自分時間を楽しく過ごす 再婚承認を要求しますの先読みネタバレ付き

子供の頃からマンガが大好き。マンガを読むことで自分時間を楽しく過ごしています。再婚承認を要求します、ハーレムの男たちを初めとして、マンガのネタバレを書いています。

バスティアン 3話 ネタバレ ノベル あらすじ マンガ 2、3話 最大の利益を残す商売

3話 バスティアンは海辺の町アルデンに向かっています。

 

首都近郊の海辺の町アルデンは

皇室と貴族たちの夏の別荘が

密集している休養地でしたが、

最近になって、新興の資本家の邸宅が

一つ二つと建てられ、旧時代の秩序を

侵食しつつありました。

彼らが、

資本に便乗できずに没落した貴族たちの

領地を買い込んだからでした。

クラウヴィッツ家もその一つでした。

西の空がバラ色に染まり始める頃、

燕尾服姿のバスティアンが運転する

屋根のないクリーム色の車は

クラウヴィッツ家の私有地に

入りました。

 

アルデンの宝石と呼ばれる絶景のある

北部の土地は、

数百年の歴史と伝統を誇る名門貴族の

所有でしたが、その最後は

惨め極まりありませんでした。

彼らが、これ以上、

手に負えなくなった領地を

買い入れたのは、バスティアンの父親で

ベルクの鉄道王と呼ばれる

ジェフ・クラウヴィッツでした。

 

バスティアンは、

もうすぐ顔を合わせることになる

その顔を、静かに思い返しました。

勲章授与式で会ったのが

最後だったので、

二ヵ月ぶりの再会でした。

 

車が邸宅の入り口に止まると、

先に到着して、馬車から降りた

叔母のマリア・クロスが

「何てこと、バスティアン!」と

悲鳴を上げました。 

そして、マリアは、

まさかその鉄の塊を、ここまで

自分で運転して来たのかと尋ねました。

 

バスティアンは、

ご覧の通りだと答えると、

ニッコリ笑って車から降りました。

目配せをすると、

待機中だった侍従が近づいて来て

運転を交代しました。

 

軽く挨拶したバスティアンは、

驚愕している叔母をエスコートして

階段を上りました。

邸宅のロビーの大理石のホールに入ると

通路の両側に並んでいた使用人たちが

一斉に頭を下げました。

バスティアンは、

今回も軽い黙礼と笑みで、

適正ラインの礼儀を尽くしました。

 

使用人たちが遠ざかると、叔母は、

なぜ、あえて、

父親が嫌がるような行動をするのか

分からないと、

しばらく中断していた小言を

続けました。

バスティアンは、

まだ分からない。

運転手を雇う余裕のない息子を

可哀想に思ってくれるかもしれないと

返事をしました。

 

踊り場の窓から差し込んだ

夕暮れの光が、

とぼけて笑うバスティアンを

照らしました。

マリアは驚いた目で甥っ子を見ました。

ポマードで端正に梳いた髪と

純白のボータイが、

クラウヴィッツ特有の冷ややかな印象を

さらに際立たせました。

 

母親から受け継いだ

プラチナブロンドの髪一つを除けば

顔立ちはもちろん、

人一倍高い身長と骨格。

それに全体的な雰囲気まで、

すべてが父親にそっくりでした。

あまりにも父親に似ていて、

その父親から排斥される息子だなんて

滑稽なことでした。

 

あなたの財産に、あなたよりもっと

関心が高い人がいるなら、

それはまさに

ジェフ・クラウヴィッツだろうと、

マリアは辛辣な冗談で

バスティアンの意中を探りました。

 

彼は、母方のイリス家から

相当な財産を相続したという噂が

広まっていましたが、バスティアンは、

なかなかその手札を見せませんでした。

同じ船に乗った人たちに対しても

そうでした。

 

彼女をじっと見ていたバスティアンは、

財産と呼べるほどの規模ではない。

何の変哲もない古い家一軒と

信託預金ぐらいだと答えると、

謙遜の笑みを浮かべました。

もし、イリス家のことを

まともに知らなかったら、

うっかり騙されたかもしれないほど

もっともらしい演技でした。

 

いたずらに手札を見せたくないのなら

意思を尊重するけれど、その代わりに

しっかり握っているように。

母方の祖父が、

主導権を渡していった理由が何かは

誰よりも、

よく知っているだろうからと

マリアは声を低くして囁きました。

今回もバスティアンは、

全くその真意が分からない表情を

見せるだけでした。

 

マリアは、

望んだ結果を得られないと結論を下すと

今日のパーティーで、

フランツの婚約発表があるらしいと

うまく話題を変えました。

すでに知っていたかのように、

バスティアンは、

これといった動揺を見せませんでした。

 

