自分時間を楽しく過ごす 再婚承認を要求しますの先読みネタバレ付き

子供の頃からマンガが大好き。マンガを読むことで自分時間を楽しく過ごしています。再婚承認を要求します、ハーレムの男たちを初めとして、マンガのネタバレを書いています。

バスティアン 26話 ネタバレ ノベル あらすじ マンガ 21話 責任の押し付け

26話 皇后に平手打ちされたバスティアンは皇帝の言葉を待っています。

 

バスティアンは整然とした姿勢で

そこに座ると、続く言葉を待ちました。

皇后に殴られた頬は

まだ赤かったけれど、

表情は極めて穏やかでした。

罪人のように連れて来られて

侮辱を受けた者とは思えない姿でした。

皇帝は、さらに混乱が深まった目で

その厄介者を見つめました。

 

共謀の疑いは

一切、見つかりませんでした。

逃げたイザベルの目的地が、

バスティアン・クラウヴィッツ

家であるという予測は的中しましたが

それ以外は全て、推測と異なりました。

 

夏の宮殿が大騒ぎになる前に

外出したバスティアンは、

ラッツの金融家たちと昼食を共にした後

その一部の者たちと共に

社交クラブに移動しました。

銀行家と上院議員、海軍将校。

同席者が、

イザベルと無関係なのは明白でした。

 

午後には主治医を訪ねて、

トロサ海戦で負った傷の診察を受け、

その後はオデットを

高級洋品店に連れて行き

すごいプレゼント攻勢をしました。

それより、もっと驚くべきことは、

その直後に、

ラインフェルトホテルで、

ラビエル公爵とその娘に

会ったことでしたが。

 

ベルク皇帝の姪と

フェリアの貴族の娘を両手に握って

天秤にかけている、

不埒な日和見主義者だけれど、

少なくともイザベルとは

何の関係もないことが

確実のようでした。

その事実を繰り返し考える

皇帝の目つきが、

さらに冷たく沈みました。

 

バスティアン・クラウヴィッツが、

これほどまでに着実に

自分の利益を得るため、

週末を過ごしている間、

彼の娘は乳母に睡眠薬を飲ませ、

メイドの服を盗んで着て、

荷車に乗るという奇行に走りました。

そして、その呆れた脱走劇は、

大っぴらに冷遇され、

恥をかかされたことで

幕を閉じたという事実が、さらに

皇帝の心を残酷に傷つけました。

 

バスティアンが

最善の対応を示してくれたことを、

知らないわけではありませんでした。

皇女と二人きりで会わないことで

憶測の余地をなくし、

無駄な未練も、

きっぱりと断ち切ってくれました。

いくら徹底的に口止めしたとしても

イザベルが犯したことを、

きれいに消し去ることはできないはず。

それなら、むしろ、

子供の頃の片思いから始まった

事故にした方が良い。

それなら、

何とか収拾可能な範囲内の

スキャンダルだからでした。

 

しかし、

その事実が免罪符になるには、

すでにあまりにも遠い所まで

来てしまいました。

これは単に、

愚かなイザベル一人に限った問題とは

言えませんでした。

 

皇女まで馬鹿にするこの者の野望は

一体どこまで広がるのか。

なかなか、それを

推し量ることができないという事実が

皇帝の心を重くしました。

 

皇帝は、

ベルクの第一皇女。ラビエル公爵の娘。

それにオデットまで。

まさか、この名前以外にも、

自分が知るべき大尉の女が

他にいるのか。

バスティアン・クラウヴィッツとは

一体、どういう者なのかと、

ストレートに質問しました。

 

バスティアンは、

命じてくれれば、

まさに、その人になるだろうと、

少しの躊躇もなく答えました。

信頼できる重低音の声と

まっすぐな視線が、

その煌びやかなお世辞を

もっともらしくしてくれました。

 

