自分時間を楽しく過ごす 再婚承認を要求しますの先読みネタバレ付き

子供の頃からマンガが大好き。マンガを読むことで自分時間を楽しく過ごしています。再婚承認を要求します、ハーレムの男たちを初めとして、マンガのネタバレを書いています。

泣いてみろ、乞うてもいい 88話 ネタバレ 原作 あらすじ 帝国最高の貴婦人

 

88話 レイラはマティアスとソファーの間に閉じ込められてしまいました。

 

なぜ、いつも

一番隠したい情けない気持ちが

この男にばれてしまうのか。

レイラは泣きたい気持ちで、

逃れる術のない公爵の視線に

向き合いました。

 

先に話そうかと考えましたが

止めました。

まるで屋根裏部屋に隠れて暮らす

ネズミのように振る舞った姿を

思い出すだけでも

胸がズキズキ痛むからでした。

 

しかし、マティアスは、

すぐにレイラが隠したかったことを

発見しました。

落ちたフォークと

食べかけのケーキの皿を見た彼は、

低い声で笑いました。

 

一人で、こそこそ

何をしているのかと思ったら、

あれを食べていたのか。

 

おかしなことに、その事実一つが

他のすべての幻滅と苛立ちを

消しました。

自分でも理解できないほど

レイラを思い出した日々も、

この女一人をそばに置きたくて

無理して日程を繰り上げるという

馬鹿げた行為も、

好きなものを食べさせたくて

らしくないお願いをしたことまで、

レイラが、たかが、あれを

食べてくれたという事実一つで

それら全てが良いことになりました。

 

なぜ起こさなかったのかと

尋ねる代わりに、マティアスは

ギュッと閉じたレイラの唇に

短くキスをしました。

 

マティアスに

別に大した計画があったわけではなく

ただレイラと一緒に

歩いてみたかっただけでした。

夕食を食べてお茶を飲むという

平凡な夕方。

そのために出張先まで

愛人を引っ張り込むような

馬鹿げたことをしました。

 

マティアスは、

一緒に過ごす時間が嫌だったのかという

有難くない質問の代わりに、

もう一度キスをしました。

ケーキの風味が感じられる唇は甘く

軽く唇をぶつけた口づけは、

すぐに深まりました。

 

温かくて柔らかい体を抱くと、

マティアスは、

レイラに会えなかった時間、

満たされていない欲望に

ずっと囚われていたことが

分かるような気がしました。

だから今この瞬間、

レイラが自分の懐の中にいるのが

あまりにも当然のことのように

思われました。

こんな女は、この世に

レイラ・ルウェリン一人だけで、

マティアスが望むのは

その一人だけでした。

 

女ではなくレイラ。

自分の小鳥、レイラ・ルウェリン。

 

マティアスは、

熱い息を切らしながら

頭を上げました。

目をギュッと閉じているレイラの顔は

微かに赤色に染まっていました。

それが可愛くて、プッと

少しふざけて笑ってしまいました。

 

どうして笑っているのか。

レイラは不安でイライラしましたが

目を開ける勇気はありませんでした。

死んだように目を閉じている間に、

全てが終わることを願いました。

 

しかし、公爵は

いつもと少し違いました。

思う存分触って、

痛いほど深く入り込む代わりに、

再び口を合わせて来ました。

頬や鼻の頭に、

優しく突くようなキスをした彼の唇が

耳に触れると、

レイラは驚いて目を開けました。

大きく聞こえるマティアスの息づかいは

少し速くて湿っぽいものでした。

 

レイラは「止めて」と言って

必死にもがきながら

公爵を押し退けました。

そして、いつも通りにしてと

頼みました。

衝動的に吐き出した言葉でしが、

切実な本心でもありました。

 

しばらくレイラを見下ろしていた

マティアスは、

赤くなった耳を噛み締めることで

自分の意思を代わりに伝えました。

荒い息づかいを圧倒する声で

すぐに闇が揺れ始めました。

クロディーヌ・フォン・ブラントは

13歳の夏から、

すでにヘルハルト公爵夫人でした。

客用寝室のベッドに仰向けになって

天井を見つめながら、

クロディーヌは、

あの日の記憶を思い出しました。

 

