自分時間を楽しく過ごす 再婚承認を要求しますの先読みネタバレ付き

子供の頃からマンガが大好き。マンガを読むことで自分時間を楽しく過ごしています。再婚承認を要求します、ハーレムの男たちを初めとして、マンガのネタバレを書いています。

問題な王子様 69話 ネタバレ ノベル あらすじ マンガ 56、57話 未練の実体

 

69話 エルナはドームから出られなくなってしまいました。

 

一人で行くと言う予期せぬ命令が

がらんとした聖堂に響いていた

足音を止めました。

捜索隊は慌てた顔で、

その命令を下した

レチェンの王子を見つめました。

 

暗い上に階段がとても高いので

自分たちが確認した後に結果を・・

と言われても、

ビョルンは「いや」と言って

反論を遮ると、レチェンの王子は

彼らに近づきました。

先頭に立っていたドームの管理人は

ハッとして、頭を下げました。

 

自分が行くと言って、

王子が差し出した手の意味に

気づいた管理人は、

鍵の束と灯りを渡した後に

退きました。

 

ここで待機するようにと言って

後に続いたレチェンの近衛兵も

退けたビョルンは

ドームへと続く階段が始まる

ドアの向こうに入りました。 

古い石の壁の冷気と闇が

一気に彼を飲み込みました。

ため息をつくビョルンの唇の間から

漏れた白い息が、

冷たく湿った空気の中に

溶け込んで行きました。

 

誕生日を祝ってくれなかったという

理由で家出するなんて。

メイド長の報告を聞いたビョルンは

呆れて、思わず笑ってしまいました。

レチェンの王子妃である女が、

どうして歴訪中の他国で、

このような情けない騒ぎを

起こすことができるのか。

彼には、

到底、理解できないことでした。

もちろん、最大の過ちは

大公妃の誕生日という

大きな行事を忘れた

随行団にあるだろうけれど、

だからといって、

エルナの幼稚な行動が

許されるわけではありませんでした。

 

そんなに祝って欲しかったなら、

せめて事前に知らせるべきだったと

怒りが頭のてっぺんまで

こみ上げて来た瞬間、ビョルンは、

あの日の記憶を

パッと思い出しました。

 

エルナが恥ずかしそうに

自分の誕生日を教えてくれた日。

フェリアへ向かう船上。

彼らは船室のベッドの上で

一つになっていました。

誕生日。

その言葉が引き起こした記憶は

すぐに巨大な波となって、

ビョルンを飲み込みました。

 

欲しい誕生日プレゼントが一つある。

しばらく躊躇っていたエルナが

慎重にプレゼントをねだりました。

 

フェリアの首都にある

大聖堂のドームに一緒に上りたい。

 

あの女らしい呆れたお願いでした。

 

赤くなった妻の顔を見つめていた

ビョルンは、快く頷きながら

「よし、そうしよう」と

返事をして笑いました。

 

覚えていることさえ

知らなかった、あの日の記憶が

現在のことのように

生々しく蘇って来ました。

 

そういえば昨日も、

普段らしくない姿を

見せていたようでした。

考えがそこまで及ぶと

状況が明らかになりました。

 

バルコニーに並んだ

雪だるまたちを見つめていた

ビョルンは

「大聖堂」と低く呟きました。

 

ビョルンは、

まずそこから捜索しろと

衝動的に命令すると、

急いで妻の寝室を離れました。

大聖堂のドームは、

とっくに閉まっているという事実は

気にしませんでした。

そこのようだ。 いや、

そこでなければなりませんでした。

 

雪が降る真冬の夜に、

開館時間が終わって

ドアが閉まった大聖堂のてっぺんに

エルナが一人で残っているというのは

話になりませんでしたが、

それでもビョルンは

それを望みました。

今は、そこが唯一の希望だから。

そこでなければ、一体どこで

彼女を探せばいいのか分からない。

これ以上に悪い事態を考えたくない。

だから、むしろ

こんなとんでもないことをするほど

愚かな女であることを願いました。

 

「フェリア、この変態な奴ら」

螺旋階段を駆け上がっていた

ビョルンは、足を止めて

罵声を交えた嘲笑を漏らしました。

一体なぜ、聖堂にこんなものを作って

こんな大騒ぎを引き起こすのか。

もちろん、すべての国の聖堂が

似たような形をしていましたが

むせ返るような臭いのする

狭くて急な階段を上らせる

聖堂はフェリアのものでした。

 