皇帝は、

命令すれば何でも従うのかと

尋ねました。

バスティアンは

「はい、そうです」と答えました。

 

皇帝は、

素晴らしい。さすが、

英雄と呼ばれる軍人らしい姿だと

失笑を交えて皮肉りながら

タバコの箱を開けました。

 

北海にある帝国領トロサ諸島で勃発し

バスティアン・クラウヴィッツ

海軍の英雄にした海戦は

軍事的要衝地と資源採掘権をめぐって

対峙していたロビタが

先制攻撃をして来て

始まった戦闘でした。

 

近隣の海域を視察していた

ベルクの艦艇は、

戦列を整える間もなく

砲火に包まれました。

報告を聞いて出てきた艦長が

壊れた甲板の破片に当たり、

意識を失ってしまったという

最悪の状況だったとのこと。

 

艦長が不在になった戦闘状況で

艦艇の指揮権を

譲り受けることになった人が

目の前にいる、この将校でした。

 

すでに大きな損傷を受けた船体では

砲撃戦に臨むことが難しいと

判断した彼は、

戦艦を急旋回させて、

敵の攻撃に対応しました。

ロビタ軍の提督が乗船している

指揮艦に突撃する。

ベルクの艦艇が、

機動力でリードしているという

判断の下で下した決定でした。

 

防御態勢を取ると思っていた

ベルク軍が、正面突破を選ぶと、

慌てた敵の艦隊の戦列が乱れました。

その隙を突いて、

全速力で突進して来た戦艦が、

ロビタ提督の指揮艦の船首に

衝突すると、砲撃が中断しました。

下手をすると、

味方の船を撃沈させるかもしれない

無差別的な攻撃を続けることは

できないと言った

クラウヴィッツ大尉の戦略が

功を奏した形でした。

 

その後の白兵戦では、

ベルク軍が優勢を占めました。

その間に支援艦隊が到着し、

圧倒的な威力で降り注ぐ砲撃に

敵陣が完全に乱れた頃、若き大尉が、

百戦錬磨の老将である

敵軍の提督を生け捕りにしました。

ロビタが白旗を上げて降伏した

完璧な勝利でした。

 

トロサ海戦の報告書を受けた皇帝は

しばらくの間、呆然とした気分に

とらわれていました。

確かに帝国の栄光であり喜びでしたが

その一方で、戸惑いを感じたことを

どうすることもできませんでした。

 

遠距離火力戦の時代になると

艦上白兵戦は消えました。

前世紀の軍事学書でしか

見たことのなかった光景が、

現在になって、

目の前に広がっていました。

 

榴弾。刀剣。小銃と拳銃。

到底、海上戦で見るに値しない

武器の名前だけ見ても、

その乱闘の様相が

浮かび上がりました。

 

敵は、ベルクが悪魔の猟犬を

北海に放ったと、

猛烈な非難を浴びせました。

先に挑発した側が、

騒ぐべきことではなかったけれど、

心情的には、理解できました。

もし、

バスティアン・クラウヴィッツ

敵軍の指揮官だったら、

彼も同じ評価をしたはずでした。

 

トロサ海戦で惨敗したことで

ロビタ海軍の勢いは

大きく衰えました。

それに対して、

北海に対するベルク軍の掌握力は

一層大きくなったので、

クラウヴィッツ大尉は、明らかに

英雄と呼ばれる資格がありました。

 

しかし、万が一、

コントロールできなくなったら?

