自分時間を楽しく過ごす 再婚承認を要求しますの先読みネタバレ付き

子供の頃からマンガが大好き。マンガを読むことで自分時間を楽しく過ごしています。再婚承認を要求します、ハーレムの男たちを初めとして、マンガのネタバレを書いています。

泣いてみろ、乞うてもいい 74話 ネタバレ 先読み 原作 あらすじ 不吉な予感

 

74話 レイラは羞恥心のせいで、深く心が痛みました。

 

応接室のソファーから始まった情事が

ベッドの上で終わった時、

レイラは息を切らす以外に

何もできないほど、

へとへとになっていたため、

公爵が自分に何をしようとしているのか

気づきませんでした。

 

手首が縛られたことに気づいた

レイラの目が

ぼんやりと大きくなりました。

悲鳴を上げる気力も

残っていなかったため、

レイラにできることは、

ただ公爵を睨むことだけでした。

 

そんなレイラに向かって

だるそうな笑みを浮かべた公爵は、

手首を縛ったネクタイの反対側の端を

ベッドの片方の柱に縛り付けました。

 

レイラはどもりながら、

今すぐ解いてと訴え、

もがき始めると、

マティアスは、

そっと彼女の頭を撫でました。

そして、

レイラが楽に横になれるように

柱に縛り付けているネクタイを

もう少し下に下ろすと、彼女に

動かないように。

動くと結び目が締まると忠告しました。

 

マティアスは、

床に散らばっている枕の一つを拾い上げ

それをレイラの頭の下に置きました。

布団も掛けてやりましたが

レイラがもがいていたせいで、

再びベッドの下に落ちてしまいました。

 

マティアスは、一瞬眉を顰めましたが

すぐに笑みを取り戻しました。

もう一度、掛けてみても

同じことが起きるはず。

暖炉の温もりがあるので、

しばらくは布団がなくても、

それほど大きな問題には

ならないだろうと思いました。

 

レイラの汗に濡れた頬と

首筋に張り付いた髪の毛を

撫でたマティアスは、

浴室に向かいました。

一番良いのは、

一緒に体を洗うことだけれど、

レイラが素直に

従うはずがありませんでした。

少なくとも彼が体を洗っている間、

レイラは逃げることはできないので

今のところ、これが最善でした。

 

ゆっくりとシャワーを浴びた

マティアスが、

温かいおしぼりを持って寝室に戻った時

レイラは、

ぐしゃぐしゃに乱れたシーツの上で

ぐったりしていました。

どれだけ暴れたのか、

彼が当ててやった枕も、

また床に放り出されていました。

 

マティアスは眉を顰めて

レイラの手首をきつく締めている

ネクタイを緩めました。

鮮やかに残った赤い痕を見ると、

長いため息が漏れました。

 

マティアスは、

動けば痛くなると言いました。

レイラは、

限りなく優しい手つきで

手首を揉むマティアスを見上げて

気が狂っていると力なく呟きました。

彼の手は恐ろしかったけれど、

今は指一本動かす力さえ

残っていませんでした。

 

レイラは、すでに自分のもののように

感じられない体を

公爵の手に任せたまま

目を閉じてしまいました。

彼女を仰向けに横たえたマティアスは

ベッドのそばに腰掛けると、

レイラの体のあちこちに残っている

白く乾いた跡を、

ゆっくりとおしぼりで拭きました。

 

頬と胸を過ぎたその手が下腹を通る頃

レイラはすすり泣くように

ため息をつき、

かろうじて瞼を上げました。

公爵の瞳は、

あまりにも落ち着き過ぎていて

無感情にさえ見えました。

ついさっきまで、

彼女の中にいた男だとは

信じられないほど、

冷ややかな顔でした。

体を拭く彼の手もそうで、

欲望の残滓のようなものが

少しも残っていない姿が、レイラを

さらに恥ずかしくさせました。


何一つ理解できない男でしたが、

レイラはこのような点が

一番途方に暮れました。

時々、レイラは、

この男は、頭の中に

スイッチのようなものを持っていて

それを上げ下げする度に

全く違う人になるのではないかと

考えたりもしました。

 

レイラはすぐに目を閉じました。

今は呼吸も落ち着いて、

おとなしく横になったレイラは、

まるで青白く美しい

大理石の彫刻のように見えました。

 

マティアスはガウンでレイラの体を覆い

そのまま抱き上げると、

彼女は驚いたように身をよじりましたが

それ以上の抵抗はしませんでした。

マティアスはレイラを胸に抱いたまま

夕方まで書類を検討していた

その場所に戻りました。

 

