自分時間を楽しく過ごす 再婚承認を要求しますの先読みネタバレ付き

子供の頃からマンガが大好き。マンガを読むことで自分時間を楽しく過ごしています。再婚承認を要求します、ハーレムの男たちを初めとして、マンガのネタバレを書いています。

泣いてみろ、乞うてもいい 58話 ネタバレ 先読み 原作 あらすじ 逃走

 

58話 レイラは校長と向かい合っています。

 

沈黙していた校長の唇の間から、

空笑いが漏れました。

おとなしく座っていたレイラは、

恭しいけれど、

かなり断固とした目つきで

彼を見つめていました。

 

校長はレイラに

本気なのかと尋ねました。

レイラは、

「はい、そうしたいです」と

答えました。

訳もなく口にした言葉ではないように

真剣な返事でした。

もっとも、レイラは、

進んで遠い所にある学校に

移るという言葉を、

むやみに投げかけるほど

軽率な性格ではありませんでした。

校長は、

理解できない。

ルウェリン先生の家から一番近い学校が

ここだと思うのにと返事をしました。

 

自転車で学校を行き来するこの

若い女の先生は、

まだ有能だとは言えないけれど、

それでも、かなり誠実で

根性がありました。

ときどき小言を言うものの、

校長は、概して

彼女が気に入っていました。

さらに、彼女の境遇を考えると、

この村にある学校が、色々な面で

最善なはずでした。

 

校長は、カルスバル内の他の学校には

適当な席がない。

学校を異動するには、遠い都市まで

行かなければならないことを

知っているよね?と尋ねました。

レイラは、

知っていると答えました。

 

校長は、もし、この学校で

何か問題でも起きたのなら、

話してみるように。

解決できる問題なら、

喜んでそうしてあげると言いました。

 

レイラは、

そうではない。皆、よくしてくれて、

子供たちとも仲良くしている。

ただ・・・もう少し

広い世界を経験したくて下した決定だと

一瞬、動揺したけれど、無事に

準備した答えを出すことができました。

 

校長は再び失笑しました。 

それもそのはず。

カルスバルは、このベルク帝国で

首都と肩を並べるほど、

繫栄した都市だからでした。

しかし、いくら悩んでも、レイラは

これより良い言い訳を

見つけることができませんでした。

幸い、校長は、それ以上追及せずに

頷いてくれました。

 

校長は、

カルスバルで教鞭をとりたい教師は

あまりにも多いので、

ルウェリン先生の後任を探すのは

難しくないけれど、それでも、

まだ次の学期までは時間があるので

よく考えてみてと言いました。

 

時間をかけて考えてみても

変わりそうにない結論でしたが、

とりあえずレイラは、校長の配慮を

ありがたく受け入れました。

 

校長室を出て教室に戻ると、

我慢していたため息が

長々と漏れました。

 

レイラは、

子供たちが帰って、

がらんとした教室の窓際に

じっともたれかかりました。

窓の向こうに立つ柏の木は、

今や、ほとんどすべての葉を

落としていました。

 

アルビスを離れよう。

十分眠れなくて、何度もボーッとして

数日間、愚かなミスを犯した末に、

レイラが下した結論でした。

 

ビルおじさんと共に過ごす

大切な日常が心残りでしたが、

未練を断ち切れなかったせいで、

もっと多くのものを

壊すかもしれないということを

レイラは、カイルを失って学びました。

レイラは、

ただ、最初の計画通りに戻るだけだと

思うことにしました。

 

隣の都市で教鞭を取っても、週末には

ビルおじさんに会うことができる。

他の地で下宿をすれば、

今より多くのお金が必要だろうし、

大学へ行く準備が

遅くなるかもしれないけれど、

アルビスから、

あの男から離れることができるなら

それでも大丈夫でした。

 

レイラは、微かに微笑みながら

机の前に近づきました。

この世に一人残され、親戚の家を

転々としなければならなかった

あの無力な幼い時代を思えば、

何でも耐えられそうでした。

もう大人で、

愛するビルおじさんがいる。

だから全部大丈夫だ。

大丈夫だろうと思いました。

 

無意識に唇を拭ったレイラは、

急いでコートを着て

カバンを持ちました。

数日間、

カバンの奥深くに入れておいただけの

公爵のハンカチを見ると、

瞳がしばらく揺れましたが、

レイラは、すぐに、

その混乱も収めました。

自転車に乗ったレイラは、

いつもと変わらず

力強くペダルを踏み始めました。

アルビスに続く道に入ってすぐに

リエットは、彼女を見つけました。

一抱えもあるの木の間に

自転車を止めておいた

レイラ・ルウェリンは、

まるで、誰かを待っているように

後ろ手を組んだまま、

じっとその場に立っているだけでした。 

 

その誰かは誰だろうか?