マリアは、

相手がクライン伯爵の娘だということも

知っているかと尋ねました。

バスティアンは

「はい」と答えました。

マリアは、

それならば、あなたの父親が

喜んでいることも

よく分かっているだろうと言うと

不満そうな目で、階段の残りが

数段しかないのを見ました。

 

ジェフ・クラウヴィッツ

次男フランツを

相続者に内定したということは、

この邸宅の犬たちも知っている

公然の事実でした。

身分を上げることに

血眼になっている彼が

貴族の母親を持つ息子を偏愛したのは

当然のことでした。

その貴重な息子が高位貴族の娘と

婚約することになったので、

ジェフの幸せは、

最高潮に達しているはずでした。

 

マリアは、

バスティアンも早く、

彼の翼になってくれる花嫁候補と

結婚するように。

彼に身を捧げる用意ができている

お嬢さんの中から一人を選ぶだけの

簡単なことだと助言しました。

バスティアンは、

心に留めておくと返事をしました。

 

マリアは、

かなり信頼できる答えだと皮肉を言うと

穏やかなため息をつきました。

そして、

甥の腕を握った手に力を加えると、

マリアは、

あらかじめ言っておくけれど、

イザベル皇女には、

絶対に目もくれない方がいい。

あなたを地獄に落とす相手だからと

真剣に助言しました。

バスティアンは

つまらない冗談でも聞いたように

空笑いしました。

 

そう簡単に考えることではない。

あなたは皇女に何の感情もないとしても

皇帝の考えは違うだろうと忠告すると

心配そうな顔で、

最後の階段を上りました。

 

皇帝と一緒に海軍士官学校を訪問した

ベルクの第一皇女が、

その年の優秀生徒に選ばれた

バスティアン・クラウヴィッツ

一目惚れしてしまったのは、

社交界全体が知っている事実でした。

 

一時の、

淡い恋で終わると思っていましたが

皇女は依然として

その時代の感情に酔って

もがいていました。

 

皇帝は、

分別のない愛に目がくらんで

身を滅ぼした妹を見ている。

娘がヘレネ皇女のような人生を

送ることになるかもしれないと

考えると、理性的な判断をするのは

難しいだろうと、マリアは言いました。

 

悲運の皇女、ヘレネ

そういえば、賭博場の乞食公爵も

自分がヘレネ皇女の夫だと

主張していたのを思い出しました。

 

ロビタ王太子との婚約を目前にして

密かに愛を育ててきた恋人と

夜逃げをしてしまった皇女の話は、

安っぽい小説と演劇の定番素材でした。

おかげで、彼のように

身分を詐称する詐欺師たちが

好んで使うようになった

名前でもありました。

 

ふと立ち止まったマリアは、

そっと

バスティアンの名前を呼びました。

彼は、その時になってようやく

自分が雑念に囚われていたという事実に

気づきました。

 

心配することはないと

確信に満ちた返事をする

バスティアンの顔は、

傲慢なほど余裕がありました。

 

この世界の結婚は、

最高の商売の機会でした。

二回の結婚を通じて、

それぞれ異なる利益を得た父親が

自ら証明して見せた

その骨身にしみる教訓を、彼は

一時も忘れたことがありませんでした。

 

どうせ自分を

売らなければならないなら、

バスティアンは、最大の利益を残す

商売をするつもりでした。

そのためなら、

いくらでも俗物的な計算をしながら

考え直すことができました。

世間知らずの皇女は、その帳簿から

すでに消されて久しくなっていました。

 

マリアは満足そうな顔で

再び歩き出しました。

長い廊下を通った後、

彼らは、すぐに

応接室の前に到着しました。

すでに到着している客の

大げさな笑い声が、

室内楽の旋律に乗って

伝わって来ました。

 

バスティアンは笑顔で

応接室の敷居を越えました。

今夜発表される婚約のニュースは、

父が愛してやまない

クラウヴィッツの品位のために。

どうしても、知らないふりをした方が

良さそうでした。

父親の寝室のドアを睨んでいたティラが

板であのドアを

塞いでしまったらどうかと

とんでもない提案をしました。

 

しばらく手を止めたオデットは

ゆっくり頭を上げて

妹を見つめました。

半分ほど完成したレースのベールは、

このみすぼらしい借家とは

似合わないほど精巧で

美しいものでした。

 

