自分時間を楽しく過ごす 再婚承認を要求しますの先読みネタバレ付き

子供の頃からマンガが大好き。マンガを読むことで自分時間を楽しく過ごしています。再婚承認を要求します、ハーレムの男たちを初めとして、マンガのネタバレを書いています。

問題な王子様 165話、外伝 12話の続き 新エピソードその2ネタバレ 甘美な敗北

 

165話 外伝12話の続き エルナの心配をよそに、ビョルンの演説は無事に終わりました。

大聖堂から

それほど遠くない所にある

壮大な建物の前に立ち止まった学長は

ここがフレイル寮。

大公と王太子も、この寮で過ごしたと

力を込めて話しました。

 

つられて歩みを止めたエルナは

顔を上げて寮を見回しました。

広々とした敷地の中に

数軒の建物が建っている寮は

まるで一つの村のように見えました。

 

考え込んでいたエルナは

ビョルンの方を向くと、

フレイルといえば、

あなたの銀行名と同じではないかと

指摘しました。

熱意に満ちた案内人である学長は

大公の銀行と自分たちの寮は、いずれも

レチェンの建国神話に出てくる

神の名前にあやかって付けた。

フレイル寮は、

先代の国王が設立したけれど、

名前も直接付けた。

その子孫である王子たちも皆、

フレイル寮出身なので、

まさに王家の寮と呼んでも

無理がないと思うと、

誇らしげな顔で自慢話を続け、

そうではありませんか?と

同意を求めるように

ビョルンを見つめました。

ビョルンは曖昧に微笑むことで

代わりに返事をしました。

 

入学生全員が寮生活をする

シュべリン大学の学生たちは

概して自分自身の寮に

非常に強い所属意識を感じていましたが

その中の一部は、卒業後も

熱烈な愛情を捨てられませんでした。

フレイル出身の自然科学大学の学長も

そのような部類の一人でした。

 

改めて愛校心に酔いしれた学長は、

さらに寮の自慢話をしました。

無愛想なビョルンとは違って、

エルナは耳をぴんと立てたまま、

その長広舌に耳を傾けました。

目を輝かせて傾聴し、

時には感嘆しながら

頷いたりもしました。

その真摯な態度に大きく感動した学長は

熱心に寮を案内し始めました。

数年間過ごした場所を

見物したいという気持ちは

なかったものの、ビョルンは

素直に彼らの後を追いました。

 

一体何がそんなに面白いのか。

エルナは、まるで

未知の世界を冒険するかのように

興奮していました。

学長の退屈な演説を我慢する見返りに、

そのようなエルナを

鑑賞することができれば、

損をする商売ではありませんでした。

 

寮の共用スペースと

礼拝堂を見学した彼らは、

生活館の建物とつながる回廊に

入りました。

柱の間から見える庭は、

さわやかな緑に染まっていました。

 

日差しが降り注ぐ広い芝生を

じっと眺めていたビョルンの視線が

並んで歩いている妻に向かいました。

このような無意味なことに

時間を浪費するには、

あまりにも美しい夏の日だと思った瞬間

エルナが首を回しました。

 

丸く大きくなったエルナの目を

見つめていたビョルンは

「行こう」と囁きました。

エルナは眉を顰めて首を傾げました。

にっこり笑ったビョルンは、

目で出口を指すことで、

返事の代わりをしました。

 

驚いたエルナは、唇の動きだけで

「とんでもない」と彼を叱りました。

しかし、ビョルンは気にせず、

妻の手を握りました。

学長は、ちょうど現れた舎監と

しばらく話をしているところでした。

 

ビョルンは満面の笑みを浮かべながら

もっと面白い見物をさせてあげると

言って、エルナを導きました。

学長と舎監は、彼らが庭に入ってから

ようやく、そのことに気づきました。

 

ビョルンを呼ぶ

学長の慌てた声が聞こえて来ると、

彼はのんびりと後ろを振り返り、

これからは自分が妻を案内する。

貴重な時間を割いてくれて

ありがとうと、

突発的な行動とは全く違う

丁重な挨拶を残し、

途方に暮れているエルナを連れて

庭を横切って行きました。

 

午後の穏やかな日差しが

不適切な行動をした

シュベリン大公夫妻を包み込みました。

うっかりビョルンの共犯者になった

エルナは、後になって

自分が何をしたのかを理解しました。

気がついた時には、いつの間にか

回廊からかなり離れていました。

 

驚愕するエルナの前でも、

彼は眉一つ動かしませんでした。

大したことではないという風に

クスクス笑う顔は、憎たらしいほど

のんびりしていました。

 

エルナは、

戻って学長にきちんと挨拶するように。

このように行ってしまったら、

あなたのことを、どう思うかと

ビョルンを叱りました。

彼は、慣れていることだから、

平気だろうと答えると、

平然と肩をすくめました。

 

呆れたエルナは深いため息をつきながら

後ろを振り返りました。

自分でも、きちんとした謝罪を

するつもりでしたが、

学長は彼らを見ていませんでした。

舎監と話をしている彼の姿は、

すでに逃げた大公夫妻の存在を

忘れたかのように

呑気にしていました。

どうやらビョルンの言葉は

嘘ではなかったようでした。

 

エルナは、

一体、あなたは、

どんな学生時代を過ごしたのかと

思わずがっかりしたような

笑みを浮かべて尋ねました。

学位授与式で見た、

あの完璧な王子様は

どこへ行ってしまったのか。

ビョルンはいつの間にか、

元の問題な王子様に戻っていました。

 

何となく、このまま去るのが、

残念に思ったエルナは、突然足を止め

ビョルンに、

まだ寮を見終わっていないと

抗議しました。

 

ビョルンは、

まだ知っておくべき夫の過去が

残っているのかと尋ねました。

じっとエルナを見下ろしていた

ビョルンの口の端が斜めに傾きました。

エルナは断固として頷いて

自分の意志を示しました。

 

エルナは、

あなたの過去を知ることができる方法は

これだけではないかと抗議しました。

ビョルンは、

今さらそれを見つけ出して、

何をするつもりなのかと尋ねました。

エルナは、

もっと知れば、もっと愛することが

できるかもしれないからと、

清らかな顔で

かましい返事をしました。

毅然とした目つきとは裏腹に、

頬は赤く上気していました。

 

穏やかなため息をついたビョルンは

生活館の端にある

出入り口の方へ足を向けました。

目的地を確認したエルナの顔の上に

明るい笑みが広がりました。

 

何だかこの女の掌の上で

遊ばれているような気がしましたが

あまり気分は悪くありませんでした。

再び、甘美な敗北をしました。

f:id:myuieri:20210206060839j:plain

f:id:myuieri:20210206071517p:plain

カードゲームに興じていた頃の

ビョルンは、何となく、

夜の帝王というイメージがあったので

日差しが降り注ぐ広い芝生に

魅かれるビョルンが、少し意外でした。

学生時代のビョルンは、

やりたくないことがあると

すぐに逃げ出して、どこかで

昼寝でもしていたのではないかと

想像を膨らませています。

今回もエルナにぞっこんのビョルンを

見られて良かったです。

f:id:myuieri:20210206060839j:plain