ぼんやりと分かるその答えが興味深く

リエットは道端に車を止めました。

つま先で地面を蹴っていたレイラが、

さっと顔を上げました。

期待したその顔ではないことに

気づいたのか、彼女は

緊張しながら後ずさりしました。

 

閉まった車のドアに

もたれかかったリエットは

にっこり笑いながら

レイラに挨拶しました。

彼女は、急いであたりを見回した後、

もう一歩後ろに下がってから、

警戒心と緊張感を滲ませながら

挨拶を返しました。

 

リエットは、

ここで何をしているのかと尋ねました。

レイラは、

激しく悩んでいる表情をしていましたが

最後まで答えられませんでした。

その沈黙が、

何よりも確実な答えだったので、

リエットは再び笑いました。

 

彼は、

医者の息子はここにいないから、

ヘルハルト公爵かな?と

白々しく尋ねると、

レイラは、顔を上げました。

眼鏡の奥に見えるしかめっ面と

赤くなった頬が、彼女の当惑と羞恥心を

代弁してくれました。

 

リエットは、

ルウェリンさんが待っている男は

マティアスではないかと尋ねると

レイラの目の前に近づき、

手を後ろに組んで立ちました。

レイラは、冷や汗をかいた手で

カバンの持ち手を

力いっぱい握りました。

 

彼女は、

まるで時限爆弾を抱えているように

心を不安にさせる公爵のハンカチを

返すつもりでした。

しかし、彼を別に訪ねたくないので、

この道で待つのが最善だと思いました。

 

リエットは、

どうして返事がないのか。

自分の言葉が、

あまりにも的を射ているからかと

尋ねました。

 

レイラは、

リエットに退いて欲しいと頼むと

ハンカチが入ったカバンを後ろに隠し

もう行くことにして歩き始めました。

しかし、リエットは、もう少し早く

レイラの前に立ちはだかり、

まだマティアスに会っていないのに

もう行くのかと尋ねました。

レイラは退いて欲しいと訴えました。

しかし、リエットは、

彼女が待ちわびている公爵が

どこに行ったのか知っているかと

尋ねると、

可哀想にと言うように舌打ちしながら

レイラの肩をつかみました。

そして、レイラのことを

可哀想なルウェリンさんと呼ぶと

ヘルハルト公爵は、

婚約者を迎えに行ったと話しました。

 

最初は悪ふざけだったけれど、

リエットは、そろそろレイラが

気になり始めました。

マティアスの行方を全く知らないから

約束もしていないのに、

ここで彼を待っているのだろうけれど

その姿がイライラして情けないし、

何よりも、彼女が気の毒なのは、

ある程度の自己憐憫

投影されたためだという事実を

リエットは素直に認めました。

 

クロディーヌが、

アルビスを訪問するという

知らせを聞き、

当然のように、彼女を迎えに行く

マティアスの後ろ姿を見て、

たわいもなく笑って手を振った後、

一人で車を運転して、

あてもなく彷徨っていた時の

自分の姿を見るような不快感。

もしかしたら同質感のようなもの。

 

反対側に逃げようとするレイラの前に

立ちはだかったリエットは、

マティアスは面白くないだろう?

と尋ねると、片手で

自転車のハンドルを握りました。

そして、

愛人に対する態度だって

大して変わらないだろうと

付け加えました。

 

その言葉にレイラは

「・・・何、何ですって?」と

聞き返しました。

リエットは、

公爵の愛人という表現が

下品だったのかと尋ねました。

 

今にも息が詰まりそうな顔の

レイラを見下ろしながら、

リエットはクスッと笑いながら

それなら、ごめんなさいと謝りました。

 

レイラは、自分の自転車を

返して欲しいと訴えました。

リエットは、

医者の息子も、ヘルハルト公爵も好きな

ルウェリンさんが、

自分だけ、こんなに嫌がるなんて、

少し残念だと言うと、

勝てないふりをして

自転車のハンドルを離しました。

そして、レイラが、

それに気を取られている間に、

彼女の持っているカバンを

奪い取りました。

レイラは青ざめた顔で

彼に向かって突進しました。

 

「私はどう?」と尋ねると、

リエットは、

カバンを頭の上に持ち上げました。

そして、

医者の息子のことは、

よく分からないけれど、

マティアスより自分の方が

確かに面白いと言いました。

しかし、レイラは、

カバンを返してと叫びました。

 

リエットは、

マティアスと自分は、

とても似ているではないか。

ヘルハルト公爵ほどではないけれど

自分も、ルウェリンさんを

寂しがらせない程度にはなると

言いました。

 

