自分時間を楽しく過ごす 再婚承認を要求しますの先読みネタバレ付き

子供の頃からマンガが大好き。マンガを読むことで自分時間を楽しく過ごしています。再婚承認を要求します、ハーレムの男たちを初めとして、マンガのネタバレを書いています。

泣いてみろ、乞うてもいい 72話 ネタバレ 先読み 原作 あらすじ 期限付きだから耐えられる

 

72話 思わずマティアスが、車の窓の外に目を向けると・・・

 

普段より気を遣って着飾った姿で

レイラが同年代の女性たちと一緒に

繁華街を歩いていました。

その中には、

マティアスも見たことがある、

あのグレバーとかいう

レイラと一緒にアルビスに遠足に来た

教師もいました。

 

マティアスは眉を顰めて

通りを歩くレイラを見ました。

目に見えて、やせ細っていましたが

表情はかなり明るく穏やかで、

ニコニコよく笑い、

よく、しゃべったりもしていました。

最近、彼に見せる姿とは全く違って、

まるで全く違う女性を

見ているような気さえしました。

 

マティアスを乗せた車は、

すぐに通りを過ぎました。

しかし、レイラが視界から消えた後も

マティアスは、しばらく

車の窓を見つめ続けました。

 

死にそうな姿で

フラフラしていないだけ、

幸いと言うべきだろうか。

安心した分、

妙に不快でもありました。

 

ここ数週間、

マティアスが見たレイラは

一様に無気力でした。

退屈な業務をする人のような

無味乾燥な顔で離れを訪ねて来ては

自分の手で服を脱いで、

じっとベッドの端に座りました。

まるで、人擦れした女のように

振る舞いながらも、

マティアスが近づくと、

恐怖と焦りの顔色を隠すことが

できませんでした。

マティアスは、

その馬鹿げた愛人の意志を

喜んで尊重しました。

 

花台を受け取った女性のように

接して欲しいなら、

そうしてやれば良いこと。

自ら進んで行ったことなのだから

いくらでも。

 

しかし、

度々レイラをぞんざいに扱って

侮辱すればするほど、

むしろ、マティアスは

ぞんざいに踏みにじられているのは

自分自身であるかのような気分を

味わいました。

すべての考えと

感情のスイッチを切った人形のように

振る舞っていた女の顔が

苦痛と羞恥心で歪むと安心しました。

少なくとも彼を、

見えない幽霊のように

扱っていない証拠だから。

それでさらに執拗に苦しめて

泣かせると、虚脱感と満足感が

同時に押し寄せて来ました。

 

しかし、その瞬間も

それほど長くは続きませんでした。

乱れて喘いで泣いていたレイラが

ぐったりして静かになると、

残るのは、すでに手に入れた女を

どうすることもできずに

途方に暮れる彼自身だけでした。

 

なぜ君は、あえて私を。

怒りが頭のてっぺんまで込み上げると

ラッツでバラが満開だった

あの春の夜のことを思い出しました。

 

母親を通して、

レイラ・ルウェルリンが

カイル・エトマンと

結婚することになったという

知らせを聞き、生まれて初めて

人の命を奪いたくなったけれど

もしかして、そうしたかったのは

医師の息子ではなく

この女ではなかったかと、

マティアスは、自分に背を向け、

体を丸めて横になっているレイラを

見つめる瞬間ごとに

考えたりもしました。

 

もちろん、

それでも再び呼び寄せるほど、

レイラが与える楽しみが大きいという

事実は否定できませんでした。

生意気な態度で挑発しても、

ただの木の切れ端のように固まって

ブルブル震えている女でしたが、

レイラは間違いなく彼を狂わせました。

この種の欲望を、

人生の優先順位に置いたことも、

それに振り回されたこともない

マティアスにとって

当惑することでしたが、

確かにそうでした。

 

マティアスを慎重に呼ぶ声の方へ

顔を向けると、

いつの間にか開かれた車のドアと

その向こうに立っている

随行人が見えました。

 

マティアスは息を整えて

車から降りました。

ロビーの外まで、会社の重役たちが

彼を迎えに出ていました。

 

笑うレイラが、その道を

通るはずがないということを

すでに知りながらも、

ふとマティアスは建物に入る前に

日差しに満ちた街を見下ろしました。

 

短く自嘲して

未練を断ち切ったマティアスは、

いつもの落ち着いた笑みを

浮かべた顔で、

再び一歩を踏み出しました。

ビル・レマーは、

とても大きなカバンを持ち、

戦場に向かう軍人のように

悲壮な足取りで出発しました。

 

レイラは、

プラタナスの通りの終わりまで

彼を見送りました。

ビルだけでなく庭園の作業員たちも

一緒に旅立ったので

静かな道が騒々しくなりました。

 