あの変態どもたちを罵るのが

最も妥当でした。


フェリアの畜生。 くそったれの階段。

頂上が近づくにつれ、ビョルンは、

ますます呆れ返りました。

エルナがここまで上って来たなんて

信じられませんでした。

あの女は、今日もきっと、

レースの塊のようなドレスを

着ていたはずなのに。

あの小さい体で、そんな格好で

こんな階段を上るなんて、

それこそ狂気の沙汰でした。

 

しかし、

ビョルンは止まりませんでした。

彼女はエルナだから。

彼の妻は、突拍子もないけれど

真面目で、か弱く見えるけれど、

かなり粘り強い根性を持っていました。

このような狂ったことを

いくらでもできる

強敵という意味でした。

 

頂上が近づくにつれ、

階段はますます狭くなり、

急になり始めました。

しかし、ビョルンは

躊躇なく進んで行きました。

 

やがてドームへと通じる扉の前に

たどり着いた時は

息が荒くなっていました。

 

ゆっくりと呼吸を整えたビョルンは

コートのポケットに入れておいた鍵を

落ち着いて取り出しました。

錠前と鉄の鎖が

ガチャガチャと音を立て、

古い扉が開く音が続きました。

 

ビョルンは大股で、

扉の敷居を越えました。

真っ白な雪に覆われた

ドームの上の世界は、

すべての音が消えたように静かでした。

雪の上に舞い落ちる雪片の音が

聞こえて来そうでした。

 

その冷たくて暖かい風景の中、

ビョルンは、ゆっくりと

足を踏み入れました。

キュッキュッという足音が

静かに降る雪片の間に

染み込みました。

 

青いマントで身を包んだ女を

発見したのは、

ガーゴイルの石像の裏側にある

ベンチが見える場所に

差し掛かった瞬間でした。

 

足を止めたビョルンは

目を細めて彼女を見ました。

ベンチの端に座った女は、

体を丸めたまま震えていました。

マントの下に流れ落ちた髪と、

か細い体が目につきました。

 

エルナ。

ビョルンの口から、

他の誰でもない、その女の名前が、

穏やかなため息のように漏れました。

 

ほっとすると同時に呆れました。

申し訳ないと思ったけれど

腹が立ちました。

ここにいてくれて

有難かったけれど、

ここにいることが嫌でした。

 

矛盾する感情が入り乱れ、まるで、

騒々しく降りしきる雪のように

揺れ動いているうちに、

エルナが顔を上げました。

力なく瞬きしていたエルナは

「ビョルン?」と小さく囁きました。

彼は頷いて一歩近づきました。

 

本当にあなたなのかと、

ぼんやりと周囲を見渡していた

エルナは再びビョルンを見ました。

空っぽだった瞳に、

少しずつ生気が漂い始めました。

「なぜ、あなたが」と尋ねる

エルナの涙で潤んだ瞳は

疑問と恨みで満ちていました。

ビョルンは、

手すりの下に広がる白い都市の上に

しばらく目を向けました。

そしてゆっくりと閉じた目を

開けながら、

最後の一歩を踏み出しました。

 

こんばんは。20歳のエルナ。

 

濃い灰色の目が

エルナを捕えました。

 

まるで理解できない厄介な女。

しかし、きれいで気の毒な女。

そのため、どうしたらいいか

わからなくなる、自分の妻エルナ。

 

「お誕生日、おめでとう」

低い声で伝えた、その言葉が

静かに、冷たく、優しく、

雪のように振りました。

来ないで!