ヘルハルト家を

初めて訪問するわけでもないのに、

あの日に限って、ブラント伯爵夫人は

念入りに身支度を整え、娘の姿にも、

殊の外、神経を使いました。

 

母娘を乗せた馬車がアルビスに近づくと

クロディーヌの肩を力強く握った母親は

もうクロディーヌは子供ではなく

淑女にならなければならないと

念を押しました。

概して無気力だったり、

あるいは涙に濡れていた母親の目が

その瞬間だけは、

とても生き生きと輝いていました。

 

アルビスに到着して数日後、

母親が言った淑女の意味が

何なのか分かりました。

クロディーヌは、かなり勘が鋭かったし

どうにかして、

マティアスとクロディーヌが、

一緒にいる場所を作ろうとする

大人たちの努力は露骨でした。

 

アルビスを訪問して1週間目の夜、

クロディーヌは母親に、

自分はマティアスと結婚するのかと

単刀直入に尋ねました。

 

慌てたブラント伯爵夫人は、

部屋のドアが閉まっていることを

確認した後、

再びクロディーヌの前に戻ると、

大人たちの意思はそうだけれど

それを確実にするためには、

ヘルハルト家が考えている

他の令嬢たちより、クロディーヌが

はるかに優れた公爵夫人であることを

示せるように、

うまくやらなければならないと

答えました。

 

クロディーヌは、

自分は他の友達よりずっと賢い。

先生たちは皆、そう言っている。

礼法や踊り、何一つ

劣っていないと言われたと話しました。

 

ブラント伯爵夫人は、

そうだけれど、それがすべてではない。

何よりも、

マティアスと仲良くするよう

努力すること。

それが一番大事だと言いました。

 

ずっと自信満々だったクロディーヌも

その瞬間だけは緊張しました。

他の少年たちと違い、

すでに爵位を持った

立派な家門の主人である

ヘルハルト公爵は、

社交界の少女たちの羨望の的でした。

まだデビュタントを済ませていない

クロディーヌと同年代の幼い少女たちも

変わりありませんでした。

だから彼のことが、

嫌いなわけではありませんでした。

 

クロディーヌは、

彼のような素敵な少年を

見たことがありませんでした。

ヘルハルト家が所蔵している

あらゆる貴重な芸術品の中でも、

最も美しいのは、その家の後継者、

マティアスだろうという人々の冗談は

ただのくだらない冗談だけでは

ありませんでした。

しかし、快く喜ぶには、彼は

あまりにも難しい人でした。

 

すでに成人近くまで成長した

少年の目には、まだ幼い従妹が

つまらないのは当然のことだけれど

マティアスの態度からは、

それとは少し違う距離感が

感じられました。

彼はクロディーヌに、

いつも丁寧に接してくれたけれど

不思議なことに

マティアスの前に立つと

透明人間になったような気分に

なることがありました。

 

母親は、クロディーヌが

ベルク最高の貴婦人になり、

ブラント家の一人娘は、

どんなつまらない息子たちよりも

立派だということを

人々に見せて欲しいと頼みました。

 

クロディーヌは、

ヘルハルト公爵夫人になれば、

帝国最高の貴婦人になれるのかと

首を傾げながら尋ねました。

 

ブラント伯爵夫人は、

顔に喜びの色を浮かべながら

当然だ。そうなれば、クロディーヌは

帝国最高の家門の女主人になり、

その家門を継ぐ後継者の母親になると

答えました。

 

クロディーヌは、このアルビス

自分のものになるという意味かと

尋ねました。

母親は、

そうだ。この全てが

クロディーヌのものになると

答えました。

 

しばらく悩んでいたクロディーヌは

窓の前に立ちました。

色とりどりのバラが咲いた庭園と

雄大な噴水台、

その向こうの広々とした領地が

足下に広がって見えました。

 

クロディーヌは、

満面の笑みを浮かべながら、

母親の頼みを承諾し、

頑張ってみると言いました。

 

クロディーヌは、

その約束を守るために献身してきたし

その夢が現実になる日が

目前まで迫って来ていました。

 

それなのに、どうして、

身の程知らずに自分を!

