自分時間を楽しく過ごす 再婚承認を要求しますの先読みネタバレ付き

子供の頃からマンガが大好き。マンガを読むことで自分時間を楽しく過ごしています。再婚承認を要求します、ハーレムの男たちを初めとして、マンガのネタバレを書いています。

泣いてみろ、乞うてもいい 71話 ネタバレ 先読み 原作 あらすじ カイルからの手紙

 

71話 レイラはマティアスから離れに呼び出されました。

 

マティアスは、

以前の夜と同じように、

ゆっくりと一歩下がり、

レイラはぶるぶる震えながら

敷居を越えましたが、

依然と違うのは、レイラが

先頭に立ったということでした。

 

廊下を歩いて行ったレイラは

応接室ではなく

寝室の方へ向かいました。

理由を聞く代わりに、マティアスは

素直にレイラの後を追いました。

いつも、ちょっとした破格なことで

彼を楽しませてくれる女が、

今日はどんな意外なことをするのか

期待していました。

そしてレイラは、間違いなく

その期待に応えてくれました。

 

レイラは、ドアノブを握ったまま

しばらく躊躇っていたかと思うと

自分の手で寝室のドアを

急に開けました。

数歩の間隔を空けて

後に続いたマティアスは、

眉を顰めました。

名前を呼ぼうとしましたが、

マティアスは

黙って寝室に入りました。

レイラ・ルウェルリンが準備した

破格の楽しみは、

果たしてどこまですることなのか、

そろそろ気になって来ました。

 

マティアスは、

思いっきりやってみろと言うように

緩く腕を組んだまま

閉じたドアに背中をもたれて

立ちました。

寝室の真ん中でしばらく立ち止まって

息を整えたレイラは、再び足を運んで

ベッドまで近づきました。

一番先に眼鏡を外して

サイドテーブルに置いたレイラは

続いてマフラーとコートを脱ぎ、

手袋まで外しました。

私は自分の役割を果たしたから、

君も君の役割を

果たさなければならない。

 

公爵からの手紙には、

その一文だけが書かれていました。

役割という単語が意味する侮辱感に

レイラは、しばらくその場で

動けませんでした。

 

まるで隅に追い詰められた

ネズミを弄ぶ猫のように

残忍な笑みを浮かべながら

「愛人なら愛人らしくしなければ」

という、公爵が投げかけた言葉まで

浮かび上がると、レイラは、

これ以上、両足で体を支えられず、

その場に座り込んでしまいました。

 

半ば意識を失ってしまったと思ったら

身の毛がよだつほど、その後の記憶が

生々しく蘇りました。

どれほど痛くて

恥ずかしかったことか。

それでも自分の体が

思い通りにならないという事実は、

どれほど絶望的だったことか。

 

そのようなことに関して

何も知らなくても、

公爵が自分にしたことが、決して

愛の行為ではないことくらい

分かりました。

あれは、ただ本能的な欲望だけを

追い求めるものでもなかったので

獣のような行為だというのも

語弊がありました。

 

開いた窓から入って来る

冬の風に吹かれながら、

しばらく床に座り込んでいたレイラは

昨年のある美しい夏の夜に、

君が泣いたら愉快だし、

君が乞うのを見ると楽しいと、

公爵が吐き出した

あの言葉がひらめきました。

 

「だからレイラ、泣いてみて。

乞うてもいい」という

冷酷な命令を下した瞬間にも、

公爵は笑っていました。

 

狩りを楽しむように、

愉快で楽しいから。

レイラは、

そのような答えを見つけると

虚しい笑いが、泣き声のように

流れ出ました。

ただそれだけなのに、

たまに、もしかしたら

他の何かではないかと、

あの男の目を凝視していた

自分の姿が耐えられないほど

嫌になりました。

 

帰って来たビルおじさんが

自分を呼ぶ声を聞き、レイラは

ようやく体を起こしました。

窓を閉め、カーテンを引き、

力を入れて、赤い目元を

袖口でこすって拭いた後、

振り向きました。

そして、一日でも早く、

彼が自分を捨てるように、

自分はもう二度と、

彼の前で乞うことも泣くこともなく

どんな楽しみと喜びも与えないと

決心しました。

 

