自分時間を楽しく過ごす 再婚承認を要求しますの先読みネタバレ付き

子供の頃からマンガが大好き。マンガを読むことで自分時間を楽しく過ごしています。再婚承認を要求します、ハーレムの男たちを初めとして、マンガのネタバレを書いています。

泣いてみろ、乞うてもいい 104話 ネタバレ 原作 あらすじ 人生を占領した女王

 

104話 マティアスがレイラに見せたかったのはカナリアでした。

 

レイラとカナリアは、

長い間、互いに見つめ合いました。

首を傾げるレイラを真似るように、

鳥も頭を横に振って歌いました。

気分がいいのか、鳥の歌は

いつもより、ずっと澄んでいて

きれいでした。

 

レイラは見ても信じられず、

面食らった様子で、

公爵の鳥なのかと尋ねました。

歌うのを止めたカナリアは、

ひらひらと羽ばたいて、

マティアスの肩の上に座りました。

 

レイラは「なんてこと」と呟くと

首を横に振りました。

カナリアが、

このように人懐っこいことも、

懐いている相手が、

ヘルハルト公爵だということも、

なかなか信じられませんでした。

 

レイラは、

あの言葉が本当だったなんてと

呟きました。

マティアスが、

「あの言葉?」と聞き返すと、

レイラは、以前エバースさんに、

公爵様が、

小さくてきれいな鳥を飼っていると

聞いたことがあるけれど、

それが本当だったなんて

想像もできなかったと答えました。

 

口が重くて忠実な随行人が

そんな無駄口を叩いたことに

マティアスが眉を顰めている間に

レイラは鳥に向かって

用心深く手を差し出しました。

見知らぬ手が嫌なのか、

カナリアは寝室の奥へ

逃げてしまいました。

 

レイラは、

鮮やかな緑の目を大きく見開くと

公爵のことは好きなくせに、

まさか自分のことが嫌いなのかと

不平を漏らしました。

その悔しがる表情に

マティアスは笑いました。

 

警戒心を緩めたレイラは

カナリアを追って

窓際に近づきました。

鳥はレイラを怒らせるつもりなのか

捕まりそうになりながら、

捕まえられることなく、

あちこち、せっせと逃げるのを

繰り返しました。

 

マティアスは、

気だるそうな笑みを浮かべた目で

飛び跳ねる彼の鳥たちを眺めました。

その可愛い鬼ごっこは、

カナリアが鳥かごの中に

戻ってしまったことで

幕を閉じました。

手を後ろに組んで、鳥かごの前を

ウロウロしていたレイラは

結局、諦めたように退きました。

 

レイラは、

人に、あまり懐かない種類の

鳥なのに、

どうやって手懐けたのかと、

近づいてきたマティアスに

真剣な好奇心を込めて尋ねました。

マティアスが、

翼を切ったと、平然と答えると

レイラの睫毛が小さく震えました。

 

唇を固く閉じたレイラが

目を伏せている間、

マティアスは、

美しくて精巧な鳥かごのドアに

鍵をかけました。

止まり木に座って、

切られた羽根の羽繕いをしていた鳥は

今はおとなしく巣に戻って

体を丸めました。

そのカナリアを見下ろす公爵の目は、

恋人を見るように、

柔らかくて甘いものでした。

 

レイラは、その目つきを

よく知っていました。

時々公爵は、そのような目で

レイラを見たからでした。

その目に向き合うと、

漠然とした気分になって混乱し、

その混乱が去った場所には、

間違いなく深い傷が残りました。

 

翼を切って、閉じ込めて、

手なずける。

まさに、それが、

あの男が望むものを手に入れる

方法でした。

 

明らかに感情を隠せずにいる目を

見られたくなかったので、

レイラは急いで窓の前に近づきました。

そこに立つと、

緑に染まっていく広大な庭園が

見えました。

 

こんな所で、

世界中を足下に置いたように

見下ろしながら生きていれば、

あなたのような心を

持つようになるのだろうか。

 

レイラは、

窓の前に一歩近づきました。

ビルおじさんが丹念に

手入れしてきたその庭は、

まるで別の場所のように

見慣れないものに見えました。

 

レイラは、

カイルとの結婚を台無しにした人が

公爵だと言えないことを

よく知っていました。

初めから掛け違えたボタンのような

縁談だったので、

公爵が正しい選択をしたとしても、

何も変わらなかったかもしれないと

思いました。

 

それでも、もしかしたらと思うと、

レイラは公爵を

許すことができませんでした。

どんな手を使ってでも、

手に入れさえすれば

それでいいという物程度に、

自分を見なしたからでした。

 

むやみに踏みにじっても、

人生を台無しにしても、

何の罪も感じない相手。

彼の目に映った自分は、

あまりにも簡単で

つまらないものだったから

真心を伝えて、

心を分かち合うための努力なんて

する必要さえないと

思ったのだろう。

しかし、自分にとっては

とても切実で大切な人生でした。

 

レイラは深く息を吸って

涙を堪えました。

 