 

眠れなくて寝返りを打っていた

クロディーヌは、結局、飛び起きて

ベッドの下に降りました。

部屋の中をぐるぐる回る歩き方が

彼女らしくないほど

イライラしていました。

 

彼女の婚約者は、

あの孤児に夢中だという事実を

今やクロディーヌは

認めざるを得ませんでした。

ヘルハルト公爵自ら、

それを証明しました。

 

夜が更けても、

レイラは小屋に戻りませんでした。

彼女がどこに、誰と一緒にいるかは

明らかでした。

 

マリーは、

神経が過敏になっているせいで

悪い考えをするようになったと

慰めてくれましたが、

クロディーヌは、マティアスが、

あの子を連れ去ったことを

確信していました。

 

レイラ・ルウェリン。

たかが、そんなみすぼらしい名前に

こんな侮辱を受けるために、

自分は彼のような冷血漢に

耐えてきたのか!

力を込めて拳を握った

クロディーヌの両手が

細かく震えました。

 

マティアスが、あの子を

愛人として可愛がってさえいれば

我慢できるかもしれない。

気に障ることがあっても

耐えられないことはないから。

どうせ彼に愛される女として

生きたい気持ちなどなく、

クロディーヌがマティアスに望むのは

確固たる妻の地位と息子。

ただそれだけでした。 

マティアスも同じだったため、

彼らの婚約が成立しました。

しかし、

それが脅かされているという

不吉な予感が、次第に

クロディーヌを蝕んで行きました。

 

暗闇の中でクロディーヌは、

皇太子夫妻の訪問を記念する

晩餐会の夜、

いつもと少し違っていた

マティアスのことを思い出しました。

 一瞬でしたが、彼は、

まるで全くの他人を見るように

彼女を見つめていました。

一瞬たりとも

親しかったことはなかったけれど

少なくとも、

互いを目的と手段程度には認めて

尊重した日々とは

明らかに違う目つきでした。

 

あのような卑しい愛人のために、

すでに成立したも同然の結婚を

破談にすることは、皆が知っている

完璧な貴族ヘルハルト公爵なら、

絶対に犯さないミスでした。

しかし、それが何の役に立つのか。

あの男は、

もう以前のヘルハルト公爵では

ありませんでした。

 

あの男が自分の気持ちに気づく前に

終わらせなければならない。

 

ヘルハルト公爵夫人の人生を

受け入れることにした幼い日のように

クロディーヌは、

庭に面した大きな窓の前に

立ちました。

厚いカーテンを開ける手つきが

断固としていました。

 

マティアス・フォン・ヘルハルトは

必ず自分の夫に

ならなければなりませんでした。

公爵夫人になるために生きてきた

クローディヌ・ブラントの

過去の歳月を補償する道は

それだけでした。

 

月明かりに照らされた

冬の庭を見下ろしていた

クロディーヌのぼんやりとした瞳に

徐々に生気が戻り始めました。

 

マティアスが手放せないなら、

レイラが去らなければならない。

もちろん、以前のように

マティアスを刺激するような過ちを

犯してはなりませんでした。

 

レイラは静かに、跡形もなく

自分たちの人生から

消えなければならない。

そうするために、彼女の心を

どう壊してやればいいのか。

 

カイル・エトマン。

長い間悩んだ末に思い浮かんだ

その名前を呟く

クロディーヌの口の端が曲がりました。

目を覚ますと、

眠っている男の顔が見えました。

眠気のせいで

ボーッとしているレイラは、

ぼんやりと彼を見ました。

優雅ですらりとした顎と鼻筋が

暗闇の中でも鮮明に

浮かび上がっていました。

肌が青白いせいで

唇はいっそう赤く見えました。

とても美しくて気品のある顔でした。

 

