自分時間を楽しく過ごす 再婚承認を要求しますの先読みネタバレ付き

子供の頃からマンガが大好き。マンガを読むことで自分時間を楽しく過ごしています。再婚承認を要求します、ハーレムの男たちを初めとして、マンガのネタバレを書いています。

バスティアン 7話 ネタバレ ノベル あらすじ マンガ 5、6話 命じられたら従うだけ

 

 

7話 オデットは賭博場で会った男と再会しました。

 

しばらくの間、バスティアンは、

おそらく眩しい春の日差しのせいで

勘違いしたのだと思いました。

しかし、

その光に慣れるほどの時間が経っても

変わることはありませんでした。

 

バスティアンは、

ゆっくりと目を下ろして、

見知らぬ女性を見ました。

あの夜に取った掛け金。

間違いなく、

父親のギャンブルの借金で売られた

女性でした。

あり得ないことでしたが、

バスティアンは、これ以上

自分の判断を疑いませんでした。

 

顔色を窺っていた支配人が、

何か問題でもあるかと

慎重に尋ねました。

 

バスティアンは返事の代わりに

テラスの欄干の向こうを見ました。

幾何学的な模様の花壇と

大理石の噴水台が調和した美しい庭園は

確かに、

ラインフェルトホテルのそれでした。

その風景を一望できる場所に

置かれたテーブル。

蔓の形をした石膏の装飾を施した壁と

その上に垂れ下がった

シュロの植木鉢の影。

そして独特の口髭を持つ銀髪の支配人。

 

約束の場所を間違えたはずがないことを

示す証拠を、次々と目にした

バスティアンは、

再び女性に向かいました。

丸く大きくなった女性の瞳は、

記憶していたよりも、

はるかに澄んで鮮やかな青緑色を

帯びていました。

 

乞食公爵。

娘を賭けた、あの馬鹿のニックネームを

思い出したバスティアンの目が

細くなりました。

もし、彼が吹聴したほらが

全て事実だったら?

その仮定を立てると、

ついに、この当惑した状況を

理解できる糸口がつかめました。

信じられないけれど、

それ以外には、どんな答えも

存在できませんでした。

 

沈黙が長引くと、

支配人の瞳が揺れ始めました。

バスティアンは「いいえ」と

簡潔に答えながら、

体をまっすぐにしました。

ようやく安堵した支配人は、

静かに退きました。

 

オデットは、あの夜のような

絶望的な恐怖に襲われて

息を呑みました。

爆発しそうなくらい、

心臓がドキドキました。

その間、オデットを眺めていた男性の

片方の口の端に

微かに笑みが浮かびました。

顔の半分が帽子の影になっているけれど

オデットは、その辛辣な嘲笑を

はっきりと見分けることができました。

 

頭の中が真っ白になるような侮辱感が

オデットを飲み込んだ瞬間、

男性はゆっくりと帽子を脱ぎ、

名前を名乗った後、

自分たちは初めてではないようだと

言いました。

きれいに梳かした

プラチナブロンドの髪と青い瞳が、

乱暴な光のように

オデットの視界をかすめました。

バスティアンは

何気なく庭の噴水を見ていた目を

女性に向けました。

依然として、

テーブルの端だけを見下ろしている

ぼんやりとした顔は、

あの夜のように青ざめていました。

 

本物の公爵から皇帝の姪を勝ち取った。

全く現実感がない、

その事実を思い返すと、

再び乾いた笑いが漏れました。

 

しがない没落貴族。

ディセン家について、

バスティアンが知っているのは、

その程度の表面的な情報が

全てでした。

その気になれば、

いくらでも詳細な調査ができましたが、

その必要性を感じませんでした。

どうせ無意味に通り過ぎる名前に

過ぎなかったからでした。

 

もう少し慎重になるべきだったのか。

バスティアンは、

適度に冷めたお茶を飲みながら

自分の過ちを振り返りました。

しかし、事前に知っていたとしても、

皇命に逆らうことは

できなかっただろうし、

皇帝も、それをよく知っていたので、

このとんでもない縁談を

推し進めることができたのだろうと

思いました。

 

ほどなく顔を上げたオデットは、

最初から全て知っていたのかと

落ち着いて尋ねました。

混乱した感情をすべて消した女性の顔は

あの夜のように

冷たく固まっていました。

 

バスティアンはゆっくりと首を振り

とんでもないと答えると、

意図的に力を込めて

カップをソーサーの上に置きました。

そして、バスティアンは、

残念ながら、裏通りの賭博場で

娘を売った父親が公爵で、

そこで勝ち取った掛け金が

皇帝の姪だと考えるほど、

自分の想像力は優れていない。

このような形で、また会ったことに

自分もとても驚いていると答えると、

礼儀正しく口の端を

そっと引き上げました。

 