眠っているとばかり思っていたレイラが

「憎い」と呟きました。

マティアスは書類を脇に置いて

腕の中の女性を見ました。

血の気が引いたレイラの頬の上に

まだ乾ききっていない

彼の髪の毛から流れた水滴が

落ちて流れました。

 

頬に付いた水気を

拭いてくれる彼を見つめながら、

レイラは、

あなたのことが本当に憎いと

持っているすべての力を絞り出して

囁きました。

 

レイラは、今まで

誰も憎んだことがありませんでした。

自分を捨てた母親も、

自分をいじめて鞭打ちした親戚たちも

はたして自分は人間なのかという

侮蔑感を与えたエトマン夫人でさえ、

レイラは憎みませんでした。

憎くなかったからではなく、

ただ、その憎しみさえ

手に負えなかったからでした。

 

レイラは生きて行くために、

骨の髄まで、

ひたすら心を空にしました。

憎しみがこもって重くなった心では、

とうてい逞しく、この人生を

生きていく自信がなかったので

誰も憎まずに過ごして来ました。

 

しかし、この男,

マティアス・フォン・ヘルハルトだけは

憎くて、

その憎しみが岩のように重くなって、

足を踏み出すのが苦しくなったとしても

レイラは全力を尽くし、

喜んでこの男を憎みたいと思いました。

 

憎い、あなたが憎いと

何度も囁いていたレイラが、

結局、意識を失うと、

マティアスは、

穏やかな笑みを浮かべました。

 

しばらく、

レイラを見下ろしていた彼は、

再び手にした書類に目を移しました。

レイラは彼の膝の上で、

彼の腕に抱かれたまま、

彼の体温の中でぐっすり眠りました。

 

立派に生きたいなら、

捨てないでと祈るしかないと

心の中でレイラに告げると、

マティアスは、突然蘇った、

あの奇妙な不快感に、

虚ろなため息をつきました。

レイラを抱いた腕には、

無意識のうちに

力が込められていました。

 

マティアスは、この美しい愛人に

与えることができる無数のものを

持っていました。

良い家と快適な暮らし。

望むなら、あれほど切望した大学に

行かせることもできるだろうし、

一生、好きな鳥を研究しながら

暮らさせることもできました。

彼女が愛した医者の息子が

あげられなかったものまで、

いくらでも。

ところが、彼女は、

立派に暮らすために

自分の元を去るといいました。

 

マティアスは、

とんでもないことをよく喋っていた唇を

そっと撫でてみました。

その唇が吐いた生意気な言葉とは違って

温かくて柔らかでした。

 

弱々しく広がる満足感の中で、

マティアスは、

再び残りの仕事に没頭しました。

規則的な寝息は、

音楽のように聞きやすいものでした。

 

温かい体と体臭、

小さな寝返り一つまで、

胸に抱いたこの女性のすべてを

マティアスは良いと思いました。

 

もしかしたら、この欲望が

思ったより長く

続くかもしれないという

予感がしましたが、

それほど不快ではありませんでした。

 

最後の書類まで片付けた後、

顔を上げると、窓の外では

凍りついた川の上に

雪が舞っていました。

その風景を眺めていた

マティアスの脳裏に

初雪が降った日の記憶が蘇りました。

 

めちゃくちゃな芝居を見た

チャリティー公演の夜。

公園の街灯の下で、

レイラと向かい合って

立っていた時の目が。

 

雪・・・と

レイラは小さく感嘆しながら

顔を上げました。

毎年冬になれば見られるのに

何がそんなに嬉しいのか、

レイラは

嬉しそうに微笑んでいました。

瞬きする長い睫毛の上に

舞い降りた白い雪片まで、

マティアスは、現在のことのように

はっきりと覚えていました。

 

マティアスは歌うように

「レイラ」と呼びました。

マティアスの声は、

夜の雪のように静かでした。

しかし、レイラは

小さく寝返りを打つだけで、

目を開きませんでした。

そのために前が開いたガウンが

腰の下までずり落ちました。

 

雪を見れば、あのように

可愛く笑うはずなのに。

マティアスはレイラを揺さぶって

起こそうかと思いましたが

気が変わって、

レイラの頬をそっと包み込みました。

その体温に引き寄せられたのか、

レイラが眠りながら、

まるで甘えるように

顔をすり寄せて来ました。

微かな動きでしたが、マティアスは

はっきりと感じることができました。

 

