自分時間を楽しく過ごす 再婚承認を要求しますの先読みネタバレ付き

子供の頃からマンガが大好き。マンガを読むことで自分時間を楽しく過ごしています。再婚承認を要求します、ハーレムの男たちを初めとして、マンガのネタバレを書いています。

泣いてみろ、乞うてもいい 94話 ネタバレ 原作 あらすじ 嘘でも構わない

 

94話 レイラはカイルに、マティアスのことが好きだと言いました。

 

レイラは言葉を続けられずに

頭を下げました。

もう目を開けていられないほど

熱くて大粒の涙が溢れ始めました。

床に突いている

カイルの手の甲の上にも、その涙が

雨水のように流れました。

 

カイルは戦意を失ってしまった顔で

泣いているレイラを、

ぼんやりと見ました。

乱れた髪が、

痩せ細った顔と首筋を伝って

流れていました。

まだ整えることができずに

乱れているブラウスと

白く固まったまま震えている手を

見つめるカイルの瞳に

徐々に苦痛の色が浮かび始めました。

 

「それで、そうしたの。

だからどうか、カイル・・・」

と呟くと、

レイラは、ようやく顔を上げました。

その顔は、深い悲しみと羞恥心で

染まっていました。

 

カイルは、

呆然自失して嘆息しました。

すぐにでも、

レイラを奪い取るような勢いで

近づいて来たヘルハルト公爵は、

今は、一歩退いた所で

彼らを見下ろしていました。

かすかな月の光しか

差していませんでしたが、カイルは、

その男が笑っていることが

分かりました。

 

カイルは、

レイラの肩越しに公爵を見つめながら

彼が婚約していて

もうすぐ、あの女と結婚することを

指摘しました。

マティアスは、

先ほどまで殴り合いをし、

自分の婚約者を差し置いて

レイラを弄んだ無頼漢とは思えないほど

端正な目つきと姿を整えたまま、

何の感情もない顔で頷きました。

 

カイルが苦笑いをしながら、

乱れた髪をつまむように

撫でている間に、

公爵はレイラを立たせました。

そして、濡れた頬に

まとわりついている髪の毛を

優しく退けると、

レイラの濡れた目頭にキスをし、

傷をなめる獣のように、

ゆっくりと涙の跡を

唇で辿って行きました。

目を閉じたレイラは、

おとなしくその男に

身を任せていました。

 

どうしてお前が。

いっそのことカイルは、

狂ってしまいたかったけれど

カイルの頭の中は、

いつにも増して澄んでいて

冷たくなって行きました。

 

良い子を褒めるように

レイラの頭を撫でた公爵は、

まだ彼女が留め切れなかった

ブラウスのボタンをかけて

襟の形を整えてやりました。

そして、低く優しい声で、

招かれざる客が帰ったら、

また来ると囁くと、レイラは、

まだ顎の先に宝石のような涙を

残したまま頷きました。

 

小屋を出る前、公爵は

立ち上がる気力さえ失った

カイルの前に近づき、

しばらく立ち止まりました。

そして、 自分が踏みにじって

壊した相手に向かって、

何事もなかったかのように、

上品に優雅に頭を下げて

礼を尽くしました。

 

公爵の足音が庭の向こうに遠ざかり

周囲が再び静まり返ると、レイラは

カイルのそばに近づきました。

血が固まった唇と

腫れ上がった頬を見ると、

息が詰まりそうになりました。

もう少し遅れていたら、

カイルは大けがをしていたかも

しれませんでした。

 

レイラはカイルに

大丈夫かと声をかけましたが、

それと同時にカイルは「触るな」と

レイラを拒絶しました。

 

一度も聞いたことのない

カイルの冷たい声に、

レイラは思わず中腰のまま

固まってしまいました。

カイルは彼女をそのままにして

よろめきながら立ち上がると、

他の誰でもないレイラ・ルウェリンが

どうして、こんなことができるのかと

尋ねました。

 

カイルを見上げている

レイラの清らかな顔を見つめる

カイルの眼差しから、

ひどく裏切られた気持ちと憐憫が

同時に滲み出ていました。

 