爆発で壊れた温室のガラスの壁は

もう復旧したけれど、

それまでの間に、真冬の寒さのせいで

大部分の植物が枯れてしまいました。

あまりにも貴重な品種の草花と木が多く

それらを再び手に入れることは

それほど容易ではありませんでした。

しかし、ビル・レマーには

その仕事をやり遂げなければならない

義務がありました。

 

レイラは、昼夜を問わず

仕事をする彼のことが心配でしたが

むしろビルは、そうすることで

贖罪できるので、

気持ちが楽だと言いました。

その言葉が偽りではないということは

彼の表情だけ見ても分かりました。

 

通りの角を曲がろうとしたビルは、

突然振り返ると、

寒いから中へ入れと叫びました。

レイラは頷きながらも、

なかなか足を止められませんでした。

 

帝国の有名な園芸家や植物園、

貴族の家の温室を訪れて、

必要な品種を

手に入れなければならないので、

少なくとも、

数週間はかかるとのことでした。

その長い時間、アルビス

一人で過ごすことを考えると、

レイラは目の前が

真っ暗になりました。

むしろビルおじさんと一緒に

行きたかったけれど、

その言葉が、どれほど変で

怪しく聞こえるかが分かっていたので

どうしても口に出すことが

できませんでした。

 

騒がしかった別れもすぐに終わり

男たちの群れが立ち去った道に

レイラは、ぽつんと残されました。

ぼんやりと空っぽの道だけを

眺めていたレイラは、

道の向こうから聞こえ始めた

自動車の音に我に返りました。

 

公爵に会いたくないので

慌てて向きを変えて小走りしましたが

自動車の速度に

勝てるはずがありませんでした。

 

しばらくして、黒い車が

道端に立つレイラの横を

通り過ぎました。

レイラは両手を合わせて

頭をしっかり下げたまま、

車がアルビスの中に消えていくまで

待ちました。

 

不安になり、

胸がドキドキしましたが、

どうせ大したことはない。

ビルおじさんの不在は、

公爵とは何の関係もないと

切羽詰った気持ちで

繰り返し唱えました。

 

車が見えなくなったので、

レイラは急いで小屋に戻りました。

家の中を掃除して

アイロンがけを終えると、

心が一層落ち着きました。

最近は、このような些細な日常が

最大の慰めでした。

何気なく人生が続いているという

気がすると、あの男の一人ぐらい、

何でもないように思えたからでした。

 

アルビスを訪れたクロディーヌと

一緒にいるマティアスを見た日、

レイラは、

おそらく結婚前には

自分を捨てるだろうと思いました。

並んで立っている彼らは、

まるでお互いのために

存在しているかのように

とてもお似合いでした。

公爵がクロディーヌを

どれほど大切にして気遣っているのか、

レイラは、遠くからでも

はっきりと感じることができました。

 

その日、レイラは、

二人の目につかないように

遠回りして小屋に戻りました。

かなり寒かったせいか、長い間、

両頬が赤くなっていました。

 

レイラが、ちょうど机の前に

座ろうとした時、

公爵の手紙を運んで来たフィービーが

窓際に座りました。

いつもよりずっと早い時間なのに、

その男は躊躇わずに要求しました。

 

その手紙を細かくちぎって

暖炉の火の中に投げ入れたレイラは

急いで家畜の餌を準備し、

戸締まりをしました。

さほど急ぐでもなく躊躇うでもなく

離れに向かう間は、習慣のように

公爵の手から逃れた後の人生を

考えました。

 

ビルおじさんと一緒に

遠い都市へ行く。

ロビタと国境を接する南のどこかでも

悪くない。

いつか、熱帯の島と

氷の国に住む鳥たちを探しに

ビルおじさんと一緒に旅に出て、

いつか、

小さな花壇を手入れできる家を

ビルおじさんと一緒に作り上げ・・

 

止まってしまった思考の糸を

つなげようと努力している間に、

レイラは、

離れが見える道に入りました。

 

レイラは、

どうせ期限付きなら

苦痛も大したことではない。

我慢するのは、幼い頃から

数えきれないほど繰り返し

経験している。

レイラは決意を固めながら

大股で歩きました。

まだ日が暮れていないという点を除けば

離れの寝室の風景は

いつもと変わりがありませんでした。

大きなベッド。暖炉から漏れる明かり。

光沢のある家具と控えめな装飾。

そして何も着ていない女。

 

今やこの部屋の一部のように感じられる

小さな体をチラッと見ると、

マティアスは、すぐに

膝の上に置かれた書類の山の上に

視線を下ろしました。

 