刃を立てて叫ぶエルナの声が

雪に覆われたドームの静寂を

揺るがしました。

 

ビョルンが立ち止まっている間に

エルナは、

急いでベンチから降りました。

よろめきながら

後ずさりする小さな足跡が、

かなり厚く積もった白い雪の上に

刻まれました。

 

この男は本当に悪い。

今、何を聞いたのかに気づくと、

脆い殻が割れるようにパキッと

エルナの心が砕けました。

どうしてそんなことが言えるのか。

これではダメなのに。

一体彼にとって自分は何なのか。

どれだけ、

取るに足らなくて滑稽な存在なのか。

 

エルナは、

どうして思い出したのかと

尋ねました。

いっそのこと、永遠に

忘れてしまえば良かったのにと

思いました。

 

そして、エルナは、

どうして来たのかと尋ねました。

二度と探さないで欲しいと

思いました。

 

エルナは、

今さら、ここまで、一体どうしてと

尋ねました。

 

砕けた心の隙間から

熱い感情が沸き起こりました。

恨んで憎んで、あらゆる努力をして

自分を悪く見せようとしても、

すでにその感情の名前を

知っているという事実が、

エルナをさらに苦しめました。

 

私はこの男を愛している。

目の前にいるビョルンが

幻影ではないことに気づいた瞬間、

エルナは、それに気づきました。

 

あなたはそうでないことを

よく知っているけれど、

それでも自分はこんなにも

あなたを愛している。

 

当然、憎むべき今も、相変わらず

彼は救世主のようで、

邪悪な龍を退治して魔女の呪いを解き

寒くて途方に暮れた瞬間に

必ず現れてくれる童話の中の王子様。

彼のキス一つで、

すべての悲しみと苦痛が

きれいに姿を消し、

長く幸せに暮らせるようになる

眩しいほど美しい自分の救い主。

 

そうではないことを知っているのに

心は止まりませんでした。

それで苦しいのに、

それでも止めたくない自分が

エルナは嫌でした。

 

この男は本当に悪いし、

自分はあまりにも馬鹿みたいでした。

エルナは、

「行って。顔も見たくない!」と

言いました。

 

激しい恨みの言葉とともに、

騒々しい泣き声が沸き起こりました。

涙を拭くハンカチさえ

残っていないという事実が、

エルナをさらに悲しませました。

その瞬間、

ビョルンがやって来ました。


エルナは、

頬に触れた大きな手の感触で

彼の存在に気づきました。

いつもは少し冷たい体温が、

この上なく温かく感じられました。

 

背を向けようとすると、

ビョルンは力を込めて

エルナの顔をつかみ、

もう片方の手に持ったハンカチで

ゆっくり涙を拭い始めました。

 

その手の中に閉じ込められたまま

長い間、エルナは大声で泣きました。

そんな自分の姿が、

どれほど滑稽でみっともないかを

知っているのに、

なかなか涙が止まりませんでした。

 

辛うじて、涙を飲み込んだエルナは

ひょっとして、

来てくれるかと思って待っていたと

諦めたように本音を打ち明けました。

 

なぜこの寒くて寂しい所を

離れられなかったのか。

一体何が自分の足を引っ張ったのか。

その未練の実体を、今では

受け入れることができました。

 

エルナは、

少しでも自分のことを特別だと

思ってくれないかと頼むと、

目をギュッと閉じて開けることで

溜まっていた涙を払い退けました。

そして、

愛でなくてもいいので、

ほんの少しだけ・・・と言うと、

空中をさまよっていた

エルナの視線が

ビョルンに向かいました。

 

ほんの少しだけ心が欲しい。

最後のプライドまで全て捨てても

どうしても、その言葉だけは

口にできませんでした。

 

ビョルンは、

冷たく凍りついたエルナの頬を

包み込みながら、

ブルブル震える唇を見下ろしました。

 

その落ち着いた目つきに込められた

感情が何なのか分からず

途方に暮れた瞬間、

鐘が鳴り始めました。


エルナは反射的に振り向いて

鐘楼を見て、それから再び

ビョルンに視線を移しました。

一緒にここに上れば

愛が叶うという薄情な迷信が

浮び上がりました。

鐘の音を聞きながらキスを交わしていた

数多くの恋人たちの姿も一緒でした。

 

エルナはすすり泣きながら

キスしてくれないかと囁きました。

このような姿で、いきなり

このようなお願いをする自分が

どのように見えるかは、

しばらく、忘れることにしました。

 

エルナをじっと見つめていたビョルンが

虚しい笑みを浮かべたのは、

二度目に鐘が鳴り始めた時でした。

 

ビョルンは眉を顰めて、

顔も見たくないのではないかと

尋ねました。

しかし頬を撫でる手は優しかったので

その事実が、次の言葉を口にする

勇気を与えました。

 