いつ、どのように急変して、

主人を噛むか分からない猛犬を、

完璧に信頼することは

できませんでした。

バスティアン・クラウヴィッツ

気質を知れば知るほど、

そのような不安は、

さらに大きくなって行きました。

彼は、権威と秩序に

服従する者ではないけれど、

それを巧みに利用できるほど

賢い者でもありました。

 

では、一体どんな首輪を付けて

飼い慣らすべきなのだろうか。

 

皇帝は、

心配そうなため息をつきながら

席を立ちました。

窓の前に近づいてカーテンを開けると

庭と、その向こうを流れる

プラタ川の風景が広がっていました。

静かに後を付いて来る

バスティアンの気配が

感じられましたが

皇帝は振り返りませんでした。

 

彼は、

不本意だったとしても、

お前のせいで、

娘と皇室の名誉が汚された。

そして、これは、

ただ皇女一人の結婚だけではなく

帝国全体の重大事だと告げました。

 

分別のない娘に苦しめられて疲れた

父親の痕跡を消した皇帝は、

帝国の君主らしい威厳を

取り戻した顔をしていました。

バスティアンは、

理解していると言うように

頭を下げました。

 

ベルクの皇女と

ベロップの皇太子の結婚は、必ず

実現させなければなりませんでした。

戦線で服務しながら

急変する国際情勢を体感してきた

バスティアンは、

誰よりも、その事実を

よく知っていました。

日に日に大きくなっていく

ロビタの海軍力を牽制するためには

ベロップとの協力が必要でした。

イザベル皇女の結婚は、まさに

その同盟の礎となるはずでした。

 

バスティアンは、

自分もベロップとの軍事同盟が

成功裏に締結されることを

願っていると告げました。

 

すると、皇帝は、

後ろで手を組みながら振り返ると、

それなら単刀直入に言う

もし、イザベルの愛のせいで

結婚に問題が生じ、それによって

この帝国の安危が

脅かされるようになったら、

自分は絶対にお前を許さない。

お前の過ちではないということは

重要ではない。

実際、存在そのものが、すでに皇室に

多大な被害を及ぼしているので

罪人ではないとも言えないと

告げました。

 

バスティアンは、

再び戦線に出る予定だ。

この秋になれば、

上層部の許可が下りる見込みだけれど

皇帝が海軍省に命令してくれれば、

明日にでもすぐに出征すると

言いましたが、皇帝は、

その程度のことで、

この事態が収拾できると思うのかと

反論しました。

彼の細くなった目が

冷たく光り始めました。

都市の外れに近づくほど、

次第に客車は閑散として行きました。

座席の半分以上が空いていましたが、

オデットは依然として、

出入り口の横の柱に体を預けて

立っていました。

深まった夜を照らす都市の明かりが、

空虚な瞳の上を引っ掻くように

通り過ぎました。

 

バスティアン・クラウヴィッツ

不在でした。

まだ恋人と一緒にいるようでした。

しかし、

そのまま引き下がれなかったオデットは

父親が、

この邸宅を訪れたことがあるかどうか、

それだけでも教えて欲しいと

懇願しました。

善良な目つきの老執事は

その願いを聞き入れてくれて、

今日、父親が、

そこに来なかったことを

教えてくれました。

 

それを聞いてオデットは

ようやく安心しましたが、

以前に一度、先約なしに訪ねて来て

バスティアンに会ったことがあると

思いもよらなかったことを聞いた瞬間

心が、また沈んでしまいました。

 

オデットは

バスティアンに会わずに済んで

安堵しました。

もし彼と顔を合わせていたら、

あまりにも恥ずかしくて

耐えられなかっただろうと思いました。

 

伝言を残したのだから、

近いうちに彼から連絡が来るだろう。

いや、永遠に無視されても大丈夫だし

むしろ、そうであることを願いました。

 

熱くなった目頭を、

ギュッと力いっぱい押さえたオデットは

最後の駅で降りました。

もう何度も整えたスカートの裾を見て、

髪を撫でました。

そんなことをしても、

心のしわが伸びないということは

知っているけれど、

馬鹿みたいな未練でも残さないと、

この人生の重さに

耐えられそうにありませんでした。

 

今日、あの男が父親の話をした理由が

初めて理解できるような気がしました。

すでに父親が狼藉を働いたのだから、

当然のことでした。

それなのに、なぜ、次に会う約束し、

あれほど多くの品物を

押し付けたのだろうか?