自分は確かに

この顔を知っているのに・・・

じっくり考え込んでいた

レイラの口元に、

にっこりと笑みが広がりました。

 

あの人だ。

学校に通っている公爵様。

森で見たあの怖くてきれいな人。

けれども、何かおかしい。

確かあの人は

もっと子供っぽくて、

優しい顔立ちだったような気がする。

 

ぼんやりしているレイラは

布団の外に手を出して

目の前にいる男の顔を触ってみました。

温かでした。

 

これも本当に不思議だ。 夢でも

温もりが感じられるのだろうか。

 

レイラは疑問を反芻しながら

ゆっくり瞬きしました。

その間に視界が鮮明になり、

その分、意識も

はっきりして来ました。

 

ここが、

自分の部屋ではないことに気づくと

一瞬にして、全ての現実が蘇りました。

小さく首を振ったレイラは、

公爵を触っていた手を

慌てて引き抜きました。

顔を合わせて横になるのは

気まずかったけれど、公爵が彼女を

しっかりと抱き締めたまま

足を掛けていたので、抜け出すのが

容易ではありませんでした。

 

レイラは小さくもがいてみましたが

すぐに諦めました。

はっきりして来た意識の中で

昨夜の記憶も、一つ二つと

浮び上がって来たためでした。

 

マティアスと同じベッドで眠るのが

不思議だったレイラは、

何度も寝返りを打ちながら逃げました。

その度に彼は、

狂人のように飛びかかりました。

全くそのように見えました。

 

普段のように、

自分の欲だけを出す代わりに、

彼はまるで何かを要求するように

執拗にレイラを追い詰めました。

最後は、

彼を押し退けることもできず、

揺れながら

意識を失ってしまったようでした。

肌がぶつかる音の間から

聞こえてきた自分の名前が、

レイラが記憶している最後でした。

 

レイラは、

二度とそれを繰り返したくないので

公爵の胸の中に

おとなしく留まりました。

目を閉じても眠れないので、

仕方なくマティアスを見つめました。

 

彼は初めて会った日と、

それほど変わっていないと

思っていましたが、

じっと見てみると、

見た目はそのままだけれど、

骨格がしっかりしていて、

はるかに硬くて鋭い感じを

与えていました。

 

郵便馬車に乗って

アルビスへ向かう道の記憶が

まだ生々しいけれど、

もうかなり長い時間が

経っていました。

 

空中に、

その時代のやせ細った少女を

描いている間に、

うっすらと夜が明けました。

そして再びマティアスを見た瞬間

レイラは思わず、ため息をつきました。

夜が去っていく色に似た瞳が

そこにありました。

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ブラント伯爵夫人の言う

つまらない息子たちというのは

ブラント伯爵が愛人に産ませた

息子たちなのでしょうか。

クロディーヌが正真正銘、

ブラント家の一人娘なら、

彼女が結婚して、家を出れば

ブラント家を継ぐ人がいないので

クロディーヌに婿を取って

家を継がせるように思いますが、

母親違いの兄弟がいて、

そのうちの誰かが

ブラント家を継ぐことになっていれば

ブラント伯爵夫人にとって

屈辱的なことだと思います。

だからブラント伯爵夫人は

自分たちの家門よりも格上の家門に

クロディーヌを嫁がせることで、

その屈辱を

晴らしたかったのではないかと

思いました。

クロディーヌは、

その犠牲になったのだと思うと、

可哀想な気がしますが、

だからといって、

レイラ自ら出て行くよう

仕向けるために、

カイルを利用するのは酷いと

思いました。

 

レイラは、どうせ無駄だと

諦めの気分で

マティアスに接しているように

思えますが、少しずつ、

気持ちも変化していっているように

思います。

そして、幼かった頃に、

すでにマティアスに

恋していたのではないかと思いました。

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