レイラは、その誓いを思い出すと

ブラウスやスカート、

靴まで次々と脱ぎました。

自ら下着まで脱ぐには、

はるかに大きな勇気が必要でしたが

結局、やり遂げました。

公爵が

自分の体にしたことを考えると、

今さら裸を見せるのを憚るのも

滑稽でした。

何よりもレイラは、

これ以上、最初の夜のように

惨めに辱めを受けるくらいなら、

むしろ、

自分で選択した方がましでした。

 

マティアスは呆れたため息をついて

半裸になったレイラを眺めました。

露わになった胸を覆っていた腕を

そっと下ろしたレイラは、

残っている下着も、

一枚ずつ脱いでいき、

最後にストッキングまで脱ぐと、

一糸まとわぬ体が、

彼の目の前に現れました。

 

頭がどうかなってしまったのでは

ないかと、ついに、そんな考えまで、

かなり真剣に浮かびました。

そうでなければ、

到底あり得ないことのようでした。

 

脱いだ衣類を集めて

ベッドの横の椅子の上に置いたレイラは

アップした髪の毛を

固定させておいたピンも抜きました。

滑らかな首筋と肩に沿って

流れ落ちた髪は金色の波となって、

白い背中を覆いました。

 

まっすぐで、

もの静かな目つきとは違って、

マティアスの息づかいは

微妙に乱れていました。

力いっぱい握り締めていた手を上げて

額を隠した髪の毛を

かき分けている間に、

レイラは、ベッドの端に

おとなしく座りました。

狂気じみたことを

毅然と行っていたその気迫は、

どこへ行ってしまったのか、

全身がブルブル震えていました。

 

マティアスは、

ゆっくりとレイラに近づきました。

視線をどこにも向けられず

慌てていたレイラは、

結局、自分の足先を見下ろしました。

 

マティアスは、

今、何をしているのかと

嘲笑するように尋ねて

レイラの顎を握りました。

そっと力を入れるだけでも

レイラの両目を、自分の方へ

引き寄せることができました。

レイラは、

自分の役割だと答えました。

 

かなり、きつい口調でしたが、

声があまりにも震えていたせいで

少しも脅威的に聞こえませんでした。

 

マティアスは、

君の役割は何かと尋ねました。

そろそろ状況が面白くなって来て

マティアスは目を細めました。 

怯えて途方に暮れた目をしていても

レイラは、

もう、知っているはずだ。

公爵が決めたからと

大胆不敵に答えました。

肩を少しすくめましたが、

自分を見下ろす彼の視線を

レイラは避けませんでした。

 

息を切らしているせいで

素早く上下している胸から

膝の上にきちんと置かれた

両手の上に、

マティアスの視線が移動しました。

 

裸で座って淑女の真似をするなんて。

荒唐無稽な姿をあざ笑う瞬間にも、

マティアスの視線は、依然として

レイラの上を徘徊しました。

再び大きな瞳と目が合うと、

虚しい笑いが溢れ出ました。

お金を払って女性を買う気分が

こんなに汚いものなのか。

笑いが消えると、マティアスの瞳は

ぞっとするような光だけで

満たされました。

 

ゆっくりと、

閉じていた目を開けたマティアスは

いい子を褒めるかのように

優しくレイラの頭を撫でました。

口元に浮かんだ笑みもそうでした。

 

レイラが、

妙に不吉な予感がしたその瞬間、

少し前まで頭を撫でていた手が

むんずと首を握りました。

マティアスは、

真っ青になったレイラを

そのまま倒して、

ベッドに押さえつけました。

首を絞めてしまいたい女の体の上に

乗り込んだ瞬間、

マティアスは少し笑いました。

暖炉のマントルピースの上に

かかっている鏡が、

そんな彼の姿を映しました。

 

完璧な平穏の日々を送っていた

マティアスが消えた場所には、

生まれて初めて

渇望するようになったものを

手に入れられず、ねじれてしまった

一人の男がいました。

マティアスは、

レイラの荒い息が収まった後に

ベッドから立ち上がりました。

疲れ果てて、

うつ伏せになっているレイラは、

気配だけでその事実に気づきました。

良かった。

これで本当に終わりだ。

良かった。本当に良かったと

真っ先に思いました。

 

レイラは、

また、あの男を刺激することを恐れて

手が付けられないほど

しわくちゃになったシーツを

丸めて握り、身をすくめながら、

早く公爵が去ってくれるのを

死んだように静かに待ちました。

 