マティアスは、

流れ落ちたガウンを

上げようとするのを止めました。

露わになった肩を

小さく震わせたかと思ったら、

レイラは身を縮めて

彼の胸に体を寄せました。

思わず息を殺した

マティアスの目の色が深まりました。

限りなく柔らかくて脆い、

まるであの雪片のような何かが

自分の胸の中でも

舞っているようでした。

 

欲望とは少し違う、

自分の懐に包まれたこの女性を

限りなく長く、深く眺めたいという

見知らぬ奇異な感情でした。

 

マティアスは、

ずり落ちたガウンを放置し

半分露わになった

小さな体を抱きしめました。

手のひらでゆっくりと

何も着ていない背中を撫でると、

レイラはその温もりにすがるように、

ますます彼の胸の奥深くに

入り込みました。

 

マティアスは、

しっかりとレイラを抱きしめたまま

椅子の奥深くに背中をもたせて

座りました。

雪が舞う風景を眺めていた目を

そっと閉じながら、マティアスは

レイラの目元にキスし、

「レイラ」と何度か

囁いてみました。

息がゆっくり温かくなりました。

夜明け前、首都発の夜行列車が

カルスバル中央駅に到着し、

急いで電車から降り始める人々の

騒乱が終わる頃に、

カイルは汽車から降りました。

帰ることを知らせていなかったので、

出迎えに来た人たちはいませんでした。

エトマン夫妻は、今頃息子が、

大陸南側の国に向かう汽車に

乗っていると

固く信じているはずでした。

ラッツ中央駅に入った瞬間まで、

カイルも、そうするつもりでした。

 

ありったけの勇気を絞り出して書いた

最後の手紙にも、

レイラは返事をくれませんでした。

だからもう、

未練を捨てなければならない時だと

カイルは思いました。

父親の勧めで、

見聞を広める旅に出るという

決心を固めたのもそのためでした。


しかし、突然目的地を変えた

その衝動をどう説明できるか、

カルスバルに向かって走る汽車の中で

ずっと悩みましたが、カイルは

ついに適当な答えを

見つけることができませんでした。

 

言わば、これは一種の予感でした。

どう考えても、このような断り方は

レイラらしくない。

自分が、長い時間知ってきた

レイラではない。

もしかしたらレイラに

何かあったのではないかという

不吉な予感。

 

もしかしたら病的な恋しさと未練が

作り出した錯覚かもしれませんでしたが

たとえそうだとしても、

カイルは自分の目で

レイラを見なければならないと、

ただ、それだけを願いました。

 

人けのなくなったプラットフォームを

カイルは大きなトランクを持ったまま、

歩き始めました。

夏に見せていたやつれた姿が消え、

今ではかなり成熟した目つきの青年に

成長していました。

 

駅舎を出ると、

白い雪が積もった広場が見え、

まだ止んでいない雪は、

カイルの頭と肩の上にも

舞い降りました。

 

「レイラ」と

ため息のように囁くと、

胸の奥がズキズキする痛みと

胸がはち切れそうなドキドキが

同時に訪れました。

カイルは、力を入れてトランクを握り

大股で広場を横切りました。

 

彼女を自分の世界のように愛する。

大切にする、傷つけない。

 

そのレイラへの告白は、

最も熱烈な彼の真心でした。

もしもレイラが一度だけでも

小さく頷いてくれたら、

カイルは最後の手紙に書いた、

約束を守ることができました。

 

君を迎えに行く。

俺たち二人が幸せになれる場所へ

一緒に出発しよう。

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会社組織にする程、

大きくなったヘルハルト公爵家

全ての事業のトップを

ティーンエイジャーの子供が

務めるためには、

もちろん、周囲の助けが

必要だったでしょうけれど

偉大な祖父と父親の血を受け継いだ

当主というカリスマ性と絶対性と

子どもでありながらも、

彼には逆らえないという威厳や貫禄や

品位や傲慢さを身に着ける必要が

あったのだと思います。

そのような環境で大人になり、

マティアスがどんな態度を取ろうと

逆らう人がおらず、

彼から離れようとする人もいなかった中

マティアスと離れることで

立派に暮らせると言う反抗的なレイラを

どう扱ったらよいのか、マティアスは

途方に暮れているのではないかと

思いました。

マティアスに必要なのは、

彼女を自分の世界のように愛する。

大切にする、傷つけないという

カイルの告白。

けれども、今のマティアスは

恐怖でレイラを縛り付けているので

それが解消されない限り、

マティアスの望むレイラの笑顔は

見られないと思いました。

それでも、彼女を愛しいと思う感情が

認められるようになってきたのは

良かったと思います。

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