しかし、カバンを

取り戻さなければならないという

一念にとらわれたレイラは、

今や怖がることなく、

彼の腕を引っ張り始めました。

閉じた唇がブルブル震えていました。

 

リエットは、

つまらない公爵は、

彼と同じくらいつまらない婚約者と

仲良くさせておいて

自分と遊ぼうと言いました。

しかし、カバンの中に、

すごい宝物でも隠しておいたのか、

レイラは痛ましいほど執拗でした。

 

クスっと笑ったリエットは、

このくらいにして、

カバンを手放しました。

それを受け取ったレイラは、

自転車を放り出したまま

アルビスの入り口とは逆の方向へ

夢中で逃げ出しました。

脱げた靴が、

道の上を転がっていましたが、

レイラは、それを

認識できないように見えました。

 

リエットはレイラに謝り、

もうやめるからと言いましたが

レイラは止まらず、むしろ、

もっと必死に逃げました。

 

リエットはため息をついた後、

道に落ちている靴を拾い、

レイラの後を追い始めました。

 

レイラがちょうど道を曲がって

逃げた直後、

キキーッと鋭い金属性の音と

何かが衝突する鈍い音が

鳴り響きました。

リエットは当惑した表情で

急いでそこに向かいました。

止まった黒い車の前に、

レイラが体を小さく丸めたまま

倒れていました。 

 

リエットが

その場に立ち止まっている間に

まず運転手と随行人が車から降りて

レイラに駆け寄り、

続いて後部座席のドアから、

マティアスとクロディーヌが

降りました。

 

「なんてこと!レイラ!」

驚いたクロディーヌは、悲鳴のように

その名前を呼びました。

依然として、

カバンをギュッと抱きしめたまま

震えているレイラを見た

マティアスの視線は、

ヘッドライトの中に立っている

リエットの顔の上で止まりました。

幸い大きな事故ではなく、

レイラは激しくぶつかって転倒した後も

両足で立ち上がりました。

病院へ行ってみるべきではないかと

言われても、意地を張って

首を横に振るだけでした。

一人で自転車に乗って行ける状態を

確認したマティアスは、

その辺で騒ぎを収拾しました。

 

レイラが消えて行った方を、

心配そうに

のぞき込む人たちに向かって、

自分たちも帰ろうと、

マティアスは淡々と命令しました。

どういう状況なのか。

一体、なぜリンドマン侯爵が

レイラを追いかけていたのかという

疑問などは、少しも示しませんでした。

リエットを一瞥したクロディーヌも

婚約者の言葉に同調しました。

 

マティアスはクロディーヌと一緒に

再び車に乗り込み、

困った顔で立っていたリエットも

まもなくプラタナスの道の入り口に

止めておいた自分の車に戻りました。

 

その二台の車はレイラを追い抜き、

アルビスの入り口を通り過ぎました。

窓の外をチラッと見たクロディーヌは

かなり強くぶつかったようだけれど

怪我がなくて本当に良かったと

ため息をつくように言いました。

まるで、狩人に追われた獲物のように

逃げて来て車に轢かれたレイラを

見た時は、

滅多に慌てることがないクロディーヌも

とても驚きました。

続いて、レイラの靴を片手に持っている

リエットを見た瞬間には、

危うくすべての感情が、

顔にそのまま表れるところでした。

 

それにしても、まさか、リエットが

そこまで

軽率でせっかちになるなんてと

考えながら、クロディーヌは、

神経をとがらせて、

マティアスの反応を

注意深く観察しました。

しかし、彼からは、

どんな感情も読めませんでした。

自分の女に対する心配も、

自分の女を傷つけた者に対する怒りも

感じられない彼は、

いつもと変わらない

ヘルハルト公爵に過ぎませんでした。

 

その事実に、クロディーヌは、

何となくレイラのことが不憫になる頃

車は公爵邸の玄関前に止まりました。

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レイラにとってカイルは

恋愛対象ではなく、

家族のように大切な人だった。

けれども、レイラは

カイルを失いたくなくて

彼のプロポーズを受けてしまった。

 

マティアスについては、

心の奥底では、密かに恋心が

芽生えているかもしれないけれど

現時点では、彼に言い寄られて

困っている状態。

それなのに、リエットは、

さもレイラがカイルとマティアスを

引っかけたような言い方をし、

レイラをマティアスの

愛人呼ばわりしたことに

とても気分が悪くなりました。

そして、クロディーヌも

レイラはマティアスの女だと

思っているけれど、

マティアスがレイラに

執着しているだけで、

レイラは必至で逃げているのに

そのような誤解をするなんて、

あんまりです。

孤児というだけで、

レイラが悪者にされるのが

可哀想過ぎます。

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