予想通り、彼の足音が遠のくと、

安堵のため息が微かに漏れました。

もう一度、あんなことをしたら

体が壊れてしまいそうでした。

 

しかし、あまりにも早く

気を緩め過ぎてしまったのか。

かなり遠ざかっていた公爵の足音が

再び近づき始めました。

シーツを握っていたレイラの指が

白くなりました。

顔を上げるだけで

状況を確認できるはずでしたが、

レイラは、彼と目が合うのが

ぞっとするほど嫌でした。

 

どうすることもできず、

バカみたいに祈っている間に

服を着てきた公爵が、

レイラの頭を撫でました。

いたずらでもするように

髪の毛をそっと引っ張ったり、

櫛のように、

指で髪を梳いたりする彼の

クスッという笑い声が聞こえました。

そして、頭を下げた彼は、

「よくやった、レイラ」と

低い声で囁きました。

そして再び頭を撫でましたが、

その手が、

まるで体を売る女に転落したような

侮蔑感を与えたので

レイラの手がブルブル震えました。

 

レイラは、

泣かないでという決意に

縋りつきました。

あの長くてひどい情事が続く間も

泣かなかったので、今になって

泣くことはできませんでした。

 

間もなく、

寝室のドアが閉まる音が聞こえ、

その後、離れの玄関ドアが開き、

閉まる音も聞こえて来ました。

公爵が完全に去ったようでした。

 

レイラは、ようやく起き上がって

座りました。

腫れ上がった唇を擦ると、

微かに血が滲み出て来ました。

痛かったけれど、それほど

大きな傷ではありませんでした。

 

慎重にベッドから降りて

立ち上がったレイラは、

何気なく目を向けた先で

自分と向き合いました。

それが、

マントルピースの上に掛かっている

鏡に映った自分の姿だと

気づくまでに、

少し時間がかかりました。

見たくない気持ちとは裏腹に、

レイラの両目は

ぼんやりと鏡を眺めました。

 

何でもない男との、

何でもないことにすぎない。

頭ではそう考えても、

体に残った痛みは

簡単に消えませんでした。

 

このままでは

服が着られそうにないので、

レイラは

コートのポケットに入れておいた

ハンカチを取り出し、

滅茶苦茶になった体を拭きました。

何度も手を止めて、

息を整えなければなりませんでしたが、

最後まで泣きませんでした。

レイラはその事実に深く安堵しました。

 

がらんとした離れを後にして

小屋へ向かう道中、レイラは

明るい月明かりを避けて

陰になった所だけを歩きました。

たまに石ころや、

どんぐりの皮を発見すると、

大したことではない。

そのような些細な腹いせをすれば

忘れられることに過ぎないと言いたげに

平気で蹴ったりもしました。 

 

愛する俺のレイラ。

 

小屋に到着して、

静かに自分の部屋に入った瞬間、

忘れたいあの手紙のことが

再び思い浮かびました。

レイラは、他のすべての手紙を

暖炉で燃やしたにもかかわらず、

最後まで捨てられなかった

最後の手紙を見つけ出すと

ベッドにもたれかかりました。

 

愛する俺のレイラ。


俺と結婚してくれる?

またプロポーズするなんて、

馬鹿げた冗談のように

聞こえるかもしれないけれど、

これは今までの数多くのプロポーズを

すべて合わせたものより、

もっと真実な告白だ。

 

祖父が俺にだけ残してくれた

遺産がある。

来年の春、自分の誕生日が過ぎれば、

その財産を、

俺の思い通りにできる資格が得られる。

あまり大金ではないけれど、

大学近くに小さな家を探して

俺たち二人が

勉強を終えられる程度にはなるだろう。

急いで結婚するのが気になるなら、

卒業するまで待っても大丈夫。

君と一緒にいられれば。

 

だからレイラ、俺とラッツに行こう。

もう一度試験を受けても、

君は必ず合格するから、

一緒に勉強できる。

 

いつか俺は医者になり、

君は鳥を研究する学者になって

素晴らしく生きていく日々について

幼い頃から、楽しく話して来たのを

覚えているよね?

