかった
初めての時の方が
良かったという気がしました。
あの日は、ただ驚いて、
不慣れだったけれど、
今は、それに恐怖が加わりました。
体が裂けるような痛みが
再び訪れるのかと思うと
ただ泣くばかりでした。
不安そうに震えている
エルナの視線が触れている所を
見たビョルンは、
クスクス笑いながら、
固まっている小さな手を握り、
そして淡々と、その手を下に
導いて行きました。
その目的に気づいたエルナが
びっくりして、
しきりに、もがきましたが、
ビョルンは止まりませんでした。
ビョルンは、
教えろと言ったではないかと言うと
激しく首を横に振るエルナを
目を細めて、じっと見つめました。
意図していたことを
成し遂げた男の顔の上に
笑みが浮かびました。
エルナは、手に触れた生硬な感覚に
驚愕して震えました。
ビョルンは、
しっかり学ばなければと言うと
力を入れられないでいたエルナの手を
自分の手で
しっかりと包み込みました。
満足そうな声を上げた瞬間にも、
彼の目にはエルナが映っていました。
一見、冷ややかに見える程、
静かな目つきが、
エルナをさらに混乱させました。
手に力を入れたビョルンは、
動かしてという、
熱いため息まじりの命令を
下しました。
エルナは、
後悔するには遅すぎたけれど、
突然、
ペッグ夫人が恋しくなりました。
ビョルンは、
「唇」と命令しました。
頑なに唇を閉じたエルナが
首を横に振ると、
彼はエルナの顎をつかみました。
徐々に力が加わると、
エルナは、
なす術もなく唇を開きました。
涙声で、うめき声を上げる女は
きれいでした。
ようやく満足げな笑みを浮かべた
ビョルンは、エルナの足の間に
ゆっくり押し込み始めると
エルナは苦しそうにすすり泣き
彼の肩をつかみました。
ビョルンは当惑しましたが
止まりませんでした。
すでに、エルナは、
シーツに染みが付くほど
濡れていました。
これ以上、女に
真心を尽くす方法など知らない。
知っていたとしても、
そんなことができる余裕は
すでに、随分前に
なくなっていました。
自分の手の跡が
色とりどりに残っている尻を
しっかり手に取ると、彼は、
一気に最後まで入りました。
エルナは体をひねりながら
再び唇を噛みました。
ビョルンは腰を動かしながら
声を出してと命令しました。
エルナは頑固に首を横に振り
うめき声を飲み込みました。
美しく冷酷な灰色の目を
見つめていたエルナは
とても恥ずかしいと、
絶望的な気持ちで哀願しました。
もう言い尽くせないほど
恥ずかしいことを
たくさんしてしまったけれど
自分の耳にも、
いやらしく聞こえるうめき声は
本当に耐えられませんでした。
しかし、ビョルンは
それが好きだと言って
深く入って来て、
甘い笑みを浮かべました。
エルナは眉間にしわを寄せました。
他人の苦痛を楽しむなんて
悪趣味だと、言いたいことは
数えきれないほど多いけれど
まともに声を出せそうに
ありませんでした。
エルナは、
どんどん深く入り込んで行く
彼に従うことを余儀なくされました。
濡れた肌がぶつかる音が
急速に高まり始めました。
うめき声より、
はるかに恥ずかしい音に
頭の中が朦朧としてきました。
安堵すべきか、泣くべきか
全く判断がつきませんでした。
ビョルンの手が再び下に届くと、
エルナは、止めて欲しいと懇願し
泣きながら、もがき始めました。
押し退けようと必死になっても無駄で
エルナにできることは、
悲鳴のような声を上げながら
腰を反らすことだけでした。
抗うことのできない腕力に
圧倒される瞬間、エルナは
数え切れないくらい殴られたことを
思い出しました。
全く違うということを、
頭では、よく分かっているけれど
体が先に縮こまりました。
叩かれるような音と無気力感。
到底太刀打ちできない相手に対する
恐怖が、理性を蚕食しました。
もう本当に、息をする方法を
忘れてしまいそうな瞬間、
幸いにもビョルンは、
しばらく動きを遅くし、