カイルは、

こんな風に生きるために、

自分を冷酷に拒絶したのか。

一生懸命頑張って手に入れたかった

恥ずかしくない人生って

公爵の隠れた恋人に

なることだったのかと、

レイラを責めました。

 

カイルは、レイラが大泣きし

弁解してくれることを、

そうでなければ、自分に

しつこく反論してくれることを

切実に願いました。

しかし、レイラは

震える唇を噛み締めながら、

血の気のない両手を合わせて握り締め

カイルが最も聞きたくなかった

謝罪の言葉を口にしました。

 

レイラは、

「本当に、ごめんなさい」と

カイルに謝りました。 

 

彼は、その言葉が、

このように侮辱的に聞こえることを

以前は知りませんでした。

狂いそうになったカイルの叫び声が

冷たい小屋のあちこちに広がりました。

 

カイルは血走った目で、

長年自分の家のように足繫く出入りし

慣れ親しんだ家のあちこちを、

床に足が届かないほど

小さな子供だった頃から、

レイラと向かい合って座り、

笑って騒いだ食卓と椅子を、

その場所に込められた

大切な思い出を見ました。

そして今、その場所で、

彼の美しい幼少期であり、初恋であり、

一時期の全てだった女レイラが

もうすぐ他の女の夫になる男と

キスをしていました。

 

もう最後の怒りの一つまで

消えてしまった声で、カイルは

「いつから?」と

自嘲するように尋ねました。

そして、

自分は狂っている。

自分の舌を切り落としたいほどの

強い自責の念に苦しみながらも、

まさか自分が邪魔者だったのかと

尋ねました。

レイラはすすり泣きながら

首を振りました。

スカートの裾を握っている手は、

叩いただけでも折れそうなくらい

細くなっていました。

 

レイラが以前より

かなり痩せたことに気づくと、

公爵に対するカイルの憎悪は

さらに深まりました。

 

固くなった両手を上げて

涙を拭ったカイルは、

今からでも止められないのか。

まもなく

ブラント令嬢の夫になる人を

好きだなんて、

それが何を意味するのか、

よく知っているはず。

レイラは、そんな風に

生きられない人だと言いました。

 

カイルは、

レイラが話していた未来を

生々しく覚えていました。

鳥を研究する学者になりたがっていた

賢い少女が、

いつか鳥のように自由に

遠い世界を見に行くと言っていた時、

いつも夢と希望で

目を輝かせていました。

 

カイルは、

レイラが夢見ていた未来を

公爵は与えることができない。

彼を好きだということは、

その全てを

諦めなければならないという意味なのを

本当に分からないのかと尋ねました。

 

息を殺して泣くレイラの姿の上に

結婚を約束した春の日の記憶が

浮び上がりました。

互いに似ている子供たちが

たくさんいて、賑やかになればいいと

言っていたレイラは、

ただ明るくて無邪気でしたが、

その裏に隠されていた

深い寂しさを感じて、カイルは

胸が痛くなりました。

そのレイラが、

彼女を一生寂しくさせる男の愛人に

転落してしまいました。

 

カイルは、

あの男は、結局レイラを

壊してしまうだろう。

だからお願いと、

祈りのように切実に懇願しました。

レイラは、

分かっていると答えると、

これ以上、カイルを見られなくなり

うつむきました。

そして、カイルに謝ると、

両手で顔を覆って泣き出しました。

カイルの目からも

熱い涙が溢れ始めました。

 

白い月が

向かい合って泣いている二人を

照らしました。

涙は長い間止まりませんでした。

カイル・エトマンは去り、

マティアスは、

未だに戻って来ていない。

クロディーヌは、興味津々の表情で

夜の庭を見下ろしました。

 

マティアスは、仕事が忙しいので、

離れで夕食を取ると伝えて来ました。

度々、あったことでしたが、

以前のように素直に信じることは

困難でした。

 

あの子の所へ行ったのだろうか?

三人で会ったのだろうか?