慌てた様子でしたが、オデットは

すぐに平静を取り戻しました。

彼をじっと見つめる目つきは、

わずかに冷厳でした。

底辺を転々とする人生を送りながらも、

まだ、その優れた階級意識

捨てられないような女性でした。

 

考えてみれば、あの夜も、

この女性は許しを乞い、

懇願しても無駄な状況の時に

むしろ堂々と彼を戒めました。

高貴な血統の来歴を知ると、

ようやく、この女性の蛮勇を

理解することができるような

気がしました。

無力な者の虚しいプライド。

バスティアンが軽蔑してやまない

徳目でした。

 

あの夜の記憶が鮮明になるほど、

バスティアンは、

この縁談に、さらに呆れました。

バスティアンは、

深い幻滅のこもったまなざしで

女性を見つめました。

命をかけて戦って勝った代価が、

乞食公爵の娘だなんて。

仕事が台無しになりましたが、

必要以上の感情を

消耗したくありませんでした。

勝算がないということを知りながらも

戦った皇帝の目的は、どうせ

他の場所にあるはずだからでした。

 

カップから立ち上る

微かな湯気が消えるまで、

バスティアンは、

ただ女性を眺めるだけでした。

その間に、

目の前の女性のように美しく、

退屈で無価値な曲が流れ始めました。

 

悩み終えたオデットは、

どうか断って欲しいと

ようやく口を開きました。

そして、依然として何の返事もない

バスティアンを見つめながら、

自分のことが気に入らないと

皇帝に伝えて欲しいと

もう一度丁寧に頼みました。

 

初めて目が合った瞬間、オデットは

バスティアン・クラウヴィッツ

自分を軽蔑しており、

決して、この縁談を、

受け入れるつもりがないことが

分かりました。

 

もしかしたら

奇跡が起こるかもしれないと

トリエ伯爵夫人が

口癖のように話していた微かな希望は

最初から存在しませんでした。

それに気づくと、

耐え難い羞恥心と自己恥辱感が

押し寄せて来ました。

 

突然の縁談に途方に暮れて

恐ろしかったけれど、その一方で

慎ましい期待感がありました。

あのような手紙の返事をもらっても

最後の未練を捨てられなかったのは

そのためでした。

英雄と呼ばれるその男が、

まるで絶望的な人生に差し込んだ

救いの光のようだったからでした。

 

ところが、

ようやく口を開いたバスティアンは、

申し訳ないけれど、

自分はそのつもりはないと

淡々と拒絶の意を伝えました。

オデットが、

予想と全く違う答えに戸惑っている間に

彼は腰を伸ばして座りました。

職位と戦功を象徴する装飾が

純白の制服の上で

煌びやかに輝きました。

 

バスティアンは、

世間に知れ渡っているディセン家の噂が

どのようなものか知っているかと

低い声で意外な質問をしました。

 

オデットは、

何度も唇を震わせた後、

知らないわけがないと、

ようやく声を出しました。

 

バスティアンは、

それを知っていながら、

自分がここへ来た理由は何だと思うかと

子供のなぞなぞのように尋ねました。

決して、淑女を相手にするのに

適切な話し方ではありませんでした。

 

オデットは、

いい加減本題を言ってもらえると

幸いだと、

婉曲に男性の無礼を指摘しました。

腕時計を確認したバスティアンは、

快く頷きながら視線を上げると、

自分は今、皇帝に忠誠を尽くすために

最善を尽くしているという意味だと

答えました。

 

オデットは、

まさかこの縁談を、

受け入れるということかと尋ねました。

バスティアンは、

曖昧な笑みを浮かべながら

残念だけれど、それは困ると

遺憾の意を表しました。

両頬が熱くなるのが感じられましたが、

オデットは視線を避けずに

恥辱の瞬間を耐え抜きました。

 

バスティアンは、

イザベル皇女が結婚式を挙げれば

終わる芝居だと思うと告げました。

オデットは、

皇室を欺く行為に加担したくないと

言いました。

バスティアンは、

何か誤解しているようだけれど、

それが皇帝の望みだと

非常に丁寧な口調で返事をすることで

女性を嘲笑いました。

 

皇女を守るための盾。

それが彼女に与えられた

役割だということを知らないほど

愚かな女ではありませんでした。

それにもかかわらず、

この場に現れたのは、この淑女にも

やはり目的があるからだろう。

それなのに、

今更、高潔なふりをするなんて、

情けない手口だと思いました。

 