俺は相変らず、その日を夢見ていて、

そしてその未来には

いつも君がいる。

俺の大切な友達であり恋人であり、

その未来には、俺の妻であり

俺の子供たちの母親であるレイラ。

愛する俺のレイラが。

 

俺は両親を愛していて、

二人が、どれだけ俺のことを

愛しているかも知っている。

その事実は永遠に変わらない。

でも、だからといって

俺が幸せになれない道へ

追い立てられるように

歩いて行くことはできない。

お母さんが思う幸せは

自分の幸せではなく、

お母さんの虚栄心だ。

 

時間が経って、お母さんが君を

心から受け入れることが

できるようになれば良いけれど、

それができないなら、

そのことは、まあまあ受け入れよう。

これは君のために

家族を捨てるという意味ではない。

俺のために、

俺の幸せを探しに行くんだ。

だからレイラ、

俺の幸せになってくれる?


もちろん今の俺は、

君に大げさなことを約束できない。

両親の影から出れば、

まだつまらない存在に過ぎないから。

しかし、

君を俺の世界のように愛し、

大切にして傷つけないと、

自信を持って約束できる。

 

どうか他のすべてを忘れて

君の気持ちだけを考えてくれ。

その気持ちが俺と同じなら

言って欲しい。

君を迎えに行って、

俺たち二人が幸せになれる場所へ

一緒に出発しよう。

 

薄っすらと夜が明けるまで、

レイラは

その手紙を読み続けました。

もしかしたら、

現実になったかもしれない

カイルとの未来を描く度に、

当然のように、公爵が与えた悪夢が

思い浮かびました。

 

ビルが目を覚ました気配が

聞こえてくる頃、

レイラもベッドから起き上がりました。

そして大切に撫でたその手紙を

部屋の片隅にある暖炉の中へ入れました。

手紙はすぐ灰になって消えました。

ヘッセン

離れに用意しておいたケーキは

手付かずのまま残されていました。

そんな些細なことまで、

あえて主人に尋ねるのは愚かでしたが

ただ捨ててしまうのは、

どうしても気が進みませんでした。

腕のいいアルビスの料理人がいるのに

市内にあるホテルの

ティールームのケーキを

あえて注文して欲しいと

指示した理由が何なのか、

ぼんやりと分かっていたからでした。

公爵は、このような甘いものを

口にすることさえしなかったので

彼自身のために

準備したはずのない食べ物でした。

 

ヘッセンは深呼吸を繰り返して

気を引き締めた後、

公爵の寝室に入りました。

彼は、いつもと変わらない様子で

ヘッセンから報告を受け、

渡された新聞を開きました。

 

ヘッセンは、

またケーキを用意させようかと

それとなく質問しました。

公爵はゆっくり目を上げて、

断りました。

そして、しばらく

空中を見ていましたが、

すぐに再び新聞に向かいました。

 

馬鹿げた質問であることを知りながらも

ヘッセンは、

残っているケーキについて

慎重に尋ねました、

公爵は新聞を一枚めくりながら

「捨てなさい」と無心に答えました。

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カイルからの手紙に泣けました。

祖父からの遺産のことを思い出した後、

カイルは思いのたけを

手紙に書き連ねたのだと思います。

 

もし、レイラが

マティアスの元へ行く前に、

手紙を読んでいたとしても、

ビルおじさんを助けるために、

レイラはマティアスに

身を任せに行ったと思います。

けれども、先に手紙を読んでいたら

レイラは、

輝かしい未来を捨てて

公爵の愛人になった自分の境遇を

さらに呪い、惨めな気持ちに

なっていたかもしれません。

 

レイラがすぐにカイルからの手紙を

捨てられなかったのは、

マティアスに捨てられたら、

カイルとの未来を

望むことができるかもしれないと

少し期待を抱いたのかもしれません。

けれども、

昔のように夢を見ていた時の自分と

現実の自分とのギャップに失望し

カイルとの未来は

完全に諦めてしまったのかも

しれません。

 

マティアスがケーキを頼まなかったのは

レイラが食べなかったことに

腹を立てたのか、

もうレイラを呼ぶのを止めようと

思ったのか、

それとも、他に理由があるのか。

でも、マティアスは、

最初はレイラの態度に戸惑ったけれど

最後は満足していたように思えるので

レイラを呼ぶのを止めることは

ないように思いました。

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