 

なかなか答えが見つからない疑問が

オデットをさらに惨めにしました。

 

最悪だ。

この芝居を続ける気さえなくなった。

二度と会いたくないと、

正直に言ってくれれば良かったのに。

 

全身が空っぽになったような気分で

夜道を歩いて、

集合住宅の出入り口を開けると、

また始まった、もう、こりごりと

建物の管理人の妻の

神経質な叫び声が聞こえて来ました。

彼女は、オデットに、

早く上がって何とかするように。

うるさくて生きていけないと

抗議しました。

 

オデットは、

何かあったのかと尋ねました。

尖った目をしたパルマー夫人は、

また、あの家で喧嘩をしていると

これまでため込んだ不満を

吐露し始めましたが、

オデットは、これ以上、

何も聞くことができませんでした。

 

駆け上がる。

父とティラの仲裁をする。

後始末をする。

 

すでに数え切れないほど

繰り返して来たので、

慣れているはずなのに、

気軽に両足が動きませんでした。

このまま背を向けて、

また夜の街に出たい衝動に

駆られました。

父とティラを忘れて、

息の根を止める首輪のような

身分も忘れて、

とても遠くに逃げたいと思いました。

 

しかし、結局、

背を向けることができなかった

オデットは、父親とティラに代わって

パルマー夫人に頭を下げ、

もう一度だけ理解して欲しいと

頼みました。

 

激しい勢いで悪口を浴びせた

パルマー夫人は、

不快な気分を露わにする足音を立てて

去って行きました。

ため息をついたオデットは

階段を駆け上がり始めました。

 

最後の踊り場に近づくと、

「それは、ダメ!」と

息が詰まるようなティラの絶叫が

聞こえて来ました。

そして、まもなく

開いた玄関のドアの向こうから

父親が飛び出して来ました。

彼の腕にしがみついている

ティラも一緒でした。

 

「放せといっているだろう?」

 

「私のお金を返して!

それは、私のものよ!」

 

へそくりが入った

チョコレートの箱を巡って、

二人のもみ合いは

ますます激しくなって行きました。

 

「お父様!」

手を上げた父親に向かって、

叫んだのと同時に、

ティラが力いっぱい父親を押しました。

バランスを崩して、

もがいていた父親は、

耳をつんざくような悲鳴を上げながら

階段の下に落ちました。

一瞬の出来事でした。

 

奇怪に歪んだ姿で倒れている

父親の前に駆けつけたオデットは、

悲鳴も上げることができず、

その場に座り込んでしまいました。

まるで生命体のように蠢きながら

床板の上を這って来た赤黒い血が

オデットのスカートの裾を

濡らしました。

ブルブル震えていたティラが爆発させた

猛烈な泣き声が、

古い建物を揺るがし始めました。

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存在そのものが

皇室に多大な被害を及ぼしているから

罪人だなんて、

身勝手で理不尽な理屈だと思います。

持って生まれた気質もあるけれど、

イザベル皇女に対して、

適切な助言なり、教育をすれば、

今より、もう少し

マシになったのではないでしょうか。

自分たちの責任を

バスティアンに押し付けるなんて

酷すぎると思います。

 

イザベルの情報は、

ベロップにも流れているでしょうけれど

それにもかかわらず、

ベロップの皇太子はイザベルと結婚し、

彼女を未来の皇后に

しようとしているのでしょうね。

彼女との子供が君主になれるほど

優秀になるとは思えませんが・・・

ベロップの皇太子は、

イザベルにうんざりして、そのうち、

側室を置くような気がします。

 

オデットは母親が亡くなってから

自分が家を守らなければと

必死に頑張って来たのでしょうけれど

彼女だって、家族から

自由になりたいと思う時があって

当然だと思います。

今はお芝居であっても、

バスティアンは、オデットを

自由にさせてくれる存在なのだと

思います。

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