貧しい孤児。世間の目には、

そう映るだけだとしても、

レイラは自分の人生を愛し、

一生懸命、恥ずかしくないように

立派に生きたいと思いました。

自分の力で

自分の人生を支えられる大人になり

いつか愛する人に会って、

堅実な生活のある家庭を

築きたいと思いました。

 

季節の移り変わりに合わせて

カーテンを変え、

心を込めて準備した食べ物で食卓を整え

お互いに似ている可愛い子供たちの背を

測るごとにドア枠に線が増えて行く

そんな人生。

 

その夢を追って

熱心に走って来た過去の自分の姿が

夜の庭の上にチラチラするようでした。

いつかはと、

その漠然とした希望を胸に秘めながら

息が切れても止まらず、

時には転んで怪我をしても笑いました。

結局、一人の男の欲望が

その全てを踏みにじるとは

夢にも思いませんでした。

 

いつの間にか背後に迫って来た公爵が

レイラの名前を囁きました。

レイラは反射的に微笑みながら

窓ガラスに映る彼を見つめました。

マティアスもガラスを通して

レイラを見つめていました。

 

美しい夢を見ていた少女が消えた場所に

残ったのは公爵の愛人。

憎悪する男のために微笑む

恥ずかしい女だけでした。

 

クロディーヌは正しかった。

何のために、

そんなに無邪気な自尊心を守ろうと

必死に生きてきたのだろうか。

他人の男を盗むような

こんな女にしかなれなかったのに。

 

ブルブル震える唇の間から

苦笑いが漏れました。

その瞬間、頭を下げた公爵の唇が

首筋に触れました。

本能的な恐怖を感じたレイラが

ビクッとすると、彼は両腕でしっかりと

レイラの腰を抱きしめました。

当たり前の手順に過ぎないのに、

なぜ今更悲しくなるのだろうか。

 

拒否してはならない男の胸の中で

レイラは目をギュッと閉じました。

復讐なんて、

何の役に立つのだろうか。

ただ、今夜だけでも、

彼のような人を永遠に見ないように

遠くへ逃げてしまいたいと思いました。

どれくらい経ったのか。

止まられない思いで

爆発しそうな頭の中に、

再び自分の名を呼ぶ声が

流れて来ました。

甘美で魅惑的な声でした。

 

弱気になってはいけない。

気を引き締めたレイラは

勇気を出して目を開けました。

微かに笑っている

公爵の顔が見えました。

 

いつの間にか

自分がベッドに横たわっていることに

気づいたレイラの頬が

すぐに赤くなりました。

 

レイラは、

なぜ笑っているのかと尋ねると

マティアスは、

ピンク色に染まった頬を

そっと噛むことで返事をしました。

レイラは短い悲鳴を上げました。

 

マティアスは、

反対側の頬、可愛い小鼻、そして

小さくてふくっらした唇を噛みました。

レイラは、

彼をさらに意地悪にしました。

 

壊したい女。でも大切に守りたい女。

レイラを前にすると、常に、

その相反する二つの渇望が

同時に熱烈になりました。

 

脈を打っている首筋を

噛み砕くように噛むと、

「止めてください! 痛い!」と

レイラが鋭く叫びました。

肩をギュッと握る手も、

かなり断固としていました。

 

それでも、

弱い力に過ぎませんでしたが、

マティアスは素直に止めました。

それが不思議だったのか、

レイラは驚いた表情をしました。

少し開いた唇が、

風の中のバラの花びらのように

震えていました。

すでに熱が上がっていた下が

ズキズキ痛み始めました。

思わず苦笑いしましたが、

それほど悪くはありませんでした。

 

じっくり考え込んでいたレイラが

力を入れて彼の肩を押しました。

マティアスは喜んで

その手に押されることにしました。

そして彼女を抱き締めたまま

ベッドに仰向けになりました。

うっかりその男の上に座ったレイラは

理解できないというように

彼を見下ろしながら、

何をしているのかと尋ねました。

マティアスは、

君の言うことではないと答えました。

 

レイラは、

自分に押されて倒れたと言うのかと

抗議すると、公爵はニヤニヤ笑って

彼女を見ました。

その濃くなった青い目は、

以前のように

恐ろしいだけではありませんでした。

 

レイラは、

急に弱くなったようだと言うと、

一度試してみようと言わんばかりに

彼の肩をギュッと押さえながら

眉を顰めました。

 

レイラは、

こうすれば少しも動けないだろうと

言いました。

マティアスは

「たぶんね」と答えました。

 

レイラは、

それなら、もう笑ってはいけないと

言うと、自分の腰を抱いている

マティアスの腕を、

シーツの上に下ろしました。

 

マティアスが抵抗するこなく

素直に応じると、レイラは、

自分が何をするか怖くないのかと

尋ねました。

そして、もう少し勇気を出して

彼のすらりとした顎を撫でました。

自分を踏みにじっていた彼が

そうだったように、

そっと掴んだ顎を

持ち上げてみたりもしました。

気だるそうに開いている

マティアスの青い目は、相変わらず

笑いを失わずにいました。

 