エルナの顔に向き合いました。
荒々しい身振りと違い、ビョルンは
エルナの硬くなった頬に、
優しく口を合わせました。
危なっかしく揺れても、
ただ耐えている愚かな女に
ビョルンは、抱き締めてと、
落ち着いて指示しました。
エルナは、
それも好きなのかと、
とんでもない質問をしたので
ビョルンは、一瞬呆然としましたが
虚しく頷きました。
そして、
熱が上がった自分の唇を舐めると、
涙が溜まっているエルナの目頭に
短く口を合わせて、
好きだと答えました。
熟したリンゴのように
赤い頬を軽く噛んだのは
多分に衝動的ないたずらでした。
驚きながらも、エルナは、
素直に彼を抱き締めました。
そっと首筋や肩を撫でる
ぎこちない手つきが
可愛いと思いました。
ため息をついたビョルンは、
再び、本来の目的に従って
動きました。
息が詰まりそうになるくらい
喘ぎながらも、
エルナは、彼にしがみついた腕を
緩めませんでした。
途轍もなく純真な女なのに、
ビクビクしながら
引き締めて飲み込む内部は、
こんなことがあり得るのかと思うほど
刺激的でした。
ビョルンは、
彼女の濡れた目頭に、熱くなった頬に
震える唇に、
絶えず口を合わせながら
速度を上げて行きました。
妻の体が、どうしようもなく
良くなりそうな予感がしました。

エルナが、これ以上、
何も学ぶことができないほど、
疲れてしまった後、
事が終わりました。
ぐったりした女から体を離した
ビョルンは、
未練なくベッドを離れました。
エルナが好きだった暖炉の明かりが
汗に濡れた、がっしりした体を
包み込みました。
チラッと見た置時計は、いつの間にか
夜更けの時間を指していました。
ガウンを羽織ったビョルンは
再びベッドのそばに戻りました。
エルナは、まだ死んだように
体を丸めていました。
布団を掛けようとして手を伸ばすと
エルナが目を開けました。
ビョルンの手を、そっと握ったまま
唇をピクピクさせていたエルナは
しばらくして、ようやく、
ここにいても大丈夫だと
すごい寛容でも施すような言い方で
とんでもないことを言いました。
自分は静かに寝るし
寝相も悪くないと言うと、
指を握っている小さな手に
力が入りました。
ビョルンは微笑みながら、
自分の手から離した妻の手を
布団の中に入れると、
ぐっすり休んでと告げて、
まだ熱感が残っているエルナの頬に
口を合わせました。
その唇は羽毛のように柔らかでした。
ビョルンは、
明日の昼は、君の好きな、
あのレストランで
一緒に食事をしようと告げると、
優しい手つきで
エルナの乱れた髪を撫でて
背を向けました。
ドアが閉まると、
寝室は奇妙な静寂に包まれました。
エルナは、閉ざされたドアを
じっと見つめながら
眠りにつきました。
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マンガの40話では、
あっさり描かれていましたが
原作では、
濃厚なシーンが長々と続いたので
私の顔も火照ってしまいました。
今回のお話を読んで抱いた私の疑問。
はたして、ビョルンは
エルナと出会う前に、
他の女性のことを可愛いと
思ったことがあったのでしょうか。
猫のシャーロットを
可愛がる振りをしていたけれど
名前さえ憶えていなかったので
おそらく可愛いと思っていなかった。
飼っている馬のことも
可愛いと思っていないかもしれません。
私の感覚では、
ビョルンには、可愛いという言葉が
あまりにも似つかわしくなくて
今回のお話で、二度も
エルナのことを可愛いと思ったことが
驚異的に感じました。
初夜の時のように、
ついビョルンは、エルナの体に
夢中になってしまったけれど
彼の抗うことができない腕力のせいで
エルナが、父親から受けた暴力を
思い出してしまったのは
可哀想でした。
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