それなら、

なぜカイル・エトマンが去った後も

マティアスは

戻って来ないのだろうか。

 

相次ぐ疑問に耐え切れず、

クロディーヌはコートを着て

夜の散歩に出かけました。

メイドを連れて行かずに、

一人で森の中を小走りする

自分の姿が情けなくなり、

笑いがこぼれました。

 

彼女は、

マティアスとレイラから

本当に多くのものをもらったので

ブラントの名誉をかけて、

もらった分、いや、それ以上を

必ず返すつもりでした。

 

夜になると、

森は幽霊でも出そうなほど

陰鬱になりました。

不気味な夜の鳥の鳴き声に

追われるように、

クロディーヌの足取りは、

ますます速くなっていきました。

川辺に入ると、

ようやく安堵のため息が漏れました。

 

レイラの所へ

行ったのではなかったのか。

明かりが灯っている離れを見た

クロディーヌは眉を顰めました。

それとも、レイラを

別棟に引きずり込んだのだろうか。

 

不潔な想像を振り払うように

クロディーヌは首を振りましたが、

疑いはすでに確信となって

クロディーヌを捕らえていました。

その時、離れが暗くなりました。

 

驚いたクロディーヌは、

急いで川沿いの柳の木の後ろに

身を隠しました。

しばらくして、マティアスが

離れから出て来ました。

夜が更けると、

マティアスが戻って来ました。

短いノックの音だけで、

レイラは彼が来たことが分かりました。

 

ベッドの上にうずくまって

座っていたレイラは、

黙々と待っていました。

ドアは閉めませんでした。

どんな手を使ってでも

あの男は自分の欲望を満たすので、

無意味な抵抗は、より一層、

酷く惨めになるだけでした。

 

もう一度ノックしたマティアスは、

すぐにドアを開けて

家の中に入りました。

ゆっくりとした彼の足音に従って

木の板が軋む音が

だんだん近づいて来ました。

 

もう一度ノックの音が響き渡ると、

レイラは泣きそうな顔で

作り笑いをしました。

いつもヘルハルト公爵は

むやみに人を踏みにじって

傷つける瞬間さえも、

このように上品でした。

 

レイラの瞳に、

氷のような冷たさが漂う頃、

ゆっくり部屋のドアが開きました。

しばらく部屋の中を見回した

マティアスは、

平気で中に入って来ました。

彼は、少し前と変わったところがなく

格式を備えた身なりに、

きれいに梳かした髪。

直したタイの形も、

息が詰まりそうなくらい端正でした。

激しかった戦いの痕跡は、

口の端にできた傷一つだけでした。

 

めちゃくちゃになったカイルの姿が

その男の上に浮かび上がると、

レイラの怒りは、さらに深まりました。

 

ベッドの前に立ち止まった彼は

うまく友情の会話を交わせたかと

尋ねました。

レイラは歯を食いしばったまま

公爵を睨みつけると、

どうして、あんなことができたのかと

尋ねました

 

マティアスが「何を?」と聞き返すと

レイラは、

公爵のせいでカイルが怪我をしたと

非難しました。

 

マティアスは、

カイルが勝手に、この家に来なければ

あんなことにはならなかったと

反論すると、レイラは、

むやみに訪ねて来て、

あんなことを起こしたのは公爵だと

言い返しました。

 

涙が溢れているレイラの目が

冷たく光りました。

しかし、その軽蔑のこもった

視線の前でも、マティアスは、

これといった動揺を

見せませんでした。

レイラの頭を撫でる手つきは、

とても優しいものでした。

 

マティアスはレイラに

もう一度言ってみてと要求しました。

レイラは、

何を言えというのかと尋ねました。

マティアスは

「好きなの」と答えると、

ベッドに座って、

レイラと向き合いました。

 

しばらく、

ぼんやりと彼を見ていたレイラは、

呆れたようにため息をつきながら

顔を背けました。

しかし、マティアスは、

レイラの顔を包み込んで、

再び自分の方へ向けました。

 

レイラは、

カイルを守るための

嘘に過ぎなかったと答えました。

しかし、マティアスは

口元に笑みを浮かべながら、

構わない、もう一度嘘をついてみろと

命令しました。

 

レイラは、なぜ今さら、

また、あんな酷い嘘を

つかなければならないのかと

拒否しました。

 

マティアスが

「酷い?」と聞き返すと、

レイラは、

そう、酷い。

これで十分な答えになったかと

逆に質問しました。

 