バスティアンは、

見ての通り自分は軍人で、

皇帝は帝国の最高司令官なので

彼に命じられたら、

自分は従うと言いました。

 

オデットは、

その間に広まる噂や、

評判が傷つくことを

考えていないのかと尋ねました。

 

バスティアンは、

口元に微かに冷笑を浮かべながら

構わない。どうせ自分は紳士ではないと

答えました。

 

這いつくばれと言われれば這いつくばり

吠えろと言われれば吠える。

自分のものを守るためなら、

バスティアンは

何でもすることができました。

皇帝が授けた美しい下賜品を

楽しむのは一時期なので、

断る理由のない取引でもありました。

 

バスティアンは、

二度と会いたくないほど

自分が気に入らないのなら、

オデット嬢が、

直接、皇帝に断ることを勧める。

皇帝も、ただの海軍将校より、

直接花婿候補を選んでくれるほど

大切にしている姪の意見を

尊重すると思うと言いました。

 

心をむやみに踏みにじる言葉を

吐き出す瞬間にも、バスティアンは

もっともらしい

礼儀をわきまえました。

目頭が熱くなるのが感じられましたが

オデットは、

その男の視線を避けませんでした。

 

バスティアンは、

そうする気がないのなら、

もう結論は出たようだと告げると

身なりを整え、

テーブルの端に置いておいた

帽子を手に取りました。

 

立ち上がるバスティアンを

見守っていたオデットは

少し待って欲しいと慌てて叫びました。

見る目が多いことを知っていましたが、

もう、そんなことぐらい、

どうでも良いと思いました。

 

オデットは、

カバンから取り出した封筒を持って

バスティアンの前に近づきました。

それを丁寧に差し出す行動の意味に

気づいたバスティアンは、

このティータイムが始まって以来、

初めて、

心からの笑いを爆発させました。

 

バスティアンは、

まさかお茶代でも出すつもりなのかと

尋ねました。

オデットは、

自分は大尉にお茶を奢って欲しくないと

答えました。

いつの間にか、頬と首筋と耳たぶが

真っ赤になっていましたが、

オデットは依然として、

まっすぐな態度を維持していました。

ホテルの庭から漂って来た

春の花の香りが、

オデットの柔らかい体の匂いと

混ざり合いました。

 

バスティアンは、

軽くため息をつきながら帽子をかぶると

お金を節約するように。

あそこで二度と令嬢に

会うことがないように、

公爵の賭博資金に加えるのも悪くないと

言いました。

 

オデットは、

それはどういう意味かと尋ねると、

バスティアンは、

あの日は運が良くて

自分に売られたけれど、

今度もそのような幸運が

訪れるという保証はないと、

分別のない子供を相手にするように

オデットに言い聞かせました。

その柔らかい声とは異なり、

帽子の陰に隠された瞳は

鳥肌が立つほど冷たい光を

帯びていました。

その剣幕が、

一瞬オデットを圧倒しました。

何か言わなければならないことを

分かっていましたが、

まともに声を出す自信が

ありませんでした。

オデットができることは

圧倒的な優位で自分を見下ろす

バスティアンの視線に

耐えることでした。

 

二度とこの男に会いたくないと、

その切実な願いが涙となって

滲んだ瞬間、

彼はゆっくりと微笑みました。

 

彼は、

どうか貴い血筋のお嬢様と、

再び会える日を心待ちにしていると

下品な言動とは裏腹に

優雅な挨拶をすると背を向けました。

頑固なほどに、

真っ直ぐな姿勢で立っていたオデットは

水気を含んだ目を上げて

彼の後ろ姿を眺めました。

彼は一度も振り返りませんでした。

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バスティアンはオデットに対して

彼女を侮辱するような

酷い言葉を浴びせても、

彼が嘲弄しているのは

オデット自身ではなく、

お金もないのに、

プライドだけは高い

貴族の性質なのではないかと

思います。

オデットの体の匂いを意識したことで

バスティアンは、彼女のことが

少し気になり始めていることを

感じられたので、

今回は、これで良しとします(笑)

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いつもたくさんのコメントを

ありがとうございます。

 

メロンパン様

前話のピンクの花は

ハナズオウです。

 

少しネタバレ。

マンガでは割愛されていましたが

「泣いてみろ乞うてもいい」では

名前だけでなく、

本人そのものも登場しなかったのに

ある役割を果たした人が

きちんと名前をもらって、

10話に登場します。

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