ヘルハルト家の事業規模は、

家門の塀の中に治まりきらないほど

大きくなっていました。

家門の主人が、

このすべてを管轄するのは不可能だと

予感した祖父と父は、

会社の体制を整えることに心血を注ぎ

その仕組みは今や安定していました。

したがって、

マティアスに与えられた役割は

それを総括して決定することでした。

少年だった時代から

すでに熟練していた仕事でしたが

今や世の中は急変し、

情勢が混乱している時代でした。

 

マティアスは、

海外領土の鉱山採掘権と

油田に関する報告書を

じっくりと検討していました。

時々視線を上げて、ベッドと、

その端に座った女の裸身を見て

また何気なく

自分の仕事に集中することを

繰り返しました。 

 

外が暗くなると、レイラは、

自分のつま先だけを見つめていた目を

そっと上げました。

普段なら、つかつか近づいて来て

自分の欲望を満たすはずの公爵は、

今日はなぜかレイラを

透明人間のように扱いました。

 

乾いた唾を飲み込んだレイラは

鳥肌が立った胸を腕で隠しました。

横目でちらっと彼女を見た公爵は、

依然として、

暖炉の横の椅子に座って

書類だけを読み進めていました。

寝室に付いて来て、

服を脱ぐレイラを見守っただけで、

かなりの時間が経っても、

彼は自分の仕事だけに没頭しました。

 

何かをメモした公爵が

分厚い書類を下ろした瞬間、

二人の目が合いました。

レイラは肩を小さく丸めて、

急いで頭を下げました。

一歩遅れて心変わりしたのか、

公爵が立ち上がると、滑稽にも、

少し安堵感さえ覚えました。

早くその苦痛を経験してこそ、

彼から

離れることができるからでした。

しかし、マティアスは、レイラではなく

寝室のドアの外に向かいました。

当惑したレイラは眉を顰めて

公爵が消えていった方向を見ました。

半開きのドアの向こうから、

業務と関連した話を、

電話で誰かと話している低い声が

聞こえて来ました。 

公爵は、

丁寧だけれど断固とした口調で

いくつかの指示を伝えた後、

すぐに寝室に戻りました。

 

顔を背けなければならないという

考えを、しばらく忘れたため、

再び目が合いましたが、彼は

これといった反応を見せず、

展示された芸術品を鑑賞するように

控え目な楽しさが込もった目で

レイラを見下ろした後、

何気なく椅子に戻りました。

 

脚をオットマンに乗せて

ゆったりとした姿勢で座った公爵は

別の書類の一つを手に取りました。

紙をめくる音の間から、

ワルツのメロディーが

微かに聞こえて来ました。

それが応接室にある蓄音機から

聞こえてくる音だということに

気づいたレイラの瞳が揺れました。

 

一体、これはどういうことなのか。

ひどく眉を顰めたレイラは、

サイドテーブルの上に外しておいた

眼鏡を探してかけました。

片手に握ったペンを回しながら

書類を読んでいた公爵の視線が、

レイラに向けられました。

 

眼鏡をかけても、

レイラは相変わらず彼の顔から

表情を

読み取ることができませんでした。

ただ、今この現実だけが

鮮明になると、突然、

自分の姿が耐えられないほど

恥ずかしくなりました。

書類を膝の上に置いたマティアスは

レイラを見守りました。

頬を赤くして

慌てているのかと思ったら、

レイラは、急いで下着を探して

身に着けました。

そして、彼をチラチラ見ながら、

自ら脱いだ服を着ていくにつれ

レイラの頬は赤くなって行きました。

服を着ていなかった時は、

超然としていたのに、

服を全て着ようとすると、

途方に暮れる姿は一体何なのか。

 

マティアスが、

ワルツのリズムに乗って

指先で書類を叩いている間に

全身真っ赤になったレイラが

ベッドから立ち上がりました。

 

口を開こうとして頭を下げ、

再び口を開こうとして、

そっと目を逸らしたレイラは、

しばらくして、

まっすぐな視線で彼を見ました。

マティアスは、

ペンを回していた手を止めたまま

淡々と、その視線に向き合いました。


レイラは震えていましたが、

かなり澄んだ声で

今一体何をしているのかと

はっきり尋ねました。

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マティアスは、

レイラを呼び出しておきながら

彼女を放っておいて、

仕事をしているのは、

いつもと違う行動をすることで

レイラの関心を

引きつけたいからでしょうか。

人形のような女性を相手にするのは

虚しいので、レイラを泣かせるけれど

彼女が泣きやんだ後は再び虚しくなる。

そんな気持ちを払拭するための

作戦だったら、

少しは成功したのではないかと

思います。

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