オデットは、

ドアを塞いだら、

その次はどうするのかと

尋ねました。

怒りを抑えられないティラは、

分かるわけがない。

自分は正直、父親が

あの部屋に閉じ込められて

どうなってしまったとしても

構わない。

いっそのこと

そうなってしまえばいい。

毎日、お酒を飲んでも

ギャンブルで借金をしても我慢した。

それは、もう慣れているから大丈夫。

でも、お姉様にそんなことをしたのは

絶対に許せないと叫ぶと、

彼女の目から涙が溢れ出ました。

 

静かにため息をついたオデットは

立ち上がって妹のそばに近づき

そっと肩を抱いて撫でると、

ティラは待っていたかのように

悲しそうに泣き出しました。

 

ティラにはそのことを

秘密にしておきたかったけれど、

結局、父親が

すべてを台無しにしてしまいました。

しばらくは

おとなしくしているかと思ったら、

父親は、また酔うほど酒を飲みました。

忍耐力がなくなったオデットが

父親を怒ると、彼はティラの前で、

あの悪夢のような夜の出来事を

暴露しました。

自責の念から始まった

苦しい言い訳と詭弁でした。

 

それでも、結局、

何事もなく帰って来たではないかと

恥知らずな言葉を

堂々と吐き出す父親に向き合った瞬間

オデットは、

最後の希望まで捨てました。

 

オデットが無事でいられたのは、

全面的に、

あの低俗な賭博場の勝者である男の

おかげでした。

あの将校は約束を守り、

オデットはベールを捲り上げて

顔を見せるほどの侮辱を最後に

その場から解放されました。

父親がしたことといえば、

ただ無責任な涙を流したのが

全てでした。

 

しばらくして泣き止んだティラは

このことを皇帝に

話してはいけないのかと尋ねると

濡れた顔を上げて

オデットを見ました。

そして、

父がまたそんなことをする前に

お姉さまを助けてくれと言おう。

それでもお姉さまは皇帝の姪だから

ひょっとしたら、その程度の頼みは

聞いてくれるかもしれないと

言いました。

しかし、オデットは首を横に振り

それはダメだと反対しました。

そして、

ティラの顔を包み込みながら、

絶対ダメだと、

普段とは違う焦りを滲ませた声で

急き立てるように頼みました。

 

姉の人生を台無しにした虫けらの娘。

皇帝にとって自分は、それほど、

軽蔑的な存在にすぎないことと

皇族のための年金を支給しているのは

皇女が残した血筋に対する

最後の礼遇だということを

オデットはよく知っていました。

もし皇室を辱める

父親の蛮行が知られれば、

それさえも失うことになるかも

しれませんでした。

 

再び涙ぐみ始めたティラの顔を

眺めていたオデットは、

出かけるという衝動的な決定を下し、

ティラに顔を洗って来るよう

指示しました。

この家に留まっていたら、

父の部屋の扉に釘を打つより

悪いことをしでかしそうな

気がしました。

オデットは、自分とティラの人生を

そんな奈落に

落としたくありませんでした。

 

オデットは、

街に出て、散歩をして

夕食も食べようと誘いました。

急にそんなことを言われたティラは

当惑し、目を丸くしました。

 

オデットは、

嫌なのかと尋ねました。

ティラは、

そうではなく、

自分たちにそんなお金が・・・と

言いかけましたが、オデットは

「ある」と淡々と答えて

ティラの言葉を遮りました。

これ以上、

説明をする気がないということは、

その断固たる目つきだけで

分かるような気がしました。

 

酒に酔った父親が眠っている寝室と

オデットの顔を交互に見ながら

悩んでいたティラは、

浴室に向かって走りました。

その騒々しい足音が、

家の中を押さえつけていた

絶望と悲しみを薄めました。

 

ティラが涙の跡を消している間に

オデットも外出する準備をしました。

帽子と手袋を身に着け、

レースを売って貯めておいたへそくりも

持ちました。

手提げカバンに小刀を入れることも

忘れませんでした。

 

準備を終えたティラは、

少し緊張した顔で

オデットの前に立ちました。

妹の服装をよく見たオデットは、

スカートのしわを伸ばして、

襟の形を整え、

最後に髪型を少し手直しして

頷きました。

ティラは、

ようやく安堵の笑みを浮かべました。

たちまち、

活気を取り戻した様子でした。

 

オデットは妹の手を握って

川辺の古い家を出ました。

f:id:myuieri:20210206060839j:plain

f:id:myuieri:20210206071517p:plain

酒浸りでギャンブラーの父親は

お酒と賭けに使うお金を

手に入れるために、

家の中を漁っているような気がします。

働きもしないで、

娘のお金を当てにしている父親は

娘二人に愛想をつかされていても

仕方がないと思います。

きっと、オデットは、最低の父親に

へそくりを見つけられないように

必死で守っていたのではないかと

思います。

 

f:id:myuieri:20210206060839j:plain