エルナは、

そうだけれど、

キスは目を閉じてするものだからと

答えました。

鐘の音が止むのではないかと

不安になったエルナの

切羽詰まった言い訳でした。

 

この男が憎い。

でも、この男が欲しい。

ふと気づいた、その矛盾した感情が

心を惨めにした瞬間に、

ビョルンが近づいて来て、

柔らかい息遣いが

感じられたかと思ったら

唇が重なりました。

エルナは喜んで目を閉じました。

 

祝福のような鐘の音の中で

始まった口づけは、

静かに降り積もる大粒の雪が、

その余韻を消す瞬間まで続きました。

温かい息を吹き込むように。

静かに、優しく。

永遠の幸せを約束する

童話の中のキスのように。

 

底なしに惨めなのに

ワクワクしました。

勘違いだと分かっているけれど

喜んで信じたいと思いました。

こういうのが愛なら、

愛はこの男のように悪いものでした。

それが悲しかったけれど

嬉しさを感じました。

ドームの階段を下りるのに、

少なくとも

上った時の倍の時間がかかりました。

1人なら、いくらでも急ぐことが

できたはずでしたが、

エルナと一緒なので、

なかなかスピードが出ませんでした。

 

ビョルンは灯りを持って

先頭に立ちましたが、

数段ごとに一度ずつ、習慣的に

後ろを振り返りました。

フワフワのドレスの裾を

引っ張りながら、エルナは

屈することなく彼の後を追いました。

階段の終わりが近づいた頃、

その毅然とした顔に

動揺の色が浮かび上がりました。

 

突然立ち止まったエルナは

焦った目で出口を見ました。

そこに視線を向けたビョルンの口元に

プッと笑いが浮かびました。

 

閉ざされたドアの向こうから、

彼らを待っている人々の気配が

聞こえて来ました。

こんなことをしておきながら

改めて人目を気にするなんて。

危機を逃れると、改めて

たおやかな淑女の体面を

気にするようになったようでした。

 

青ざめて震えるエルナは、

細かく震える手で

乱れた服装を整えました。

その努力は立派でしたが、

大して、効き目はなさそうでした。

 

静かなため息をつきながら

灯りを置いたビョルンは、

脱いだ自分のコートで

エルナをしっかり包み込みました。

そして、さっと、黙って

妻を抱き上げました。

そして、

もがいているエルナを見下ろした

ビョルンは、

見たくないなら目を閉じてと

命令しました。

そういうのが上手ではないかと

付け加えた冗談には、

明らかに笑いが含まれていました。

 

ビョルンは、

抵抗するのを止めたエルナを

抱き抱えたまま、

残り少ない階段を降りました。

出口のドアが開くと、

エルナは隠れるように

彼の胸に顔を埋めました。

 

本当にそこにいたのかと、

驚いてざわめく人々の間を、

ビョルンは大股で颯爽と歩きました。

誰も、あえてこの騒動について

言及することさえできないような

尋常な態度でした。

 

ビョルンは、

大聖堂の前で待機していた馬車に乗ると

すぐに出発命令を出しました。

白い夜の中を走った馬車は、

たちまちレチェンの使節団が

泊まっている宮殿に到着しました。

そして、馬車のドアが再び開くまで、

ビョルンは

胸に抱いた妻を放しませんでした。

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ベッドの上で聞き流していた

エルナのお願い。

ビョルンがこれを思い出したのは、

奇跡に近いと思います。

そして、エルナの行き場所が

そこしか思い当たらないことで、

ビョルンは、エルナのことを

あまりにも知らなさすぎることに

後悔したのではないかと思います。

 

ヒラヒラフワフワ、

レースがたっぷり使われているので

おそらく重いであろうドレスを着た

小さなエルナが、

ビョルンでさえ上るのが大変な

階段を上ったことで、

エルナがどれだけ、

ビョルンと一緒にドームの上ることを

楽しみにしていたかも、

分かったのではないかと思います。

 

そして、皆に合わせる顔がないと

思っているエルナの気持ちも

ビョルンは、

きちんと理解してくれました。

 

遅々とした歩みではありますが

他の人の感情に無関心だった

ビョルンが、エルナの気持ちを

思いやれるようになったのは、

すごい進歩だと思いました。

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