彼は、

いくらでも好きなようにしてと

沈んだ声でゆっくり答えました。

レイラの下に横になり、

彼女の手に顔を委ねていても

マティアスは依然として

余裕のある支配者のように見えました。

レイラを見つめる視線からは、

少しも隠す気のない露骨な情炎が

滲み出ていました。

 

レイラは、

まだ完全に振り切れていない躊躇いも

胸の奥から湧き上がる冷たい怒りも

忘れたまま、

じっとその美しい顔を眺めました。

顎から離れた手が、気づかないうちに

公爵の顔をなぞるように

撫でていました。

 

マティアスは、

気に入ったかと尋ねました。

その厚かましい質問をした瞬間も、

彼は一抹の動揺も見せませんでした。

レイラも、

彼のように平然とすることにし

「はい」と答えました。

予想できなかった答えだったのか、

公爵は少し眉を顰めました。

 

レイラは、

「人柄よりは、ずっと」と

付け加えました。

その嘘をつくのは、

それほど難しくありませんでした。

ある程度、

真実に近かったりしたからでした。

 

しばらく

じっとレイラを見ていたマティアスが

大声を出して笑い始めました。

その響きが、公爵の上に座っている

レイラにまで伝わって来ました。

 

マティアスはレイラに

大丈夫かと尋ねると、

自分の頬を包んでいる

レイラの手の甲に触れました。

はっきりと熱感が感じられました。

 

マティアスは、

自分が完全に狂ってしまったら

どうするのかと尋ねました。

努めて幻滅を消そうとしたレイラは

無邪気に笑いながら首を横に振り

そんなことはないと答えました。

 

高い天井と華やかな壁、

古風な家具と芸術品を

チラッと見回すと、レイラは、

再びマティアスを見つめました。

これら全ての主人として

高貴に生きてきた男が

彼女の下で、身を任せたまま

横になっていました。

 

その事実が与える安心感のためか、

もはや、レイラは、

彼を恐れませんでした。

怖くない公爵は、

まるで平凡な男のように

感じられたりもしました。

 

レイラは、

今日の公爵は身動きできない人だから

心配すべき人は、あなたではないかと

言いました。

マティアスは、

心配しなければいけないほど、

すごいものをくれる自信があるのかと

尋ねました。

レイラは「たぶん」と答えました。

 

レイラの顔には、

今や心から湧き出た明るい笑みが

浮かんでいました。

その瞬間も、レイラの両目は

絶え間なく

マティアスを見つめていました。

いつまでも

覚えていなければならないので

一瞬たりとも

逃したくありませんでした。

 

すごい傷と苦痛を与える。

その誓いを伝えるかのように、

レイラは両腕で彼の首筋を抱き締め

舌を奪いました。

少しずつ大胆になるにつれ、

マティアスの息遣いが

乱れていくのを感じました。

それが好きで、レイラは

さらに熱烈に口を合わせ続けました。

 

いつからか、

こうだったような気がしました。

彼が怖かったけれど、

一方では、一番高貴で優雅な男が

自分によって

野蛮な欲望だけに捕らわれた存在に

転落する瞬間を見るのが好きでした。

 

シーツをかきむしるように

握っていたマティアスの手が

レイラの腰をつかみました。

レイラは、

少し待つように。

自分の好きなようにさせてくれると

約束したではないかと

子供を叱るように優しく囁くと

ブラウスのボタンを外し始めました。

世慣れた妖婦のように

振る舞っているけれど、

全身が真っ赤でした。

そのくせレイラは、まじめな姿勢で

一枚ずつ服を脱いで行きました。

白い肩と胸、

背中と足の間のあちこちに、

彼が残した痕跡が

色濃く残っていました。

 

マティアスは甘い敗北感に浸りながら

レイラを見ました。

半狂乱になって

飛びかからないためには、

限界を超える忍耐力を

動員しなければなりませんでした。

なぜ、このクソみたいな行為に

同調しているのか

理解できませんでしたが、

拒否する方法もありませんでした。

 

しばらくして

一糸まとわぬ姿になったレイラは、

悲壮な覚悟でも決めたように

息を吸い込んだ後、

再び彼の腰の上に座りました。

レイラは目が眩むほど美しく、

彼の人生を占領した女王のように

マティアスを見下ろしながら

ゆっくりと微笑みました。

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マティアスが邪魔をしなかったら

カイルと

結婚できていたかもしれない。

けれども、レイラにとってカイルは

恋人というよりも、

兄みたいな存在だから、

結婚しても、

うまくいかなかったかもしれない。

それでも、

それはレイラが選択した結果だから、

悲しくても、その人生を

受け入れていたと思います。

 

しかし、今のレイラの人生は

マティアスに支配されていて

カナリア

マティアスの寝室から

庭園を見下ろしたことで、

レイラは改めてその事実を

痛切に感じたと思います。

その一方で、マティアスが、

自分に支配されていることに

気づいたレイラ。

レイラは自由を取り戻すために

マティアスが自分の体の

虜になっているのを

武器にしようとしているのだと

感じました。

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