マティアスは、

そんなに酷いことを甘受するほど

すごい友情だなんて涙ぐましいと

皮肉を言うと、ニヤニヤしながら

レイラの腕を引っ張りました。

あっという間に、

彼の目の前まで引きずられましたが、

レイラは以前のように

怯えて震えませんでした。

その挑発的な態度に

マティアスの目つきは、

さらに冷たく沈みました。

 

レイラは彼を見つめながら、

カイルのためだったと

はっきり言いました。

マティアスは、

よし、一度やってみろと

言わんばかりに、レイラの視線を

受け入れてやりました。

レイラの唇から出たカイルという名前が

まるで彼の心を汚すシミのようでした。

 

レイラは、

カイルのためなら、

いくらでもできるけれど

今は嫌だと拒否しました。

マティアスは、

ビル・レマーのために身を捧げ、

カイル・エトマンのために

心を捧げるなんて、

聖女か何かになったつもりなのかと

尋ねました。

 

レイラは、

ビルおじさんとカイルのためなら

何でもできる。

聖女の真似ができないこともないと

鋭く反撃しました。

そして、マティアスから離れようと

努力しましたが、

彼の手中から抜け出す道は

ありませんでした。

 

「好きなの」と

カイルの前で、たどたどしく吐き出した

あの嘘を思い出すと、

いっそのことレイラは、

舌を噛みたくなりました。

それより酷いことを

いくらでもしているのに、

たかが、あの嘘の一言に、なぜ、

このように心が崩れるのか、

分かりませんでした。

 

レイラは、

なぜなのか。

今また聖女が必要なのかと

尋ねました。

この男に、崩れた心を

見破られるくらいなら、

むしろ、わざと悪く見せたいと

思いました。

それでも構わない。

どんな手を使ってでも、何とかして、

彼を憎まなければ、

傷つけなければならないと思いました。

 

ところが、

ゆっくりと閉じた目を開けた

マティアスは、夕食を食べたのかと、

予想外の質問をしたので、

レイラは当惑しました。

 

続けて、マティアスは、

まずは何か食べて、それから・・・

と言いましたが、

レイラは激しく首を振り、

どうしてそんなことを言うのか。

あなたは何なのかと非難することで

マティアスの言葉を遮りました。

このような言葉は、

この男に似合いませんでした。

 

レイラは、あなたのせいで、

カイルにあのような姿を見せて

あんな嘘をついて、

カイルを傷つけたのに、

それなのに、また、あなたと

向き合わなければならない自分に

夕食を食べろと言うのかと

非難しました。

そして、

レイラの顔を包み込んでいる

マティアスの手を

荒々しく振り払ったレイラは、

自らブラウスを脱ぎました。

そして、

どうせ、さっきできなかったことを

続けようと思って来たのは

分かっていると告げると、

じっと自分を見守るだけの

マティアスの膝の上に座りました。


「好きなの」と嘘をついた自分の声が

耳鳴りのように

耳元をぐるぐる回りました。

「私が好きなの」という声を

消すことができれば、

レイラは何でもできると思いました。

レイラは、

だから、早くやってと、

マティアスを急かしました。

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カイルの子供の頃の回想に

涙がこぼれました。

忘れることのできない

レイラとの楽しい思い出を

マティアスに汚されてしまい、

レイラとマティアスのキスの場面を

目撃したカイルは、心の行き場を

失っているように思います。

 

レイラはカイルのために

マティアスのことが好きだと

嘘をついたと主張しているけれど

この状況で、とっさに、

そのような言葉が出るのか

疑問に思います。

 

どんな手を使ってでも、

何とかして、彼を憎まなければ、

傷つけなければならないと思ったのは

裏を返せば、

彼を憎んでいないし、

傷つけたくないからだと

思っているのではないかと思います。

 

マティアスがクロディーヌと結婚すれば

自分は愛人のままで

過ごさなければならない。

それでは、ビルおじさんの言うような

立派な大人にはなれないし、

自分は辛いだけ。

だから、レイラは

この苦しみから逃れるために、

何としてでも

マティアスから離れたいと

思っているのだと感じました。

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